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YOU皇帝殺っちゃいなよ

 すでに帝都を飛び立とうとしていた飛行戦艦の装甲を包み込み身動きを取れないようにしている。


 装甲の薄い箇所からすでに内部へと侵入し脱出しようとしていた皇帝を捜索している所だ。

 

 イルメリアに渡されたリストの名前が載っている人物は……こいつらか、ギルス元帥、ガルフィ将軍、そして皇帝か。こいつらさえいなければな内乱でも起きそうだな。

 重要人物はブリッジかね、内部に少なくはない兵装を全て吸収していき関係のない避難民や兵士をスルーしていく。攻撃をしてこなければ襲われないと一応は通達さっれている為か怯える表情はするがその場を動かすに堪えている。


 内部を半分程、銀で満たし飛行戦艦を機能停止状態にしておく。

 間もなくブリッジだが皇帝の最後はどのようになるだろうな。

 ダガラ王国の王族を皆殺しにしたんだ、自身が殺されても文句は言えないだろう。


 ブリッジの昇降口を潜ると豪華なマントを羽織った将校が揃いも揃ってこちらに魔導銃の銃口を向けてきている。

 さて、どう遊ぼうかね。


『おや? 聞いていないのかね。攻撃をしなければ殺さないと――皇帝とギルス元帥、ガルフィ将軍は死んでもらうがな』


 将校の後ろの方に怯えて隠れている王太子が自分が助かるとわかりホッとした顔をしている。そういうとこやぞ。


「ふざけるなぁッ!! バケモノめ! そんなことが認められるわけないだろう!!」


 ガルフィ将軍がそう叫び散らすとバンバン魔導銃を撃ってくる、しまいにはファイアボールまで発動して私に当たると火の粉となって散っていく。


『ん、何かした? これ以上攻撃するのならば全員死んでもらうけど……ターゲットの三人以外の将校に大臣、王太子くんどうするの? 私が手を下してもいいけど――王太子が残っていれば皇帝の後釜は十分じゃないのかな? 我先に王太子の為に忠誠を示すチャンスだよ? 待っててあげるからさ』


 ギルス元帥は半ばあきらめの境地に立っているが、ガルフィ将軍は生き汚く周囲の将校に銃口を向けている。皇帝はあまりにもの屈辱に憤死しそうだ。


『皇帝さんよダガラ王国の王族も皆殺しにしたようだけど、今どんな気持ち? ねえねえ。自分がされて嫌な事はしちゃいけませんって習わなかった? ああ、帝王学では学べないのか。ダガラ王国の王族に死ぬ間際に皇帝を殺して欲しいとお願いされちゃってね、残念だけど生きることを諦めてくれあと少しだけ待とう』


「ふざけるなぁッ!! なぜ私が死なねばならん! 死ぬのはお前だッ! 貴様らだ!」


 錯乱したように周囲に魔法を撃ち出した皇帝。ああ、残しておこうとした大臣まで死んでしまった。無能だから残しておきたかったのに。

 ギルス元帥が体を張って皇帝を抑え始めている。

 死に際を弁えているみたいだね。


「キェエエエエエェエエッ! フザッフザけるなぁあああぁッ!!」


『ねぇ、こいつ本当に皇帝? 後継者いるんだから自分の命で重要人物が救われるのに自分が殺してどうするんだ? ――ほらさっさと殺せよ。老人の癇癪にいつまでも付き合ってられないぞ。あ、首から上は残しといてね』


 いよいよ、決意しいたのかみんなそれそれ短剣や魔導銃を皇帝とガルフィ将軍に向けた。

 ギルス元帥も共に死ぬように背後から動けないように羽交い絞めにする。


「ち、ちち、ちちうえッ! わ、我が皇帝として、がんばっていくのでごあんしんを……」


 銃も撃ったことないのに定まらない銃口を皇帝へ向ける。

 カチリと引き金をひくとパスンと皇帝の太ももを貫通する。

 

「ぎゃああぁあああぁああああッ! やめろ、やめてくれッ! 死にたくないッ死にたくないッ忠誠を誓っているのだろう!! お前らが代わりに死ねええぇぇええ!!」


 皆心の中で腹が決まったのかパァンパァンと複数回銃声が鳴り響き、短剣を次々に胴体へとさしていく。数本程背後で羽交い絞めしているギルス元帥へと突き刺さっていく。


「ぐぷッゲボォ……呪ってやる、呪ってやる、呪ってやる……帝国よ滅べ……我のいない帝国なぞ……滅べ……死ねぇ……死ねぇぇぇぇゲゥ――」


 皇帝の瞳から生気が失われ確かに死んだことを確認できた。

 背後にいたギルス元帥も虫の息だ。


『皇帝は最後まで生き汚く情けなく、帝国を呪って死んでいきました……と。史上最高の道化として名を馳せたな。ねぇ、こんなしょうもない皇帝を仰いでいたんだね。終わったな帝国――ああ、ギルス元帥、皇帝の首切り取ってよ』


「…………悪魔め」


『ん? 帝国と同じことをお返ししたんだけどお気に召さなかったかな? 戦争なんてそんなもんさ。正義なんてない。正義の反対は正義さ、ほら早くしろよ』


 大量出血で死にかけのギルスが皇帝の首を刈り取った。這いずりながら私の前に皇帝の首を置くと――短剣で切りかかって来る。ガルフィ将軍もそれに合わせてフォトンレイを放つ。


『――効かないって言わなかったっけ? ほらほら、最期まで私の手で君たちは殺さないよ――殺すのは今まで信じていた仲間だ。ほら、殺せよ。ダガラ王国でも同じことしたんだから報いを受けなさいな』


 将校や大臣たちの周囲の銀を狭めて行き真正面に的を持って行き当てやすくしていく。


『何か言い残すことはあるかい?』


 ガルフィが仲間を殺そうとし始めたため手足を拘束して置く。

 

「……何を間違えたんじゃろうか……儂は儂は……」


『運が悪かったんじゃない?』


「運か……確かに悪かったかも……な……」


 静かに息を引き取ったギルス元帥。

 はぁ、最期のトリがさっきからうるさいこいつかよ。

 元帥で締めてくれればよかったのに。

 奴らの周りを銀の針だらけにして催促する、言わんとしていることが分かったのだろう。次々と残っている弾丸を撃ち尽くしていく。

 こいつの最後の言葉何ぞどうでもいいのであっさりと死んでいった。


『さて、約束は約束だ。そろそろ撤退しようかね。その代わり城の宝物庫も書籍も、何もかも貰って行くね。君たちの命と比べれば安いもんだろう?』


 そう言いながらも城で回収作業を平行して行っているのでそろそろ終わる頃だろう、皇帝の首だけを鋼鉄の箱に収容しコンテナの中に入れておこう。これ、宝物庫の魔道具も吸収しようかな、嵩張り過ぎるな。


 ――宝物庫の物は吸収していいぞ。解析するのに時間がかかりそうなものだけコンテナへ収容してくれ。


[――了]


 そっけないなぁ。

 ああ、この大量の銀どうしよう。

 収納、収納、収納、駄目か。

 概念か……私へと重ね合わせ……うおっ。微妙に気持ちが悪い感覚だな。

 重ねれば重ねるほど存在強度が増していく。濃くなる……感じかな。

 帝都を浸食していた銀の増殖があっという間に私の元へ還って来る。


 パーソナルな姿になった私はふわりと地面を離れ帝都を飛び立つ。浮遊し、飛行する際は体の表面、意識的に反重力や空力制御している場所が魔導回路のようにぼんやりと発光するようだ。


 今までのように背部ユニットを展開しなくても良くなったのは僥倖だ。

 魔臓結晶も無事融合が終わり、追加で作成された物は出力の上昇に使用される。

 手のひらからカッコよくファイアボールッ! フォトンレイッ! などとカッコよく魔法使いごっこができる。指パッチンで光線の雨を降らすこともできるようになった。

 光子の収束、拡散で。ビームサーベルやビームライフルもどきも出来ちゃう。

 ひとり宇宙戦争ごっこが渋るな。

 アラメスにロボットバトルの熱さを拠点に帰ってからとっぷりと語って見せよう。


[――……]


 無言の圧力をかけても知らないからね?

 疑似コアを経由して遠隔操作も出来そうだし一緒にバトルしよう。そうしよう。

 脳内で小型のロボットバトルをみんなで遊ぶ妄想をしながら移動を開始する。

 ああ、シャーリィに他国に移動することを伝えておかなければな。







 目の前ては無言の圧力で何かを訴えかけてきているシャーリィがいる。

 話を聞くと帝国の諜報機関に襲われていたらしい。撃退はしていたようだが。


「……話を整理すると。帝都は物理的に消滅、帝城のお宝を奪い、皇帝と元帥と将軍を殺した……と。あんたに繋がる細い糸でも辿られて私、狙われるじゃん……ああ、もう……。バカァッ!!」


 私の背後にあるコンテナをじろり睨みつける。ああ、皇帝の首も入っているよ?


「私が拠点としている場所があるのだが……来るか? もう君は私の身内としてみてしまっている。力の限り幸せにするつもりだが……どうだろうか?」


「……言わなくても分かってんだろがッ! 連れてけよ! どこまでもついてってやんよぉ!!」


 うむ、良かった。だがイルメシアになんて言おう。

 出張先で現地妻を作った浮気性の旦那みたいだな。いや、そのまんまだな。

 疑似コアを生成、アーマメント化させたもう一人の私の操縦席に跨り、シャーリィと共に移動する。まあ、どちらも私なのだが操縦するという感覚を味わってみたかったのだ。


 最初、彼女は呆れる顔をして私を見ていたが。そういう者なのだろうと諦めて無言で寄り添ってきた。アネゴ気質分懐が広いのだろう。


 これからも迷惑を掛けそうだがよろしく頼んだぞ?

 私の胸元に頭を乗せて腕の中にいるシャーリィがブルリと震えた気がした。

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