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褐色邪眼

 気分転換に訓練がてら、霊力結晶を生成する為に県外の霊脈にやってきている。


 意外と日本中に霊脈が存在している為、霊力結晶を作り放題である、貯め込む癖というか収集癖が人より強い為、生成する事に楽しみを見出している気がする。


 すでにトン単位で確保しているのでバラ撒いても痛くはないが、お歳暮感覚で好印象の人物に配ったりはしている。


 土御門さんの娘さんにも顔を合わせたが中々芯のあるいい子だったしね。


 ちょっと笑い方がオホホ、言ってたのが個性的なおませさんだったが、エメラルドの指輪をプレゼントしたら目をキラキラさせて喜んでくれたな。


 ああいう喜ぶ姿好きなんだよな。


 格闘技の型を初心者ながら丁寧に毎日繰り返すようになって身体の動かし方が驚くほど良くなってきている。成長力強化がじわじわと効いてきているのだろう。


 掌打も演武の流れの中で、気を丁寧に練り、連続で放つことも容易になってきている。


 組み手なども出来ればしてみたいが、国内に格闘術に秀でた人物があまりいない事なので諦めている。


 霊力がステータスの裏社会の構造ができていた為、格闘畑の人は腰を下ろさないのだとか。


 空気が破裂する音が断続的に発生し、周囲の木々の葉が揺れる、コハァ、と呼吸法も独自に取り入れ試行錯誤するのも楽しい。


 アニメで修行パートにハマる主人公の気持ちが今分かってしまったよ。


 霊脈毎に収集する霊力は、存在する半分程にすると言ってあるのでそろそろ切り上げる。――悪寒がする。


「これは、負のエネルギーか?」


 すごいスピードで近づいてくるな。こいつは、逃げてきている……退魔士か、陰陽術士か分からないがこんな遅くに、討伐とは恐れ入る。


 数分後、接触。


 五人だな。見た感じ若い、私と同じくらいだが怪我をしているな。


「はあはぁはぁ……こっちだ、誰かいるぞ!? 助け、あぁ……駄目だ一般人か」


「何やってんのよッ! こいつに擦り付けるのよッ!」


「え、いいのかな、いいよね、こんな暗いところだし」


 男が先頭を走り、女二人が付いてきた、しかも囮に使う気満々だと。


「舞は付いて来てるのか!? ああ、いた! 早くしろ! こいつを囮にするぞ!」


 後から肩から血を流している小柄な女と、口から血を流しているかなり危ない成人女性がやって来る。さぁ、どうするのかね。


「先生早く、こいつの足でも切ってくれ!」


 他人任せかこいつ、成人女性の先生とやらは苦い顔をして、私に向かってくる。


「ごめん、ごめんね……仇は取るから……」


 なんで目の前で三文芝居を見せられているんだろう私は。


 まずは一匹。手刀で首を吹き飛ばした。


「え、あ、え、どうして?」


「なんで私が囮にならないといけない? 君たちが死に給え」


 先生とやらに事情を聞く為、拘束して宙に縛り付けておく。続けて、掌打を二連発、先頭集団の二人の頭を爆散させる。首から噴き出す血液が先生へと飛び散っていく。


 小柄な女はまだ言質を取っていないので保留とする。拘束はさせてもらったが。

 

 木々を薙ぎ倒してくる音が森に反響して恐怖を演出していると、遂に開けているこの場所に妖魔とやらが姿を現した。


 女性体で腕が異様に長く悪魔の様な鋭い爪が木々を切り裂いている。眼の白目が全て黒く染まり、上半身は裸で、下半身が蛇の姿をしている。


 いわゆる半人半蛇、ラミアとか、ナーガとかそういう類なのか?  


「あ、あ、あ、もう、だめ」

 

 先生絶望してる、ウザいな。こいつ人に擦り付ける癖に偽善者っぽいんだよ。


「キュアアアァアアアァアアァアア」


 ラミアの叫び声が金縛りの効果を含んでいるな。実際に小柄な女性がブルブル震えて声が出なくなっている。


「なあ、ラミア。ちょっとお話しないか?」


「キュアアァアアァ!!」


 腕を振りかぶり私に爪で攻撃を仕掛けるも、振り下ろす腕を掴む。


「なぁ? 話を聞け。な?」


>>拘束


「理解してる? ラミアさんよ」


>>威圧


「聞いてんのかって言ってんだろ?」 


 こちらから必死に目を逸らそうとするも身体が動かないラミア、彼女の傍に近寄っていくと、妖魔ながら恐怖を感じているのか逃げようとしている。


 ラミアの顎を掴んで私の眼前に顔を持ってくる。


「は・な・し・できる? 死ぬ? どっち?」


 理解できる知能は残っているのかゆっくりと頷いた。


「おお、そうかそうか。理解できるのか。私に使役される気ある? ないならすっぱり殺してあげるけど?」


 こちらをじぃっと見つめてくる、何を見定めているのだろうか。


「ああ、負のエネルギーが無いと餌にならないとか? これ、食べれる?」


 掌の上に数百人分の負のエネルギーを生成する。ラミアの目が輝き、口元から涎すら出ている。霊力の結晶を負のエネルギーで染めて複数個作っていく。


「私に使役されたら強くなれるし、これあげるんだけどなー、どうすっかなー、どこかに良い使い魔いないかなー?」


 わざとらしくチラチラ見ていると一生懸命首を縦に振って来る。こいつ意外と可愛いな。試しに近づいて口の中に暗黒結晶を放り込む。


「キュアアアァアア!!」


 体中が黒く染まりグネグネと変化していっている。たった一個しか挙げてないんだが。肌の色が褐色に染まっていき、蛇の下半身が攻撃的なスタイルに変化する。


 だが、まだ変化を残しているよ? と、目をクリクリさせて見つめてきたのでアーンしてあげたらちゃんという事を聞いてくれた。


 ポンポン、ポンポン、暗黒結晶を数十個上げても足りないと言うので、面倒くさいから数百個まとめて身体に叩き込んだ。


 ついでに私に服従するように突き込んだ腕から、霊力をダバダバと流し込む、負のエネルギーなんぞ際限なく湧いて来るからな。

 

 余りにも凄まじい呪力で儀式場が出来上がってしまい、悪魔召喚の儀式になってしまった。ついでに、バエルの要素がたんまり残ってるのでついでに入れておいた。


 ちょっとテンションが上がってしまい余計なものを入れ過ぎたかもしれないが、きっといい悪魔が産まれて来るのではなかろうかと期待する。


 黒い繭が霧散し、褐色肌で、跪いている裸の妙齢の女性が現れた。あれ、悪魔要素は?


「話できる? ええっと、名前はあるのかい?」


「いえ、ありません。主殿が決めて頂ければ幸いです」


 うーん、知性があるなら、ダンタリオンの家名を名乗って欲しいな。


「――そうだな、クティ・ダンタリオンと、名乗ってくれ。今は分け合って名乗ってないが、家名なんだ」


「クティ・ダンタリオン拝命しました――以後、永久の忠誠を誓わせて頂きます」


 悪魔の騎士成分も混ぜすぎたかな。ちょっと固い印象だね。


「服装とか、標準の装備とかある? ないなら用意するけど」


「いえ、悪魔の姿が蛇鎧を纏っています――こちらです」


 光を吸い込む暗黒鎧の表面が蛇の鱗のような形状をしており、彼女には尻尾が生えてきている。舌は長く二つに分かれており、瞳は蛇の目の瞳孔が縦に割れている。


「うんうん、いいね、カッコいいよ。私の悪魔騎士。私の中に溶け込んで存在する事が出来るかい?」


 そういうなり、抱き締められ、口に舌を突っ込まれる。そのまま私の中に溶けていき確かに存在していることが分かった。


「いいよ出ておいで――ん、どうした?」


「あ、あ、主様は、悪魔の王なのですか……!? 内包される闇と無限とも言える力が見えました……数多の悪魔の気配も……」


「ああ、そうだよ、契約の悪魔、ダンタリオンだ。今は肉の身体を纏っているけどね」


「――この喜び、どうお伝えしたら良いのかッ! お仕えする事が出来感激です!」


 私の仲は予想外に居心地良いのかな? そろそろ、先生とやらを始末して帰ろうかな。


「分かったから、私の中においで、寂しかったら出て来ていいからね? 私は仲間、家族を大事にしたいからね? クティ」


「家族と、呼んで頂けるのですね! では、失礼します」


 さっきより熱烈なキスをされてしまった。ふう。良い子が仲間にできて良かったな。


「さて、先生とやら。何か言い残す事、もしくは言い訳があるかい?」


「せ、先生を殺さないで!!」


 小柄な女性が助命を懇願するがそれはできない。


「我が身可愛さに囮にしようとした人間を生かすことはできないな。仇を取るから……みたいな三文芝居を見せられたからね。どういう経緯なのか説明すれば道が開けるかもよ?」


 そういう事。





 なるほどね。簡単な依頼と思い研修生と妖魔退治に同行するも古き力を持つ妖魔だったため撤退。洞窟に立てこもり救助を待ったが見つかってしまい逃走。このような遅い時間帯になったしまった、と。


 陰陽寮とは違う退魔機関で、西洋魔術を主に使用している。悪魔や天使の力ある言葉を紡ぎ、力を借り受ける手法。


「なるほどね、今使ってみてよ。ちょっと、身体に触れるけど」


 先生とやらにお願いをし呪文を紡いで貰う。割と瀕死だったのに自己回復したのか、動けるようになっている。


『――我が聖使徒に紡ぐ、我身に降臨せし御身の力をここに示さんッ!』


 光の槍のようなものが宙に出現する、触れてみた感じ熱は発生してないな。霊力が呼び水に使用され、降霊術に近い感じかもしれない。


『――敵を穿てッ!』


 私に向かって槍を突き刺してきた。まぁ分かってたよ。光の槍は私に直撃するも霧散し消えていく。


 霊力を呼び水にして。


『――我が聖使徒に紡ぐ、我身に降臨せし御身の力をここに示さんッ!』


 力のみを顕現させる。より圧縮された光の槍へと。


『――敵を穿てッ!』


 先生とやらの胸に突き刺さる。血を吐き出して涙を流しながら死んでいった。


「小柄な女性さんよ。何か言いたいことある? 私に突き刺してきたんだけど。あれ良い先生なの?」


「――先生。だけど……死んでほしくなかった」


「まあ自業自得だね。じゃあ私は帰るから頑張って帰還してね」


 指パッチンで四人の死体を塵も残さず消失させた。証拠残していちいち難癖付けられるのもね。


「あ、ああっ! せめて、遺髪っを……」


「やだよ。絶対犯人探しするじゃん。正当防衛だけどね」


 もう、疲れたのでさっさと飛行して撤退する。ないかを叫び散らしていたが私には関係ない事だ。殺されそうになったから殺した。


 どうして私はいつも殺されそうになっているんだね。

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