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マッドコレクター

 研究所の一室に勝手にベットを設置し、大型の冷蔵庫まで敷設しておいた。紅茶セットと観葉植物を設置して、寝心地抜群のソファーまで置いてある。


「――ねぇ、私の研究所なんだけれど……」


「協力はしているだろう? むしろ観察対象が目の前にいるんだから生物学者としては悪魔の生態を知れて得なのでは?」


「あなた、普通の人間と変わりないから詰まんないのよね。何か面白い事できる?」


 そうだな、何かあったか……先日思い出したショタ化でもするか?

 

「それなら、これか?」


 背丈が縮み、視線が低くなる……せっかく変化したのだが反応が悪そうだな。


「私はショタ趣味でもないし。守備範囲外よ」


 これが効くのはオリビアだけだったか、小型異星体をエミュレートしてみるか。


「あとは、吸収解析した者には大抵なれるな。――別世界の異星体だ」


 部屋にギリギリ収まったが、異形の姿をした私に驚いているようだ、そして、先日吸収した悪魔化だな。


「これは以前出現したダンタリオンの小型化した姿、そしてパワーアーマーなどにもなれるぞ」


 かつて王城に攻め込んだ際に、キルテちゃんが装備した姿にもなる。懐かしいな。


「私のコアから生まれる銀は、概念物質でな。あらゆるものを解析、吸収し、模倣もできる。内包されるエネルギーは莫大だ。魔術や、魔法なんかも使えるぞ?」


 さっそくサンプルを確保しようと行動しているが銀はNGだな。


「こらこら、これは私そのものだから、弄られる趣味はないぞ? だが、子作りなどはキチンとできるぞ? 現に数十人程の子持ちだ」


「――その事実が一番驚いたのだけど。どのような子になるの?」


 少し考えると、多少特徴的だが問題なく育ってきている。女の子しかいないのは願望からなのか?


「産まれてくるのは女性が多いのと、妊娠期間は極端に短いな、金属生命体との性交でも問題なく子供が産まれた、性質は引き継ぐが、大抵の種族との交配は問題なく可能だとの報告が上がっているな――ああ、それと寿命が限りなく増えている」


「――ッ! 人類が求めてやまない不老不死に、いとも簡単に至れるのね、あなたって」


 目の色がかなり怪しくなってきている。クリス女史もこんな顔をしていたな。


「種族変更ならアカネでもできるぞ。不可逆だけどな。寿命延びるし、再生も早い、他種族との交配も可能だし、防御力も向上する。金属生命体へと変わるだけだが」


「それは、お願いしてもいいのかしら……?」


 うーむ、まだ、好感度が足りないな。――だが。


「それは契約か? それとも取引か? 条件次第なら答えてもいいが……」


「何でもよ。――全て上げるから寄越しなさい」


 うむ、クリス女史に似ているな。ただ愛情深い人物かと言われると否だな。


「そうか……まぁ、いいか。今日から私の配下だ。身体を調べられなければそうそうバレる事もあるまい。危ない時の為に自衛技能も込みで情報を渡すから、学んでおけよ?」


 彼女に疑似コアを渡すと胸元に当てさせる。


「理想の自分を思い浮かべて、胸に当てるだけでいい。浸食されはするが痛くはない。思考速度も上がるし、記憶領域も広がる。補助の思考AIも内蔵されているはずだ」


 有無を言わさずに胸に疑似コアを当てたアカネ、思い切りが良いというかなんというか。ズブズブ飲み込まれていく様に顔を顰めるが、眠り始める。

 彼女の身体をソファーへ寝かせると戦闘の各種プリセットを起動させる。


 アウローラのような暗殺者向けのプログラムではないが即席の自衛などの戦闘行動は取れるだろう。





 地下施設内のシステムの掌握を行い暇を潰していると、アカネが起きて来る。まだ、眠たそうにしているので自ら焙煎したブレンド珈琲でも入れてあげよう。


 こうして、何かを淹れて飲んでもらう事は好きなんだろうな。


 この珈琲の豆の配合率と焙煎具合はアラメスブレンドだ、舌で感じる味覚を数値化して、寝起きの一杯には至高の味だと思う。


「どうぞ、熱いからゆっくり味わってくれ」


「――ん。ありがと」


 一口味わうと、ほぅ、と暖かい吐息が零れる。私も飲んだがやはり美味いな。紅茶も好きだがこうして仕事の際は珈琲が合う。


「どうだ、気分は? 戦闘プログラムは大変だったろう」


「あんなことさせられるなんて聞いてないわよ。学者畑の人間に傭兵も驚くほどの戦闘力なんていらないわよ」


「あって困る物でも無いだろう? 思考はスッキリしているか? 体調管理もオートでできるからな」


「今までに詰まっていた問題が数十も解決してるわよ。まぁ最高に快適ね」


 シミュレーターで膂力の調整もできているようだし、日常生活には問題ないだろう。私との情報交換も容易に行える。


「それじゃ、あらゆる情報を私に送っておいてくれ、思考するだけで通信可能だからアカネには最高だろ。端末の遠隔操作プログラムも組めば寝ながら仕事ができるぞ」


「なにそれ、最高に私の為だけに存在しているようなプログラム。今すぐ頂戴よ。あなたの配下なんでしょ?」


 こいつには仕事を大量に回してやろう。今決めた。脳内タスクで組んでいた処理をアカネのシステムに叩き込んだ。


「プログラム込みで渡しておいた。ぜひ頑張ってくれ」


「――ッ! あんた、覚えてなさいよ。何よこれ、バエルの解析に、ダンタリオンの兵装化、PCC兵器…………。良くこの本部存在してるわね。月島ケイの冷静な判断に感服だわ。あの時は何言ってんのか分かんなかったけれど、結果正解だわ。もう味方なんだから私を守りなさいよね?」


「そのための格闘能力に射撃術だろう。――ほら、今渡したのは“銀”だ。望む形態に変化できる。刺突に斬撃、盾にもなるぞ。簡易的なら光学銃にもなる優れモノだ」


「トンデモ悪魔ね。いや、悪魔は後付けだったわね。コレじゃあ細胞なんて解析に、培養何てできるわけないじゃない、騙した……わけじゃないのね、はぁ……どうせこの様子なら上層部の思惑も筒抜けでしょうね、頭痛いわあ」


「ああ、あの爺さん共の高次存在への移行とか言ってたやつか。何をもって高次存在なのかもわかってない奴らだな。すでにアカネの方が高次種族になっているというのに」


「わざわざ、悪魔契約しなくても、いや、あなたと契約したわね。でもこちらにメリットしかなさすぎて、引くぐらいだわ」


「気が向いたら私と家庭を持ってくれればいいだけだしな。かなり緩いし私からのお願いも大したことないからな」


「契約の際だけ重たそうに見えて実はそうでもありません――徹頭徹尾気まぐれよね、それ」


 基本行動が楽しさ、だからなぁ。おっと、海外の機体の情報も貰っておくか。

 目の前の空間に投影されたスクリーンでハッキングを仕掛けている。

 こいつはアメリカだな。何機建造してるんだ……。アカネの功績か。


「アカネ。バエル含めて機体の建造しすぎだろ。他の悪魔のタイプも建造計画始まってるしな。EUでは暴走したみたいだぞ」


「情報早いのね、その接続回線を私に回しなさい――ありがと。そうね、悪魔の撃退を銘打っているけれど実質、兵器の素材が欲しいだけなんでしょうね。そのうちしっぺ返しが来るわよ、絶対」


 世界各国では合計十数機もの建造計画が進行中で、三機ほどロールアウトしている。クローン計画は、やはりあったか。適合者の複製を教育する機関もあるな。


「月島ケイはクローンか? クローンのタイプは数種あるみたいだが、クローンの違いは記憶か細胞の劣化速度と相場が決まっているが……」


「そうね、私もその計画に携わっているわ、だけど――彼女は天然ナチュラルよ。現在、どの適合者よりも稼働率が一番高いの、クローンを製造し、バエルに乗せても上がらないのよ、稼働率がね。何かが足りないのよね……」


 ……ふむ。詳しく調べるか。過去に私のような悪魔と契約をしているか、特殊な体質ならば理由はすでに分かっているはず。


「彼女の家族が特殊な家系――と言うわけでもないんだな?」


「ええ、ごく普通の家庭よ、調べても何も出てこなかったわ。あなたでも分からないことがあるのね」


「アカネのようにすればついでに分かるが、魂の奥底まで調べたわけではない。過去に悪魔と関わっている可能性が高いのだが……本人は覚えていないのか?」


「それも調査済み。覚えていないが正しいのかもね、まあ、あなたがいれば彼女も私も死ぬ可能性がガクンと下がったわけだし、気ままに研究できるわ――最高、ふふふ」


 ウキウキさせながら、研究所にある機器を遠隔操作させ、作業を行っていく。頭脳派の仲間が増えるのはこちらとしてもありがたいけど、こうも毎回マッドが揃うんだろうな。

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