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  作者: り(PN)
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2 侵入者

 辿り着くまでに時間がかかる。ここがかつての都市の一郭だったと想像するのが困難だ。衛星写真でははっきり識別できたというのに……。

 もちろん建物の残骸はある。緑道もあれば橋もある。電車の高架線路も駅も線路も残っている。高速道路もあり、雑居ビルもあり、共同住宅もあり、ラーメン屋や蕎麦屋、美容院、電気店など普通の店舗も種々残っている。みな『白』の廃墟として……。

 話に聞くところによると『白』の侵食は初め目立った現象ではなかったようだ。隣接空間自体が侵食/伝染されたという記述には寒気がしたが、これがそもそも空間の病なのだという立場に立てば、それもありえるだろうと思えてくるから不思議だ。今では侵食部が二〇センチほど。手を翳せばヒンヤリとした感じだが、それが『白』の効果かどうかはわからない。時間の流れが違うという説もあるが、その違いはたちどころに効果が現れるといったほどではないようだ。

 ……などと思いつつ再度手を見る。少し白い。もしかしたら、その部分だけ、数か月分くらい年老いたのかもしれない。

 道も白い。放置された車や自転車も白い。数十メートルほど外部に露出している緑道下の用水内の水の色も一部が白い。長時間領域内にいると無機物以外でも白くなるのかもしれない。ふと気づくと魚と鳥が絡みあって死んでおり、その色が白い。

 領域内に車を乗り入れなくて良かったと思う。白化の実際の侵食または感染スピードは不明だが、エンジンやガソリンの一部がやられれば生きて帰ることが不可能になる。だが、本当に生きて帰りたいのだろうか?

 さまざまな思いを抱きつつ身に着けたモノを観察する。シャツやズボンの一部が白くなりはじめているような気がしたが、気のせいか? 時計はリチウム電池仕様のデジタルとアナクロな自動巻きの両方を持ってきたが、自動巻きの方は以前と少しも変わらなく思える。

 ……ということは、あるレベル以上の運動が白の侵食を遅れさせると考えれば良いのか?

 そういえば歩いて通過してきた国道の歩道に植えられた街路樹のユリノキやアメリカスズカケノキやミズキの表層は白かったが、葉が白かったという記憶がない。

 立っていた地点から近い緑道まで歩き、その中に植えられたヤマモモの木のところまで近づいてみる。ナイフで樹皮を削ると予想通り内部が白くなっていない。それくらいゆったりした運動でさえ白の侵食に耐性を示すということか?

 いわゆる生垣のツバキ系やリュウキュウツツジなどでも調べた結果、同様の結果が得られることがわかる。


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