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学園生活

 誰かに揺さぶられている感触を感じる。薄っすらと目を開けると高校生くらいの黒髪の美少女がいた。


「何私の顔をまじまじ見ている。幼馴染の顔でも忘れたのか? 貴様が眠っているから起こしてやったのに」


 どうやら学校の教室のようだ。――アラメス、情報を送れるか?


[――私も今目を覚ましたところですよ。脳内を操作して追体験しましょう]


 今まで生きてきた情報を一瞬の内に追体験をしていた。――ああ、彼女は近所の幼馴花蓮みぶかれんか。なぜこの身体にいるかは分からないが私自身で間違いないようだ。


[――身体調整を行い概念として次元を流出した際、受精卵に宿ったようですね。コアも銀も位相が違う場所に確かに存在します。現出も可能です]


 ――ひとまず学生生活を送ってみよう。楽しそうだ。


[――はいはい]


「なんだ、花蓮。今の内から私の為に優しく起こす嫁入り修行か? こういう場合は寝起きのキスをして起こすんだよ」


 顔を近づけて訝しんでいた花蓮の唇を軽く奪う。一瞬何をされたのか分からなかったのか、唖然とした後に叫び出した。


「き、きききき、貴様ァッ!! し、死にたいようだなぁ!! 初めてだったのに! 初めてだったのに!!」


 クラスの友達と思われる人間も驚き騒ぎ出している。


「俺らにできないことをやってのける、トコロテンはカックィィィイイッ!!」


 心太シンタ、と名付けられているためか、渾名がトコロテンになっているようだ。親御さん、ちょっとどうかと思うよ?


 クラスの女子は軽蔑の眼差しでこちらを見て来る。どうやらトコロテン君の記憶を読んでいると、普段からボケッとしており、怠惰な性格だったようだ。


 学業も得意ではなく運動も並み。特徴と言えば老け顔で背が高いくらいか? 顔は私と相違ないが親は不倫を疑われたのかもしれないな。


 小さいころ川で流されそうになった花蓮を助けたところ懐かれそれから近所で遊ぶ程の仲になったそうだ。生臭な性格の私は、良く花蓮に世話を焼いてもらい世話焼き女房としてクラスでも有名だったようだ。


 なんとできた少女だろうか。これからはお礼をしなければな。


「すまない花蓮、目が覚めたんだ。こんなに綺麗な花蓮にいつも迷惑をかけていてはな、と。私は君に好意を抱いているようだ、これからも私と仲良くしてくれたら嬉しい」


 クラスの女子が軽蔑し眼差しから好奇心の眼差しに早変わりし。キャーキャー言い始め、花蓮の顔は赤く紅潮していた、


「まぁ、落ち着き給え。花蓮これが素直な気持ちだ。別にこれと言って今までと変わることはない。ただちょっと、君と触れ合う時間が少し増えるだけだ――冷静になって欲しい」


「――なれるかぁッ!! 何か変な物でも食べたんじゃないのかぁッ!! 物臭な貴様がこんな口説き文句を言えるはずがないッ!」


「そうか――花蓮は私に事が嫌いなのか……わかった、なるべく普通でいる事を心がけよう」


「い、いやッ! そうではなくてな! 嫌いではないんだぞ!?」


「花蓮は私の事を好きなんだ――ありがとう。これからもよろしく」


 花蓮の手を優しく握りしめて微笑む。


 手を離すと自らの机に座りスマホをポチポチし始める。


 うむ、年代的には私のいた世界と変わりないようだな。情報の収集を行わなければな。後方でプルプル震えている花蓮がいる気がするが気にしないことにする。


「あいつすげーな。壬生さんが丸め込まれちまった。ついさっきまでペシペシ頭叩かれていたのにな」


「ああ、奴は覚醒したんだ。高二病という病に。遅咲きのデビューなんだぜ?」


「マジかよ。壬生のこと大好きな仙崎とかブチ切れるんじゃねーの? トコロテンの事、目の敵にしていたし。暖簾に腕押しって奴? 荒れるな」


「ああ、来るぜ、嵐が」


 背後で不穏な会話が聞こえて来る、花蓮はすでに席についており恨みがましく私の背中を視線で攻撃してきている。


 まだ教室に来てはいないが仙崎とやらが花蓮の事が好きなようだ。全く記憶にもさほど残っていないようなのだが。

 

 ホームルームが始まる頃には仙崎とやらもやってきたがクラスの女子に人気があるらしく何人も女子が擦り寄っていた、あれが私の若き頃のいた“リア充”“クラスカースト上位”というものなのだろうか?


 充実していたとは言えない朧げな感覚はあるが、昔の名前を憶えていないのでハッキリとしないな。


 おや、仙崎が私を睨んでいるぞ、気にしない気にしない。


 



 ホームルームが終わり授業の準備をしていると仙崎が話しかけて来る。


「おい、花蓮に無理やりキスをしたってな!? 何様だ貴様は! 俺の花蓮だ!」


 おやおや、クラス内で愛の告白かい? 初々しいねぇ。


「――だ、そうだけど? 花蓮的には?」


「仙崎と付き合った覚えはないし私はお前の物でもない」


「――だ、そうだ、ねえ仙崎。違うってよ?」


 唖然とした顔をしているが本人が違うというなら違うのだろう、全く迷惑な奴だね。腹を立てたのか仙崎が殴りかかって来る。

 

 周囲が騒然としているが、腕を躱し、手首を掴むと捻り上げ床に叩きつける。


 首には踵が押し込まれており、少しでも力を加えれば腕の筋が切れるだろう。


「暴力はいけませんよ? ご・め・ん・な・さ・い、は?」


「き、きさまぁ――ぐぇ、やめぇ」


「ご・め・ん・な・さ・い、は?」


「――ご、ごめんなさい」


 うむ、謝るのなら話してやろう。話した瞬間私の腰に掴みかかって来たので顎を砕く膝蹴りを食らわせた。


 叫びながら倒れているが周囲には飛び掛かった仙崎がたまたま私の膝に当たったように見えただろう。


「おや、大丈夫かい? 暴力はいけないぞ? こうして事故が起きるんだから。大丈夫かい? 保健室いこうか?」


 これは、病院で成型しないといけないレベルだな。全治、二、三か月かな?

 

 授業を行う為にやって来た先生に周りの人間が説明を始めている。明らかに花蓮に振られた腹いせに殴りかかった仙崎を抑えたが、離したすきに突進攻撃をして膝に当たっただけなのだから。


 私に若干の恐れがクラスの人間にあったためか、きちんと状況を説明してくれた。先生が保健室に付き添って仙崎は連れていかれた。


 私を見る花蓮の目が鋭くなっているが特に気にしていない。だが、思うことがひとつ、異物はどこに行っても異物でしかないのだなとつくづく思う。





 保健室から帰って来た先生が言うにはすぐ病院に連れていかれたとの事、事故ではあるがなるべく喧嘩をしないようにとの事、私はお咎めなしだ。殴りかかられたのに許しているし、被害者だからだ。まあ態と顎を砕いたのだがね。せっかくの学生生活をああいう小物に邪魔をされたくないからね。


 それから昼食の時間までに受けた授業はとても新鮮だったと言っておこう。社会の授業が知っている歴史と違ったのが面を食らったがそれ以外の物理、数学の理は変わりないようで安心した。


 昼食は花蓮がお弁当を持ってきてくれている。こんなに良妻賢母なのに私といったらボンクラだったようだ。ああ、出し巻きが美味しい、美少女が作ってくれた昼食はなんてうまいんだろう。――凄い疑われているな。幽霊の存在でもいるのかこの世界は?


「――何を疑ってるんだい? もしかして退魔の家系とか?」


ざわり、と空気が変わった、周囲のクラスメイトも何事かと驚いている。気配の中心は壬生花蓮その人だ。


「ああ、本当にあるんだ。日本刀を振り回し悪・即・斬、カッコいいよね。もしかして退魔符とかあるの――ああ、あるんだね、陰陽道の五行思想とか? へーそうなんだ。霊刀とかあるの? 見てみたい。

 もしかして鬼退治とかするの? 違うのか、悪霊、怨霊、妖怪、怪異、――どれも当たりか。鬼は使役するタイプかな、私も欲しいな。――ん? 多分私が何かに取り憑かれていると思ってるんだよね? 答えは違うんだけど、君は言って分かるタイプじゃないし一緒に居ればいいんじゃない?」


 続けざまに内心を読まれていった事が苦々しく表情に出ている花蓮、きっとそういう所指摘されているタイプだね。


「きっと君は感情的になるタイプだ、それで失敗もあったことがある、あるね? 特に身内を大切にするタイプだ、しかも自身の力を認めてもらいたくて功績を焦っての失敗だね、当たりか。ほらこうして私に読まれていることがきっと家族、もしくは師匠、師匠だね。言われてることなんだと思うよ? 

 その、怪異? とかにも、知性が高く、情報を与えないように、冷静に事に当たって欲しいんだと思うよ? 私が怪異だったらどうする? 君の大切な幼馴染を人質に取られた上に家族構成までバレている、戦力の把握もされかけているし、今の現状何て最悪だ。クラス全員が人質だね? ねぇ、なにか言いたいことある? 黙ってちゃあ昼食を美味しく食べれないよ?」


 ブルブル震えながら顔を青くしており、少し涙も出て来ている。少し虐めすぎたかな。そっと、手を重ねるとビクリと背が飛び跳ねたが払いのけはしなかった。


「説明しても信じないよねぇ、怪異でも何でもないんだけど――ちょっと昔の記憶を思い出しただけなんだけどなぁ……前世とか? 信じれないでしょ? 一緒に暮らしてきたのも私だし、別に何かしようとも思ってないし、結局どうするか決めるのは花蓮じゃないのかな? 

 信じて今まで通りにするか、家族と相談して私を殺しに来るか二択じゃない? 私はわざわざ無罪を主張する為に拘束されたりしないし、殺しに来るなら君の家族全員を殺せる自信はあるよ?」


 再び震えだす、私しか会話していないんだけど……。喋ってくれないよね。


「まあ、家に帰ってゆっくり考えたら? 今の君なんて一瞬で殺せるよ? ――ほら」


 彼女から見れば、首筋にいつの間にかするどい短剣を付き突けられている。身体も拘束され声すら出ないはずだ。


「見えなかったよね? 君はここで一回死んだ。無残に、判断も出来ず、幼馴染も救えず、クラスメイトも皆殺しにされた、ハズだ。そのポンコツな脳味噌を叩き起こせ戦場を想像しろ。――少しは目が覚めたか?」


 目の色が変わり今にも殺さんとする眼差しを向けてきた。


「――少しはマシな顔になったな、まあ、それだけちゃんと心構えを持っていないといつか誰かに殺されますよって事。まぁ、君との関係性も崩れ去ってそうでちょっと悲しいけどね。信じてくれないなら、殺すしかないだろうし。花蓮と呼んだら睨まれるし。はぁ、もういいや、もし、掛かって来るなら遺書でも書いておきなさい、家族に相談してね? 君との生活は楽しかったよ」


 それを最後に自分の席へ戻った、周囲には痴話喧嘩としか思われていないだろうが……ちょっと悲しいな。

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