楽しい謝恩会
卒園式の夜、灯枇は親達に連れられてヒヲス保育園のすぐ近所の飲食店の2階へと上がった。そこにはオードブルの数々と、見知ったヒヲス保育園の卒園児達が何人か集まっていた。
卒園式の悲劇と言えば、小学校が分かれて離れ離れになる仲良し園児達と相場が決まっているものだが、幸か不幸か、今年のヒヲス保育園の卒園児達はアブテルモゼフ・ヨセフくん以外は全員が、皆揃ってヒヲス小学校に進学するのだと卒園式でも発表があったばかりだった。
灯枇は同じB組で、B組のきりん組の中では唯一の男の子だったハヤちゃんの近くに座り、給食時間中におどけて人を笑わせるのが得意だった彼と、それに輪をかけて面白い初対面のハヤちゃんの兄に、散々おどけられて大爆笑した。
こんなに楽しかったことは今まで無かったので、恐らくルミも早良も、この席には参加していなかったのだろう。
「灯枇。これからはご近所のナホちゃんと一緒に登校するんだから、ちゃんと挨拶しに行くよ」
誰だっけ、それ。そんな人保育園に居たっけ、灯枇はそう思いながら、母親に着いて行った。
やがて母親が立ち止まった先には、保育園で見た覚えはあるような、たしかナホちゃんと呼ばれる今まで話した事もない男の子と、その母親が座ってオードブルを食べていた。どうやらナホちゃんの母親も、灯枇の母親と同じく公務員らしく、愛想よくニコニコと話し出した母親達を尻目に、2人は最低限の挨拶を交わした。




