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戦後処理

 バエルの格納庫へ戻って来ると何か慌ただしい様子が感じ取れた。

 ふわりとバエルのデッキに降り立ち慌てる作業員を捕まえ話を聞く。


「ヒッ――なんだ!? ああ、あれの事か!? コクピットハッチが溶けて開かないんだッ! あんたならどうにかできるのか!?」


 周囲もこちらに気づくと整備員たちが軽く悲鳴を上げた。それに構わずに腕に銀を展開しハッチ付近を吸収、解析を行っていく。――抵抗が激しいな。助けるついでなんだから少し貰ってもいいだろう? 今回ケイ君を助けたのは私だぞ?


 細胞共にそう強く念じると抵抗がなくなり大人しくなった。それでもわずかに感じる抵抗はしかたないなと言わんばかりの僅かな反抗心なのだろうか。


 スペックの高い生きた細胞も手に入れられたし今日は運がいいな。 


 しばらくするとハッチ内にぐったりとしている月島ケイが見つかる。


>>神の権能/看破の魔眼(ステータス開示)


 ふむ、皮膚が焼けて爛れているな。これは通常の医療じゃ間に合わないな。デッキへとケイ君を運び出すと床に寝かせる、医療班が駆け付けて来るが手で止める。


「私が治療する、重度の熱傷だ。死んでいないのがおかしいくらいだ」


 私が渡しておいた銀が応急措置行動を取っていたのが幸いしたな。胸の中心に突き刺さっている。


>>神の権能/奇跡の甘露(ヒール・ドロップ)


 精霊世界の神の権能は本当に使いやすい、かなり重宝している。この奇跡の甘露は四肢などの欠損には効かないがこういうダメージの際には役に立つ。


 魔導や魔術も悪くないが攻撃的なのが本当に多い。あとは浸食したり喰ったりに物騒だ。


 ケイ君の皮膚にキラキラした水玉が落ちると、じわりと広がっていき損傷した部位が再生していく。この際、銀に加え疑似コアも紛れ込ませておくか。いつでも種族変更が意思一つでできるようにしておく。――こいつは、なるほど。なるほどねぇ。邪魔でもしてやろうかね。


 心臓付近に位相の違う楔のようなものが打ち込まれていた。おそらくバエル関連の代物だろう、身体検査じゃ引っかからないはずだ。ブランクにまで根付いている。素早く除去してから素材のブランクで補填していく、疑似コアを紐づけして私の制御下に置いた。

 

 楔の形を整えて一種のシステムを構築。これでバエルの適合率も跳ね上がるだろう。これは何らかの儀式による生贄のようなものだな。老人共が泡を食う姿を想像するとニヤケて来てしまう。


医療班が驚きの表情をしているが、治療が終わった旨を伝える。


「皮膚表面も呼吸器官の治療を行ったが念のため検査すると良い――連れて行ってくれ」


 澄ました顔で、医療班に指示を出すとストレッチャーに乗せて運び出していく。

 整備班にコクピットハッチの破壊を一言謝ると、指令室へ足を進めた。


 通路を堂々と歩いていき指令室へと到着する、朝倉司令官がこちらに気付くと、どういう表情をしたらいいのか悩んでいるのが見て取れる。


「そんなに悩ましい顔をしないでくれ。ちょっと示威行為を糞爺へのデータに残したかったのと、悪魔の肉体サンプルが欲しかったことが重なっただけだよ、子供には見せれない内容ではあるがな」


「――そういう事か。まったく、上層部もコアのサンプルが欲しいがるのは程々にして欲しいものだ。それにしてもあのフラウロスを赤子扱いとは、悪魔とはこうも超常的な存在なのかね……」


「私は、あの炎壁の事を概念兵装と呼んでいますね、存在値という物があらゆるものに存在しており、それを削り取っていたのを確認しましたね。私の装備していたあの光学兵装は概念兵装ではないのですが、炎壁の合間を狙わないと貫けなかったですね」


「そうかッ。君でも骨が折れる炎の兵装だったというのか。――概念兵装……バエルにも備わっていると思うか?」


「間違いなくありますね、コアを抜き取り、人形同然となっている今は分からないですがね、適合率次第かと。ですがパイロットにそれを求めてはいけませんよ? 劣化した巨大生物を、人間の意思で修復して凄い技を使えと言っているようなものです」


「そううまくはいかないか。じきに新型とパイロットがやって来る、二機あれば戦略の幅が広がるだろうからな――また、君に助けてもらう事になるかもしれないが……」


「うーん、状況次第ですが良い方向で“善処します”と言っておきますね。ケイ君の事とサンプルが欲しい事、私にも益はありますから。それと今回の事で私に生半可な戦力じゃ意味ない事が分かったと思いますが、監視程度ならいいですよ? ただ、威圧的だったり悪意があれば即時に殺しますね」


 そう言うと熱く感じない炎壁を腕に纏わせる。


「概念兵装手に入れちゃったんですよね。炎壁を展開していない体表も、銃弾を弾き、レールキャノンでも私が吹き飛ぶぐらいなんですよね。人間の毒物も効かないですし、むしろ効きそうな毒があれば協力して実験に付き合いたいくらいですよ?」


 その炎を見ながらこめかみを揉んでいる。


「つまり悪魔が出るたびに私は強化されていきます。朝倉司令官とお酒を飲んだり友好的に接していた方が人類に益だと思いませんか? ぶっちゃけ美人と酒飲んで物事を楽しめれば。私、意外と人類に対してどうも思っていないどころか、家庭でも築いてのんびり暮らして行きたいんですよね」


「接して見なければ分からない物もある――か。そうだな、今日は忙しいから明日あたり酒でも飲みに行こうかダンタリオン?」


「ええ、ええ、とても楽しみにしています。――オペレーターの方々も個人でも皆でもいいですので。ぜひ」


 振り返りながら手を振って指令室を去っていく。私から直接死人を出していないことが今の状況だろう。いつもなら大抵破壊し尽くしていたので、新鮮と言えば新鮮かもしれない。


 それにしても。この丁寧口調もなかなか気に入ったな、うさん臭さが溜まらない。私による殺傷率もぐっと下がっている。特に何も考えていないんだが考えている風を相手に見せて悩む姿を見るのは楽しいぞ。





 研究所に顔を出すとアカネがソファーで寛いでいた、紫色のレースのパンツが丸見えである、少し食い込んでいるが色気が見えない。


「お土産あるんでしょう? 早く出しなさい」


「そろそろ頭ぶっ叩いても許されると思うんだがね――ほら、これが青い血液。そして体細胞と脳幹だ。まだまだあるがここには出しきれないぞ」


「いいのいいのでかいのは、今更あれを強化しようたってどうでもいいわ。好きな事研究できりゃそれでいいのよ」


「そうか、それと炎壁手に入れたぞ、なかなか使い勝手が良くてな、重宝できそうだ」


 体中に炎壁を展開し自慢してみる。当然慌て始めるが、概念兵装なので意思一つで対象を決めることが出来ると説明する。


「あなた、びっくりさせないでよね。年頃の大人がおもちゃ手に入れてはしゃいだみたいじゃない。ああ、そういえば月島ケイ、ありがとね。かなりまずかったんでしょう?」


「ああ、銀の指輪を渡していなければ死んでいたな。その時は肉体を新しくして魂を突っ込むだけだが。――ああ、神様とは言わないでくれよ? 天変地異を起こしたり、惑星創造は……できないと、思うから」


「――ちょっと考えたわね、きっとめんどくさいからとか言う理由でしょうけど。あなたさえいれば私はもう安泰ね。気が向いたら私を抱いてもいいわよ? 研究さえあれば問題無いもの」


「子育てができない女性はちょっとな。楽しむだけならいいが、それと朝倉司令官と明日飲みにでも行ってくる」


「――ッ! あの堅物が!? フラウロスがやってきた事よりも驚いたわ。万年処女のお見合いから逃げ出す、レズ疑惑の出て来ている朝倉キリエ」


「それ、話のネタに香月アカネが言っていたと教えてあげようか。どこからか刀を持ってきそうだな」


「やめなさいよ、あの家系頭おかしい事で有名なんだから、銃弾を切って捨てたとか、口より刀が出て来るとか」


「それと――これを見てくれ」


 月島ケイのブランク内に打ち込まれていた楔の正体だ。

 一瞬顔が驚くが監視の可能性を残している為口には出さない。


「なるほどねぇ、心のつかえが取れたわ。今日はお酒でも飲んでゆっくりしましょう。やる事多いから、ね」


 確かに戦闘を行なったり、今日は精神的に疲れているかもしれない。ゆっくり休むとするか。


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