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工廠攻略作戦

 シャーリィに情報をもらったマッドな生体魔導研究所と伯爵領にある大型兵器工廠、伯爵領の方が近いから先にそちらの技術や兵装を回収する。


 深夜遅く闇に紛れて工廠の外壁に取り付く、破壊などすればすぐに見張りの兵士がすっ飛んでくるため目立たない地面を吸収し侵入に成功する。二重の防壁が存在する為に液状に変形し見張りの合間を掻い潜るとコンテナなどが積み上げられている兵器保管庫に到着する。


 そこには完成され出荷前の新品の飛行輸送艦が所狭しと並べられていた。


 ――こりゃ本気で大陸制覇でも目指しているのかもしれないね。


 他にも見たことのある魔導車両、連射性を高めたのであろう小回りの利きそうな魔導機関銃などが見つかった。


 厳重に封鎖された倉庫は入り口には歩哨が立ってはいるが吸収して侵入した倉庫内部には人員は見当たらない。これは新型兵器をじっくり解析していこう。

 私の地球の科学と魔導が合わさりレールガンの再現はできてはいるが連射性を高める機構や作りまでは工夫できていない、ココにある基盤や操作系統は残らず回収だ。


 特に反重力の制御機構が一番の目玉だ。


 小一時間程時間を掛けて倉庫内にある兵器類は中身のないハリボテと化している。のこりは魔導兵器の制御技術の技術書か基盤の保管庫でもあればいいのだが。

 

 工廠の換気ダクトのような狭い筒の中を這いずり回りながらくまなく捜索する。

 天井にある換気口は金属の柵で覆われており、厳重に管理されている区画へと進んでいく。


 精密な作業要求されるのか換気ダクトがなく作業員も全身をラバーのようなスーツを着込んでいる。ここだな。


 基盤に組み込まれる魔導回路の製造場所のようだ。

 複数の工房が存在しており研究区画、製造区画と別れている。

 昼夜問わず作業員が製造所に詰めており、研究区画には研究員であろう女性が一人だけしかいない。

 入り口のみ監視の兵が居るが天井を這い回避する。

 研究室の扉をゆっくり開ける女性の背後へと回る。


 パーソナル化して口元を抑え腕を捻り耳元で囁く。


「大人しくしていれば君は死なない。縛られて動けない間に侵入者が逃走――良いね? それと重要書類や研究資料を教えてくれれば無傷のままでいれるんだが……どうかな?」


 全力で首を上下にブンブン振っている、おや、意外と綺麗な顔をした女性だね。

 助けを呼べば死ぬことを喉元に添えている刃物で分かるだろう。

 研究概要や魔導回路の設計図などを教えてもらうと口輪と手錠をはめ床へ寝かせておく。

 書籍や設計図を全て回収、記録していく。

 厳重に金庫に仕舞ってある希少金属が塊で収納してあったのは僥倖だね。

 オリハルコニアも大きな塊で保存してあったのは本当に嬉しい。


 全て回収して綺麗な女性の元へ向かうと震えながら俯いていた。さすがに少し悪い気がしたがちょっと取引をしようと思う。

 背後から私の顔が見えないように話しかけると彼女の眼前に大きな宝石数個程手の平に持ち見せつける。


「他に基盤や回路、重要技術の研究場所やこの施設で貴重な物資の場所を教えてくれればこれを上げよう。もちろんこの工廠の外部にある木に目印として傷を付けて埋めておく。ごっそり研究資料を盗まれればいくらか責任問題になり一時は大変になるのは明白だ。なに、もう取り返しのつかないほどの損害だ、ちょっと教えてくれればお小遣いをもらえるんだが……いい取引と思わないかい? なに――美人には優しいのだよ私は」


 美人と言われ少し頬を赤らめ照れているが意外に経験が少ないのだろうか。ちょっと可愛い。ちょっと悩みはしたが頭を縦に振った。


 私はフェイスガードをしており顔が見えないので彼女の口輪を外し会話ができるようにした。椅子に座らせると外部から見えない位置で会話を始めた。


「はぁ……顔が見えないけれどあなたのせいで大損害だわ。研究費も多いし貴重な金属もあったのに……いいわ。取引ね代わりに今いくらか宝石を頂けないかしら? 女には隠し場所が存在しているのよ?」


 こいつまじか。まあサービスすると言ったのは私なので先程より多く宝石を手渡す。そうするとすかさず下半身へと持って行き艶めかしい声を上げて隠し終わる。

 ちょっと凄いものを見たと少し役得に感じたが情報の収集が先だ。

 取引が成立した為のスラスラと研究所の概要とどのようなものがあるか細かく教えてもらった。


「ありがとう。予想以上にいい取引だったな。これは君の誠意ある対応に対するお返しだ」


 さらにジャラジャラと小粒な宝石を彼女の手に乗せて行くと目を見開いて驚いていた。少しワクワクしながら彼女をじっと見つめる。


「……何じっと見ているのよ? そんなに入れるところ見たいわけ? 料金取るわよ?」


 そういわれると倍プッシュと言わんばかりに掌に宝石を追加する。

 宝石類は嵩張らないし持ち運びに便利なんだよな。

 見えてはいないだろうが彼女の赤くなった顔をじっくりと眺めてみる。


「あなた、ひどい人ね。――――んっ。もういいでしょう? これ以上入らないわ……もうッ! 手のひらに乗せないでよ!! バカッ!」


 さて聞きたいことはもうないので製造所を襲撃してから逃走するとしよう。


「そこにある製造所の基盤をかっさらっていくから君を縛っておこう、その方が疑われないだろう。また会えた時はデートでもしよう」


 軽く縛られながら彼女は大人しく床へ寝そべった、さりげなく頭を撫でると大人しくなったのだが、できる女という者は逆にモテない理論は正しいのかもしれない。私が働いていた場所の同期で途轍もない美人も三十路になっても男の気配がなかったからな。よく酒に誘われていったものだ。ん……誘われていたのか私は……失態だな。再び会えた時には美味しく頂こうと思う。戻れればな。


 さて、ありったけの制御基板を奪っていくとしよう。





 工廠内には警報が鳴り響いている。換気ダクトを伝い屋上へとでる。

 もうこっそりする必要もないので半重力装置をバックパックのように展開すると飛行を開始する。ヒュイィと飛行音は聞こえているだろうが数十秒もすれば工廠の脱出は完了だ。


 私にしては珍しく死者を一人も出さずに作戦を成功させている。


 他にも大小さまざまな兵器工場は存在しているが行く予定はない、すでに大まかな解析が終わっており基礎技術を取り尽くした感がある。

 今日手に入れた技術書と設計図は大きな収穫ではあるな。

 

 残るは生体魔導研究所に向かうとしよう。予想通りなら私と似た外道技術を開発しているのだろうな。





 帝都へ移動する前にシャーリィにあの酒場で無事再開することが出来た。

 宿泊施設で互いの体液の交換が終わった後のピロートークで話を聞いていると良さげな物件を探していると途中だということを聞いた。 


 裸で葉巻を吹かしながらしなだれかかってくるシャーリィは悪いお事にハマっている娘さんのような反応をしている。庭に花壇を植えて園芸を始めるだとか。

 家具の下見もしており本格的に移住計画を立てている。

 防御面に不安を感じていたのでオリハルコニアを配合したガントレットやソルレット、高硬度の金属を糸状に加工し編み込んだ下着やローブ、趣味で作った忍セットも渡す。


「……あんた。貰えるのは嬉しいけれど……まあ愛を感じないわけではない、ここまで心配してくれるなら死なないようにする」


 追加の費用として大量の宝石と金貨を渡しておく。もちろん一か所で換金しすぎないように注意してな。裏家業の人間なら大丈夫だろうけど気持ちとして受け取っておいてくれ。

 鋼材や金属収集で廃鉱山丸ごと潰してしまった時に宝石が一人が所有するにはあまりあるほど収集してしまったからな。


「まあ会ってそう経ってはいないが私の君に対する印象は悪くない。本当に子を成してくれるならば最大限の支援を約束しよう」


「まぁ、こんだけの物をもらえれば嘘ではないってことぐらいわかる。……たまには会いに来なさい――んっ」


「それと、帝都に行くんだが――少し騒がしくなるかもしれん。なるべく帝都から離れるか……仕事を受けないようにはしてくれ」


「あんた……なにすんだよ。わかった、連絡はとれるか?」


「実は、君に埋めた針は特に体を害するものではないんだ……ちょっと場所が分かるだけさ。少し身体能力が上がるが」


「どおりで体の切れがいいと思ったよ。いつでも会いに来い」


 それから朝方まで心行くまで楽しんでしまった。明日には帝都に向かうついでにちょっと皇帝と将軍に死んでもらうだけだ。

 ああ、たのしみだなあ。

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