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黄金が降る  作者: 毎路
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09 業者

 何をどう思ったか荷物の中に入っていたヒヨコのアップリケが付いたエプロン、まくった袖、ルヴィはそっと皿に盛りつける。離れて見下ろし一つ頷く。


「んー出来栄えはまずまず!」


 切って、焼いて、ボタンを押して、茹でて、盛り付けただけの簡単料理。


「主夫でもいけちゃうレベルじゃね?」


 同室のルームメイト、ネムはすやすやと睡眠中。

 追いつこうと夜遅くまでリストを消化している。


 焦らせて悪かったなという思いも少し。


「今日くらいは好きなだけ寝かしてやろ」


 カレッジが始まるまであと数日だ。

 出来上がった朝食を見下ろす。


 他人からの評価を求めても仕方ない。

 自己肯定感の高さを褒められるルヴィは出来栄えを自画自賛してエプロンを外した。


「でも食べるのは一緒がいいよな」







 窓を開けると、色づく黄色のイチョウが目に鮮やかだ。

 来週とうとうカレッジに行くことができる、大学院生として。


 いい天気だ。

 当日も晴れたらいい。


 ネムは絶対にできない、出窓に腰かけて下を見渡してみる。まだ清掃員が出勤していないのだろう芝生の庭に、黄色の落ち葉が彩っていた。車が何台か通過する。進行方向は決まっている。駅方面に行くと、大きい道路と合流するからだ。


「あ、マザーマリエだ」


 モスグリーンの車がルヴィのランニングの進行方向からやってきて、ガレージへと進入する。旧態依然の化石燃料を使用する車が停止する音、そのドアの開閉音が続いて、マリエが庭に姿を見せる。身を乗り出して挨拶しようとしたとき、先を越された――


「――マリエ。おはよう」

「まあ、ベンジャミン。良い朝ね。ガレージのことよね?」


 すわ待ち伏せかと警戒したが、杞憂だった。

 ガレージの修理と塗装について触れている。


「おはよう、ルヴ」

「あ、ネム。おはよ。朝ごはんできてるぞ」


 出窓に座ったままネムに返す。

 

「何を見ているの?」

「挨拶しようとしたんだけど、出そびれた。――マザーマリエと業者の人が話してるんだ。どうやらガレージの塗り直しをするらしい」


 ネムが隣にやってきて床に膝をつく。

 耳を傾けるが、首を振った。


「ガレージ、ペイント、とか、断片的なことしか聞き取れないわ」

「勉強したより、だいぶ早い気がするよな? 今はガレージの改修が必要かもって話になってる」

「そう……」


 出窓をしっかりと閉め、立ち上がる。

 ネムの手を取って立つのを手伝い、向かいの席に座らせる。


「朝ごはんだぜ、お姫様。来週からは早起きできると信じていいんだよな」

「がんばるわ」


 ナイフとフォークを使う練習もしている。


「いろんなこと頑張ってるよな」


 えらいえらいと頭を撫でる。柔らかな薄青の癖毛が指に絡む。ネムはこの髪質が嫌いなようだが、ルヴィはそう思わない。


「いつもありがと、ネム」


 するとネムが頬杖をついて横を向いた。

 不機嫌そうに眉をひそめるが、ルヴィはわかっている。


「………もうちょっとだけがんばってみるわ」


 けぶるような薄青の睫毛が震えた。







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