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よあそび

  昨夜は色々あって夜更かししてしまったが、簡単な食パンを焼いてバターを塗ったものと、濃いめの珈琲を味わっている。飲む瞬間のこの鼻を突き抜ける香りが脳を覚醒させる。


 のんびりとニュースを見ていると、月面にて異常な彫像が発見され、大騒ぎになっていた。その内容を見てちょっと切ない気持ちになってしまった。


 学校に行くために家の戸締りの確認を終えて、歩き出すと曲がり角にて壬生さんに遭遇する。もちろん視線は合ったがすぐに無視をして通学をを歩いて行く。


 何であれ殺されかけた事実は覆らないので、彼女に対する信用はマイナスを振り切っている。


 戦う場で会えば即座に首を刎ねているだろう。


 まだ気持ち的には数回目の校門を潜り、挨拶運動を行っている生徒会の役員にも挨拶を返しておく。こういう挨拶って、歳を取る度に減っていくし意外と貴重なんだよね。挨拶したことにより少し上向きになった気分が教室へ進む歩幅にも表れる。


「おはよー、相変わらず童貞と処女臭い教室だぜ」


 多分、友達だと思うクラスメイトに雷が落ち、驚愕の表情を浮かべた。ニチャリと含み笑いをすると、こっそり私の耳元に寄って来る。


『ト、トコロテン……まさか……』


『ああ、バッチリ。温泉に泊まって来てな……朝まで……と言う事よ……フヒヒ』


『まさか、貴様に先を越されるとはッ! で、相手は誰だ? 壬生さんとは破局したって聞いていたが』


『後輩ちゃん、ちょっと内気だけどスタイルが物凄くいい子だよ』


『ま、まじかぁ……』


『以外に後輩は狙い目だよ? 大事なのはさり気ない優しさと、グイグイ押しても大丈夫な子だよ』


『ふぁッ! ほ、本当か!?』


『私達同年齢は意外と女子の評価が厳しめになる、後輩の優しい先輩目線の補正か、先輩の可愛い後輩目線の補正が、重要なんだ。部活よりも学級委員や、図書委員の共に苦労している系で頼れる姿を見せると具体的に可能性が高い。それで雰囲気任せに手を繋いで、嫌がられなければキスまでオーケーだ。後重要なのは清潔感と、匂い過ぎない微かな香りの香水だ』


『おおおおおおおお、本当に具体的すぎる上に、納得の説明だなッ! うんうん、わかる! ありがとう! 頑張ってみる!』


 彼に親指を立ててグッジョブの合図を送る。だけど名前覚えてないんだよね。今度調べておこう。


 そそくさと、自分の机に座るとじっとりとした視線が飛んでくる、ああ、壬生か、こっち見んな。他の世界と違って力を見せる機会もなかなか無いしそういう縁って減るよね。


 学力大事。でも教科書の内容全部脳内にインプットされているから恐らく満点なんだよね。思考速度も超越的だし。


 そろそろ、中間試験の時期なんだよね。カンニングを疑われないか心配だね。態と間違える気にもならないし。力を隠すのが嫌いなんだ。


 予想通り試験前の小テストが行われた、恐らく類似の問題を記載して点数の底上げが目的なんだろうけど。


 先生がこちらを見ているが疑ってはいないみたいだな。私の雰囲気があからさまに変わっているし、成長期なんだろうな程度の眼差しだ。


 少し気になっていた霞の気配を辿ってみる、授業は受けているな。同じクラスだったあの女子生徒たちは休んでいるな。骨が砕ける音も聞こえていたし恐れているんだろう。


 昼休みは定番のわかめおにぎりとココアを購入して、体育館の二階のギャラリーで日向ぼっこを始める。ああ、幸せ。

 

 ずっとドンパチしかしてこなかったからな、高校生活に殺伐はいらんのだよ殺伐は――そう思っていたのはいつだったのか遠い過去に思える。


 仙崎の取り巻きが私を探しに体育館の二階までやってきた。


 なぜバレているかは分からないが、探し回ったんだろうぐらいしか思い浮かばない。


「おい、トコロテン。面貸せや」


「馬鹿の相手は疲れるんだよな――貸せってどこへ? 要件なら早く言ってよ?」


 そういうなり取り巻きが寝転ぶ私に、足で胴体目掛けてストンピングをしてきた。足首を掴んで股関節へ蹴り上げを放つ。ゴリュ、と言う音がすると股関節が脱臼し、睾丸も潰れた。もちろん、泡を吹いて倒れている。


「てめぇッ!」


 性懲りもなくストンピングと芸の無い動作に同じ作用を繰り返した。スマホを壁に立てかけて置いたので正当防衛の証拠は揃えてある。


 二人目もさすがに倒れて気絶しているので残りの取り巻きが慌てて逃げ始めた。


 冤罪を被るのはごめんなので、さっさと学校の屋上へ移動して昼寝の場所を変えることにする。


 もちろん脱臼男達は放置だ。タマタマごめんね。強く生きて。




 

 昼休みが終わって教室へ戻ると当然のように教師に呼び出されました。解せぬ。


 生徒相談室にて逃げた男子と、担任の先生、学年教頭が席に座り逃げた男子生徒から事情聴取を受けていた。


 もちろん私がいきなり殴りかかってきただの、襲われただの冤罪しか言ってこない。教頭は私に非の目線を向けてきているが担任教師はこいつも大変だなと言う顔をしている。


 学年教頭が、犯人を見るような目で。


「問題行動を起こした生徒は君かね、事実をありのまま述べなさい」


「問題を“起こした”と言っている時点で、先入観を持っている教師に何も言うことはありません、教員免許を取りなおして出直してきてください――実際問題あなたは私を信用する気が無い、生徒を指導する立場として不適格であり。この場の会話の内容を録画しております。あなたの立場が危うくなるのもあなたの態度で変わることを念頭に置いて質疑応答を行って下さい」 


 顔を真っ赤にしながら今にも叫ぼうかとしている。


「まあまあ教頭先生。落ち着いて、あなたの言い方ではそう捉えられてもおかしくなかったですよ?」


「き、きさま! なんだその態度は!?」


 そういうなり掴みかかって来た。こいつは体育教師で普段から暴力行動が目立っていたやつだ。態と殴られて大げさに二階の窓から地面に叩きつけられた。


 すぐさま警察と救急車に連絡、教師に突き落とされて動けないと死にそうな演出をして通話をそのままにしておく。


 運び込もうとするも態と動けない演技をする。十分もしたら警察と救急車がやって事情を担任の先生が説明していた。学年教頭を見る目はかなり厳しく。救急隊員と警察はゆっくり起き上がる私に事情を聞く。


「学年教頭が私の言い分に納得がいかず、激高して私を二階から突き落としました。許せることではありません。必ず殺人未遂と傷害罪で立件してほしいです。普段から友達も学年教頭に殴られて黙認させられています。もちろん被害届けも出しますし、このスマホに証拠も映っています」


「きさまああああああ!!」


 再び激高した学年教頭は、私を顔を踏みつけスマホを奪おうとしてきた。


 犯行を認めた犯人のような扱いで数人の警察官に抑えられ傷害罪の現行犯逮捕された、手錠が駆けられて警察車両に押し込められていった。


 こちらを見て慌てふためき、嘘を並べ立てた取り巻きに向かってニチャリと笑うと、口で『覚えていろよ?』とゆっくり理解できるように伝えてやった。


 その後病院に搬送されるも軽症で、病室にて事情聴取と被害届の提出の有無を聞かれた。もちろん学校の仲の良い生徒たちの、平和の為に諸悪の根源を正義の力で罰してください。と、涙ながらに語った。


 ちょうど、学年教頭を取り押さえていた刑事さんもいたしね。証拠のスマホも提出している。


 学校の教員はそうそう罰せられない風潮があるが、さすがに目の前で顔を踏みつけるとなると限度があるようで後日、停職処分となり、依願退職を待つような弱腰姿勢を見せた。それでは制裁が足りないので、私の顔にモザイクを掛けて学校関係者や、放送局、ネットの動画投稿サイトに、強制的に閲覧されるようにランキング操作を行い、学年教頭の実名と住所、電話番号。高校の名前と処分内容の軽さを公表した。


 もちろん大炎上し終日、高校の電話回線がパンクした。

 学年教頭の家庭問題にまで発展し離婚調停が始まったとか。


 私は体育館のギャラリーにて、わかめおにぎりを食べ、ココアを飲んでいる。


 ああ、人の不幸はなんて幸せなんだ。最高に良い絶望の表情を見せてくれた、学年教頭には感謝しよう。彼の家の前を、偶に通るのが楽しみとなってしまった。


 スマホを操作する私の顔に影が掛かる。


「大丈夫だった? 心配してたんだよ?」


 数週間ぶりに声を掛けてきたな。有村霞。


「大丈夫じゃないように見える?」


「ううん、全然」


 ニチャリと笑うと、自身のこめかみをコンコンと叩く。


「私が二階から落ちたくらいで怪我をするわけがないだろう。迫真の演技とネットの情報操作でドン底に転げ落ちる、学年教頭の絶望の顔は見ものだったぞ? ああ、キチンと映像に残してるぞ?」


ケタケタ笑う私を見て。心配していたのがバカみたいと呟かれた。


「銃弾を数千発撃たれようが、怪我すらしないよ? でもね、心配してくれる君の顔を見れたのが私にとっての幸せだ。私は君がいつ会いに来てくれるのかずっと待ってたんだよ?」


「お母さんが言ってた。指名手配は解除されたけど会っちゃいけないって」


「でも、会いに来たんだ?」


「悪い?」


「ああ、悪い、悪いとも。悪人に食べられてしまうよ? ――こうやって」


 彼女の腰を引き寄せて、寝ている私に引き寄せる、少しは抵抗したが段々と力が抜けて行く。


「ほら、悪い人に捕まった」


「――捕まっちゃった」


 顔を近づけていくと目を瞑ったので熱烈なキスをプレゼントした。数十秒程堪能すると二人の間には唾液が糸を引いた。


「続きをしたい? ちょっと気になっている海外のホテルがあるんだけど……」


「…………」


「了解。さて、早退でもして悪い遊びに付き合ってもらうよ?」


 強引に彼女の手を引くと海外のホテルに転移する。学生服だが、ホテルのコンシェルジュは金さえ払えば気にしなかった。それから朝まで貪るように、夜遊びを楽しんだ。

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