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ほのぼの! ムジュルユグゥさん

 この現代日本の有名な百貨店で、買い物を粗方済ませた私達は、オープンテラスのカフェで、まったりと現世を堪能している。

 何もかもが新鮮に映ったのか、目をキラキラと輝かせる美女は大層目立った。


 まさか、こんな所に大邪神がいるわけないよな、と。思われたかもしれない。

 

 気休め程度だが、伊達メガネをかけて買い物をしていたが美人は何を付けても美人なのだろう。暗黒オーラは出ていないが、元々持っている神々しさは漏れ出ていたようだ。


 今は、生クリームがたくさん盛られた、抹茶のアイスラテを満足そうに飲んでいる。意外と残念そうな子だが、喜ぶ姿は見ていて微笑ましくなる。


 頬に付いた生クリームを拭ってあげると、照れくさそうに、はにかんだ。


 テーブル席の空いた席に荷物が沢山置かれているが見えない場所でインベントリにでも収納しておこう。時間停止の機能が生活の役に立つ。自分で生成する事も可能だが、こうしたカフェでも、サービスとして提供される事に意味があるのだよ。

 

「――話をきいておるのかの? この後は、映画? と言うものを見に行くのであろう? どんなものがあるんじゃ?」


「ああ、すまない。君の、はにかんだ笑顔が魅力的過ぎて、聞いていなかったよ。――そうだな。これが公開中の映画だ。気になる題材があるならあらすじを説明しよう」


「……う、うむ。我は豊穣の女神なる存在であるからな――見惚れるのを許そう」


 そこで照れるのが面白い。高貴なのだがいかんせん仕草が可愛い。

 

 私の愛用しているエデン世界製の端末で、情報を表示させ二人で引っ付きながら鑑賞する映画を選んでいく。ムジュルからは微かな甘い香りと、腕に感じる微熱がとても心地よい。





 あの破壊宣言から、一週間以上たってはいるが、街頭でもムジュルユグゥの話題がひっきりなしに飛び交っている。


 悪徳政治家や、犯罪者の情報。証拠能力として役に立つか分からないが、ネット上に名前と顔つきで、犯罪の動画や情報が、誰でも閲覧できるようになっている。騒がせたお詫びとして随時更新していく予定だ。


 犯罪の立件はできないかもしれないが、世間からはいい扱いをされないだろう。


 ログインした時には、二人で街を襲いに行ったり、錬金術で色々なものを作成している。作成物はリアル寄りであり、なかなか楽しんでいる。ムジュルは予想以上に知識が深く、よく教えてもらっている。


 スキル関連では死霊術使いとして名を馳せているが、ムジュルに師事を受けある程度の魔術ならば使用できるようになった。

 そもそも、各種属性や戦闘技能は特定の神に祈りと、取得した熟練度を捧げ、借り受けるようなシステムが施されている。

 初期スキルだけは自身に付帯するものであったが、私の信仰している神がムジュルユグゥになっていたのが原因か、この世界に根付いているスキルシステムでは無く、侵略される以前の古式魔術とも言えるスキルを獲得していた。


 死霊術は短縮ワードを唱え、スキルを発現させていたが。古式魔術は式を空間に投影する、無言魔術ともいうべきものだった。

 体内の魔力を練り上げ投影させる技術がないと、使用が不可能なため、なかなか苦労させられた。


 位階が物凄く上がって行っているが、元々外付けの理であったため、スキルや魔術を使用する際に、活用はできているが地力が上がった気はしない。

 アラメスに頼んで有用な理を順次コアに馴染ませていっている。もちろん光属性の被ダメージ増加などいらん。インベントリと契約とヘイト値による補正が欲しいのだよ。

 試しに自作のアイテムや装備をプロムラミンで作成したところ定着することが出来なかった。そううまくはいかないようだが当然だろう。神になれるアイテムや、世界を破壊できる剣など、理のキャパシティーを越えている。


 だがアイテムや装備など、大衆が認知でき納得のいく効果範囲なら、作成は可能だということが分かった。まぁ、普通の運営をしろよ。と世界が言っているわけだな。私達を探索する、アイテム等を製作できる事に、気づいた運営が急いで会議を行っているがな。


 現在世界の有識者が緊急で会議を国連で行っており。真面目に攻略方法を論議している。いい大人がゲームの話をしているなんて平和でいいよな。本人たちはたまったものではないが。


 サーバーを物理的に破壊するなど、すでに施行されてはいるがネットの世界自体が概念と化してしまっている為。世界中の人間が、ログインできる端末とネット回線さえあれば、ログイン認証など行わず、自由に行き来できるようになってしまった。

 これに焦った国連が、運営の権利を国連名義で接収。データの改変や、作成の特別チームを作った。もちろんスピリットファンタジアの古参のメンバーや有名ギルドのトップも参考人として招致された。


 私が改変できないようロックしてしまっている為に四苦八苦しているがゲームはゲームのままで楽しんで欲しい、ログアウト不可能にしていないだけでも、温情である。





 スピリットファンタジアに存在する霊脈、精霊結晶や、精霊をいうこの世界の根源要素が集まる場所に来ている。精霊結晶を採掘し、精霊元素を取集しているのである。


 精霊結晶の中に、精霊元素を集めると、精霊術を取得でき、集めた元素の種類によって、様々な固有の精霊術を使用することが出来る。

 

 題名にしているあたり、多くの冒険者が持っていると勘違いされているがそうでもない。取得難易度が高いのだ。


 精霊結晶自体がショップにも並んでいることが稀であり、かなりの高額で取引がされているレアアイテムな上に、特定の霊脈を探しに行かなければならないのだが、精霊元素の集まる場所には、ボス格の敵がゴロゴロといる。

 

 霊脈はこの世界の生命とも言えるものであり、モンスターであろうと食料になるし、成長しやすくなる。

 

 



「もう集まったかのう? 次元属性なんぞ、光や闇に比べてレア中のレアじゃからな。使用目的も収納や転移なのじゃが、インベントリや、街の間に設置されている転移門があれば、そこまで困ることが無いのじゃが――苦行が好きだのう」


「次元と言う概念を解析するにあたって必要なんだよ。現世でも転移はできるが、周囲への影響が目に見えてあるからな。安全性を確保したい」


「確かに空間が歪んで、周辺の環境が大惨事になっていたの。修復に時間がかかってしまった時は焦っていて面白かったの――ひぃっ! 辞めるのじゃ! 抓らないでぇ!」


「宇宙空間で多用していたから、地上では試行回数少なかったんだよ。使用しても荒地ばかりだったからな。通り抜けた次元が、修復の為に周囲を飲み込み始めるとはな」


 便利な物は確立されるまで苦労の連続とはいうが、確かに苦労している。この世界の次元精霊が手に入るなら、この苦労は買ってでもしよう。

 

 次元精霊の元素はムジュルに探知してもらっている、そんな謎元素なんてどこにあるか分かるわけがない。現地民に聞くのが最善だ。


「配下としてキビキビ働け。そして次元精霊を寄越せ」


「神ずかいが荒い上司よの。代わりに我、美味しい寿司という者が食べとうて食べとうて……やる気がマシマシになるんじゃが……」


「――いいだろう。並ばない寿司という至高の逸品を食べに行くぞ。それとなかなか現世を楽しんでいるな。世界を破壊する邪神様よ」


「破壊する訳ないじゃろうッ! 阿呆ゥ! あんな、美味しい物や楽しいものが沢山あるのに、なにトチ狂った事を宣言させるんじゃあ!?」


「だが現在進行で存在が増して行っていいるだろう? 神としての権能は死と破壊に偏っているがな。だがある意味この世界の創造神としての権能を得たに等しい、恐らく内心この世界の神共も感謝しているぞ? 神としての存在が確立され、データとして消える事もない、顕現にも等しい事を君が行ったことを。

 ワールドクエストを発行はしているが、死に物狂いではない事が、目に見えて分かる。ゲームとしての役割を演じる事に、主観に置いているからだ。まぁ、君は憎き神に対して感謝されるのは複雑だろうが」


 薄々分かってはいたのだろう。俯き、何とも言えない顔をしている。ゲームとしての歴史が世界として作られたのならばそれは神達にとっての真実だ。

 神と言う名の侵略者どもを、滅ぼすと言ってはいるが迷ってもいるのだろう。

 豊穣の女神の慈悲は果てしなく深いのだな。


「君に、この世界の理を操作できる権能、少しながら持ちつつあるのだろう? 統率者としての感情も、付随して芽生えているはずだ。だが、そんなことは関係ない。君が復讐したいなら私も全力で行う。ゆっくりと悩んでくれ。

 神としての役割何てどうでもいい。要は“自分さえ良ければいいのだよ”。好きなだけ美味しいものを食べ、遊び、愛を語り合う。なんでもすればいい。そして決めなくてもいい。君は君のままでいいんだ」


「―――――女神を口説くとは悪い男だのう。……まぁ、少しは心が軽くなるの。ちょっと寄りかからせておくれ」


「次元精霊の元素が集まったらな」


「……そこは嘘でも返事をせい、アホタレ。早く終わらせてお主の紅茶が飲みたい。はよう終わらせるぞ」


 今までにないスピードで元素を集めさせられると、ホームに戻り紅茶を入れさせられた。宣言どおりソファーで寄りかかられてしまった。だが、満足そうに微笑む姿はドキリとしてしまったのは悪くない。

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