閑話 母親会
次元の狭間
2LDKの二人が暮らせる程度の部屋に、大型の壁に設置されたモニターで各世界同時通信を行っている。アラメスに次元間の調整を同時に行っている為通信設定に難儀している。
イルメシアとシャーリィ、クレア女史とシスティ、ムジュルにセレス、キリエにアカネ、そして玲子。
大人組が相互通信にて顔合わせを行っている。
アラメスの仮想アバターが司会役をやっている。アンドロイドの様な幼女なのだが趣味なのだろうか?
世界毎の情勢、特色、技術交換、子育て、会話の内容は尽きない。
一番大きな子でも幼稚園卒業できる大きさに育ってきている。まだ二年も経っていないのだが成長が早く学習能力も身体能力も高い。
ムジュルもセレスもお腹が大きくなってきている、次期世界の神候補なので子育て話を熱心に聞いている。
この部屋のテーブルでニックとクティも興味深そうにモニターを見ている。
「旦那ァ、すげぇな。甲斐性たっぷりじゃねえか。次元を越えて嫁さんいっぱいなんだな! ハッハッハッハッ!」
「主殿の奥方はたくさんいらっしゃるのですね、いずれ私も……主殿のお子を」
騒がしくて何よりだ。アラメスの手作業で行っている次元通信を機器などを作成できれば良いのだが。まだ安定していない。
魔導技術を修行中のシャリウ、宇宙戦艦を作成しているクレア女史、素材を提供するセレス、生物学に長けたアカネ、技術要項を共有してもなかなか進歩していない。
子育て中のシャーリィと子育て勉強中のムジュルに、バーテンのシスティ、司令官のキリエ、陰陽術士の玲子は門外漢だ。
「こうして、“正妻”であり王族の私イルメシアが一番シンタを分かっており、いつまでも帰って来る場所として待っておりますの」
「あら、“神”である運命の女神セレスティアが旦那様の、行く先を照らし続けていますわ。隣にいるには永久を歩む私が帰って来る場所です事よ?」
「朝倉である私の“婿殿”は、朝倉家に入ったつもりなのだがな、この日本を背負っていける傑物は日本防衛大臣である私の隣が相応しい。――叩き切るぞ?」
特に我の強い三人がバチバチやり合ってる。
私は各世界にいるだろうに。本体はここだが……。譲れない何かがあるのか?
他の妻は仲良く会話をしているが、クリス女史とアカネなんか、勝手にどうぞとマイペースに研究内容を語り合っている。
ちなみに、ミドルネームでもいいし、姓名に使ってもいいが、ダンタリオンを入れてもらうように決まった。
存在がそのように定まりつつあることと、私が気に入ったからだ。
意外と早く連絡が取れた玲子は、各世界の妻の肩書に苦笑いをしてこちらに助けを求める視線を送ってきている。
あとで謝っておこう。
半日程経過し会議もそろそろ終わるようだ。情報端末の規格化を行い相互データを送り合うと新技術にホクホクしているようだ。ダンタリオン家が各世界で覇権を握るのもそう遠くないだろう。
「さて、会議も終わったようだ。この次元間の安定化を図るためにまた私は次元漂流を行う。毎回心配をかけて申し訳ないがこうして報告会も行う。本体、まあ同位体だから意識はいつも共有しているんだが、子にも顔を見せに行くことを約束する。これから永久に生きていく存在だ。共に幸せになって行こう。私は君たちを愛している――」
しょうがないわね、と似たような反応を彼女達全てから感じる。お土産を集めておかなければな。
「では、行ってきます」
――いってらっしゃい。




