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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
魔法少女世界
146/159

パワー系魔法少女

 魔法少女シャルロッテ、本名は本条ほんじょうみなと。彼女の家族に新たに加えられた私ことクロベエのごはんはカツオブシたっぷりの猫まんまが出されてしまう。


 用意された食事を前に今更、人間食が良いですと言えない空気になってしまっていた。食べる振りをしながら銀へ吸収させ後で食事をしようと決意しながらぼんやりと家族の団欒を見つめていた。


 私を紹介した際も魔法少女関連だと説明を行っていたがそのことを良く思っていないごく普通の娘を心配している親御さんであった。大丈夫、私が居れば死ぬような事にはなるまいて。


 部屋の片隅にはウキウキと素体の設計図を何度も何度も繰り返しているトトナッシュがいるが放っておこう。


 お風呂に入り就寝の時間にスヤスヤと眠る、みなとを置いて窓から外出を行った。


 猫になるというものは中々新鮮なものだな、深夜遅く民家の塀の上をトコトコと歩きながらひとり散歩を行っている。


 この時間帯には、俯きながら帰宅をしている草臥れたサラリーマン。煌々と明かりを放つコンビニには若いにーちゃん達がたむろっている。


 閑静な住宅から近場の駅方面へ進むにつれて人通りが増えて行く。


 とても侵略者と日夜、魔法少女達が戦っているとは思えないほどに平和な世の中に見えるな。時刻は深夜零時に差し掛かり駅前の公園には酔いを醒ましている人間もちらほらと見える。これが駅前の公園でなければとても若いOLなどは休めないだろうなとおっさん臭いことを考えてみる。


 ウトウトと顔を上下させているOLの太ももの上に乗ると小さな猫の頭で頭突きを腹に食らわせる。眼を覚まさせるにはいい塩梅だったのか私の存在に気付くとニンマリと微笑んで抱き締められてしまう。


「ん~、起こしてくれたんでちゅかぁ~? 優しい猫ちゃんですねぇ~。クリスマスも近いのに小汚い上司の飲み会に付き合わされたんですよ~、こんな猫ちゃんみたいないい人が居たらいいのになぁ~。すやぁ…………」


「≪清浄≫。酔いは覚めないがスッキリはするだろう。――――起きぬか、寝入りの良い奴め――――」


 もう一度起こそうとする瞬間周囲に轟音が響き渡る。飛んでくる瓦礫から彼女を守るためにとっさに障壁を周囲に展開する。


 さすがに若いOLの娘も飛び起きて周囲を見渡し始める、瓦礫が自身の周囲を回避して飛び散っていることに気付く。


「――――もしかして猫ちゃんが守ってくれたの――かな?」


「じっとしていろ。今私が障壁を展開している。魔法的な何かと思ってくれればいい」


「猫ちゃん素敵っ!! やっぱり人間の男なんてクソね、周囲でビビり散らして私を守ろうともしないわね――――ねぇねぇ、猫ちゃんウチに住まない? 猫缶は高級品を用意するから!!」


 抱き締める強さが増していく。私は周囲への警戒を怠ってはいないがそういう事は後でして欲しいのだが。


 瓦礫を吹き飛ばした発生源を見ると巨大な人型の結晶体が出現していた。


 シャルロッテを呼ぼうと考えるも彼女の初陣にはまだ早いと判断する。念のためトトナッシュには彼女を起こさないように命令しておくか。


『――トトナッシュ、駅周辺に巨大な人型結晶体が出現した。シャルロットにはまだ早いから他の魔法少女か最悪私が対処するから彼女は起こさないようにしてくれ。現地の映像を送るから脅威判定と特性を解析してくれ』


『!! 急にびっくりしたんダヨ~。了解――――――脅威D級ヒト型結晶体。特殊な外見をしておらず物理偏重のタイプダヨ。過去にも多く表れているポピュラーなインベーダーダヨ!!』


『わかった。特に脅威を感じるタイプではないのだな。タブレットの魔法少女への要請は…………出ているようだな受諾した魔法少女はいるか? それと到着予定時間も教えてくれ』


『確認中――――受諾している魔法少女が現場に急行しているんダヨ。およそ五分程で付くダヨ~』


 返事を返さずに伸ばした尻尾をOLの胴体へ巻きつけると共に高所へとジャンプ移動をする、五階建てのビルの屋上へと着地すると結晶体の様子をじっと伺う。


 大きな胸に押しつぶされそうになりながらも眼下の様子に集中する、酒の匂いと女の甘い香りが私を惑わしに掛かっているが精神力で押さえつける。


 頭部の無い結晶の巨人は巨腕を振り回してビルの瓦礫を弾き飛ばして人間を押し潰していく。逃げ惑う人々の頭上に大小様々な石礫が飛び交っていく。


 アスファルトの上には人間だったものや、血だまりが広がっていき直視できない地獄絵図となっている。


「――――うぷっ。猫ちゃんが守ってくれなかったら私も死んでいたのね…………ありがとうね、猫ちゃん」


「お礼を言うなら酒を飲み過ぎるな。そういうクソみたいな職場は転職をお勧めする」


「…………そうする」


 被害が現在進行形で広がっているが私は全ての人間を救うつもりはない。このOLはたまたま縁があっただけだ、これも彼女が引き寄せた運なのだろう。


 彼女が気づかないように霧状に≪奇跡の甘露≫を展開していく。彼女がこの霧を吸い込んで行けば胸焼けや嘔吐感も収まり体調も良くなっていくだろう。


 駅前のロータリーは破壊し尽くされたころ、巨人の頭上から大きなハンマーが叩き込まれた。次の瞬間にはモノクロの世界へと変貌し――――私達も結界に巻き込まれてしまった。


「すまない、私と接触する事によってあなたも結界に巻き込まれてしまった。責任を持って守り通すので安心していて欲しい」


「うん――――お願いします。私を守ってくれた紳士な猫ちゃんなら大丈夫だよね! あ、私の名前は真奈美まなみっていうの、猫ちゃんは?」


「――この姿ではクロベエと名乗らせてもらっている」


「クロベエちゃんかぁ、よろしくね!」


 魔法力を物理攻撃力に変換して戦うパワータイプの魔法少女みたいだな、赤色のショートヘアーを振り乱しながら巨人へと何度もハンマーのインパクトを叩き込んでいる。


 巨体がビルの方向へと叩き込まれていくと中ほどから折れて崩れ落ちて行く。


 ――――だが、結晶体は軽いヒビが入っているだけで受けたダメージは少なそうだな。


 衝撃増幅、重量増加の魔方陣をコピーさせてもらうと記憶の書庫へしまい込んでいく。妖精種族たちも中々効率的で優秀な種族かもしれない。


 再度ハンマーを叩き込もうと振りかぶった赤髪の魔法少女は隙を突かれてしまい大きな掌の薙ぎ払いを受け硬質な壁に叩き込まれてしまった。


 軽い吐血と共に握りしめた拳を何度も顔面を中心に受けてしまう、魔法少女化する事で防御力は上昇しているはずだがこのままでは…………しばらくすると魔法少女が大きな手に両腕を握りしめられて引き裂かれようとしている。


「――――ちょっと手助けをしてくる。障壁は強固に張っているのであの巨腕を数百発受けてもビクともしないはずだ」


「いってらっしゃい。待っているね」


 胸元から離されると小さな手足に重量軽減、衝撃増加を瞬間的に発動。コンマ数秒のち結晶体の背後に接地する。――――インパクトウェーブ。


 ポフ。と小さな肉球を触れた瞬間に解放された衝撃波が巨体の隅々へと行き渡り中心核諸共粉々に粉砕させる。


 尻尾を長く伸ばすと落下を始めている魔法少女を掴み取り≪奇跡の甘露≫を大量にぶっかける。口内へ液体を染み渡らせるとしゅわしゅわと身体が修復されていき、洋服の破れた中学生ぐらいの活発そうな黒髪の少女が見えてきた。


 拳に装着しているナックルが妖精種族なのだろう、こちらに気付くと会話を試みて来る。


『――――救援感謝するでアール。この子は好戦的ではあるが隙が多いので苦労するのでアール。貴君はどこの魔法少女の所属の要請でアールか?』


「気にするな、気まぐれの救援だ。私はすぐさま撤退するが――――この場の収集はお願いしていいかね?」


『お安い御用でアール! こういう場合は報酬の折半が基本ではアールが…………この子は金銭的に困窮しているのでありがたく受け取るでアール』


「問題ない。私の実力であればいくらでも稼げるからな。いつか機会があれば借りを返してくれればいいさ――――ではな」


 先程よりも効率的に魔方陣を瞬間発動させOLの真奈美の元へ戻っていく、まもなく結界が崩壊し通常空間へ回帰する。


「ただいま――――思ったより早く始末できたな」


「早くって、数秒も経っていないわよー」


「私の事情であまり魔法少女の案件には関わらないようにはしているのでな。人助けの精神は持ち合わせていない――――真奈美は運よく私との縁があったから救われただけだ」


「運、ね。――――ならこの縁は大切にしないとね」


「家まで送ろう――行先だけ指示をしてくれ。ああ、恩を着せるつもりはないのだが…………夜食が食べたい、疲れているかもしれないが作ってはくれないかね?:


「――――ぶふっ。ええ、作らせてもらうね。苦手ものはある?」


「…………猫缶は遠慮したいかな」


 抱き締められたまま空中へ浮かび上がると、真奈美の指示のもと彼女の家へと向かっていく。


 到着したマンションの一室はかなり散らかりようで絶句した私は≪清浄≫を連打してしまう。きゃっきゃと喜ぶ真奈美を睨みつけるも料理も期待できなさそうだなと溜息を付いた。


 予想通り深夜に出前を取ろうとするも店は開いておらず私が空間よりだした食材を調理して自慢の一品を披露したとだけ言っておこう。


 綺麗になったベットに彼女の豊満な胸に包まれてぐっすりと眠らせてもらう事だけが報酬となったようだ。目が覚めて彼女が仕事に行く際にまた来ること約束して連絡先を受け取り帰宅するとみなとに心配をされてしまった。


 トトナッシュは経緯を知っている為にすっとぼけていたが、報酬は良かったので? とだけ聞かれたがいらないと返しておいた。もしかすると今後協力関係になる可能性があるとだけ伝えておいたがな。


 そういえば赤髪の魔法少女の名前を聞き忘れていたのでトトナッシュに確認だけしてもらおう。

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