貴重な男子
転校生が来るらしいよ。それを聞いてまず最初に気になるのは、そいつが男か女かだ。
男だったら仲良くなれるかも知れない。女だったら可愛いと尚良い。
何にせよ、うちのクラスは人数が多いから、休み明けとかの定番な転校生は、他のクラスにばっかり取られてあまり関わることも無かった。さて、どんな奴だろう?
チャイムが鳴ると、先生が転校生を連れて教室に入って来て、黒板に名前を書いた。転校生は簡単な自己紹介を済ませると、先生に言われて俺らが用意した、前らへんの席に座った。
そして転校生・結尾 咲人は、給食の時間に面白い事を言い、皆を笑わせると、持ち前の明るさであっという間にクラスに馴染んだ。何人かは今日の放課後に、その結尾君と遊ぶ約束もしたようだった。
「隣の校区で不審者が出ました。危ないので、今日は集団下校します。先生が、今から町内ごとに集まる教室を言いますから、そこに移動してください。ちゃんと自分の町内は分かりますね?」
「先生、オレはどこだか全然分かりません」
「ああ、結尾君は6町内ですよ。柾谷君と同じなので、一緒に着いて行って下さい。柾谷君、教室は5ー2だから間違わないように」
結尾君と5ー2の教室に入ると、その中は6町内の奴らでごった返していた。
うちの町内って、あのマンション全体が1つの町内である11町内程じゃないはずだけど、何人かは一体何処に隠れ住んでいるんだろうか? 町内のイベント事には顔を出すけど、登下校の際には会ったことも見掛けたことも無いし、近所の表札を見ても同じ名字は見当たらないのに、同じ6町内なんだから。
「何かここ、女子ばっかだ」
「そうだろ結尾君、今まで男子は俺1人だけだった」