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吸血鬼マキコ  作者: 大石次郎


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16/17

血のコネクション 2

叔父さん、叔父さんね・・

あたしは部屋の(ひのき)の内風呂の縁でぼんやりしていた。あたし、母さんに似てたっぽいな。

父さんの方はよくわからない。顔はあのタカフネってヤツと似てんだろ。イケオジではあった。


「マキコは好戦的なのに、こうして見ると可哀想なくらい貧相な身体してんねぇ。血が足りてないよ☆」


湯煙の向こうから急にディスられて、思考を切り替えた。縁の反対側でもたれているワコ。

アゲハ丸が化けてる満菜って女程じゃないが中々のプロポーションだ。当然、アゲハ丸より振る舞いに隙が無い。

そう広い浴槽ではないから脚が当たらないように注意していた。


「あたしは環境に優しい吸血鬼なんだよ」


「詰めるでござる!」


髪やら洗ってたアゲハ丸がズンズン入ってきたっ。色々デカいっ、そして狭い!


「動きが雑いなっ、お前はよっ」


「アゲハ丸、その身体馴染んできたよねー。よく食べるし、化けてる、って感じしないね☆」


「ふふん」


満足気に縁に両肘を置くから山盛りになった。


「お前らデカけりゃいいってもんじゃねーからな?」


「まぁ水の抵抗は少なそうだね☆」


「狭い場所にもシュっと、すぐ入れるでござる」


「チッ」


家で2人なら乳をひっぱたいてやるとこだっ!



・・菱沼の市の方は蛇達に守りを改めて固めてもらったが、あたしはタカフネの件に形がつくまで帰れそうにない。

夏休みが終わるまでに済めばいいんだが、あたしが生き残る保証は無い。それはシキオ達もだ。

というワケで当面世話になることになったこっちの土地神の紹介で来た雀の魔物達が経営している魔物用の温泉旅館で、シキオ達に意志確認をすることにした。

人数が多いから若干広い部屋だった女子の部屋にシキオとコウタを呼んだ。

大浴場は警備が面倒と、内風呂のある部屋を宛がわれていて、コウタはともかくシキオが来ると緊張感があった。


「右手とケープ、大丈夫?」


砕けた右の拳とボロボロになった黒のケープは手当てと、持ってきていた菱沼の血で最低限度は使えるようになっていた。


「どってことない。それより、お前ら、この件は抗争になっちまった。お前らがこれ以上付き合う義理は無い。個人的なことだしな。だがもし、やるなら報酬は払う。あたしの範囲で」


「マキコ、お金持ってんの☆」


「ベビー化する前の菱沼からなんだかんだで、小遣いとか、仕事の手間賃とかもらってて、単車5台買えるくらいはある」


「それ、今後の学費と生活費でカツカツねぇ」


「う・・」


金に拘ってなかったからぼんやりしたところはあったと認めざるを得ない。蛇達と金の話はほぼしない。


「まぁいいわぁ。私とコウタは落ち着いたら自分のテリトリーの狩り手伝ってもらえればいいよ。ね☆ コウタ」


「ん~、俺様のテリトリーはわりと平和だからボランティアとかを手伝えよっ?」


「わかった。それでいい」


めんどくさそ。ま、いっか。


「シキオとアゲハ丸は?」


「特に無いけどなぁ。じゃあ、今度市内の山々で人里近くに寄り過ぎてる動物達をちょっと俺が整備した山奥に帰すの、手伝ってくれる?」


「それあたしで貢献できるか?」


「マキコが威嚇したら動物達、逃げちゃうよ?」


おちょけてやがるな!


「・・言わせといてやる。わかった、それでいい。アゲハ丸は?」


「満菜の墓参りに行くでござる」


「それっ、俺様も行く!」


「わかった。お前の墓参りみたいになっちまうが、お前が行きたいならいい」


なんなら、それくらいは言えば元から付き合ってやったけどな。あれこれ言い出すとややこしいからこれで済ますか。

行き帰りに、コウタと纏めて天麩羅蕎麦とか甘い物を食わしたら機嫌も好いだろ・・

同意を得て報酬も決まった。あとは叔父の一味をシメるだけだっ!



土地神達の後見で、どうにかタカフネのコネクションメンバーの拠点の1つらしい市の外れの廃ビルをあたし達は探し当てた。

別動のシキオとワコ以外のあたし、アゲハ丸、コウタ、それからホテルの騒動のペナルティとあたしらの始末の悪さに閉口して、この地の土地神達の保険として付けられた鬼のオシウチとヒキウチは、ビルの封鎖された正面入り口に来ていた。

周囲にはやたら白い装束を着て顔も隠した土地神の手の者達が人払いの術を念入りに掛けている。

増血剤を1錠噛る。血が高まる。


「賢いやり口じゃねぇが、俺達好みだ」


「カチ込むのが結局一番早い。魔物に法律なんてねーからなぁ」


鬼達は既に本性を表して金棒を担いでいた。


「支柱とかやたら壊すなよ?」


一応言っとく。


「おうよっ」


「任せろっ」


「・・軽いな。コウタはホテルよりかは火力出していいけど、加減な」


「よし! リベンジだっ、うおーっ!」


拳に炎を灯すコウタ。大丈夫かよ? あたしを含めて大味なヤツらばっかしだ。


「・・・」


ふと見ると、ホテルの時と違い、準備に時間があったからか和洋折衷みたいな手の込んだ格好をしているアゲハ丸は渋い顔をしていた。


「どした?」


「中に、オドロ丸の気配がしないでござる」


「ここ手下の拠点だ。アイツはこの間刃をガタガタにしてやったしな」


「ぬぅ・・」


ゴネりだす前にさっさと小太刀形態に戻るように言おうとすると、


「ヒャーっ!!」


「フゥウーっ!!」


奇声を上げ、廃ビルの3階辺りの窓を破っていかにも(ヤカラ)風の連中が次々飛び降りてきた! 全員、アジア風の刀剣を持っている。

人間なら頭オカシイだけだが全員目が紅くっ、今は昼間! 日渡りだっ!

無防備にも程がある強襲にっ、あたし達は即応した。

コウタがやや手加減した火球を連打して3人焦がしてブッ飛ばし、鬼2人は1人ずつ刀剣を金棒で砕いて廃ビルの外壁にめり込ませた。

あたしも拳銃で2人、肩と腹を撃って刀剣を落とさせつつ道路に激突させた。

アゲハ丸は武器化せずに人の姿のまま1人のアスファルトに刀剣を食い込ませる一撃を躱して、肘を延髄に打って昏倒させ、続けて近くに着地して斬り掛かってきた相手を捌いて投げて刀剣を取り、倒れたところを顔面を踏んで昏倒させた。

いつもはすぐ変化するが、あたしより正式な武術を身に付けてる。


「なんだ? 大雑把過」


言い終わらぬ内に、突然道路の下に力の塊を感じ、それが噴出するようにアスファルトが割れ、巨大な蟹の魔物が這い出してきた!

甲羅は青く、鋏を4本持ち、強酸らしい泡を口からブクブクと落としているっ。

道路の下には放棄されて何らかのコンクリ製の地下施設があったようだが、あたし達は落ちないように足場のある場所まで飛び退いた。

昏倒した日渡りのチンピラ達が何人か地下に落ちたが蟹は構わず地上で暴れ出すっ! 異常に硬く、炎も通り難いようだ。あたしの銃も血の強化無しじゃまるで通らないっ。

何より巨体で暴れるから足場が崩れまくる!


「マキコっ!」


控えていたシキオが(まさかり)を手に介入してきたっ。

まだ変化していないがシキオのパワーでも甲羅が傷付く程度で、しかも傷はすぐに回復していった。厄介!


「コイツは幹部じゃないはずっ、アゲハ丸を早く回収して!」


「わかったっ。アゲハ丸!」


「ぬっ?」


奪った刀剣で鋏より細い脚を1本切断したが、刀剣が折れた上に脚がすぐ生え替わって困惑していたアゲハ丸は、距離が少しあった上に蟹野郎(雄?)が暴れまくるので、人の姿のまま回避しながら駆けてくるっ。

あたしは蟹の目を銃撃してみたが、目も硬いっ。加えて撃ってる内に反動で右手の拳の傷が開いて包帯に血が染み、上手く定まらなくなってきた! 痛ぁ~っっ。


「シキオっ、ワコは?」


「まだ様子見てる! この間、竹竿鬼に抑えられたのがカチンと来てるみたいだったよっ!」


「はぁ?」


絶対外さない気なんだろうけど、アイツ、思ってること態度にも出さないとこあるからわかり難っ。

あたしはとにかく、アゲハ丸との合流を急いだんだが、あと少しというところで、気配も無く地下施設から伸ばされた大量の髪? に身体を捉えられっ、地下に引っ張り込まれた!


「マキコぉ~っ?!」


「マキコっ!」


アゲハ丸とすぐ完全獣化したシキオはやみくもに突進した蟹の魔物に阻まれたっ。


「くっそっっ」


髪? の1本1本が鋼鉄のワイヤーみたいだっ。肌に食い込むっ! あたしは猛烈な勢いで地下施設の奥へ奥へと引っ張り込まれていった!

なんのつもりだ? 首を折るなり締めるなりすればあたしを倒せたはず。遠距離だと精度が低い? いやっ、そんなレベルの相手じゃないっ!


「お話ししようってかっ?! オラぁっ!!」


あたしは強靭な髪のせいで全身と、傷の開いた右の拳から出血しているっ。血の渦を起こして絡んだ髪を切断して身体を解放してやった! 髪は地下施設の奥へと引き戻されていった。


「はぁはぁ・・」


着地はせずに血の渦で宙に浮いたまま体勢を立て直し、まだ傷んではいる黒のケープの切れ端を操って感覚が無くなってきた右手と拳銃を固定し、左手で2錠目の増血剤を口に入れた。

回復はしたが、もう吐きそうだ。日渡りの素の身体の弱さにはうんざりするっ。


「・・黒のケープが、お嬢の手元にちゃんとあって、本当によかったわ」


ヒールを鳴らし、地下施設の奥の闇から1人の褐色の肌の女が現れた。膨大な髪を逆巻かせている。目は紅いが、あたしの一族にこんな髪操るヤツいるのか??

ヒール抜きでも背が高い170センチ台後半だ。乳もデカいっ! アゲハ丸が貧乳に見えるサイズっ。露出のある占い師みたいな格好をしているから、圧、が強い!


「お嬢だぁ? ボスの姪だからって侮んなよっ? あたしがお前ら全員更正させてやんよっ!」


挨拶代わりっ、1発、血で強化した弾丸をブッ放してやったが、硬質化して束ねた髪で角度を付けて受けて弾かれた。


「枝毛になるでしょ? 赤ん坊の頃は」


硬質化した槍状の髪を多数展開して攻撃してきたっ。


「やたら前線に出張っちゃう貴女のママの代わりに、私がよくオッパイ飲ませてあげたのに」


「っ?! オパっ??」


混乱したっ。乳母的なヤツかっ?! 確かに乳製品も飲めないではないが・・いやっ、あの乳でっ?? 食欲旺盛かっ? 赤ん坊のあたし!


「ピーガスー種は母性が強いからねぇ」


「ぴーがす? 聞いたことないぞっ? 日渡りじゃないのかっ?!」


何度撃っても弾は通らないっ。拳銃じゃどうにもならないなっ、コイツ!


「あいにく、日光は苦手よ? 身体に入ってる分にはまぁ焼かれることはないけど・・」


身体に入ってる??


「そう、私、入ってるの。ピーガスーだから。ふふふっ」


ずるり、と。女の首が身体から抜け、頭部と一緒に内臓まで丸ごと身体から抜けて青白く肉が発光しだしたっ!


「どぉあっ??!!! ズル剥けじゃねぇかぁああっ?!!!」


むしろ力は増し、髪の槍の攻撃が鋭くなったっ。防戦一方にされた!


「散々私のことを吸ったんだから、今度はちょっと血を吸わせてよ? お嬢」


「卑猥な感じに言うんじゃねぇっ!!」


あたしは黒のケープの裾で銀のスローイングナイフ数本を掴んでピーガスー種だとかいう女に投げ付け、それを拳銃で狙撃して砕き、不規則な破片を散らして髪のガードを抜いて頬や耳や剥き出しの光る内臓を少し傷付けてやった!


「あら痛い。貴女のママにも似たような攻撃されたことあったわ。懐かしい」


「うるさいっ、うるさいっ!」


コイツの主旨がイマイチわからないが、自分の血だけで応戦するのはそろそろ限界だっ。既に増血剤も2錠飲んじまってる! アゲハ丸が無くてもシキオの血のボトルを使うしかないか?

だが隙がない・・くっそっ!


そこへ、烈風っ!!


ワコが最大加速で突っ込んできて刃の尾に纏わせた風で、ピーガスーの女の髪の槍を派手に砕いた!


「ワコっ、遅い!」


「思ってたタイミングじゃないけどマキコが打たれ弱過ぎて見てられなかったよ☆」


「うっ・・」


「味方を入れるなら私もそうするわ」


「っ?!」


ピーガスーの女が言うと同時に首と内臓を失った女の胴体が機銃でワコを狙いだした!

一瞬の閃きや、コンクリの床や柱や天井に当たって削れる金属片の臭いでわかる。銀の弾丸だ。


「ワコっ! 銀の弾だっ」


「だろうね☆」


ピーガスーの胴体は敏捷に立ち回りながら正確に銃撃し、ワコを牽制し続けるっ。


「髪が減っちゃったけど、お嬢! 遊ぼうっ」


「そのお嬢ってやめろっ!」


攻勢の激しさはさっきよりマシだっ。あたしは血の渦で近くのコンクリ柱の表面を削って粉塵を起こして目眩ましにし、怯ませ、黒のケープからシキオを血のボトルを取り出すと、血の渦で切断した!

渦が獣のような激しい血に増強されるっ。


「うらぁっ!!」


髪の槍を砕きながら一気に間合いを詰める!

ピーガスーの女に迫り、至近距離で血で強化した銃撃を喰らわそうとしたが、


「ふっ」


笑って青白く光る内臓を激しく発光させるピーガスーの女っ!

渦の隙間から差した光りにあたしがほんの一時目が眩んでいるとピーガスーの女は速攻で間合いを詰めっ、髪の槍で血の渦を抉じ開けてきたっ。


「このっ!」


「フゥウウウーッッッ」


あたしが黒のケープで絡めた銀のスローイングナイフで反撃しようとすると、ピーガスーの女は口から霧のような煙を吹き付けてきたっ。

甘い、フルーツのような香り・・あたしは急激な眠気に襲われ、血の渦が緩んで拡がり、目の前がボヤけ、ナイフか自分の歯で腕かなんかを傷付けて気付けをしないと! と考えたがっ、実行する前に首筋に鋭い痛みを感じた!

髪でまた身体を縛られたっ。


「ああっ?!」


じゅるるっ、吸われてるっ! 濃厚な女の匂いと古風な香水の匂い、自分の血の匂い! ピーガスーの女に喰い付かれてるっ。


「ぐっ、くっっ」


毒だ。身体が痺れる。力が抜ける。苦痛が快感に変わる。奪われた血の支配権を維持できないっ!


「マキコっ!」


ワコが助けに入ろうとしたが、ピーガスーの女の胴体は右手に機銃、左手拳銃のスタイルに切り替え、さらに執拗にワコを牽制したっ。

マズい・・意識が・・快感に失禁しそうだった。

吸血鬼は人間の信奉者を得易いっていうが、そりゃそうだな、と。

意識が遠く、遠く・・母さんと、父さんか・・乳母・・・菱沼・・ん?


「菱沼っ!」


脳味噌に火が点いた気がしたっ。

あたしは黒のケープでナイフを操り、後ろから喰い付いていたピーガスーの女を手酷く切り裂き、口を離し仰け反って髪が緩んだところで自分の出血を使って血の牙を造ってピーガスーの女をズタズタに貫いて吹っ飛ばしてやった!


「アアァーーーッッッ!!!!」


金切り声で悲鳴を上げるピーガスーの女っ。


「ベビー菱沼の世話っ、誰がすんだよっ! て話だっ」


あたしは3錠目の増血剤を口に入れ、血が一気にたぎって同時に吐きそうになったが、口を抑えてどうにか耐えた。頭も痛ぇし、鼻血も出るしっ。だがいくらか血は戻った。


「・・・ふふふふっ、 まぁ美味しかった。貴女のママもこんな味だったのかしら? 満足したわ」


片目も内臓の多くも潰してやったが、吸ったあたしの血を消費して? 簡単に再生するピーガスーの女!

ここでコンクリの天井を破って、焦がされ甲羅を砕かれ、鋏を全て切断された巨大蟹の魔物がシキオやアゲハ丸達と地下に落下してきたっ!!


「マキコ!」


「無事でござるかっ?!」


「遅ぇわ・・」


あたしは拳銃をどうにかピーガスーの女に構えた。残弾有ったかわからなくなってたが、いいや。


「まだやるなら頭悪いぞ?」


「そうね、モヤンクタムのボビーもノされちゃったしね・・・こうさぁ~~~んっ!!」


「おっ?」


ピーガスーの女は別人のようにあっけらかんと言い、胴体の方もワコへの牽制をやめ、火器を床に置いて両手を上げた。


「どういうつもりだよ??」


「いま、無駄な抵抗やめろ、みたいなこといったでしょ? 力があるのも、氏族の血をこってり、気恥ずかしいくらい引いてるのもわかったし、念願の貴女の一族の血も頂けたし、これ以上無いわ。あとは仲良くしましょ? お嬢」


「ああ??」


あたしだけでなく、他の連中も困惑していると、辺りの瓦礫や柱の陰から蟹が出る前にボコってやった日渡りのチンピラ達もボロボロのままワラワラ出てきた。


「お嬢っ!」


「お嬢っ!」


「お見事でやしたっ」


「よくぞ御無事でっ」


「御母様にそっくりですね! ううっ・・」


なんか泣きだしてんだけど??


「なんだぁ? お前らっ??」


「事情は話すけど、身体に戻っていい? この格好、わりと恥ずかしいのよね。丸見えだから! うふふふふっ」


「・・・」


まぁ、よく見ると結構デリケートな部分まで剥けちゃってるからな。


地下施設は戦前戦後に人間達が造った物を魔物達が繋げて補強して再利用している物らしい。

このエリアはタカフネのコネクションの中でもピーガスーの女のグループが仕切ってるようだ。連中の本来の拠点も地下の奥にあった。

因みに地上の廃ビルはただのデコいだそうだ。

あたしはアジア風の洒落た応接室のような所に通されていた。

給仕は日渡りの子供や、種族のわからないアジア風の魔物の子供だった。


「お嬢も身に染みてるだろうけど、この界隈は孤児が多くてね。大体酷いことになるから、私のグループはなるべく拾うことにしてるのよ」


身体に戻ったピーガスーの女は何事もなかったように血を酒で割った物を飲みながら鶏の丸焼きをモリモリ食べていた。

日渡りと違い、固形物もイケるくちらしい。


「主旨と状況を話せ。お前らは意味がわからない」


「ふふっ、私達構成員全体の数はせいぜい30体程度。でも、そこに準構成員やその手下、あるいは家族だのなんだの、と足してゆくと、相当な数になる。わかる? お嬢。1つコネクションが存在する、ってそういうこと」


「あたしは継がない。お前らの中で完結してやってたらいい。それが外で通用すると思うなよ? あたしはその、外だ!」


ピーガスーは愉快そうにあたしを見た。


「可愛い子。お嬢。私達のコネクションには3つのグループがある。1つはコネクション本体のタカフネのグループ。2つは私のグループ。私のグループは不動産、観光、飲食、吸血鬼モノ以外の物産で稼いでる。そして」


グラスを置き、ピーガスーの女はあたしに向き直った。


「3つはケンジのグループ。主に私達のコネクションの汚れ仕事を引き受けていたんだけれど、年々力を付けていてね。ケンジはこのコネクションを乗っ取るつもりなのよ。タカフネはそれに気付いてる」


「内輪揉めなんだ」


シキオが出されたかなり濃そうなタイコーヒーに口を付けつつ言った。


「ケンジのグループは凶暴過ぎる。タカフネは自分のグループで刺し違えてでもケンジを始末するつもりみたいね。そんなタイミングで、お嬢の育てのママが引っ込んだもんだから・・ほら、あの人、甘っちょろいとこあるでしょ?」


「知らねーよっ」


なんだそれ? 虫が良すぎるっ。


「安息は無いとかなんとか、言って凄んでたのは?」


「そんなこと言ってたの? ふふふっ! ま、気も変わったんでしょうけど、お嬢が警戒してる内に済ますつもりよね・・お嬢。私も気が変わったわ。漁夫の利でも得ようかと思ってたけど、やっぱり甘々でロートルのタカフネじゃケンジと刺し違えられもしないわね。その後、私のグループもタダじゃ済まない。私もタカフネの方に乗るわ」


「好きにしろよ」


「お嬢も手伝ってよ」


気軽に言ってくる。


「なんでだよっ? 関係無いだろ?」


「ケンジがお嬢やお嬢の身内を見逃すワケないでしょ?」


コイツらっ!


「なんだよっ! インチキだっ!!」


「うふふふふっ。ごめんね。コネクションって、関わったら負けなとこあるのよ? 勉強してね、お嬢」


「・・っっっ!!!」


あたしが歯噛みをし、シキオがため息をついていると、


「俺達の立ち位置がよくわからん」


「わりに合わん気がするぞっ?」


仔豚の丸焼きを食べていた鬼達が言い出した。


「私、いい雌の鬼がお勤めしている店、知ってるけど?」


「っ?!」


色めき立つ鬼2人!


「そういうことかなら致し方無いっ!」


「仁義を通すより他無しだっ、ガハハっ!」


現金なヤツらだなっ。


「拙者はオドロ丸と決着をつけたいので助太刀しないではないでござる」


お前は単純でいいいよな・・


「この騒動を片すしには仕方無いと思うけど、あんた、名前くらい名乗ったら?」


ナッツ類を摘まんだり摘ままなかったりしていたワコがムッツリ顔で言った。ホテル戦に続き、完封され気味だったのでその時点で機嫌悪い。


「あら、そうだったね。お嬢、私はティパナリー。ピーガスーの吸血鬼、ティパナリーよ。この乳母の顔と名前、忘れないでね。なんならまたお乳吸っておく?」


「吸うかっ!」


腹立つっ。あのタカフネも最初から言ってくりゃ話も早かったのに複雑にしやがってっ。まずケンジって誰だよ! 英語の教科書の登場人物みたいな名前しやがってっ!!

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