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コア捕獲作戦

 機体格納庫に併設された研究所内ではクリス女史と私とでスクリーンに投影された宇宙戦艦の設計図を検討している。この部屋は私があまりにも入り浸っているのでクリス女史と同棲しているようなものになってはいるが。ちなみにレスティアとランファンも今はまだ安全なここを離れたくなかったらしく仮眠室を改装して二人で生活するらしい。


「ふーん。反重力魔導機関ねぇ、これグラビティジェネレーターに改名しない?」


「ツッコム所はそこなのか? どちらでもいいが魔導と付けないと区別ができなくなるぞ? 半永久的に稼働させるにはこの魔臓結晶が必要だしな」


 魔臓結晶は私の内包されているエネルギーというべきものから作られている。

 自然界では生成されないしこの世界からしたら異なる理だ。

 私がいないとこの貴重な反重力魔導機関は製造できない特注品、小指の爪程でも内包されるエネルギーは凄まじい。これのエネルギーの方向性を循環させることで機関を稼働させジェネレーターとして活用する。


「表向きはフォトンジェネレーターがメインエンジンとして。戦艦の姿勢制御用にサブエンジンをこいつにすればいいだろう――それと資料にある魔導回路を刻印してサブエンジンに繋げさえすれば物理、光学、同化浸食現象にも対応できるぞ?」


「なにその“私の考えた最強の戦艦”は、ゲームじゃないのよゲームじゃ……って本当ならあなた最高ね。私を後ろから組み敷いて犯してもいいわよ?」


「犯す事には大賛成だが、エミュレート結果はそうなっている。明日の捕獲作戦の際に各機体の装甲に同様の刻印が施されている。すぐにわかるさ」


「そういえば見たことないオートマトンが私の格納庫をガンガン改造していたわね。処理能力が目を疑う程に上昇していて簡易AIまで備わっているなんてどうかしてるわ。この工房だけ時代が進みすぎよ、開発した装甲の配合比率や耐久性のエミュレーションできるシステムなんてどれだけのスペックよ……実験や検証が進むからありがたいんだけどね」


 やるからには最高の環境を常に向上していかないとな。ここの科学技術を学んだアラメスの研究熱が止まらないからな。いつか全環境型コロニー等作れそうだな。


「だが荒廃し淀んだ世界で君の夢が現実的になったんじゃないか――幸せな楽園の建造に。先が見えなかった、夢にしか見なかった事が手の届きそうな場所にあるんだ。自らを境遇を悔やんでない他者に優しい君はとても魅力的だよ」


「……おかげさまでゴミクズ共の排除が一気に進んだわ。もう分かってると思うけど知ったからには協力してもらうわよ。あなたに強制なんてできないからあくまでこれはお願い。あなたの望むなら何でもしてやるわよ」


「もちろんだ。すでにこの都市をシステム的に掌握しているのは薄々気づいているだろう? 優秀な助手と操作権限を貸し渡しておくからこの都市を好きに掌握するなり暗殺するなりしてくれ。ああ、それと他の都市の情報閲覧や管理権限も奪取を進めている。秘匿技術も閲覧し放題だ」


「もうあなただけでこの大陸を裏から掌握できるんじゃない? 都市が陥落した際の戦略核による自爆機能にも手がかかっていそうね――手がかかってるのね……はぁ、聞かなきゃよかった」


 そんな危ないものを変な奴らに握っていられるなんてたまったものではない。

 真っ先に掌握したさ。


「君の端末に表示されているのが他の都市の掌握状況や勢力図のを可視化したものだ。具体的な質問を補助AIのアラメスに聞いてくれ。彼女は優秀だぞ?」


[――肯定モチロンよ]


「よろしくお願いするわ。アラメス。うっかり自爆装置を押しそうな旦那様の面倒を見るのは大変ね」


[――肯定ヤレヤレ]


 この二人を一緒にすると小言が増えそうなので退室するとしよう。とびっきりのおもちゃを手に入れたクリス女史は恐ろしいだろうからな。







 本日は異星体のコアを捕獲する作戦を実行する為に旧市街地に出撃している。機体の背部ブースターを吹かしながら目標地点に来ている。

 随伴機はもちろんレスティアとランファンの二人だ。ココに来るまでに軽く機体の慣熟訓練も行っている。戦闘行動はいくら腕が良くとも本日の戦闘行動は回避するように命令している。


 異星体は基本的に群れで繁殖しておりコアを中心に様々な物質を触媒にして増殖する。その物質の質により特性も変わってくる。


 この惑星に存在する鉱石や金属の種族が繁殖しており、衛星軌道上に漂う異星体などは惑星外の金属であろうことが分かり、恐らく熱変動耐性、高圧耐性、靭性等が、高く謎の金属でできているらしい。侵略当初核ミサイルにも平気で耐え、次々に周回軌道にある衛星や宇宙ステーションが犠牲になった。


 今から捕獲に行く種族はポピュラーな鉄やステンレス鋼など街中に存在する物質を食らい増殖した異星体だ。土でも増殖可能だが選り好みはするらしく。希少な金属が大好きとの事。

 形などは不定形で蜘蛛のようなものから獣型まで、同化現象で遺伝子を取り込み質の良い鉱石や金属で自らを成長させていく。


『目標地点に到達。可能ならば複数のサンプルを回収する。私が仕留めて行くから君らの背部コンテナに良さそうな残骸を積んでいってくれ。コアは私が回収する』


『レギオン02了解』『レギオン03もりょうかぁい』


 旧市街地の中へと降下を開始していく。かつてのビル群は食い荒らされまともに立っているものがない、鉄筋や鉄骨なども食べられたのだろう。

 センサーが反応している方向へ進んでいくと大型の反応がちらほらとある。

 モニターに拡大されて表示された姿は軍事車両に砲塔が付いているオリーブドラフの色をした異星体だ。

 

 ハリボテかどうかわからないが威力偵察だ。


 背後のブースターを吹かして高速接近する、砲塔がキリキリと音を立ててこちらに照準を向けてきている、機体を左前方に前進させ砲口の照準が合わせられないようにズラしていく。

 焦れたのか体そのものを突進させてこちらに向かってくる、地面に触れるほどの低空を飛んでいた為、脚部を地面に向けて軽く踏み込み後方返りをする。丁度、機体の頭上に異星体がやって来る、擦れ違いざまに軍用車両らしき異星体の中心に実体剣を突き刺す。

 振り返り様子をみると、停止はしていないが体に突き刺さった実体剣が楔になりギリギリと身体を捩らせて動きずらそうにしている。

 

 すぐさま接近すると砲塔にもう一本装備していた実体剣を叩き込み解体を始めて行く。ある程度バラしてコアらしきものが存在する部分がグニョグニョとミミズのような機械触手を伸ばして苦しそうに蠢いている。

 銀をコーティングした機体の腕で掴むとすぐに停止命令を送る、すると生きてはいるが同化現象を起こさないまま大人しくなっている。


 軽く解析すると砲塔に仕込まれていた砲弾は発射可能であり吸収した物質を他の物質をエネルギー源に複製できる事が判明した。処理能力の低いコアはできないが大型異星体などは違うのだろう。人間を取り込みある程度の学習能力、処理能力の向上から来る進化だな。

 コアが取得蓄積した金属の複製情報は長年積み重ねて来た為、私の各種金属の生成速度を向上させるほどのものであった。これはコアを集める利点ができてしまったなありがたく頂くとしよう。まずは一個獲得したので周辺の大型だけをひとまず回収するとしよう。





 たった今最後の大型異星体が停止命令を受諾し停止する。旧市街地には区ごとに大型が存在していた。縄張り意識でもあるのだろうか? ぐるりと市街地を回らされようやく数十体目のコアを回収することが出来た。


 もちろん随伴機の彼女たちのコンテナに入りきれず重要部品と思われる場所だけを選んで回収、他の簡易機構は既存技術ばかりで役に立ちそうになかったからな。


『タイチョーわたしもぅつかれましたぁ~』


『そうだな、ちょっと頑張り過ぎたみたいだな。機体の調子はどうだ? ちょっと奮発したんだが』


 彼女たちの機体はレギオンのように強化された人間ではないために操縦席周りの金属を特に魔導回路の刻印や構造強化をして生命保護を優先としている。

 疑似コアを使用した始動キーを使っているために痛覚も逆流してこない。


『操作性が上がっているのに痛覚を感じないのは嬉しいですね。操縦するのが楽しいなんて初めてです』


『わたしはぁこの無駄に高性能なウォーターサーバーがおきにですぅ』


 ああ、ちなみに飲み水もサービスしている。水があるだけでも作戦遂行時間の延長と生存率は上がるだろう。


『ちなみに狭くなるが温水シャワー室も付けようか悩んでいるが……』


『欲しいです』『下さいッ!!』


『分かった。増設しておこう』


 よく考えたらネットカフェのような操縦席が理想ではないか、と思ってしまう。

 私が持っている音楽とゲームデータも入れておこうか?

 よし、使ってみてもらうか。


『それと私が持っている音楽とゲームのデータを送って置いた。音声入力もできるので今の気分を伝えるだけでランダム再生されるから使って感想を聞かせてくれ――ロックミュージックを聞きながらの戦闘行動はムネアツだろう』


『それはちょっと……』『ないですぅ~』


『それじゃ帰投するぞ』


 帰投中通信を行った際、爆音でデスメタルがレスティアから聞こえて来たのだがストレスでも溜まっていたのだろうか。ランファンは落ちものゲーを楽しんでいたな。

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