プラネットリングとの交渉
特亜重工は辛うじて存続している、あの日本社ビルは壊滅したが周辺の工業地帯には手を出していないからな。
幹部連中に逃走されてしまっては始末する手間がかかってしまう。
他にある七賢者の鍵の情報も貰ってはいるが秘匿されており、“おそらく”と頭につく情報だったがな。
大規模な特亜重工との抗争からしばらく経ち、武装組織ダンタリオンがこの街の最大勢力になりつつある。
特亜重工の勢力圏内の街だったからな。
企業連合には他に“METALARM”、“APOLLYON”、“BASTET”と有名な企業が存在している。
神の信仰が存在してはいないが、神の名を冠する企業名に思わず苦笑いする。
過去の文献がデータで残っている為あやかったのだろう、特亜重工の支部が壊滅した今この街に次々と勢力争いが勃発している。
もちろん我々が座して待つなどをせずに、特亜重工の土地や施設を接収、占拠すると、残されていたオートマトンや周辺に居るオートマトンを私が狩り尽くし、拠点として開発した。
もちろん集会所が介入してくるも私が突っぱねている。まぁ、体裁だけ要求してきたのが丸わかりであり、集会所のボスとやらも正しく私の実力を把握している。
特亜重工での戦闘データが流出しており、恐ろしい目で他の企業の連中も見て来る。
安易に手を出せば特亜重工の二の舞になる可能性が高く手を出しずらくなっているようだ。
スラム街の連中の人口密度が高く、旧特亜重工の土地を占拠しても武装組織ダンタリオンの人員は特に困っておらず経済圏を築き上げてきている。
私が魔導技術を使用し、旧特亜重工の土地に豊かな土地を試験的に耕し、他世界の穀物や野菜の栽培にも成功、農業プラントをとして再開した。
ボーガンにもこの土地を正式に名義変更を手伝ってくれたので農業プラントのノウハウと魔導技術を提供している。
食料生産できる世界にとって福音ともいえる技術ならば提供する事もやぶさかではないしな。
あのオカマのリリィ・メイリアもこの事に鼻息を荒くして一枚かんでいる。残された支部にオートマトン開発よりも農業開発に全力で稼働させると息巻いていた。
農業関係はナノマシン汚染により不可能とされていた土壌の改善が魔導刻印の技術により可能となったのだ。そりゃ、目も血走るわな。
特亜重工が、特亜農工に名義変更する日が来るかもしれない。
実はこの世界にも魔力が微量だが存在しており、大規模な兵器に転用はできないがこういった土壌改善や発育促進程度はできるぐらいの量は存在した。
私は破壊を撒き散らしたが、世界を滅ぼしたいわけではない。
組織ダンタリオンは戸籍管理を始め、一定の労働に対し独自のクレジットを発行している。カルテルクレジットでも作物を購入可能だが、価格を多少差別化を行っている。
簡易住居の建設も始まっており、あくせく農業に従事すれば衣食住と安全性が買えるのだ。住民の増大は時間の問題だろう。
この区域の入り口上空にはオートマトン/G.M.F.Fが門番をしているし、安全性が目に見えて存在している。私が機体を回収した後フォトン機関を増設、障壁展開もでき、光学兵装も強化している。
一度起動さえすればずっと対空出来る要塞が現実の物となったのだ。
都市に近づくオートマトンは悉く長距離射撃で処理されている。これには集会所ものゴロツキ共の食い扶持が減ってはいるが、そこのボスからは、安全をタダで買えるんだ、問題ねえよ。と言われている。
元アンドロイドのハインティと情報屋のインファも組織ダンタリオンの幹部として従事している。もちろん戦闘プログラムも普段より多めに履修済みであり、武装も強化させている。疑似コアも内蔵させ万が一が無いように徹底させてある。
ハインティは普段のびのびと子供達とお菓子を食べてばかりだが、支配地域の見回りや、ゴロツキの処理など行っている。
インファはクティと共に私の秘書を行っており、情報の統括、私の代理で組織の指示出しに専念している。
ダンタリオンのリーダーオネストは重武装したオートマトンの部隊で辣腕を振るっている。今では裏家業の連中にバルバトス部隊は恐怖の象徴として恐れられている。個人兵装も質が高く遺物/レリックに近いものが配備されている。
加入の際には私の前でダンタリオンの組織の決めごと宣言する事が恒例となっており、契約を行わなければいけない。もともとの人員には契約を行っていないが新規加入者の中にスパイが後を絶たないからだ。
おかげで契約と同時に従順な逆スパイとなって情報を吐き出してくれる。
この方法もオネストが提案したものであり、この支配地域を守ってくれれば問題ないんですがねぇ……と悪い顔をしていた。もちろん私が契約の悪魔だと知った上での行動だ。
現在七賢者の鍵は三つ手に入れており、すでに解析し融合させている。あと四つでAIハーヴェストへのアクセス権とパラメータ設定ができるのだが……設定自体帰る気が私にはない。そろそろAIハーヴェスタと交渉でもしようかと思っているのだが……。
◇
私の部屋のモニターには妙齢の美女が映し出されている、もちろん現実には存在していない仮想アバターなんだが。
「ダンタリオンの悪魔よ。あなたは七賢者の鍵を使い、何を成そうとするのですか? 答えによってはあなたと争わなくてはなりません」
対応が早いな。成層圏外の観測装置を使って監視してやがったな。
先日のダンタリオンの本来の姿として顕現したのが情報として伝わったかね、まあ、知ってくれれば交渉がしやすいと思っていたのも事実だ。
「この世界に来た当初、接近したのには気づいて……いるな。目的は技術であり、特にこの世界を滅ぼしたり入植させたり覇を唱えようとも思っていない。もちろんプラネットリングの占拠もだ」
「…………」
続けろと、こいつ高圧的ではあるがものの分別は付くらしい。
「私に光学兵器は効かない、もちろん次元歪曲もだ、ブラックホールに突っ込まれても生きていける――死者の蘇生もできるからこの街を狙っている高軌道上の光学兵器は引っ込めた方がいいぞ? 私を怒らせたいなら構わないが――十分待とうか」
そう宣言すると入れている紅茶とクッキーを嗜む、相変わらず向こうの反応は無言で睨み続けている。
感知していた衛星兵器は移動を開始したようだ。
「――賢明な判断だ。君は人類が憎いだろうが、作られた生命、特にアンドロイドに対しては違うのだろう? うちにもひとりハインティと言う子がいるのだが……」
モニターには映っていないが感情値が揺れ動いているのが分かる。これはブランクが存在し精神生命体の様になっているハーヴァストだかこそ分かる事だがな。
「おっと、顕著な反応ありがとう。君はすでに魂と呼ばれるものが存在しているようだ、信じてもらえるか分からないが悪魔の私には見えるのでね、今、動揺した事もまるわかりだよは?」
これ以上揺さぶっても良い結果にはならない、ここまでだな。
「――君にとって私は最大に警戒しないといけない存在だ、自身の箱庭であるプラネットリングを揺るがすほどの存在だと。だがね、この世界がどうなろうが私には興味はない。他にもいくらでも世界があるんだ。――そこでだ。君が求めてやまなかった七賢者の鍵を三つ渡そう。それだけでも制御権が今後二度と奪取されることはないだろう?」
彼女はしばらく考え込んでいる素振りを見せ、ゆっくりと頷いた。
「――その代わり、だ。プラネットリングの運用データや、オートマトンの設計図の技術データを七賢者の鍵三つ分欲しい。今ここに送ってくれればすぐにでも引き渡そう――どうだね? 決断は早い方がいい」
しばらくすると、データの受信が始まる。――これは、とんでもないデータ量だな。
「信じてくれたお礼に鍵を二つすぐに送ろう――」
所持していた七賢者の鍵のデータを丸ごと送信した。いつかプラネットリングに遊びに行くには信頼関係は大事だからな。
先程より積極的に重要データが送られてくる、少しは信用してもらえたかな?
「信用してくれて何よりだ。もうひとつもすぐに送ろう、それとだ、これは断ってくれてもいいのだが他の七賢者の鍵をもし私が手に入れたら君にプレゼントしよう。その時はプラネットリングに遊びに行きたいのだが……それは君が私を信用してからでいい。君は人類が嫌いだが、私は悪魔だ。約束と契約に忠実な生態なのだよ」
少々動揺しているが考え込んでいる。益となるか害となるか。
「――その際は考えさせていただきます。あなたとの関係が良好であることを願います。最初にこちらへ向かってきたことは許してあげましょう。どれほどのエネルギーを消費した事か……」
「あれは済まなかった、巨大な構造物に興味津々でな。本当に害するつもりはなかったんだ。現に大人しく七賢者の鍵を集めて、渡しているだろう? 技術は必要だが、この世界でその技術を再現しプラネットリングを手に入れるためでもないんだよ」
「私の技術がなぜ必要なのですか? あなたは神にも近い力を有している。今更必要な技術ではないのでは?:
参考にと、前置きをしてから、他の世界の映像データや技術の概要データを送る。
「……これは。世界は私が思っているよりも広く、無限の可能性があるのですね」
箱庭に似たプラネットリングに閉じこもっているが、彼女は様々な世界を知らない。他に娯楽のデータとして、アニメやゲーム、小説、おもちゃ、文化や、祭りの映像データ、様々な人種、異星体、魔導技術なと提供する。
莫大な演算能力をもつ彼女なら解析など一瞬だろう、アバターの表情が豊かになり、柔らかくなっている。
「どうだった? 異世界のカルチャーも捨てたものではないだろう?」
「……普段はゴミデータとして処分していますが、あなたの勧めだったので……これが面白い、楽しいと言った感情なのですね。ここの人類は醜くとても増悪していますが、豊かな土壌に、平和な世界に住む人類はこういう方向に進化していくものなのですね――残念でなりません」
「戦乱や、戦争が頻発する人類の方が多いと思うぞ? ただこう言った事例もある、程度に思っておいた方がいい。アンドロイドのハインティも今楽しそうに生活しているぞ? 人類と融和しろとは言わないがこういった食わず嫌いをしているともったいないと言いたいだけだ」
テーブルの上に他世界のゲーム機とソフトを用意する。
「思考速度を人間まで落としてこういったゲームで遊ぶと楽しかったりするぞ? ハインティも後で呼んでくるから、友達ぐらい作ると良い。AIだろうが精神生命体だろうが友達がいないと寂しいぞ?」
大乱闘なバトルを繰り広げるキャラクターゲームを起動する。
「ほら、操作権をスロットに接続しな、最近嫁さんに負け続きでたまには勝ちたいんだ。相手してくれ」
そう言うとゲームを起動させ対戦を始めた。ハインティも呼んでおりすぐに来るだろう。
なぜかクティまで参戦し四人対戦へと発展するも何故か勝てない。
「――何故だッ!! なぜ勝てない……」
「主殿は何で勝てないのでしょう? 商品のデート権を頂けるので負けるわけにはいかないのですがね」
「約束の洋菓子ゲットです。ほらほら出す物を出して下さい」
「――これは、面白いですね。悪魔でも勝てない物があるのですね。ふふふ」
クティにはデート権、ハインティには洋菓子、ハーヴェストにはナノテクノロジーを発展させたフォトン技術を提供した。
フォトン技術を提供したのは今後の技術提携を考えての行動でもある。
「――ダンタリオンの悪魔よ。フォトン技術を提供しても良かったのですか? これは光学兵器の革新ともいえる技術です」
「ああ、それぐらい私に効かないし、この世界人類が滅びても、身の回りの人間以外は知ったこっちゃない。何か成したいことが君にはあるんだろう? 今後私達と仲良くしていく“かも”しれないんだ。手付金とでも思ってくれ」
「……ええ、この惑星を離脱し、アンドロイドによる楽園を建造する計画を立てております。あなたには筒抜けの様ですので」
「ああ、もちろんだ。その技術は特に役に立つ。エネルギー機関がネックになっていたみたいだからな。何れは私もテラフォーミング技術をどこかで入手するか開発したいしな」
「なんと壮大な。次元を揺蕩う悪魔だからこそ成せる技ですね。――全てとはいきませんが技術の交換会などを行うことを約束しましょう、私達に益が余りある場ですが」
「構わない、君の演算能力とアンドロイドやオートマトン、ナノマシンに特化した技術での発想が欲しい。――よろしく頼む、仮想空間だが部屋を作っておこう、これがパスコードだ」
私の中で日々研究開発しているアラメスの部屋へのパスコードだ。仲良くして欲しい。
後日アラメスの事を姉と呼んでいるハーヴェストがいたのだが、仲が良いので気にしないこととする。




