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犯人はおまえか

 地下防衛本部最下層、儀式が行われ楔が打たれているはずの地点だ。

 天井までの距離が高く、悪魔本体が移動しても不都合の無い作りをしている。

 中央付近には分割されたコアが厳重に封印されている。

 コアに気取られないようゆっくりと周囲から銀をたっぷりと満たしていく。


 すぐに気体すら逃げられない密閉された空間が出来上がり悪魔の巨体をもってしても逃げ切れない空間が狭まっていく。封印の棺に触れる瞬間コアが鳴動し始めるもすでに私の腹の中、瞬く間に飲み込んでしまった。

  

 バエルの能力は……そうか、貴様か。


 こいつの能力、概念兵装は次元操作。この世界にやって来た私に、世界に仕掛けられた楔が私を悪魔のコアとして取り込もうとした。もともとは悪魔の要素を現世に固定化、分割したコアに誘引し、取り込むシステムだった。


 別次元の私がやってくることは想定外だったようで、こうして逆に私の養分となり果てるとはな。まだまだこいつの身体とコアは、共に分割され世界各地に散らばっている。順次回収し私の糧とする。


 本部内にあるバエルの予備パーツはすでに私が回収しており、特別な楔であるこのコアを解析すればこの次元操作も取得できるはず。そうすれば誘引の楔も解放する事が可能だ。







 バエルの真実、世界各地に広がるコアと本体を回収すれば楔の解放ができる旨を朝倉指揮官、いや日本内閣防衛大臣件防衛本部司令官だったな。彼女に全てを伝えた。この事実を世界に公表する事はすでに決定しており、彼女の爺さんが代理で日本の代表を務めている。


 遠縁の朝倉の関係者を切り殺した時には爺さんが感動し、ついに朝倉の血が目覚めたのかッと、赤飯を炊くと言うドラマがあったそうな。


 日本は官僚が悉く殺され非常事態を宣言し、緊急戦時体制へ移行。独裁政権を樹立した。本格的に階級社会へと突入した。すぐさま海外の悪魔関連の人体実験や癒着に関連のある企業を摘発。強制捜査に乗り出した。


 これに海外の駐在大使が反発するも証拠を突き付け戦争も辞さないことを宣言。人体実験の内容と悪魔の真実も世界に映像付きで公表した、もちろん老人たちは捏造、悪魔の扇動だと主張するも、世界の様々な企業のシステムが一斉にダウンし経済破壊が発生。証拠の流出が止まらず粛清の嵐が起きた。


 慌ただしいなか私は何をしているかというと。


「お父様、ご飯が出来ました。一緒に食べましょう?」


「お父様とご飯を食べるのは私よ? あんたはどいてなさい」


「何を言ってるの? 私が一番愛してるの。渡さないわ」


 月島ケイの姉妹。彼女達を新たな種族として疑似コアを与え、グラシャラボラスを基本として、アガレス、ダンタリオン、バエル、概念兵装を低級ではあるが扱えるように調整した子達だ、戦闘プログラムに月島ケイの記憶も与え普通の生活を送らせようとしたのだが刷り込みのような状況になってしまった。


 あの、バラバラにされていた子も、全部まとめて再生を行ったため記憶と意識の共鳴が起き、数十人もいるのに全く同じ行動を取ることが可能となった、彼女たちは血を分けた本当の姉妹であり地獄さえも共有し生きてきた。その子たちが救われた私を慕うのも仕方がないのかなとも思う。


 ケイ君も妹ができたと凄く喜んでおり、猫かわいがりをしている。彼女らも姉としっかりと認識しており、なおかつ記憶すら貰っている。ケイ君の感情も後押ししたのかなかなか私の元を離れたがらない。


 戦闘能力もアカネよりも概念兵装の分、対人では無類の強さを誇るだろう。


 ケイ君の乗るバエルも吸収対象の為、代わりにダンタリオンの身体を複製作業を行っている。もちろん兵装増設する予定であり、PCC、PCB共に標準装備にする。


 背部のバックパックにスラスターも増設し飛行も可能とさせる、しばらく格納庫に釘付けだがそう時間はかからないだろう。


 研究所で制御プログラムを組んでいるときにアカネが。


「あら、いつの間に子沢山になったのね。ママ、困っちゃう」


 と、言ってくれたのでその通りにしてやった。後悔はない。







 ダンタリオンの兵装や装甲の換装マニュアルを整備班に渡し、エデン世界の機体も五機ほど整備をすませ、全てをロールアウトさせる時に朝倉司令官がやって来た。


「なにか久しぶりの感じがするな。忙しそうだな?」


「そうだな――その喋り方の方が好印象なのだが、猫でも被っていたのか?」


「胡散臭い雰囲気を纏いたい年頃だったのだよ。欺くのが楽しかった、それだけだ」


「ひどい男だな。私に囁いた甘い言葉は嘘だったのか?」


 彼女の頬を撫でながら答える。


「――全て本当なのだが、気に障ったか? それとも続きをしようか?」


 頬に添えた手を掴むと思いっきり噛みつかれる。苦笑いをして、返事とした。


「まったく。女遊びも程々にして置け。だが、また飲み誘われるのを断る気はない。その時は覚悟して誘うんだな、次は逃げないし、逃がさないぞ?」


「分かった。予約しておくよ――ところであまりいい情報を持って来てはいないようだがどうした? まぁ、攻めて来るんだろう? 彼女が」


「良く分かったな。報復だとさ。グラシャラボラスの機体と、EU、ASIA、の連合軍だ。どうしたらいい?」


 少し考える、グラシャラボラスの機体はケイ君の希望通り確保するとして、連合軍は爺共の手先だ。――殲滅で決まりだな。


「私が出よう。憎まれ役は一人で良い、私のツケは私が払おう。侵攻予定ルートと、時刻を教えてくれ。全滅させてくるよ。それとグラシャラボラスに乗っている月島ケイのクローンの回収だな」


「まったく、最初に合った時は悪魔的に恐ろしいと思っていたが今や頼もしい限りだ。それと来週の夜あけておく。キチンとエスコートして飛びっきりの甘い言葉を囁いてくれ。きっと普通じゃいられなくなるからな――では、んむッんッー」


 余りにも誘われている言葉を吐くものなので彼女の腕を掴み取り、無理やり長いキスを楽しむ。次第に力が抜けて行き、唾液の交換すら行っていく、ポフポフと背中を叩かれると漸く唇から離れる。


「――ぷはぁ。――もう、まだ早い……だが、悪くなかった。また今度楽しみにしてるぞ」


 その瞬間を見ていた整備班共がはやし立てて来る、朝倉司令官は恥ずかしがりながらもまんざらでもない顔をし、皆が驚愕の表情になる。


「まぁ、そういう事だ。ほら、機体の起動準備に入るぞ。この世界では新技術であるフォトン機関の初始動だ、何が起こるか分からないから防御態勢を忘れずにな」


 クリス女史の開発した機体も、元は十メートルだったが、十八メートル程に大型化しており、飛行、射撃、格闘を高水準で行える量産機として採用されている。


 そこまで必要ないと思っていたが予想外に使う時が来るものだなとクリス女史に言われていた事に納得した。もちろん装甲の防御力も堅牢で、概念兵装の炎壁も数十秒ほどなら堪えることが出来る、その間に撤退を選択させる予定だ。


 むしろ対人、対軍用としての機体と思ってもらった方が正しい。この世界の兵装が戦車、戦闘機、ミサイルと、かつての地球と遜色なく、例外が大型のレールキャノンぐらいかね? なのでこの新型機ブレイブが役に立つ。飛行速度は音速を超えないがフォトン機関を採用しているので戦闘継続時間が馬鹿みたいに長い。コクピット内にはネカフェセットも完備しており、操縦者となる月島姉妹も大満足の笑顔だ。


 ケイ君専用のダンタリオンも起動に成功し以前のバエルよりも実働数値はかなり上昇している。バエルは吸収されることを拒み続け、つい先日ようやく私に飲み込まれた。二週間近くかかってしまうとはなかなか嫌だったみたいだな。


 実働訓練も終わり、格納庫に帰還する際に侵攻予定ルートと大体の予測時刻が情報端末に送られて来た。


「やはり、九州からの上陸作戦か。意外なのは北海道からの二面作戦に出ないことだな、考えられる行動は――核か。アラメス、直ぐに調査してくれ、そして着弾地点を変更、EUにしてくれ。ASIAからの発射だと思う」


 この、予測を朝倉司令官に返信する。一応ハッキングを試みている事も伝えておく、と。


 開戦予測日時は一週間後、生きる喜びを今だけ感じておいてくれ、連合軍よ。

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