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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
天翼人世界 
52/159

芋虫と呼ばれプンプンですぞ

「芋虫だッ!! オリビアの奴、地に這う芋虫を召喚しやがったぜッ!!」


 いきなり、芋虫とは失礼な小僧だな。周囲を見渡せば学生服を着ている少年少女、だらけだな。背に翼が生えているのはそういう種族なのかな? 私の目の前で青い顔をしている少女に話を聞くしかないかな。


「そこの少女よ、私に何用かね?」


「えぇ……そんな……話が違う。ここで召喚されるのはさえないけれど可愛いホムラきゅんだったはず、違う、私が異物だからなの? ヤバい、どうしよう。ホムラきゅんと変わってとも言えないし送還方法なんてないよぅ……ふぇえぇえぇ――」


 ふむ、どうやら事情がある様子。あとでじっくり話を聞いてもいいのだが周囲の反応が悪すぎるな敵意すら湧いている。


「少女よ、私は理解ある方だ。きっと重大な事故なのだろう。――ゆっくりと相談でも乗りたいのだが周りの反応がよろしくないのだよ? さて、――殺してもいいのかね? すぐに判断したまえ」


 その私の言葉に周囲の警戒が最大限になり、何かしらの魔の発動準備を感じる。

 明らかに殺傷性がありそうな雰囲気だが時間は待ってくれないぞ少女よ。


「ふぇ? だ、駄目ですよぅ!! みなさん大丈夫です、この人は安全です! 攻撃しないでくださいぃ」


「さて、どうするかね諸君? 君たち鳥人間なんぞ取るに足らない存在だが、謝罪するなら私も矛を収めよう。もし攻撃するならば――死をもって償い給え」


 そこで全力の神の権能/威圧を発動させる。もちろん召喚した彼女を除いてね。

 

 教師らしき人物以外は前と後ろから全てを排泄し、気絶してしまった。どうやら耐性は皆無のようだな。そのような体たらくで、良く私に芋虫などと言えたものだな。


「そこの教師? らしき人物よ、脅威度が分からないうちに相手を挑発し死に繋がる可能性を教育していなかったのかね? うん? ――聞いているのかね?」


再度、呼ばれた教師は震えながらも返事を返してくる。


「――教えておりません……なにかの誤解があったハズ……説明を聞いていただけますかな――申し訳ありません、名を窺っておりませんので、お聞きしても?」


 こういうパターンで、真名を告げると縛られたり、一応、悪魔種族なので制約が付く可能性を考慮し偽名を使っていく。悪魔だから真名を告げれないとでも言っておけばいいか。


「ああ、バゼルと申す。して貴殿は?」


「――――――。ム・ディオスです、どうか此方へ、説明を致します」


 今、考えている間があったな、迂闊な発言や罠を警戒しておこう。


「君の名前は何だね? 聞いていないのだが」


 いつまでも呆けている彼女の名前を聞く、どういう性質が分かるだろう。


「――ふぁッ! ルルベラ・オリビアですッ!」


「オリビアッ!」


 やはり、伏字があったな、今彼女が宣言した時に力を感じた、これは宣誓ゆあ契約に近い魔力だな。相手に選択権を委ねるやり方だな。私はにやりと笑うと魔力を掴み取った。


「――契約を頂いた。さて教師よ、私に名を問うたな? 死ぬ覚悟はできているのか?」


 もはやこれまでかと、悲壮な覚悟を決めた教師ディオスが魔力を練り始めた。私は手を払うとその魔力を霧散させ、手を握る動作でディオスの身動きを封じた。


「ん? 何かしようとしたのかね? ここは彼女の学び舎なのだろう? 丁寧な対応と謝罪と賠償が有れば考えない事もないが……どうする?」


「――十分な謝罪と賠償を用意させて頂きます――ラウム・ディオスの名に誓って」


「契約了承した。守られぬ場合はここの鳥どもが全員死ぬだけだ。貴様の全生命と力を持って解決せよ。これは命令だ」


 そのやり取りについて行けないのかオリビアはガクガク震えながら着いて来る。


 しばらく学び舎の廊下を進んでいるとバタバタと先程いた演習場らしき場所へ教師陣らしきものが掛けて行く、こちらにも視線が合ったが、些事と切り捨て無視されていった。

 

 ディオスの顔色と目線で判断できない辺りレベルが低そうだな。


 突き当りにある大きな扉を開くと丁寧にソファーに座ること促され、耳元に手を当てると念話のようなものを飛ばしている。


『学園長、緊急事態だ。オリビアが下界の人間族のような者を召喚した、だが、侮ってはいけない、警戒レベルは上限一杯の五だ。むしろ避難した方がいい。何か分からない力を使いひと睨みで生徒全員が気絶した。

 ――間違ってもだ、間違っても決して芋虫などと言ってはならない。私が名に誓ってそいつの処分を宣誓した。私がそいつを殺すことになる。それだけの覚悟を持って対応していると周知徹底してくれ。私の手で同僚は殺したくない、本当にお願いだッ! 殺させないでくれ、親友である君ならこの異常を分かってくれるはずだ!! 私の命より大事な秘蔵の酒を全てかけてもいい!』


 こいつ、どんだけ酒すきなんだよと、内心突っ込みながらも。約束は守ってくれるようで安心する。それにしてもセキュリティ強度の低い念話だな。


 ――アラメス。電波や魔術の通信の類を傍受できるか? 


[――すぐに]


 隣に座っ入るオリビアが、余りにも緊張しすぎて可哀想なので保存してあった和菓子の饅頭と、急須を用意して緑茶を入れ始めた。


「――なんで、和菓子が……あッ」


 ほほう、冷や汗を大量に掻き出したな。和菓子を知っているということは、異世界風のこの世界にその文化があるか、それとも……。


『和菓子を知っているということは日本や、地球に関する知識を手に入れたか――生まれながらにして記憶を引き継いだか――引継ぎか、召喚の際、の話が違う、とは、何かしらの予知能力……ではなく、知っていた……みたいだな。その情報は生前の……物語、いや、アニメか小説、ゲーム――か。ふんふん、ゲームの世界に転生したけどあらすじで書かれていた、“ホムラきゅん”なる人物ではなく、私が召喚され動揺し、なおかつ“芋虫”と呼ばれる敵対種族、もしくは下等生物を召喚しマズイ状況、さらにさらに、真名を知られてしまい命を握られた私、大ピンチ、もうどうにでもなーれー、だな』


 全て日本語で会話しているのだが彼女は違和感に気づいていない。その時点で日本に関係するか、近い文化を持った日本からの記憶持ち、という確率がかなり上がってきているのだけどな。


『もう少し情報に関係する秘匿する技術を身につけた方がいいぞ? これ、日本語で話をしているし、理解している顔をすると訝しがられるぞ?』


「ふぁッ!」


『そういう所だ。君の命握られている事わかっているのか? それに――私に芋虫と私を蔑視すれば、それはもう宣戦布告だ。私が誰かを殺すのも時間の問題なのだが、身辺整理できてる? 家族がいるのなら早めに親孝行や、遺言残した方がいいと思うけど?』


 小さな手がプルプル震え始めると私の服を握り真剣に訴えて来る。


「学園の糞共がいくら死のうと、どうでもいいのです。私はホムラきゅんとふかふか鼻で匂いを嗅いで幸せに浸りたかったのです、ああ、麗しの、愛しいショタはどこへ行ってしまった……せっかく学生の年齢になっているのに青春を謳歌できないなんて我が身の不幸を嘆くわ、何でコミケの帰りに車に轢かれるのかしら、私ったら推しの貴重な本をゲットして浮かれていたんだわ。ああ、あの時に戻れるなら……それにしても、顔は悪くないけど萌えないのよね、私ジジ専じゃないし、どうにか若返ってくれないかしら、そうしたら鼻を押し付けてふかふか匂いを嗅ぐのに、ああ、人生最大の幸運が一気にどん底だわ。あー神よ、我を救い給えー」


 なにか呪詛を吐きながら面白い事を言っていたので身体年齢を十歳程度に若返らせる。年齢調整ができるのだが使う機会がなかったため久しぶりに挑戦してみる。


 服装もぶかぶかになったが、裸になり、ややサイズが大きく感じるオレンジのパーカーと、足のラインに沿ったスキニータイプのパンツを履いた。下着はお気に入りのボクサータイプの無地をチョイスしてある。


 裸になり下半身を露出した為なのか、彼女は真顔で鼻時を流しながら、頬を涙が伝う。鼻に目に忙しい顔面してやがるな。――ん? 口調が若くなりつつあるな。気を付けないと年齢に引っ張られる……な。


「君の願いをわずかでも叶えたんだが……何か希望はあるかね?」


「お姉ちゃん大好きっていってくだしゃい!!」


 こいつ、年季が入った処女の匂いがプンプンしやがるぜ。


「う゛うん――あ゛ーあ。――お姉ちゃん大好き……僕の事捨てるの……?」


「捨てましぇーんッ!! 愛でる愛でる舐める舐める嗅ぐ嗅ぐぅぅううぅ!!」


 こいつぁ、この世界よりもこいつの方がやべぇんじゃねえの?


 ん、えふん。まずいのではないだろうか。ああ、この姿、駄目だね。なり切り過ぎて人格が変容しそうだ。


「――お楽しみは後で要相談だね。給料制ということで、とにかく現実を見たまえ。このままではショタライフが殺されるピンチだぞ? 望むなら――シチュ選択して、あんなことやこんなことまでも――ズコバコできるかもしれない……」


「――ズ、ズコバコ……ッ!! ど、どこでお料金のお支払いができましゅか?」


 こいつは駄目だ、脳が腐ってやがる。適当に合わせておくか。

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