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悪人の最後なんてそんなもん

「ダンタリオンさん――やり過ぎじゃないですか?」


「ん? これ見る?」


 隔離施設内で見てきたものをデータチップに映したものだ、情報端末のスロットに差し込むと映像が始まった。


「――ッ! う゛ぅッう゛ぇッゲホッゲホッ」


「しかもコレ国立の病院だよ。機体の完成披露宴とかやってるくらいだからさ、知ろうと思えば知れる情報だよね?現に情報管理甘いってもんじゃなかったし――知らない外道、その結果を甘受していた国民、自分の分身がこんなことされてて恨まないの? 彼女達は絶望に包まれていたけれど、君はまだ私に何か言えるのかい?」


 それから、気まずそうにはするものの何も言わなかった。彼女たちは折を見て万全の状態で蘇生させると言うと嬉しそうに笑っていた。


 問題なのは朝倉指揮官に呼び出しを受けている事だ。





 眉間に皺を寄せて難しい顔をしている朝倉キリエ少佐。


「せっかくの美人が台無しですよ? まぁ、言いたいことは分かってますよ? まずはこれを見てください、納得はしないでしょうけど。私が動く理由にはなりますよ?」


 ケイ君にも見せたデータチップを手渡す、早速閲覧を始めるが、気分を悪くするだけで耐えてはいた。


「分かりましたか? コレ国立の病院でしたよ、情報管理もなっていないし、一般人でも分かる位置に資料が放置されていました。国家ぐるみですよね? それを享受していた国民も同罪と判断、消えてもらいました。それだけです」 


「――だがッ! 罪もない人間も沢山いただろう! 小さい子も優しい人間も!」


「だがも、でもも、ないですよ? これが原因、事実、それだけです。あと数か国程見てないのでもしかしたら消えるかもですね――で、その銃口は何で向けられているので?」


「貴様を行かせるわけにはいかないッ! 仲良くしていたのは間違いだったのかッ!!」


 どうしようかね、本気でここの人類に興味が持てなくなってきた。


「そうだ。これに関わっている人間なら殺して良いという事ですか?」


「駄目だ、しかるべき罪を償わせる……」


「それ、本気で言ってます? ――じゃあ、これを見て下さい。ここの上層部が行っている犯罪リストです」


 震える手でチップを奪い取ると目を見開いてリストを眺めて行く、その中には映像付きで現在進行形で行われている非合法な、誘拐、監禁、人体実験、裏取引、上層部で名前を書かれていない人間など朝倉指揮官以外いないはずだ。


「もう一度聞きます。こいつら生きている価値あります? 日本政府も関わってますよ? ああ、これがそのチップです、ついでにどうぞ」


 もう力の入っていない手で辛うじてスロットに差し込んだ。すでに顔は絶望に浸っている。その中には朝倉に名を連ねている人間もいる。


「朝倉の遠縁ですかね? 児童監禁、誘拐、強姦、殺人、それであなたはその親戚さんがしかるべき罪を償ってくれるんですか? 被害者に教えてきますよ私が、娘さんの具合が良かったって笑いながら殺しました。でも罪はもみ消されました、日本政府にってね――もう一度聞きます。どの人間なら殺していいんですか?」


「――もう、好きにしてくれ」


 何かを決意したのか殺気を滾らせて部屋を出て行こうとする。


「待って下さい。ここの上層部、皆殺しますよ? 良いですね?」


「頼む。徹底的に殺し尽くしてくれ、私に殺さねばならない者ができた」


「死なないでくださいね」


 あなたの事は私も気に入っているんですから。





 いつから悪人掃除が私の仕事になったんだろう。司令官とやらは捕まえて皆の前に引きずり出そうかね。事情を説明する人間は必要でしょう。


 さすがに手が足らなかったので数十名ほど身を分け、その日のうちに暗殺を決行した。


「アラメス、日本政府の罪状を公表してくれ、新政府樹立の予定もな」


[――了解、相変わらずですね]


 そうだよ、嫌になるね。


 足元には日本政府内閣大臣が数名血の水溜まりに倒れ息絶えている。


 会議室に女性秘書と楽しんでいたところ頭を撃ち抜いた、月島ケイはこんな日本を守っているのに報われないなぁ、ケイ君が守りたくなるように悪人退治を頑張りましょうかね。


「きゃああああああッ!」


 物音に不審に思った人が数名入って来た、下半身裸で脳天打ち抜かれている格好だが、殺された事が分かったのだろう。


 国会の会議室をゆっくりと歩き出て行くと警備兵に銃を突きつけられている。


「両手を頭の後ろに置いて跪けッ!! 殺人の現行犯で逮捕する!!」


「え、嫌だけど。撃てみたら?」


 パァン、と躊躇無く撃って来た警備兵は優秀だな。銃弾は鈍い音を立てて絨毯の廊下に転がった。


「私の事知らないか……銃弾も効かないんだよね? 君の職務に対する姿勢は立派だ、だが見て見な、あの下半身裸の中年守る価値ある? 命を落として欲しくないんだけど次打ったら殺すよ? 下品な中年を殺したものをただ見逃すだけだよ?

 いや、職務上不味いか。そうだ、家族いる? ああ、いるね、加奈子ちゃんに理沙という妻がね。これで脅されて仕方なく――が付けれるけどどうする? 実際に殺しに行こうか? 国会の会議室で乱交していた裸の中年を殺しただけだよ? 国に貢献していない?」


 さすがに理解したのか悔しそうに銃を降ろす。肩をポンポンと叩いてあげて軽く慰める。


「もうすでに数百人も重役を殺しているよ。クーデターってやつだね。今回よりいくらかマシな人間が国の舵取りをすると思うから大丈夫だよ? ああ、このチップを渡しておくね――日本政府の不正と罪状だよ。こいつら権力使ってこんなことしていたんだ。君は銃を下げ正義を成した立派な行動だよ」


 もうこんな面倒なことはしないと心に誓う。まとめて殲滅できる事がどれだけ清々する事か。





 分身の仕事も完遂し司令官も確保している。頭髪を握り十分な広さがある指揮観測所へ向かう。恐らく朝倉指揮官も一仕事終えている頃だな。


 日本直下の地下防衛軍本部の観測所には主だった人間が集まっていた。朝倉指揮官の服装には血痕が飛び散っていた。私の姿を見つけるとニヤリと清々しい顔をしていた。


「おや、朝倉指揮官、いつにも増して素敵な笑顔ですね――ああ、これお土産です、さっさと真実を語ってもらいましょう」


 名前すら知らない司令官。地下室で老人会のゴマすりを良くしていたのは知っているが内容は薄く私を利用して計画を進めるなどと妄言しか吐いていなかった。


 固い床に放り投げると、救助を求める視線を周囲に投げかけるも皆データチップと映像を全て閲覧しているので助けは来ないだろう。


「ああ、ありがとう。ゴミ掃除がここまで楽しいとは思わなかった。私には父の血が濃く受け継がれていたことが分かったよ、ありがとう。それで、司令官――さっさと話せ、それとも死ぬか?」


 もごもご言っているので口輪をはずす。うるさいだけなんだろうけど。


「こいつだッ! この悪魔が私をハメたんだ――ぎゃあぁぁああぁ!」


 うるさかったので足を打ち抜いた。チィンと薬莢が床に落ちる音がやけに響いた。 


「で、続きは?」


 まあ答えなくても知っているんだが、なぜ悪魔がくるのかだけでも教えて欲しいな。


「――――ッ。分かった――銃を向けないでくれッ! 話すッ話すから」


 ようやくポツポツと理由を話し始めた、最初は契約だった、知恵の悪魔バエルとの。半世紀前、高次存在へと至りたい老人達、バエルは他の悪魔を出し抜いて悪魔の王を目指していた、互いにメリットがありバエルの体とコアを譲り渡す。


 目的は悪魔たちのコアを集めバエルのコアと融合させる事。


 世界各地の支部など地下深くに分けられたバエルコアが存在し、殲滅していった悪魔のコアを収集、悪魔を誘引させる儀式を地下にて行いコアを誘き寄せる、本能のまま誘引されやって来る悪魔たちを防衛の為と偽り。殲滅させていく。


 バエルの身体は何かに使えないかと研究を行ったところ、細胞の培養に成功素体を増やし兵器化していく、搭乗者を増やすために悪魔誘引の儀式で楔を打ち込み適合者を作り出した。


 他にも悪魔の細胞を混ぜたり、クローン体による非合法な実験が繰り返され。


 世界中の老人達と政府要人は高次存在に至れるリストを作り共犯者となった。

 

 そして今回真実が私の手により暴露され今に至る、と。


「くだらない老人の戯言で世界が危機か、儀式を終わらせれば悪魔の侵攻は停止されるのではないか?」


「もうすでに世界へと楔は打たれた。解除も出来ないし、私にはどうする事も出来ない――これで全部だ」


「そうか。さよならだ」


 銃口を頭に押し当てあっさりと引き金を引いた。

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