いつかまた……
カーテンの隙間から零れる光がサラサラの黒髪を照らし出す。
ベットの上には男の腕枕に頭を乗せ、幸せそうに抱き着いている少女がいた。高校生という大人になり切れていない少女がおじさんの胸元に抱き着く姿は、誰かに見られたのなら一発で逮捕案件であった。
「ん、んう…………」
腕の中の少女が寝起きの重たい瞼を開くと、目の前には愛しのダーリン。
「んふふふふふふ」
男の腕に抱かれている事に幸せを感じ、頬を男の胸元に擦り付けて行く。
少女の名は如月リツコ。あの特A級インベーダー殲滅の報酬に愛しい男を願った恋する乙女だ。現在は乙女の乙女は喪失しており、一人の女になってはいるのだが。
「――ああ、おはよう。今日は学校じゃなかったのか?」
報酬である男、クロベエは目を覚ますとリツコと会話を始める。まだ寝ぼけてはいるが腕の中にいる女の暖かみに腕で抱き寄せた。
「あん。今日は魔法少女連盟の会合があるから学校はお休みですわ。昼過ぎに家を出れば間に合いますの」
妖精種族が奉仕種族へ変わり、インベーダーの侵攻はパッタリと収まった。残存勢力とも言えない雑魚がちょこちょこ残ってはいるが人類に対しての脅威足り得なくなった。
各国の政治家や、魔法少女連盟の官僚が一斉に始末され混乱に陥るも、代理で妖精種族が指揮を執り始め安定をもたらした。
それと共に、戦闘能力の低い魔法少女達に高額の報奨金が支払われ、魔法少女についていた妖精の肉体が順次配布された。
何も知らない少女達は喜び、妖精は複雑な感情を抱くも肉体を得ため人生を謳歌し始めた。
知らないのならそのままでいい。犠牲になった魔法少女達の魂が残っているのなら肉体を蘇生し苦しい記憶は消去され日常へ戻す作業も順次行われていった。その作業にはクロベエの尽力もありかなりの数の少女達が救われていった。
その魔法少女達の救世主である本人はらしくないことをしてしまったとぼやいてはいるが、今腕の中にいる柔らかい少女の懇願に負けてしまった。自身の女には弱いのがこの男の特徴であった。
「そうか。まぁ、頑張ってくれ。私は頑張り過ぎたので当分働く気にはなれないな」
数万人もの魔法少女達を蘇生したり、記憶を改ざんしたりかなりの労力を費やしたのだからその苦労も想像できる。
「ふふ、あなたのお陰で沢山の魔法少女達が救われたわ。ありがとう……そして、愛してるわ」
「ああ、沢山私に尽くしてくれ。そのために頑張ったのだから」
だが、リツコはクロベエの首元に近づくと口を開け強く噛み締める。
「――――でも、私達の部隊の半数以上の魔法少女達とデキてるのは許しがたいとおもわない? この浮・気・者っ! なかにはできちゃった子もいるじゃない!」
そう。この男は各世界で好き放題嫁と子供を作っている。
「あー、気にするな」
取り敢えず一発ヤレば誤魔化せるだろうというクソヒモ男理論で、少女をベットに押し倒す。
「ちょ、ちょっとっ! そうやっていつもいつも誤魔化してっ、あん! もうっ」
普段真面目な眼鏡の委員長タイプ程ダメ男に騙される理論は、あながち間違いではなさそうだ。こうして何度も如月リツコはクロベエと言う男に流されている。
この世界にも同位体が複数存在し魔法少女を引っ掛けて行く。世界的にも有名になった災厄個体クロベエは別名、クソロリペドヒモ男と名づけられている。
◇
この魔法少女世界におけるさまざまな情報を収集、統合し終えるとプライベート空間へとデータを送る。
結晶体を銀の支配下へ置いた際に太陽系外へと探索もしている。その際に確認できる範囲での他種族や、特異な生命体を確認できていない。
[――魔法系の技術が増えただけで特異な技術はそこまでありませんでしたね]
「ああ、妖精種族も精神生命体なだけで底は深くなかったな」
[――クソロリペドヒモ男が少女達を食い散らかしただけでしたね]
「ちゃんと責任は取るつもりだぞ?」
[――はぁ、嫁会議で怒られればいいんですよ。次行きましょう。次]
「ランダム転移開始」
◇
[近年、通勤ラッシュの電車で痴女が増加しているというデーターが政府により発表されています。現在、男女比が100:1と男性の出生率が年々低下しており男性保護法の強化が国会にて可決されました。男性には必ず男性保護官が任命され、精子提供の義務化が男性の尊厳を奪いかねないと懸念されております――]
ランダム転移したのだが、戦乱の世の中でもなく、魔法もなく、終末世界でもなかったが男女比が極端に偏り女性が捕食者である現代社会へとやってきてしまった。
ひとまず空いているマンションにコッソリ忍び込み生活環境を整えたのだが……。
「アラメス。どうしたらいいと思う?」
[――好きにすればいいじゃないですか。ほら、あなたの好きな女性が獣のように寄ってきますよ?]
ネット環境を整え様々な番組や情報を収集すれども、女、女、女、しか見当たらない。一般の番組で上半身裸の女性が映ろうとも放送中止にはならないし倫理委員会も動かない。公式が狂ったように青少年のエロ番組を垂れ流しているのだ。
他世界の男性にとっては天国のような環境みたいなのだが……。
「いや……。私の同位体を増やしでもしたら私の子孫でこの世界が溢れかえるんじゃないか? まぁ、それは言い過ぎかもしれないが」
こめかみを揉みながらこの世界で何をするべきか判断に迷う。
何の能力も持たずにこの世界へ転生、もしくは転移したのならこの世の春を謳歌するのだが……。
[――救世主症候群にでもなればいいんですよ。バーカバーカ]
「あ、ちょっとまて。おい。おーい」
アラメスが私のコアの奥底に潜り込んでしまった、最近ちょっと嫁を増やしすぎたのかね?
まぁ。この世界でアラメスほどの情報操作能力は過剰だし、私自身の処理能力で戸籍や口座の操作は容易い。
取り敢えず少年ぐらいの年齢へと変化して……。戸籍を偽造、この住宅を登録と、動いていない口座から預金を動かし生活資金としよう。
お気に入りのパーカーを羽織り、取り敢えず外出してみるか。
そこそこ綺麗なマンションのドアを開け、全く違う環境を楽しむとしよう。
◇
こうして私は様々な世界を巡っていく。時には嫁を増やし。時には世界を滅ぼし。新たな箱庭と言う名の世界を創造したり。いつもその隣にはアラメスが必ずいた。
なぜ私が次元の狭間で生まれたのかは分からない。だが世界を巡ればいずれ分かる時が来るだろう。私には果てしない時間と頼りになる相棒がいるのだから……。
お わ り
あとがき
世界を用意すれば永遠に続きそうなので一旦完結とさせて頂きます……。
読者様を楽しませることが出来ずに申し訳ありません。作者のプロット作成が甘く設定も詰め切れていませんでした。
色々な世界が生まれドラマを広げきれずに消費するばかりでもったいないなと思っていました。それぞれの世界には人間模様が繰り広げられているのに……と。
主人公が引っ掻き回すのもいいですがもっと別の作品で使用していきたいと思います。
この最強主人公が活躍できる執筆力を手に入れられた時には続きが出るかもしれません……。
最後までお読みいただきありがとうございました。
もし、私の他作品を読む機会がありましたら。お手柔らかに見守っていてください。
世も末




