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対フラウロス

 太平洋上空の悪魔の反応を確認、日本政府は特別警戒警報を発令、戦時体制に移行する。陸上に上がるタイミングでの迎撃作戦を立案する。全会一致での可決。


 戦力偵察に無人海上艦五隻からの誘導ミサイルでの飽和攻撃。謎の炎壁が周囲に出現、蒸発。炎壁の表面温度観測不能。概念攻撃の可能性あり。


「ねぇ、ダンタリオン。あなた、あの子とお友達になれたりする?」


「生憎彼らと相性が悪くてね自信はないな。喰っていいなら喰うが、それはここの奴らの望みではないのだろう?」


 観測所の巨大モニターに映っている豹頭の人型悪魔。

 体毛などは生えておらず、手足の先に炎が纏われている。


 あの炎、存在そのものを燃やしているな。私でも手古摺りそうだ。どうしてこうもここの世界の悪魔は強い。喰い甲斐がありそうだ。


 現在会話しているのは作戦指揮を執っている、朝倉キリエ少佐。若くしてその作戦立案能力を買われ指揮官として任命されている。父親が過去に悪魔討伐の陣頭指揮を執っていた事があるらしい。


 ゆるい雰囲気の会話が目立つが、相手の弱点や、嗜好を見抜かんとするその瞳の奥の獰猛な輝きには芯を感じさせる。


 立派な軍人さんだねぇ。


「朝倉指揮官。無人海上艦全て蒸発。温度観測の途中経過でしたらデータが残っております」


「出して――太陽の表面温度を越えているじゃない。光学系の観測装置も同じ結果を?」


「いえ、接近し観測できたデータよりも低く出ております。海水の蒸発が起きていない事から、触れた物質以外には影響が確認出来ておりません。海上艦の蒸発からの推測データを総合しての今回の結果です」


 朝倉指揮官と会話するオペレータ―からのデータからは現在の技術の粋を集めたバエルの複合装甲を蒸発させるほどの温度だ。接近戦では部が悪いだろうな。


 上層部の悪企みでバエルタイプ以外の悪魔を、試験的に採用された機体込みでパイロットがやって来る予定だったが間に合わなかったようだな。


 月島ケイの戦闘履歴はこの前の私との戦いが初めての戦いみたいだったが大丈夫なのか?


 赤いバイザーに観測装置が備え付けられた一本角が特徴的なTYPE-00/バエルがモニターの隅に表示されている。機体のパーソナルカラーも藍色で夜間視認の為の蛍光色のラインも装甲も混じっておりデザインがカッコいい。

 

 人間との戦争では絶対採用されないカラーリングだな。とにかく目立つ。あれだけ悪魔たちがでかけりゃ、むしろ的になってこいと言わんばかりな配色だな。


 遠距離攻撃が基本骨子の作戦立案が当然のように採用された。超常的な技術は機体の開発に注がれており、兵装が若干お粗末に感じる。実戦で使用可能な最大火力が大電力を使用する巨大なレールキャノン一門とは。それ機体に持たせるの必要なくね? 


 手元の資料を端末で確認していると。悪魔の細胞には特徴があり、再生阻害効果が見込めるのが、バエルの悪魔細胞が放つ、謎粒子の干渉でギリギリまで接近してレールキャノンを撃つか、格闘戦を行う事が、他国でも戦闘結果から判明していると。


 そんで、新型の悪魔“フラウロス”の対処法は今の所存在しておらず、行き当たりばったり、と。


 過去に討伐に成功した悪魔が、“グラシャラボラス”“ヴィネ”“クロセル”“オセ”“バティン”“ベリト”“アンドロマリウス”と。全て物理タイプだったのが辛うじて対処できていたわけか。


 その代わり国が数か国程消滅する憂き目に合っているようだが……。

 

 そりゃ目の色変えてバエルを建造するのも分かる気がする。アカネの待遇もいいわけだな。


「私は待機かね? 月島ケイの護衛なら買ってもいいが……」

 

 朝倉司令官は私に気づくと、暫くこめかみを揉みつつも後方待機して指示に従って頂けるならと。私は約束はしないが善処はすると返答した。撤退の命令に従わなくてはいけなくなるからね。


 物凄く苦い顔をしていたが、パイロットの命が危険にさらされる可能性が高い事からの苦肉の決断だったのだろう。意外と人道的な人物ではあるな。


「君の人道的な良心には報いよう。なに、君のようなタイプは嫌いではないのだよ」


 ニコリと笑いかけると呆気を取られたような表情をしていたがそんなに意外だったのだろうか。


「私は冷血漢ではないのだが……失礼だな君たちは」


 指令室を退室し、格納庫へ向かうバエルの肩にでも乗って共に地上でも行こうかと思っている。月島ケイの励ましておこうかと、ね。





 格納庫内にはバエルの拘束が解かれており、搬入出口に待機してレールキャノンのジョイントを換装する作業が行われていた。


 胸部付近にあるデッキに腰を当てながら、バエルの顔を眺めている月島ケイがそこにはいた。


「不安なのかね?」


 音もなく降り立った私に驚いたが、すぐさま冷静になり、視線をバエルに戻した。何か信頼のようなものが見える。


「――ええ。不安なのでしょうね。この子を十全に操縦できない僕が、果たして悪魔を倒せるかと……」


「そうか、なかなか良い動きをしていたと思ったが。――今回は私が君の後ろに控えて良いと指示を貰った、だからそう不安に捕らわれなくてもいい。もしもの時は私が対処する」


 こちらに振り向き輝くような瞳をしている、ショートヘアーの彼女が少年のような無邪気さを見せた。


「ッ! 本当ですか!? 良く許可が下りましたね、そっか、僕がいなくなっても大丈夫なんだ……そっか」


「君はなくてはならない存在だ。これは特別なのだが――ケイ君がいるからこそ私が悪魔に対処する判断をした。もし君がいないのならここの本部ですら被害を黙認していた。これは間違いない真実だ。君が守りたいものだから私が守る約束をしている。つまり絶対に居なくてはならない存在だという事だ。柄に無く熱く語ってしまったがそう自分を卑下するな、君の良くないところだ」


 俯いていた仄暗い瞳に微かに火が灯る。


「――ありがとう、ございます。少し元気が出ました。兵装のシミュレーションが残ってますので、“また後で”」


「ああ、“また後で”な」


 稼働式のデッキを操作してコクピットハッチまで向かう彼女。


 薄い胸部ではあるが腰のくびれは女性そのものを表している、幼さが残るが清涼感のあるスポーツ少女のそれだ。後姿をじっくり見ていては変態の誹りを受けてしまいそうだな。軽く跳躍するとバエルの肩部に胡坐をかいて座る。


 ものはついでだと、機体内部に軽い浸食をして調査を――ッ!!


 拒絶反応が出ている。すぐさま走査を中止したがこいつは生きている。コアが存在しないと言われていたが……確かに感じない。私が吸収したコアの反応無し。


 だが間違いない。どういうことだ? 適合者をコアと誤認させ操るのが基本だ。基本だったが、こいつは誤認などしていない。月島ケイに体を委ねている。


 体細胞の粒子の発現量もそう多くはない、夢でも見ているのか?


 拒絶の瞬間に感じたダンタリオンよりも高く感じられるスペックに興味が湧いてきた、あくまで“ダンタリオン”のスペック、がだ。


 面白い。


 ダンタリオンは体形変化と身体スペックに物を言わせていた物理タイプだった。


 このバエルを越えるほどの能力を悪魔どもから簒奪せねばな。貴様には負けるわけにはいかないぞ“バエル”。




 海岸沿いに電力供給の太いパイプが幾本も、バエルの足元にあるレールキャノンに接続されていた。装備する為のジョイント部に接続すれば携行させることが出来る。


 私はそれを後方の山岳部から見下ろしていた。


 あまりに近すぎると悪魔の目標がブレる為、距離を開けている。すでに魔導、フォトン、権能全てを待機状態にしている。せっかく名を貰ったのだからダンタリオンシステムとでも呼ぼうか。


 なんでも取り込み、変化する癖の悪い私にぴったりの悪魔の名だ。


 その姿は機械的な黒鋼の複合装甲に覆われており、腰元はスリムだ。もともと備わっていた二本角が特徴的で、近代化された悪魔鎧を纏った作りをしている。デザイン元はニックさんを参考にさせてもらった。


 ――嬉しいねぇ、旦那ァ!!

 

 おっと、彼も近々呼んで酒でも飲むとしよう、ガイコツな彼は飲むこと自体はできないが味覚を感じるのだそうな。お供え物かね?


 背部から頭頂部に伸びる大型PCC兵装が特に目立つが、フォトン機関による原子崩壊ならばあの炎壁に通じる可能性があるだろうと

予測している。


 存在を削る概念兵装ならば効きが悪いだろうが、その際は接近戦による自力勝負になる。あちらは存在を削り、こちらは存在を喰らう。


 私がダンタリオンに加えいる事を加味すれば勝算は高い筈だ。


 

 そろそろ作戦開始時刻だ。バエルが起動し、レールキャノンの装備をし始めた。遠方にはギリギリ視認できる場所にフラウロスが見えて来た。


 パァァン、という質量弾が発射された時、戦闘開始の狼煙が上がった。

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