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エロカウンセラー

 ゴトリ。コーティングされたコンテナを格納庫の床に置くロックを解除して取り出せるようにする。クリス女史が操作するオートマトンがすぐさまやって来ると厳重な隔壁内に設置されている専用の解析装置に掛ける。

 停止信号を送ってはいるが念の為、同化現象が起きても被害が広がらないような措置を施す。


 クリス女史は忙しそうなので出撃した各機体のメンテナンスに入る、希望が出たユニットの増設も行おう。

 回収したコアのデータはすでに取り込んでいる為、獣型の関節の駆動機構や、虫型の多脚の運用システムを参考に改良できないか検討している。

 

 異星体のコアのデータは常時ではないが、ある程度の上位体になると異星生命体のネットワークらしきものにデータが吸い上げられているログが残っていた、停止信号を送っている時にネットワーク接続されていたときには私を最大脅威として認定され現在の都市へと総攻撃される所であった。


 多少、回収するデータが損壊はするがコアを破壊しないとマズい事になる。

 

 荒し回るなら他の都市に行った時だな。心が痛まないような……ね。


 コアの捕獲が成功した事で私の信頼性は多少向上しただろう、クリス女史の直轄部隊としてレギオンを整えておこう。私が不在の時でも防衛行動ができないとな。目途が立ったら私の平行存在を生成して数人単位で行動しようと思う。増やしすぎると精神が付かれてしまうのが欠点だな。繋がっていない私はもう別個体だ。自作自演のネトラレなど勘弁してほしい。

 あの中世風の世界、仮に魔導世界としよう。私の平行存在が観測しているからか分からないが時間の進みは変わっていない。こちらに馴染んできてからあちらの私とのパイプが強固になり、こちらの技術を流して機体の製作を行ったり拠点の強化も励んでいる。もちろんイルメシアとシャーリィとの仲も良好でそろそろ……ね。


 ベスティア帝国は帝都消滅から未だ立ち直れておらず、なまじ軍事力が高かったためクーデターの兆しが出て来ている。まぁイルメシアの計画通りだな。魔導世界の私がローテーションでイルヒ法国や世界樹共和国の調査にも乗り出している。ここに来る前に恐らく聖泉消滅しただろうしな、恐らく大事になっている。

 

 魔導技術はどれだけ蓄積しても損はないのであくせく頑張っていくとする。

 

 それとこの世界の名称に悩んでいる、私の中での名称なのだが異星体世界では縁起が悪いし、あべこべ世界も好きでこの状況になったのではないしな。クリス女史が計画している楽園計画にあやかってエデン世界とでも呼ぼうか。パラダイス世界じゃハーレムな感じがするので却下な。


 ひとり格納庫で機体を見上げながら端末をそうさしていると、暇を持て余したのかレスティアとランファンがやって来た。


「なんだ? 私の肩でも揉みに来たのか?」


「ん~それも悪くないですねぇ~、なんて言うか……そのぅ……」


「違和感を感じて落ち着かないのですよ。物心ついてから訓練ぐらいしかしたことないので。自由という名に憧れながらも自由を手に入れ戸惑う。手に入れるとこんなにもあっけない物なのですね。――欲しかったものはこんなにも空虚だったのか、と。ですから自由にしたあなたに問いに来たのです。私達はどうしたら良いのですか……」


「うむ、これと言って個人ごとに定義は変わるのだがな。まぁ私の自由とは楽しみであり苦行であるものだ。なんでも選択できるとは何も選択できないと同義なのだよ。選ぶことに“楽しみ”を見出すも“選択”するのも各々の生きて来た指針が必要となって来る。

 ああ、わかりづらいねこれでは。簡単に言えば好きなお菓子が並べられるとしよう、目で見て味を思い出し自身の好みで最初に選んだお菓子が“選択”するということだ。自身が培ってきた楽しいと思える事をし、行動することがきっと人生、自分にとって良い事、嬉しい事だと思うよ」


 少し長くなるが素直に聞いてくれている、いい子だなぁ。

 ランファンの頭にハテナマークが浮かんでいるが……。


「指針がみつからないなら私と遊びにでも行ってみるか? 作業も一段落ついたしな、夜には酒でも飲んでみたらどうだ? 酔うということは悩み事を吹き飛ばす効果もあるぞ」


「わかり、ました……ではお願いします」「はいはぁーい。わたしもついていくんだからねぇ」


 買い物でもしてからクリス女史オススメのバーにでも飲みに行ってみるかな。少しでも気持ちが晴れるならば彼女達と付き合おう。

 

 



 室内には洒落た間接照明が薄暗くも落ち着いた雰囲気を演出する。パリッしたベストを着用したエキゾチックな雰囲気を持つバーテンダーが高い技術で美味しいカクテルを提供してくれる。希少な果実や穀物を使ったカクテルベースが所狭しと並べられている。


 連れきた彼女達には飲みやすいカクテルで彼女たちの雰囲気あったものをバーテンダーにお願いしたのだが、よほど気に入ったのか同じ系統のカクテルの頼んだのだが……。


 レスティアは私の首に手を回して頬を擦り付け、ランファンは膝枕を楽しんでいる。レスティアはラムベース、ランファンはテキーラベースのカクテルを頼んでおり、度数がやや高く、美味しいので飲むスピードが速かったのだろう。


 バーテンダーを私をみてニタリと悪そうな笑みをし親指を抜き差ししている。やはりクリス女史のオススメの店だな。


「この施設に宿泊施設はあるかい? 連れが誰かさんのお陰で良い気分なのだが……」


「ええ、ええ、有りますとも。屋外プール付きのイヤンな雰囲気の宿泊施設がこの施設の最上階に。それと、ひとりの時にでもここにまた飲みに来てください、個人的なサービスをしますよ? ふふふ」


「そうか、ありがとう。――そうだな、確かに魅力的な提案だ。これは私の個人端末のアドレスだ。君みたいな美女との出会いは大切にするたちでね」


「こんな男が少ない世の中ですもの。子宮が感じたらすぐ手を出さないと生涯処女ですよ? ――ではお待ちしております」


 酔いつぶれた彼女たちを支えながらバーを退出する、ドアを開けてもらった際にバーテンダーの彼女の柔らかな唇に私の唇が啄まれてしまうとはな。両手が塞がっていたのでしょうがないと言わせてもらう。


 最上階の宿泊施設のへチェックインするとフラフラの二人にベットへ引きずり込まれてしまう。彼女たちの瞳の中には確かな意思と切望する色が灯っていた。

 

 まったく――君たちには色々とレクチャーして進ぜよう。


 明日、格納庫に行くのが遅れて、またしてもクリス女史に小言を言われそうだなとボンヤリと思った。







 本当に朝方まで寝ずに運動していたので彼女たちが大きなベットに突っ伏してしまっている。今までに味わったことない自由を満喫できて嬉しかったと眠たそうな顔をしながら言われてしまった。レスティアとランファンの身体を軽く濡れタオルで拭き取り頭を撫でてあげる、ムニュムニュとニヤケている当たり、父親も母親もいない為、情緒が余り育っていないのだろう。とことん甘やかしてあげると最初は戸惑うが慣れて来るとひな鳥のように啄んでくる。


 身体をシャワーで軽く流し屋外プールをひとりで満喫する。


 昼過ぎまで彼女たちは起きないだろうから、今日は端末を使って遠隔で作業をするとしよう。クリス女史のオススメの店だろうからきっとバーテンちゃんから情報がいっているだろう。私の中で何故かクリス女史が正妻ポジションのイメージがあるのだが、なんだかんだとこの世界で一番理解力があり根が優しいからかもしれないな。


 噂をすればクリス女史からの秘匿通信だ。


『あなた……システィから聞いてるわよ……バーテンの子ね。あの子私の友達なの……旦那さん貸して頂戴って……私いつの間に妻になってるの? まぁレスティアとランファンはカウンセリングも必要だったし分かるけど』


「おや、正妻じゃぁなかったけ? 出会いは最悪だが私の中では君のことを伴侶と認めているのだがね。これでも甲斐性はあると自負しているのだが……」


『――もういいわよそれで。私と子に精々一生尽くしなさい。それと、停止したコアの分析が少し進んだわよ。同化抑止剤や自己崩壊プログラムの作成に道筋が立てられそうね。あなたのお陰よ、ありがとう』


「お礼はいつも貰っているよ。遠隔だが協力できるところは協力しよう、資料を送っておいてくれ。夜には顔を出そう」


 通信が終了しプールにゆっくりと浮かんで低い空を眺める。この無機質な閉塞感漂う都市の天井も悪くないなと思ってしまった。

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