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災難でしたね

 人間姿でNAに飛び、情報と照らし合わせ確認した悪魔の一体を観察する。

 枝分かれした角から雷撃を発生させ、街並みや全ての物が焼き焦がされていく。


 大気からはひどい匂いが漂い、俗に言うこれがオゾン臭というやつか。


 悪魔達はこの大陸の中心部に向かって集まるように移動を行っている、何か目的があるようだがこいつらを減らしておいて損は無いだろう。


>>神の権能/加速させる光輪アクセラレーション・ハーロ


 ――ボパッ。


 奴からすれば小さなこの身体なんぞ認識していまい。


 私の身体を高度上空から弾丸のように加速すると、槍状に脚部を変化させ巨大な悪魔のうなじの部分に一気に突撃する。


 ゴリゴリ、と肉体と骨格が砕ける音が聞こえたが、すぐさま銀の浸食を開始、脳髄からのコアへと一気に掌握する。


『散々悪魔を吸収してきたんた、知能の低い貴様らの掌握に手間取るなんぞありえない』


 コアを包み込んだ悪魔の肉体は、動きを停止させ私の餌と成り果てた。


 体表を銀で即座に包み、量子化してコアに収容する。インベントリに入れたら時間が停止して吸収する事が出来なくなるからな。解析を進めつつも他の悪魔を探しに移動を開始した。


 先程の悪魔はフールフールと言う名だったらしい。二体目の悪魔バルバトスを収容し終わり周囲の通信を傍受して、状況を把握しようとしたら、そう名付けられていた。バルバトスは今までの悪魔で一番の巨体であり、武器を具現化する概念兵装を持っていた。


 その具現化された弓から放たれる矢は衝撃波を纏い、目標を打ち抜いて尚、止まることが無かった。勘が鋭いのか私の接近にも気づき、仕留めるのに苦労させられた。


 狩人の名称から全体的に影響を与える概念なのかもしれない。解析が進めば判明するだろう。

 

 それにしても残り七体も悪魔が移動中とはこの国も災難だな。


 そのうち五体程バエルと、私が知らない悪魔の機体が応戦をしているらしい、劣勢ではあるがその間に私が残りの二体を始末しよう。







 我がステイツに悪魔共の集団が“ここ”を目掛けて集まって来ていると、聞いたときは酒場のネタかと思ったさ。ギリギリ二桁じゃないから大丈夫です? 貴様のその腐った頭に銃弾を撃ち込んでやろうかと何度思ったか。


 始まりは、ジャパンのモンキー共が寝言を吐いてやがると思っていた、だが糞爺共の息のかかってない組織に内偵をさせたところ不正の証拠が山ほど出て来るわ、良くもまあ、ここまで腐った事をしてきたものだと感心さえしたね。

 

 クローン計画は私でも存在は知っていたし容認はしていた、非合法な方法だろうとは思っていたがそれが合衆国市民まで手を出し始め、誘拐し市民を実験材料にしているとまで来たら、もう私の敵だ。


 上層部の奴らを追い詰めたと思ったら、地下施設に立て籠もりこもりやがって“何か”の儀式を行っていると聞いている。まさか、あれがジャパンの言っていた悪魔の誘引の儀式だとはな……。おかげでこの有様だぜ。ジャパン、もう私はモンキー等言わない、君たちは正しかった、糞ったれの爺は怪しかっので早めに殺しておくべきだったッ!!


 バエルタイプ三機とステイツが確保しておいたデカラビアの実験機二機が、分散して悪魔の撃退に当たっている。


 だが情報に上がっていた悪魔の数は九体いたはずなのだが、いつの間にか五体まで減ってやがる。神が我に味方したか? いや。そんなハズはない。


 ジャパンが悪魔との接触に成功したと聞いていたが、観測班がバルバトスと格闘戦を行っていたのはダンタリオンと言われる機体だったそうだ。


 その機体が空を飛びバルバトスの顔面に飛び蹴りをカマしてやったとか。とんだクレイジーだぜ。数十秒ほど殴る蹴るの応酬のあと頭を握り潰し、バルバトスの肉体が消え去ったとか。


 戦闘報告書には悪魔の特性を我が物にできると書いてあったが、そいつが暴れ始めたらもう最悪なんてもんじゃねえことが分かる。頼むからステイツの味方で居てくれよ? バーガー奢ってやるからさ?


「バエルタイプが応戦している現場にダンタリオン出現、悪魔へ攻撃を開始しています!!」


「――ッ! 絶対敵対すんじゃねーぞ! ようこそステイツへとニコニコしながら歓迎しやがれ! それと本部の地下に爺が引きこもっている事を情報として送りやがれ! 本部が原因だと後から気づかれてみろ? ここそのものが殲滅対象にされちまう!! わかったな!? 急げ!!」


 すぐさま敵対の意思はない、むしろ協力させて欲しいと通信を送った所、気さくにも色良い返事をしてくれた。


「やぁ、司令官殿も大変だね、どこの国も老害が若者の道を阻むものなのかね? えっと、君が私に特製バーガーを奢ってくれるんだよね? 期待して待ってるから、それと機体の連携は大事だ通信は繋げておくよ――一度食べてみたかったんだよね本場のバーガー」


 oh……ダンタリオンがバーガーで釣れちまったぜ。バエル一機の建造にも国が傾くほどの予算が搾り取られたって言うのに、なんて格安で懐に優しいナイスガイなんだ……ホレちまいそういだぜ。ああ、尻は駄目だぞ?


「聞いたかてめーら! 俺が特製バーガーの奢りでダンタリオン様が協力してくれるってよ! ステイツ流の歓迎会を悪魔共にみせてやんなぁ!!」


 その後、ダンタリオンとバエルの連携で素早く五体の悪魔の処理が完了し、必要な悪魔の材料まで譲ってくれた。なんでもすでに四体も悪魔を屠っているから、さすがに取り過ぎだとの事、殲滅までしてくれた上に材料までは譲ってくれるとは男の度量がちげぇと思ったぜ。

 

 ASIAやEU連合が壊滅したって聞くけどよ。どうせ爺共の手先なんだろよ、ちゃんと言葉を交わせばこんなに人の好い御仁なんだ、付き合いってものを分かっちゃいねーな。




 さすがに対面に、ダンタリオンの旦那が来ていると緊張してしまう。現在地下空間の儀式場へ案内している所だ。


 なんでも糞爺共が起こした原因のバエルコアを回収し、楔とやらを解除しないと悪魔共が永遠とやって来るらしい。聞いてるだけでブルっちまったね。


「ダンタリオンの旦那。今回はほんと助かったぜ! 爺を捕まえて牢屋にぶち込む前に行動に移されちまった、面目ねえ」


「いえ、あなたと知己になれたことは私としても良い結果になりました。諸悪の根源はバエルコアと老害ですのでお気になさらず。――開きましたよ」


 旦那がセキュリティーコードなしに開かなかった扉を開けちまって、巨大空洞の奥には爺共が談笑してやがった、銃で即座に打ち抜かなかった俺は偉いと思う。


「貴様ッ! 爺共がぁ!! もう終わりだ、さっさとくたばりやがれ!」


 手錠を持ち近づこうとするもダンタリオンの旦那に止められた。


「――待て、あの老害、人間やめてるぞ? これは、コアを取り込んだな」


 なんだって? ニチャリと笑う爺共がドロドロと気持ち悪いものになって混ざり合っていく。五メートル程の大きさの醜悪な化け物となった。

 

「哀れな、それが老害の求めた高次存在と言う成れの果てか? ――そうだな、これから友好を気築く友人にプレゼントを上げようかね。アレク君ちょっとロボット操縦したくないかね?」


「ファッ!! もちろんです。男のロマンってやつですね! ――まさか」


「そう、こいつだ。――それと、この指輪を付けるといい、操縦方法が頭に浮かんでくる。友好の証だ」


 ダンタリオンの旦那が言うと二十メートルほどのマッシブなカッコイイロボットが目の前に現れやがった。


 指輪を付けていると不思議と感覚で操縦方法が分かる。コクピットが開くと昇降用のハーネスが降りて来る、それに足を掛け、登っていく。


「偉大なステイツ魂を見せてやれ、きちんと映像に残しておいてやる。君は今日からヒーローになるのだよ。――それと原因のバエルコアと楔は私が何とかして置く、行け」


「そう言われちゃ熱くなんねえ男はいないぜ! 行くぜ!! ブレイブ!」


 操縦桿を握ると答えるかのように排気音が唸りを上げ、背部ブースターを吹き鳴らし、醜悪な悪魔もどきの顔面を殴り抜いた。


 壁面に吹き飛んでいく悪魔もどき。驚愕の表情をしている顔を見るとスッキリするな。旦那がプレゼントしてくれた最高のおもちゃ使わせてもらうぜ!


「ブレイド展開ッ!! 我がステイツに蔓延る悪は私が断罪する!!」


 いいね、舌が絶好調だぜ。回していくぜ!


 頭頂部から展開したブレイドを一気に振り下ろし真っ二つにする。


「一刀両断ッ!! 悪が蔓延る事は無し!! 我、ブレイバーアレクが存在する限り!!」


 決まった……爺共はグズグズに溶けてコアのような物だけが残っている。


 ダンタリオンの旦那がそれを回収して手を振って来た、それに答えるためにコクピットハッチを開けてこちらも手を振り返した。


「カッコ良かったじゃないかアレク、その機体は君専用としてプレゼントしたものだ、新技術のフォトン機関を搭載しており、戦闘継続時間も長い。マニュアルと整備書を後で渡しておくよ。

 ――君だと見込んで渡すんだ、大切に扱っておくれ――ああ、バエルコアと儀式の楔は解除した、内容の詳細のデータチップと君のカッコいい映像も渡しておくよ」


 とんでもねえ、嬉しくて涙が出て来てるぜ。こんなカッコいいロボットを操縦できるなんて夢にも思わなかったぜ。


「これからステイツ復興に内部統制等、君は大変だろう。頑張ってくれよヒーロー君、この情報端末は私へ直通だ、情報もこれを通じて流しておく。便利に使ってくれ」


「――ありがとう旦那。……時間が出来たらおすすめのバーガー食いに来てくれ……グズッ……歓迎するぜッ!」


 ああ、鼻水が出てきやがる。絶対旦那とと特製バーガーを山ほど食ってやるんだ。それと、この機体を皆に自慢してやらねえとな。


 地上部へ戻り事の説明には旦那も同行し、映像と共に顛末を説明してくれた。現在のジャパンは内部統制が進み比較的クリーンとなっている事と、何かあれば連携する事をお勧めされる。

 

 フォトン技術は驚いたことに旦那からの技術供与だそうだ、平和的利用を目指せるのなら、いつの日か機関の技術の提供を視野に入れているとの事、絶対に武力闘争は起こらないとは言えないが、そういう方向を目指す気持ちがとても大事だと語ってくれた。


 かっけぇな旦那。期待に応えられる男を目指すのも悪くねえな。旦那は悪魔だが元は日本人だったそうだ。ジャパン――好きになれそうだぜ。

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