閑話
場所は魔導世界。
いつも通り世界を巡り、魔導技術を収集しては研究、開発を行う。
異星体や、VR世界……精霊世界か。転移魔術と、神の権能は技術革新をもたらした。この世界の座標が特定できるようになり、インベントリを通じてがアイテムのやり取りが可能となったのだ。
「――これが、エデン、精霊世界にあるアイテムだ、精霊結晶は精霊粒子さえ集まっていれば精霊術を使用できるようになる。ちなみに私は転移術を使えるようになっている」
取得した技術と、魔術を披露しているのだがイルメシアの顔が怖い、一体どうしたんだ……?
「――あなた、今の生活には満足しているし、愛してくれているのも分かっているわ……だけど愛が薄く感じるわ――本体はいつ子供の顔を見に来るの? 存在が若干薄いのが見て分かるのよ? 妻を舐めないで。あなたには自覚は無いと思うし、力の多寡でもないと思うんだけど……匂いが微妙に足りないのよ。違うのではなく足りないの。愛しているなら証明して頂戴。あなた、いくら忙しいからって生まれた子供の顔を見に来ないってどういう事? ――そろそろ離婚を考えるわよ?」
さすがにマズイと思い緊急手段を取る。本体をコアの状態へ還元し、休止させる、疑似コアで複製を作っておいたのでインベントリに入れこちらへ送って来る。
再び、顕現させ今いる私と混ざり合い、合流した。
「イルメシア、すまない。君のことは心の底から愛している。もちろんシャーリィもだ、キルテちゃんとシャリウちゃんはまだまだ育んでいる最中だけどね。この通り呼べばいつでも会いに来るし実際、力の多寡程度の差なんだが、キチン伝わってなかったし。私の考えが甘かった――本当に申し訳ない、気持ちに嘘は付いていないし大切に想っている」
真剣な顔をしてこちらを見ているイルメシア。
「――その方法かなり危険だったんじゃないの? 生命が危ぶむ程の」
「そうだね、それで信じてくれるのならとも思っていた、実際生命活動を一旦停止させた。――それだけ、直ぐにでも気持ちを伝えたかったからね」
「もうしないで。あなたに命の危機を晒させるほど落ちぶれていないわッ! もう、十分わかったから今から愛して。ちょっとないがしろにされている気分になって拗ねただけよ? そうだわ――二人目なんてどうかしら? 子供の育ちが早いから手がかからないのよね……」
もちろん、と頷き。早速寝室へと連れ込まれる。ちなみにシャーリィとは今でも仲良くお出かけしたり、子育てを頑張っている所だ。拗ねられると困るので会いに行こうと思う。
ちなみに、あの大型兵器工廠を攻略した時に出会った研究者である、カティともできている。偶に会いに行ったり、研究資金の提供や、子育てを手伝っている。
一度口説いた女性は逃がさないタチなのだよ。
キルテちゃんとシャリウちゃんは本体が戻ってきているのになにも気づいていませんでした。そう考えるとイルメシアの勘はものすごく鋭い事になるな。
すでに訪れた世界間の転移は成功したので、エデン世界にも挨拶に行こうと思う。
◇
試すつもりはないが、クレア女史と会話をしている最中に本体が合流した。
「――でね。この理論だと…………おかえりなさい、ウチの盆暗はウロチョロするのが好きなのね、子供の顔を見て行きなさい――何か言うことは?」
「申し訳ございません」
「私を騙せるとでも思って? 他の子は気づかないだろうけど――私程あなたを愛していると自負している人間には分かるわよ? ほら――おいで、二人目作りましょう? 存在は一緒だけれど、あなたが一番“濃い”のよ……」
女の勘程、適応能力が反応しないものはない。適応できる気がしないのだ。アラメスも解析不能と出ている。超能力でもない天性の勘と言う怖さを二度も味わってしまった。イルメシアとクレア女史。ツートップで怒らせてはいけない女性だな。
「また何か余計な事考えているでしょう? レギオンの子をこましてないでさっさと私と子を作りなさい。――私が一番産むんだからね」
ちなみに一番我が子が多い異世界はここだ、レギオンのメンバーがもれなく懐妊している。私も数十名程分かれているのだが、性の権能が無ければ死んでいたかもしれん。精霊世界に感謝しなければならない。
「――あ、んっ! あなた……また新しい女作ったわね……ん? 女神を二人?今度は神様こましたのね、節操がない男、でも、弟妹は多い方が賑わっていいわね、アウローラの子も無事産まれてスクスク育っているわ。珍しい生体をしているけれどもね――元気な妹ちゃんね」
サイバネ化した身体でも問題なかったからな。凄い所で私が適応力が試されている気がする。無機物懐妊能力などレア中のレアだな。性行為が出来れば、種族だろうが精神生命体だろうが関係なさそうだな。
「ほら、新型機がロールアウトしたからインベントリとやらに持って行きなさい。アーマメント化できても現物があった方がいい時もあるでしょう? どこの次元の狭間に引っかかったりするか分かんないんだから、準備は十全にしときなさい? お説教は終わり――ほら、私を愛して?」
全く、敵わないな。
こうも良き妻に恵まれるとは、出稼ぎも頑張って来る。
なお、神であるムジュルとセレスには私の存在が消えたように見え、説明するのにかなりの時間がかかってしまっていた。――浮気もの! と、怒られてしまい。懐妊するまで軟禁状態にされてしまった。セレスは驚きはしたが余裕の表情で、ムジュルを煽り倒していた。
精霊世界は平和そのもので、神の勧誘合戦はCMに広告を打つまでに発展していた。すぐさま一発ド突きに行くなり、大人しくなったけれど、限度というモノを知れ。
ムジュルの懐妊が判明しだい漂流を開始しようと思う、その旨も説明しており存在自体は同じであることを滾々と説得した。
反応は渋かったが先の長い生であり、常に開拓は必要である、と。
それに旅行先が増えるとも。危険は伴うが生きがいだというのがトドメになり説得に成功した。納得はしていないが応援したい気持ちもあると素直に伝えられ。いつも以上に部屋に籠ってしまった。愛ある言葉がきっかけだったのかすぐさま懐妊し複雑な顔をされてしまった。――ほら、授かり物はその時の運もあると。
では、行ってきます。




