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願いの空間

 ダンタリオンが宇宙空間を漂っている。


 そういえばこの空間も久しぶりだな、異星体を吸収していた時以来か?


 超望遠でモニターに映し出されたソロモン財団出資の工場や、防衛本部の営みが伺える。


 武装の具現化の概念を併用してダンタリオンの周囲に浮かぶPCC兵装は全高一キロを超えている。


 バルバトスの概念兵装がなければ、即席でこの大きさの武装を出すことはできなかっただろう。


 余りにもの大きさでフォトン機関でのチャージに時間がかかるのが難点だが、破壊力は想像できない。


 恐らくバエルコアごと消滅するだろうが、次元操作の解析は完了しており今更惜しくもない。


 きっと、ソロモン財団の連中は必死に私への対抗策や戦力をせっせと用意している最中だろうが、全て無駄に終わる事だろう。


 具現化で十門もの巨大なPCCを用意したのは大人げなかっただろうか、アニメ好きだった友人が見ればきっと、コロニーレーザーじゃね? とでも言われるであろう。だが待って欲しい、コロニーレーザーは何倍も大きいぞ? と。返させてもらう。


 そろそろ、フォトンの充填、圧縮率共に完了する。


「キリエ司令官、そろそろ、AUSの終焉だ。射撃シークエンスに入る。見物でもしていてくれ」


『了解、盛大な流れ星になりそうだな。ワインでも嗜みたいものだ』


>>MPCC兵装準備完了/目標照準までカウントファイブ


 ――五、四、三、二、一、発射。


 視界全てが蛍光色で彩られる。地球の自転を計算に入れて照準を固定している。恐らくゴリゴリと大陸が削れている事であろう。照射されるMPCCに毒の概念さえ付与している。確実に殺すと書いて必殺だ。生かしておくつもりはない。


 汚染された中心部は人の住める土地ですらなくなるだろう。


 数十秒ほど照射したのでMPCCを停止させた。目標確認。


[――目標の殲滅を確認。次元の楔、確認できず。作戦成功です]


 バエルの呪い。次元の楔から解放された。悪魔の漂流自体はこの世界の流れみたいなもので防げはしないが、今までの様に頻発に出現する事は無いだろう。


 大陸が真っ二つに割れており、海水の流入が始まっている。マグマの層まで到達しており爆発的な衝撃と、地震で大陸が壊滅してしまっている。


 ちょっとやり過ぎとも言えなくもないが、散々政府機関や避難警告を出してきたんだ。世界に対する見せしめとして残るだろう。


 巨大なMPCC兵装の具現化を解除して、破壊した大陸の様子を見に地表へ降りて行く。大気圏突入の空気の圧縮熱が、宇宙空間で冷めた身体にちょどいい暖かさだ。


 眼下にはマグマによる水蒸気爆発が起こり、途轍もない惨状となっている。

 たまたま浅い位置にマグマ溜まりが存在していたことが原因だな。


 海底火山の比ではない噴火が起こったのだろう。


 防衛本部の位置には何も残っておらずバエルコアの反応もない。待機していた機体と共に消滅したのだろう。


 消失の確認できたので帰投する。この映像記録も取って置こう。







 バエルコアによる誘引の儀式を全て解除された事が確認できた。その証明を私はできないが、信じてもらうしかない。


 その旨をキリエ司令官に伝えたところ、お疲れ様、と笑顔で答えてくれた。

 人類の悪魔に対する侵略の総数が減るだけでも救いだとも。 


 消滅した大陸の関しては何も言われなかった。私に対する問い合わせはチラホラあるそうだが、どうぞご勝手に、国が消えてもいいならどうぞと、答えているそうだ。


 悪魔誘引の原因を暴き消滅はしたが殺しすぎたのも私だ。それに関する責任は全て私に回してくれと言っている。


 これからフォトン研究や、バエルパーツの生産停止、代替技術の研究が盛んになっていくのだろう。月島ケイは家族とは戸籍を外れ、香月ケイとなって養子になっている。

 

 子供がいる年齢じゃないのにとぶつくさ言ってはいたが、ケイ君との仲は良好で、姉妹たちも香月の名を貰っている。


 分身体を出したところ案の定姉妹に連れて行かれそうになったがさすがに人数が多いので数体で我慢してもらった。


 ケイ君とアカネ、キリエは断固として譲らなかったな。


 そろそろ、次元の狭間へ向かい調査を開始する。想定外の出来事が起きる可能性があることを全ての世界の関係者にも伝えてある。


 何人かに泣かれたが頑張った。本当に頑張った。子が増えたがそれは許容範囲内だ。レギオンメンバーからも我が子があんなに生まれるとは……もうすでに一族を名乗っていいかもしれない。


 一族名はどうするか? という問題だが。今まで名乗った名は。


 “シンタ”“シンタ・D2”“シィーン・トゥ”“バゼル”“ダンタリオン”。


 指折り数えると五種類もあるのか。名字にするならば、ダンタリオンが使いやすくて良さそうだけどな。存在がそのものになっているしな。


 妻たちに提案してみようと思う。いつまでも姓名だけではな。


 



 次元操作の要領で座標がコアに残されている最初の空間を開いて行く。

 虚無の空間であり、危険性が高い為、現在太陽系の端まで来ている。


 少しづつ空間が開いて行く、虚無が私の存在をゴリゴリと削ろうとするもすでに耐性を得ている今、耐え忍び吸収まで至れるはずだ。


 ――苦しい。やはり虚無と言うものは概念を超えたナニカであった。


 もはや、言葉で表現できないエネルギーに翻弄されつつある。

 アラメスも頑張ってくれているが、時の流れが曖昧になってきている。

 しばらく連絡が取れなくても各世界にいる私が何とかするだろう。





 懐かしい。視界内にはかつて見た空間、薄汚れた灰色の空間ではなく真っ白な空間だ。願いを叶える事で薄暗くなり、虚無に満たされた。


 願いを考えずにアラメスと共に解析に回っている。


 簡単な願いを実験的に叶えてみようとアラメスと話し合い、内容も決めた。

 現在の身体、怪物、概念、権能、魔術、魔導、異星体、フォトン、――そして銀。

 

 全てを統合し、うまく私の能力にアジャストしてほしいという願いを祈る。

 もちろん、アラメスもだ。コアに収納したものは除外してだ。


 周囲の景色は気持ち灰色を足された程度で済んだようだ、少し眠くなってきたので、あとはアラメスに任せることにする。

 




[――おはようございます]


 ――おはよう、アラメス。どれだけ寝ていた?


[――地球時間では十年ほどです]


 ――ああ、怒られる。いや待てよ、私とは繋がっていたか?


[――いえ。ですが時間の概念はここにはないですよ?]


 ――そうか、待たせてしまったな。寂しかったか?


[――まぁ、少々]


 ――愛してるよアラメス。


[――取ってつけたような言葉。私は怒ってませんよ]


 ――そっか。虚無の解析と吸収はできたのか?


[――問題なく。私達の最適化と追加の機能をいくつか増やしました]


 ――目立つ機能は?


[――細かいところは環境適応能力を私が選択し特化できるようになりました。そして成長能力強化、次元渡航能力、大量のブランクを消費してあなたの存在強化を行いました、もともと持っていた者なので明確な方向性を整えただけです] 


 ――そうか、次元の狭間も作成できそうか?


[――結果を言えばこの次元は自然発生するもので永遠にいる事はできません。様々な世界のエネルギーの集積所です、願いをたっぷり叶えてもらい消費を推奨します。そのかわり次元の狭間を作成できるようになっています、時間はかかりますが誰にも影響されない狭間を作成予定です]


 ――任せた。残り願いはどうしようか?


[――能力作成と付与。キャパシティを超えるのでランクを下げ、今ある能力の複製付与ですね。これで限界を迎えるでしょう]


 ――確かに、身内に付与できるならば心強いな。了解だ。


[――願いと共に空間が消え、ランダム転移を開始します、決められた世界など楽しくないでしょう?]


 ――もちろんだ。とっても私好みだ。


[――またトラブルに巻き込まれるのでしょうねあなたは、まったく。]


 ――付いてきてくれるんだろう? どこまでも。


[――もちろんですよ、駄目亭主。ほら、行きますよ]


 ――頼んだ。


 願いを叶えられた感触を得ると周囲の虚無が迫って来る。虚無吸収を得た私には栄養源でしかない。しばらくして次元を越える感覚が押し寄せて来る。


 次の世界はどんな世界だろうな、楽しみでしょうがない。

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