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吸血鬼マキコ  作者: 大石次郎


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10/17

紫雲城

昼休み教室、眠い。ひたすら。縁斬りを仕止めてからもう15日経つが、眠過ぎる。

ワコは単純に考えていたが、シキオやコウタやワコのような回復力は日渡りの吸血鬼には無い。

あの景色を斬る攻撃の傷が中々治りきらなくて、苔餅のストックも足りないらしく、戦闘も無いのにしばらく1日数錠増血剤を飲み続けるハメになって未だに身体がダルい。

一応傷は無理矢理癒やしたが、残り2体片付いたら滋養を取って一定期間休眠を取らないと、昼間の日差しに耐えられなくなりそうだった。


「草ヶ部ぇ、最近また具合悪そうだなぁ?」


「北森君もよく学校休んでるし」


机にヘバってるあたしを村坂代々喜と田島香南が心配している。

シキオは蛇達の手伝いで色々立ち回っているようだ。『舟』を使うとかなんとか。


「・・・」


そういえば縁斬りの時、庇ってくれたか。礼の一つも言ってないな。対人関係がわりとアレで、特に男子とロクに話してこなかったからシキオのカテゴリーがよくわからなかった。

アレはそもそも男子なのか? というかアイツはなんのつもりなのか??

コウタや、小太刀の形態のアゲハ丸の方がまだわかりやすい。

魔物は魔物らしくしてればいいんだ。人間っぽくするんじゃないよ。


「・・・あたし、嫌な女だぁ」


ヘバったままため息混じりに言うと、村坂と田島に爆笑されてしまった。



その数時間後、街中に落ち続ける雷に市は大混乱になっていたっ!

さらにあちこちで発生した竜巻によって人々が吸い上げられてゆくっ!!

上空に立ち込めた紫の雲の向こうに、奇怪な『城』が見えることにほとんどの人間達は気付いていないっ。


紫雲城(しうんじょう)っ、露骨にも程があるだろっ?!」


「どのみち改竄する気でござる。最初から畳み掛けてきたんでござろう」


全校生徒や教職員が体育館に避難していく中、黒のケープを纏い増血剤も飲んだあたしとアゲハ丸とワコは学校の屋上に来ていた。


「舟、来たよー!」


菱沼の神社の方から、蛇達が操る飛行する平安時代くらいの舟が多数来た。

激しい落雷や竜巻に晒されながら球形の守りの術で大体は防いでいる。一部は撃墜されていたが・・

先頭の一際大きな舟にはシキオとコウタが乗っていた。


「シキオっ!」


「俺様もいるぞっ?!」


「マキコ! 皆っ、速く乗って。相手が形振り構ってないっ」


「運ぶよー?」


ワコが旋風で自分と共にあたしとアゲハ丸を舟まで運んだ。


「マキコ、これ。俺の血、使って」


血液の入った500ミリリットルのペットボトルを2本、シカオが差し出してきた。


「ああ、まぁ、ありがと。そういやこの間も庇ったり・・」


あたしが受け取りながらゴニョゴニョ言っていると、


「上昇しますっ!」


蛇の上役が宣言し、全ての舟が紫の雲へと上昇を始めた。竜巻、雷撃、共に激しくなる。

他の舟が3割は墜とされながらも雲に近付いたその時、


「ふぅああ~~~~っっ??!!」


「きゃーーーっ??!!!」


瓦礫等や他の生徒や教職員と一緒に、村坂と田島が竜巻によって雲へと巻き上げられてゆく!


「アゲハ丸っ!」


「御意!」


カッとなって小太刀になったアゲハ丸を手に船外に飛び出そうとすると、伸ばされたシキオの毛皮とワコの尾で縛られた。


「マキコっ、間に合わないよ!」


「雲が近過ぎるから。舟の守りの中にいないとねっ」


「ぐっっ」


「取っ捕まえて命を吸うタイプなんだろ? すぐには殺さねぇって」


コウタにまで諭された。


「・・わかったよ」


あたしは大人しく舟に戻った。下を見ると体育館の一部がブッ壊されてる。たまたまか? 人質のつもりで?? どっちにしろ許さない。



紫の雲の上に上がると、巨大で奇怪な城が眼前に見えた。


「これが紫雲城。城の魔物か・・」


シキオは珍しく冷や汗をかいていた。



紫雲城。落城した山城に死者と山の気が集まって魔物と化したモノ。雲の下の気象を操り、(よろず)の眷属を従えるというが・・



それでも雲の上に出てしまえば雷撃と竜巻の攻勢は無くなった。

6割程度は雲を突破できたあたし達の船団は、紫雲城に突進を始めた。

紫雲城からは無数の鳥やモモンガや羽虫等の飛行する魔物の群れが噴出したが、


「雑魚に構うなっ! 舟の守りで押し切れっ!!」


蛇の上役の号令で力を増させた球形の舟の守りで飛行する魔物の魔物の群れをおしつぶしながら、全ての舟が強引に一番強い力を感じる紫雲城の天守閣近くに取り付きに掛かる。

これに城の上階の大きな狭間(さま)からは古風な武装をした山の動植物の魔物達が、砲筒で撃ち込んできた!

まともに受け過ぎた守りの薄い舟が、守りを破られて墜とされだすっ。


「無駄骨になる、中階から攻めよう!」


「心得ましたっ。全軍! 中階に突貫っ!!」


シキオに従い、蛇達の上役は船団を下降させ、迎撃がまだマシな中階に取り付かせに掛かった。


「コウタっ!」


「よっしゃあっ!! お邪魔するぜパンチっ!!!」


あたしに応え、コウタは炎の両拳で紫雲城中階の外壁に打ち込み、大穴を開けた。雪崩れ込む蛇の船団!

中には古風な武装した山の動植物の魔物の群れが待ち構えていたが、


「サクっとねっ☆」


ワコが烈風を纏って先陣を切り、相手の前衛を纏めて斬り払った。


「ここは私と蛇達で引き受けるからお先にどうぞっ!」


「頼んだっ」


あたしはペットボトルのシカオを血を1本使って獣のごとき牙と爪を持つ血の渦を起こし、シキオとコウタも巻き込んで雑魚の群れを蹴散らしながら上階へと続く階段に向かった。



雑魚を蹴散らしながら進んでゆくと、ちょうど天守閣と中階の中間地点辺りの階が一面巨体な筋子(すじこ)のようになっていて、捕らえられた人間達が液体の中で眠らされていたっ。


「っ!」


見付けた! 村坂と田島が同じ膜の中に閉じ込められているっ。


「このっっ」


あたしは獣の血の渦を使って全ての膜を破り、人間達をなるべく穏便に筋子の間の床に降ろした。

気付いた人間達は状況とあたし達3人に仰天した。・・そうなるよな。

村坂と田島も黒のケープと逆巻く獣の血の渦を纏うあたしを見て呆然もしている。


「草ヶ部ぇ?」


「なんなの、コレ??」


「シキオ。離脱、任せられるか? お前はもう命のストックが無いだろう」


「・・わかった。攻勢の気配が無くなった外壁から中階に戻るよ」


シキオは纏った毛皮の半分くらいを使って仮面の小猿のような眷属を多数作ると、有無を言わせず慌てふためく人間達を抱えさせた。


「これから皆さんを脱出させます。よくあるアクション映画のクライマックスみたいな物だと思ってください!」


シキオは呼び掛けてキュウソの蛮刀で外壁を叩き割り、小猿達と共に外壁へと飛び出していった。


「草ヶ部ぇっ!」


「どうなってるの?!」


運び去られてゆく村坂と田島と人間達。


「・・無事でな」


「のんびりしていられないでござるよ? 地上から人間の『お代わり』も来るでござる!」


「行こうぜっ、マキコ!」


「よしっ!」


あたしは獣の血の渦を強く逆巻かせ、天守閣を目指した。



「邪魔だっ!!」


「城攻めキックっっ!!」


砲筒隊をブチのめし、あたし達は天守閣に飛び込んだ。

獣の血の渦をほぼ使い切ったので最後の1本を追加するっ。


「ほうほう・・日渡りの血吸い鬼にノビに妖刀の類いか。面白い」


そこに座していたのは古風な甲冑を纏った、人の骨に山の動植物を合わせたような、4本腕の体長5メートル程の魔物だった。


「お前が紫雲城の本体だな?」


「いや、この城こそが我であるが、(しん)(ぞう)がどれかと言われれば、我のことであろうな」


「随分余裕ぶっこいてんな! ああんっ?」


「くくくっ」


1つの手に扇を持ち嗤う紫雲城本体。


「クロブチタユウの眷属どもよ、大人しく我にこの地を譲らぬか? あの女は他の魔物を狩りはしても人どもにはまるで関心が無い。我ならば人どもの悪政を正し、際限も無く蔓延る悪人どもも始末してくれよう」


「確かにクロブチタユウは放任ではござったの」


「クロブチタユウは見逃し、どこかの湖水に廟くらいは建てて近くの百姓にでも奉らせてやろう。お前達も、我に連なる神族としてこの地で繁栄させてやってもよいぞ? 口約束ではない。命を懸けた契約をしてやろう。悪くはない話であろう? くくくっ」


「テメぇっ!」


コウタは炎の拳固め、1歩踏み出した。


「なんてオイシイ話だっ! もっと詳しく聞かせろっ!!」


あたしはコウタを後ろから蹴っ飛ばした。


「痛ぇっ?!」


与太話(よたばなし)はそれだけかい? あたし達はここまで来てる。お前がやりたいことがあるなら、あたし達を倒して叶えろっ!!」


「くくくっ、それもまた面白いっ!!」


紫雲城本体は4本の腕をそれぞれ太刀、槍、斧、鉄砲に変え、襲い掛かってきた!

ズッコケてたコウタは斧を振り下ろされて、慌てて転がり躱した。

あたしは銀のスローイングナイフを黒のケープを操って十数本投げ付けたが、太刀と槍で簡単に弾かれ、逆に大砲のような古めかしく見える鉄砲を射たれた。

回避したが、掠っただけの黒のケープが大きく損傷した。受けられるもんじゃないか。


「やるってんならやるぜぇっ!」


火炎弾を連射するコウタ。太刀と斧と槍で炎を弾き飛ばす紫雲城本体。その隙にあたしは拳銃で銀の弾丸を撃ち込みだしたが、あまり通らない。

だが鬱陶しくはあったらしく、紫雲城本体は大きく床を踏みつけ、それに呼応して天守閣の内壁の四方の隅に次々と盛り上がり、弩弓(どきゅう)の形に整形され、あたしとコウタに一斉に矢を放ち始めた!


「どぉああっ?? ズルいぞお前っ!」


「この城は我自身、なん卑怯があると?」


「くっそぉ~っっ」


言い負かされるコウタ。


「マキコ、ジリ貧でござる」


「わかってる」


と言ってみたものの、どうする? あたしの命を1つ使ってみるか? コイツを倒せばあと1体。そこまで渋る理由は無い気はした。

ほんの一時、射撃と回避を繰り返しながら逡巡していると、コウタは判断が早かった。


「使ってやらぁっ!!」


身体も衣服も半ば炎に変え、(おぼろ)な姿で弩弓の矢と紫雲城本体の攻撃を掻い潜り、コウタは両手足で紫雲城本体にしがみ付いた!


「っ?!」


戸惑う紫雲城本体。あたしは獣の血の渦の密度高め、防御姿勢を取ったっ。


「ファイナル番長フラッシュっっ!!!」


コウタは自爆し大爆発を引き起こした!!

獣の血の渦が消し飛び、天井や壁にいくつも穴が空き、強風が吹き込む。弩弓は全て崩壊し、部屋中が炎上した。


「・・・くくくっ、無茶をする」


紫雲城本体は太刀以外の腕を失い、全身がボロボロになっていたが、まだ倒せてはいない!

あたしはスローイングナイフで左の掌を切り、一番自在に操れる血の渦を起こした。ついで追加の増血剤も1つ口に入れ噛み砕く。


「マキコ、いいことを思い付いたでござる」


「やってみな」


あたしは血の渦で自分を撃ち出し、アゲハ丸で紫雲城本体に斬り掛かった。


「くくくっ、猫と戯れるがごとし!」


リーチとパワーは向こうが勝る! あたしは圧縮した血の渦を刃に変えて牽制に利用して互角に持ち込む。このまま時間を稼げばコウタが復活するだろうが、


「っ!」


弩弓が次々と復元しつつある!


「マキコ、この場は悪手。上でござる。渦は使い切って問題無いでござる!」


「いいんだな!」


あたしは拡大させた黒のケープで身を守りながら血の渦を絡み付くように操り、自分と紫雲城本体を天守閣の屋根へと撃ち上げた。

より強風! 血の渦をほぼ使い切ったっ。黒のケープを解きに掛かると、


「もらったっ!」


紫雲城本体が太刀を振り下ろしてきたが、そうし易い位置に自分の頭を持っていっていたっ。左の掌の血で強化した両手でその太刀を白刃取りし、足元は残りの血の渦で支えた。着地した屋根が大きく砕けがギリギリ崩れない。そして、


「っ?!」


完全に解かれた黒のケープの中から現れた人間体のアゲハ丸が、既にあたしの血液で強化したあたしの拳銃を構え、至近距離から紫雲城本体の眉間に銀の弾丸を撃ち込んだ!!

頭部ごと吹き飛ばされる紫雲城本体っ。


「・・・見事」


声だけ残し、塵となって大空の強風の中に消えてゆく紫雲城本体。


「俺様ふっかぁああーーーっっつ!!! ってあれ? なんだ倒しちまったのかよっ」


「見よう見まねでござったが、上手くいったでござる」


「ほぼ0距離だったしな・・」


程無く紫雲城その物が崩壊を始め、あたし達は崩れる外壁を駆けて城から離れる救助した人間達も多く乗せた蛇達の舟に飛び移った。


「草ヶ部ぇ~っ!!」


「話聞いたよっ!! ずっと大変だったんだねっ」


シキオやワコ達と無事乗っていた村坂と田島が泣いて抱き付いてきた。


「ああ、まぁ・・」


「豪気なやつよぉっ。何もできないが、相談くらいは乗るからなぁ」


「お化けでもなんでも、ずっと友達だよ!」


「お、おう」


「オレ、月一で御猪口一杯くらいなら血をあげてもいいぞぉ?」


「私もっ!」


「いや、御猪口一杯って結構多いぞ? 気持ちだけでいいや」


「ええ~?」


「そうなの??」


本当は欲しいけどさっ。村坂と田島は本気で心配してくれていた。

蛇達が街の復元の為の対価の術を崩れる紫雲城に掛ける中、あたし達はとにかく無事の再会を喜びあった。

そう、話せば受け入れてくれる。それはわかっている。だが、



・・翌日の昼休み。概ね何事もなかったように復元された梅雨も後半の街を窓から見ながら、あたしは物思いに耽っていた。

疲れることは疲れたが、今回はあたし自身は大きなダメージを受けていないので、長々とヘバる程じゃない。


「昨日の雷凄かったなぁ田島ぁ」


「竜巻もあったらしいよ! 雷と竜巻で5人も亡くなったって・・」


あたし、村坂、田島、シキオ、アゲハ丸で昼食を済ませたとこ


「不幸もあるもんだなぁ。オレも、あっ」


廊下に演劇部の女子が来ていた。凄い前髪切り揃えている。手招きしている。


「ちょっと、オレ、演劇部の用だ。行ってくるわぁ」


「うん」


「おう」


「行ってらっしゃい」


「さらばでござる」


村坂は演劇部の前髪女子と立ち去っていった。


「あ~、そう言えば私も漫サーの打ち合わせあった! ちょっと行ってくるね」


「おう」


「行ってらっしゃい・・」


「さらばさらばでござる」


田島は小動物のような身のこなしで、ササっと教室から出ていった。


「・・あの2人の記憶、修正しなくてもよかったんじゃないかな?」


シキオが顔を寄せて小声で囁いてきた。あたしはシカオの顔を押し退けた。


「近い。いいんだよ友達なら、それで・・」


あたしはまた、正しくは少しだけ帳尻が合わなくて不幸になった雨の街を、ぼんやりと見詰めていた。

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