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この世界もう嫌です

 実家前の爆心地で、珈琲を飲みながらニックとクティと共に寛いでいたら、リムジンに乗って土御門さんがやって来た。


 後部座席を執事に開けれ降車すると、土御門さんが挨拶をしてくる。


「峯山くん……だよね? それと、隣にいる邪神と見間違えそうな邪悪な鎧を纏った御仁達は……」


「ええ、私ですよ。峯山は私の転生体であり、元々はこの姿です。角が生えてますが最初は日本人でしたよ? この二人は従者のニックとクティです――お忙しい所申し訳ない」


 従者の二人も軽く会釈をする。私が好印象を持つ土御門さんへの、彼らの対応はとても柔らかい。


「いえ、警察組織も止めていますから、私どもが対応しなければ。さすがに大規模な爆発が起きると処理に陰陽寮の誰かが来ないといけませんから。――データチップ拝見します」


 話を進めるには私が記録した映像データを見るのが早いので。土御門さんが持ち込んでいたパソコンで渡したデータを閲覧し始めた。





 映像を閲覧しながら大きな溜息を吐いている。


「……これは、思ったより、ひどいですね。手出し無用の通達と手配を取り下げておりましたが怨恨が根深かったようですね――お疲れさまでした」


 だと思うよ、私も。悪魔私よりも彼女の狂気が本物の悪魔を超えていたよ。


「それと、暫く旅に出ようと思いまして……。付き合いのある親子に挨拶したらしばらく帰って来れそうにないんですよ。ですのでこれを――」


 アタッシュケースがトラウマになりそうになったばかりだが。収納されている物は、霊力結晶を加工した、小型のナイフの刃二十本、持ち運びしやすい鉄扇型五十本、ネックレス型二百セット。


 残りのスペースには霊具へと加工しやすいように、宝石型のシンプルな素材を詰めれるだけ詰めてある。


 別にして分けて置いた宝石箱の中には、土御門さんの家族の人数分のネックレス、ブレスレット、指輪、など、ダイヤやルビーの宝石類をあしらった上品な仕上がりの装飾品だ。障壁の魔導刻印を施した護身具だ。


「――これは陰陽寮への根回し用のおみやげと、個人的に土御門さんへお世話になったお礼です――障壁を展開できる護身具となっています。宝石を採掘する機会がありまして、全て本物となっております。もちろん無料で差し上げます――ああ、このフレーズ、なぜか懐かしいですね」


「こんな量を……いえ、ありがたく頂きます。娘も寂しがりますよ」


「永遠ではありませんので、私、こんな姿ですが人付き合いが得意なので――……と、言いたいですが、人間付き合いが苦手なのかもしれません。今回の件で分かりました。それと回収できる財産の件ですが――譲る相手がいます。相談しないといけないので、後ほどその件で連絡しても良いですか?」


「ええ、お待ちしておりますよ」


 書類関係の手続きを終わらせるために、いつの間にか夕方になってしまった。霞に話をしに行かないといけないな。


 もう、顔も見た事のない父親などいらぬ。好きな所に消えろ。







 有村家の玄関で呼び鈴を鳴らし待っている、在宅している事は、連絡を入れている分かっている。


 しばらくすると玄関ドアが開けられると、この姿を見るなり結界を展開され、有村霞の母親に攻撃を仕掛けられそうになった。


 すぐさま優しく攻撃を止め、母親の頭を優しく撫でてあげると告げる。


「ああ、峯山は私の転生体なんですよ。これでも悪魔でして……事情説明しても?」


 警戒を解く為にも説明に時間がかかり、ようやく了承を得たので、有村宅にやって来た経緯を話す。証拠として壬生家との戦闘のデータチップもな。





 映像データを見て唖然としていた。霞には刺激が強かったようだが。


「つまり、あなたは次元を揺蕩う悪魔ってことなのね。そりゃ異常に強いわけよ。全高百メートル? 世界が終わるわね。んー、まあ、気を使ってくれてたのは分かってるから……私は悪魔だろうが何も言わないわよ――霞、どうするの? しばらく帰ってこないそうだけど」


「――私は行かないわ。助けてくれたし沢山の思い出も作った。でも、私は、まだ勉強する事が一杯あるし。やりたい事も多いの」


 まだ、やりたいことが多いからか……振られてしまったな。

 

 今までついて来てくれる人間は、生命の危機に瀕している場合が多い。


 安全が比較的担保されているこの世界は魅力的なのだろう。


「君の気持ちは分かった。それと“玲子れいこ”、これを肌身離さず持っていろ。危険な時は必ず助けてくれる」


 コトリと、彼女の母親の前に指輪を置いた。


 別れてすぐに母親を口説くかと、霞に睨みつけられるが違う。


「瀕死、もしくは死亡した瞬間、種族改変が発動する物だ。生命は助かるが、寿命がほぼ無くなり、身体能力も数倍以上になる。ただ、見た目同じ人間だが、中身がまるで違う存在になる――それでもいいなら身に付けてくれ」


 説明が終わると瞳が怪しく濁っている。


「なにそれ、最高じゃないの。もう老いていくだけの身体なんていらないわ。むしろ使わせなさいよ! 悪魔の甘いウソとかじゃないわよね?」


 失礼な、私は悪魔だがこういう事には嘘はつかない、ハズだ。


「ああ、使っても問題何のなら使って良いぞ? これは気持ちの問題だからな。その代わり伴侶はかなり選ぶことになってしまうがな。――嫁が若いままだと必ず問題が起きる」


「――今、使うわ」


 何の躊躇もなく使用すると、胸元に吸い込まれて行く。種族改変が起こり始め玲子は眠りへと付く。


 彼女を寝室へと運び優しくベットに寝かせた。しばらくしたら目が覚めるだろう。


 リビングに戻って来ると、霞が物欲しげに私を見つめて来る。


「ねえ、それ私も貰っていいの?」


 母親である玲子の寿命が延びる関係で、娘である霞の種族改変も行うことが望ましいが……。


「――問題ない。親子で種族改変は行った方がいいだろう。今の年齢で使用しても全盛期までは緩やかに成長するようになっている」


「わかった」


 似たもの親子なのか? あっさり躊躇なく使用したぞ。だが、これで彼女達の身の安全が守られる。戦闘プログラムはハードモードに設定して置いた。





 玲子が先に目が覚めたようだ。


 戦闘経験が豊富なのだろう、戦闘プログラムの完了時間が短い。


 縦長の姿見をしきりに確認すると十歳以上若返った全盛期に姿を見て狂喜している。身体補正の効果もあり、胸囲もくびれも、モデル体型へと補正が掛かる。


 玲子は私に向かって胸元に飛び込んでくると、強く抱きしめ激しく舌を入れてきた。


「もう、大好き! 最高ねッ! 悪魔ってステキ! 最初から言いなさいよ! これなら、ちょっとくらい私を相手にしてくれるわよね? あんたが言ってた女日照りってやつよ? 全盛期に戻ったのか性欲が収まらないの――霞はまだ寝てるし……いいでしょ? あんだけ私を挑発してたんだから無理やり犯しなさい?」


 返答は頬を撫で、優しくキスをする。


「わかった――全く。玄関先で徒手空拳をやり合っていた頃が懐かしいよ」


「うっさいわね、乙女はいつまでたっても乙女なのよ! 察しなさい。それと――後ろからが好きなの」


 壁に手を付かせると、それからは獣のような声を出していた。


 途中で霞が起きてきてしまい、玲子は物凄く怒られてしまっていた。


 二人で楽しむなら私にもしてよねッ! と、娘も混ざる当たり、性欲の権化である血筋にサキュバスでも混じっているのではないかと思う。





 三人の獣のような火遊びが終わった後に、伝えていなかった事をぼそりと言う。


「言っておくが妊娠の可能性高いぞ? 自己ステータス閲覧してみたらわかる」


「は?」「へ?」


 視線が左から右へ動かし、網膜に投影されたステータスを確認しているのだろう。恐らく、状態に妊娠、もしくは出産準備期間と記載されているはずだ。


 ジト目で私を見て来るので、種族変更による私との相性の向上と、妊娠期間の短縮を説明していく。


 それと壬生家の資産を処分し、私に陰陽寮から支払われる財産の総額を有村親子に譲渡する旨を伝えた。


「土御門さんに言って、有村家に私の財産を全て渡すように話を付けている。子育てが大変になる事は分かっている。働かなくても生活できる資金は数億あれば問題ないと予測しているが……過不足ないか? 追加で霊具の最上位を売り払えば追加資金は出せるが――」


「――う、うん。まあ、それなら、いい……かな? うへへ」


 玲子、目が金色カネに輝いているぞ? 遊んで暮らしても十分残るだろうな。


「お世話になったお詫びも含めてあるからな。好きに使ってくれたらいい、使いやすい一軒家を探すようにも手配してあるから、そこに住んで欲しい。変更を申請すれば変える事も出来るし、家具も選べるからな。――それと、子供が育つ前に帰って来るから、さ」


 それから、陰陽寮に所属はするが、仕事を減らす事や、霞の進路について話し合ったりした。


 玲子には武装を潤沢に渡しており。普通の人間なら大隊レベルでも殲滅できるだろう。霞も護身具で固めている。


 家を出る際に耳元で玲子が囁いてきた。


「子供が顔を覚える内に帰って来なさいよ? 年増の恋愛はねちっこくて、嫉妬深いんだから。早くしないと私に浮気されても知らないわよ?」


「良く理解しておくよ」


 少し長めのキスをして家を出た。


 少し心が癒されたな。次の世界では人間関係にもう少し気を付けようと思う。

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