青いスモッグ元気な子
大変奇妙な事に、自由服なヒヲス保育園の園歌の歌い出しは、青いスモッグ元気な子~♪ という歌詞だった。青いスモッグを着ているのは、むしろヒヲス幼稚園の園児達である。そう思いながら、灯枇はようやく卒園式を迎えられてホッとしていた。
灯枇は卒園式や卒業式には付き物の、泣き出した女の子を不思議に感じながら、担任保育士から一人ずつ発表を義務付けられた、保育園で印象に残ったエピソードを、工作の時間に作った作品を持って発表した。
灯枇はいつからか、家で何かしらの他愛ない工作物を作っては保育園まで持って来て、担任保育士に褒められながらそれをB組の教室内に飾られるという行為を繰り返していたが、本来はそんな話を発表するつもりは毛頭無く、一度だけ保育園に来た人形劇団の思い出について語りたかった。
しかし、それではA組のナホちゃんと発表内容が被るという理由で、
「灯枇ちゃんは工作が好きでよく作って来るじゃない。この前工作の時間に作ったこれを持って、そう発表しましょう。その方がお父さんもお母さんも、きっと喜ぶよ」
と、笑顔の担任保育士に薦められ、渋々頷いて恐らく双方の保育士と、何も知らない親達を喜ばせた。やがて卒園証書が授与され、例のアブテルモゼフ・ヨセフくんは入園当初、用意された名札を見た彼の父の「ヨセ~フ! ヨセ~フ!」という正当な抗議に基づいて、正しくきちんと名前を表記された卒園証書を受け取って、家族と共にエジプトへと旅立った。彼と同じA組だったナホちゃんとの仲は不明だが、少なくともB組の灯枇とは、一切交流は無かった。




