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小旅行

 ついオーケーと返事をしてしまったが、彼女にいいなおしを要求されてしまった。却下したけど。


 無駄にベリトの概念を使用して、月面に十メートルほどのポピュラーな火星人の立像を作って置いた。立派な玉座に柱も付けておいた。これで地球外生命体の存在を勘違いしてくれるかもしれない。


「何作ってるんですか?」


「いやね、地球外生命体が存在していると勘違いして、騒ぎになったら面白いかなと思って。霞の立像も作っておくね」


 玉座の向かいにソファーと二十メートルの涅槃像姿で作っておいた。


 慌ててやめてくださいと言われるも残念手遅れです。


「次何して遊ぼうか? 海外でもいいけどひとまず家に帰っておく? お風呂入りたくない?」


「そうですね、お風呂につかりた――い、けど、温泉とは聞いてません」


 有名な温泉街に周囲の景色が切り替わった。日帰り温泉っていいよね。


 無料で配布されている日帰り温泉のパンフレットを握りしめ、どれから入るか相談を始める。楽しそうだね地獄温泉巡り。


「男女別に入る? 家族風呂にはいる? もちろん家族風呂だよね? 決まり」


「え、え、えっ、ちょ、まっ」


 彼女の手を引きながら素敵なエスコート術で、ツカツカと家族風呂をお願いして料金を払う。入浴セットも購入し腕を掴んで露天風呂へ向かう。


 余りにも緊張していたので、指パッチンでいつの間にか彼女の服装が消えてタオルに切り替えられる。


 身体を一生懸命に隠しているがタオルが小さい為隠しきれていない。


 身体を丁寧に洗い始めてあげると、とうとう観念したのか目を瞑って私にされるがままになっている。やはり、若いピチピチ肌は素手洗いが基本ですね。


 悩ましい声を偶に出してはいるが、優しい私は気づかない振りをしてあげる。


「綺麗な肌だね、タオルで洗うのがもったいないや。髪の毛も洗ってあげる」


 しまったな、ピチピチ肌の誘惑に負けて髪の毛を先に洗わなかったのはミスだな。もう一回洗えばいいか。うん。


 頭皮をマッサージしながらの洗髪は気持ちがいいようでウトウトし始めている。洗い流してあげると、目が覚め、手を引いて一緒に温泉に浸かる事にする。

 

 タオルを脱ぐか、迷っているがこれを言っておかなければならない。


「温泉は――タオル禁止だよ」


 自らの顔を両手で隠しながらタオルを私に剥ぎ取られる。露になった肢体は素晴らしいとだけ言っておこう。決してポッチが魅力的だなんて言っていない。良いね?


 私の腕の中で気持ち良さそうに温泉を堪能している霞、いじめにあったり、月にいったり、疲れているのだろう、眠たそうだ。


「いい湯だね。もし眠たいなら泊りでもいいんだけど――君が決めていいよ?」


 背中から体全体を抱き締めて、耳元で囁く。ビクリと跳ねるも私の腕からは逃げられない。しばらく、悩んだ末にゆっくりと頷いた。――オーケーという事だね。


「――そうか、ここにそのまま宿泊しようか。なに、今日色々あったんだ、少しくらい贅沢しても罰は当たらないさ」


 しばらく温泉を楽しんだ後、宿泊の料金を支払い、料理も一番高いコースをお願いする。まったりと食事を楽しんで、二人で一緒に眠る事になった。


 ――おやすみなさい。







 昨日は親御さんに、男と泊ると言った際の驚かれように彼女の方がビックリしていたな。いじめられていた時に助けてもらったとも説明していた。了承の返事をもらって喜んでいたけど、そのまま後、料理が出てきた際に私がお酒を飲んでいる姿を羨ましそうに見ていたので、飲みやすい熱燗を進めてぐびぐびと彼女も飲んでしまった。


 そうして、彼女が怪しい雰囲気になった後、彼女は同世代よりも早く大人の階段を登ってしまった。いや、今時の若者は分からないぞ、もっと早いかもしれない。


 ちゅんちゅんちちちち。


 朝焼けの中の露天風呂にひとりで浸かっていると、霞が歩きづらそうに温泉に入って来た、もちろん身体を洗ってからね。私の腕の中を定位置と定めたのか、迷いのない動きであった。


「……もう、まだジンジンするんですからね!」


「イエーイ。どうだった? ――聞くまでもないか、ハハハ」


 無言で後頭部を武器に、私の胸板を攻撃してくる。


「少しは気分が晴れたかい? とんでもない一日になっただろう?」


「――ええ、最高に、最高で、最高に驚きました」


 それは良かった。親御さんにお土産を買って行かなければな。それと運よく週末で良かった。じゃなきゃ許可出さないだろうしね。


「温泉のお土産親御さんに買って行ってあげようか。今日は日曜日だし何がしたい?」


 そんな顔を赤くしないでくれよ、まるで覚えたての……彼女の名誉を守ろう。


「もう一泊もいいかもね? 海外でどこが好き? ここでもいいけど……」


 温泉の中なのにピッタリくっついて離れない、よろしい。朝から元気だねえ。





 素晴らしい雪交じりの山頂、世界一高い山の頂上に大きなベットを置いて景色を眺めていると日差しの眩しさに彼女が目を覚ました。


 寒さは感じないようにしているが、標高の高さに驚いて腰が引けているようだ。


「世界一高い山頂の眺めは気持ちが良いね、写真や映像では味わえない、空気の薄さに気絶しそうだね、写真撮っておくといいよ?」


 そう言うと彼女も私が驚かすことが好きな事になれたのかスマホを取り出して自撮りしたり景色を撮影していた。少し下の方に登山中の人々が見えたので手を振って置いた。


「心太さん、あの人たちそろそろ頂上付きそうなんですけど……」


「いいんじゃない? もし声を掛けてきたら紅茶でも出すさ。これでも語学力は自信があるんだよ?」


「そうですね、心太さんなら何でもありでしょうね」


「霞は家族と仲がいいの? 泊りの許可を出してもらっていたけど」


「良いと……思います。いじめの件には驚かれましたけど、泣きながら謝られました、気づけなくてごめんなさい、と。お母さんだけなんです。私の家は」


「ほう、私の家も父親だけだね、いつもどこかに行っているから二年ほど見たことないけどね――どこにでもある不幸、意外とそこらへんに落ちている程度さ」


「――ッ! そうだったんですね、一緒ですね。ウフフフ」


 山頂に設置したベットに押し倒される。熱烈なキスの嵐をお見舞いされる。登頂者は、まだ半日以上はかかるようだな。


「その気になってしまうじゃないか――まぁ、お相手をお願いしようかな」







 彼女の家の玄関前に着いた。先程まで世界一高い山の頂上でひたすら楽しんでしまった。もう少しで登頂者と遭遇するところであった。一応手を振って置き、彼らの登頂記念に。ソファーにテーブルを用意してパウンドケーキを置いてある。熱々の出来立ての珈琲も淹れておいたから、きっと泣いて喜んでくれるだろうよ。


 タプタプのお腹を擦りながら。家の鍵を開けて中へと入っていく、彼女が私の手を引くのでついでにと思い親御さんと挨拶をする。


「あら、おかえりなさい霞ッ! ごめんね気付いてあげられなくて、君が助けてくれた男の子? ありがとう、ウチの霞を助けてくれて。でも、お泊りなんて悪い子ね」


「初めまして、コレ、温泉のお土産です。いやぁ、温泉気持ち良かったです――今度お母さんもご一緒にどうぞ」


 以外に若くて綺麗な親御さんだな。いきなりお泊りの悪い男だもんな、確かに悪い男だったわ。


「――ええ、御一緒できる機会があればお願いしようかしら。ところでお名前を聞いてもいいかしら?」


 ん? これは、あの結界のようなものを感じるぞ。アウトー。


「ええ、三十人余りをブチ殺した峯山心太ですよ? 手配でもされてます?」


「――動じないようね。虫けらのように殺された同僚がいるのよね、ええ、怨んではいないわよ、怨んでは」


「それ絶対怨んでるパターンですよね? そりゃいきなり窓ガラス破って手榴弾投げ込まれればキレません? ああ、あなたの事知らずに彼女と遊びに行っただけですよ? あなた程度の羽虫なんざ取るに足らねえよ――いちいちかっかすんなよババアが。不快な結界解除しろや、死ぬか?」


 突然の険悪さに霞が付いていけていないようだ。


「霞、君のお母さんは裏で殺しもやってる組織の人間だったみたい。一昨日いきなり私の家に手榴弾投げ込まれたんだよね。んで私、力もってるじゃん? 三十人程ぶっ殺したわけ。それで君と一緒に居たから警戒して結界のような不快なもので潰そうと仕掛けて来てるの――君のお母さんがね。私が生涯一緒に居るって言ったらお母さん殺していい?」


「霞、この男は特級危険対象として指名手配されているの手出し厳禁だってね。だからもう会っちゃ駄目よ? 危険なの、お願いだからいう事聞いて――グゥッ」


「貴様、やり返されてその言いぐさ死んでも構わないようだな。――でどうする? お母さんとってもいいけどもう会わないよ? だってこうして絡まれたら殺しそうになるじゃん。本当被害者なのは今お母さんとやらが言ったとおりだよ。手榴弾部屋に投げ込まれたんだよ」


「――――。わかりません……今日楽しかったのは本当です。お母さんにも話を聞いて欲しかったのに――」


 んー。しょうがないか私が大人になろう。お母さんとやらを宙に磔にしたまま、霞の涙にキスをし、唇に優しく触れる。


「まったく、気の短いお母さんだことだから旦那に逃げられるか死なれるんだよ。霞、お母さんに内緒でどこかに連れてってあげるからまた今度ね? こいつらが千人いようがどうとでもできるからさ。最悪組織全員殺してあげるからね、ああ、お母さんは生かしておくね」


 頭を優しく撫でてあげると、家の玄関の方へ向かう。


「もう少し母親らしくしようや? な? てめえの組織が絶対正義なんてことはねえんだからな。多分数日以内に後十数人程死んでるけど自業自得だからね。残念残念」

 

 そう言い捨てると部屋を出て行く。


 せっかく楽しい旅行だったのに最後にケチついてしまったな。そうだ、殺しに来てくれないかな。気分が悪いや。

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