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第11話 ブレーン来襲


 眼の前に勢ぞろいしたブレーン達に、アーネストは呆れた顔を向けた。


 彼等は仕事の調整が取れず、次の訪問先であるマレーシアで落ち合う手筈になっていたのだが、揃いも揃って世界中の別々の場所からほぼ同じ時刻に羽田に到着し、現在こうしてガン首を揃えて機嫌のいい顔で笑っている。

 

 彼等が何しここに押しかけて来たのは推測できるが。

 それにしても。


「君達は…ヒマなのかね?」


 あきれ果てて言うアーネストに、ウイル・グローネンバーグ、ニック・セルウイン、デニス・ウエルフォルドはにやにや笑う。


 不愉快だ。


 アーネストがじろりと彼等を一瞥したが、彼等は全然意に介しない。


「まさかアーネスト様。これでも超特急で事案を片づけて来たんです」

「そうですよ。アニカからヘルプが来まして、それで急いできました」


「アニカからヘルプ?」


 眉根を寄せるアーネストに、あわわわとニックとデニスが口に手を当てる。ウィルが呆れたように2人を見て、そしてにこやかに微笑み手を差し出した。


「御婚約内定だそうで、おめでとうございます、アーネスト様」


 しんとした嫌な空気が4人の間に流れた。


「なんの冗談だね?」


 3人は顔を見合わせる。


「アーネスト様が婚約者を見つけたと」

「アーネスト様が意中の女性を拉致監禁しているので、その補助に来てくれと」

「御婚約発表と結婚準備の為にウィルバートンの総力を挙げて大至急取りかからないといけないと言うので」


 しんとした嫌な空気が4人の間にまた冷ややかに流れた。


「誰が?誰と?婚約すると言うのだ?」


 不機嫌そうにいうアーネストに、あれっ?と3人は顔を見合わせる。


「そりゃあもう!アーネスト様が拉致ってきた、平野由華里様ですよ」

「そうですよね?M商社常務の平野泰蔵氏の御令嬢の平野由華里様」


 デニスはファイルを取り出し得々と言う。その横でウィルがアーネストの表情を伺いながら言う。


「ここのホテルに拉致監禁しているくらい、ぞっこんだとお聞きしていますが?」


 しーんとした嫌な空気がグレードアップして4人の間に流れた。冷ややかな声でアーネストは3人を一瞥し言う。


「誰に聞いた?」


 3人は同時に言った。


「「「木暮雅人氏ですが?」」」


 アーネストは深い溜息をついた。


「くそっ!あのクソ爺い!人のプライベー事等興味がないとかほざいておきながら!暇つぶしに利用しているではないか!」


 苦々しげに吐き捨てるアーネストに、3人は心配そうな顔を突きだした。


「まさか!!アーネスト様!もう由華里様に逃げられたとか!」

「アニカからかなりアーネスト様が苦戦されているとお聞きしていて、心配していましたが!」

「もう振られたんですか!?アーネスト様!!!」


「「「冗談じゃありませんよ!!」」」


「君達…」


 ぎゃあぎゃあ喚くブレーン達はアーネストの不快感全開も意に介さず喚き続ける。


「私は既に結婚式の名簿作成をオーソンに言っているんだ!」

「私もパーティーの余興や!スケジュールの調整を!指令だしてしまったぞ!!」

「やばいよ!トッドに全力で花嫁のブーケを作れと言ってしまったよ!あの爺さんに殺されてしまう!!」


「君達…」


 わあわあ騒ぐ3人を一睨みで黙らせると、アーネストは額に手を当てて言った。


「由華里さんは…Miss平野は…アニカと一緒に、実家に着物の着付けに行っている。アニカが振袖を今夜のパーティーに着ていきたいと言ったのでね。彼女のお母様がその準備をしてくださってるそうだ」


 3人は目を輝かせた。


「「「着物!!」」」


「日本の民族衣装ですね!!」

「素晴らしい!!早速行きましょうアーネスト様!」

「そうです!由華里様も当然!着物を着られますね?」

「着るだろう?着て貰おうじゃないか!」

「アニカに連絡をして絶対に着させろ!!派手なのがいいぞ!!」


 アーネストは盛り上がる3人に呆れた顔を向けた。


「君達は一体何をしに日本にきたんだ?着物姿のアニカを見に来たのか?」


 3人はにこりと笑うと一斉に言う。


「「「アーネスト様の花嫁に会いに来たんです!」」」


「私の花嫁?」


「そうです!」

「とにかく由華里様に会いたいです!」

「由華里様の実家に参りましょう!」


 身を乗り出す3人をあきれ顔でアーネストは見回した。


「こんなに大勢で押しかけたら彼女はブちぎれるぞ?」


 ニックは居並ぶそれぞれのボディーガードを指さしでチェックし、3人だけ残して残りは待機と指示した。彼等は瞬時に散開した。


「人数を減らしました!」


 と、得々と笑う彼等にアーネストは諦めた。


 どうしても彼女に会い、そして自分達の計画を推し進める気でいる。

 まあそういうブレーン達なのだが…。だがしかし、どう考えてもこれは人のプライベートに頭どころか全身を突っ込んでいるではないか。


「君達は何かを勘違いしているようだ」


「していません」

「ええ!我々はアーネスト様以上に事態を把握しております。

「これはウィルバートン始まって以来の重大事項なのです。アーネスト様だけのプライベートな話ではございません」


「プライベートだと思うが?十分」


 3人はにやりと笑う。


「平野由華里様は、ウィルバートングループ総裁のアーネスト様に臨時秘書ですよね?でしたらプライベートな事ではございませんな」


「そうです。ウィルバートンの中核ですアーネスト様の秘書であれば、臨時といえども我々にも口を出す権利はあります」


「そうです。事はグループ全体に及ぶ問題です」


 アーネストは冷静にビジネス顔でペラペラ喋るブレーンを見回した。何が何でも会う気でいる。


「仕方ない。君達に彼女を紹介するか」


 如何にも渋々だがその眼が笑っている事にブレーン達はにやにやと顔を交わし、そしてエレベーターの方に向かった。


 嬉々として。

アニカのヘルプ要請に駆け付けた3人のブレーン達。由華里への気持ちに一線を置いていたアーネストもまんざらではない様子。こここから一気に勝負にかける3人+アニカです。

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