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いつもどおりの血煙万歳

 深夜遅く、会議が開かれているであろう部屋から一番遠い部屋へと案内をされ仮眠している“フリ”をして待っている。

 

 ノックもされずに部屋のドアがゆっくりと開かれ、室内に邸宅に招かれる際に見た覚えのあるクラシカルなメイドさんがネグリジュ姿で入室してきた。


 薄目で確認すると利き手を後ろ手に回している、恐らく暗殺する為の武器でも隠しているのだろう。


 時間帯的に恐らく会議室で私の正体を聞かされたことで腕試し――の可能性は低いな。王都の消滅に関わっており、尚且つダガラ親子が王国の復権をあきらめている事から私が洗脳、もしくは誘導の可能性があるとして危険因子としての排除が濃厚かな。

 

 ネグリジュ姿でいるのはもし暗殺が露見しても、そのまま夜這い、もしくは腕試しと誤魔化すつもりであろう。


 さて、どうするか。このまま声を掛ければ内密に事を納めることもできるがこれはナメられてるな。うまく行けば排除もできるし誤魔化せるとでも思っているのだろうか。どちらに転んでも大丈夫という糞みたいな選民思想が気に食わない。


 ――君の運命は君が決めるんだね。


 ジリジリとこちらに近づいてきている、もう間もなく刺殺武器の射程に入るであろう。どうか地雷を踏まないでくれたまえ……。


 メイドさんの振り上げた刃が月光に反射して照らし出している。

 

 そのまま私の胸元に――振り下ろした。

 

 もちろん私の耐久性を考えれば女性の力では刃物を通すことすらできない。


「ッ!!」


 ガキリと金属が擦れ合う硬質な音が室内に響き渡る。


「残念だね――もう言い訳はできないよ」


 腕にランスを展開し百舌の早贄のように利き腕の肩に突き刺すと空中にぶら下げたままにする。


 このまま会議室に移動するとしよう。

 

 部屋のドアを豪快に蹴破るとゆっくりと大きな廊下を歩み出す。

 

 暗殺のバックアップに控えていたのか複数の兵士たちがこちらに切りかかって来た。

  

 残る片方の腕をソードに変換しながら一閃、二閃、と乱雑に振舞う。

 

 それだけの工程で周囲にある壁面がバラバラに崩れ落ち轟音を響かせる。

 

 何のためにここに来たのか分かったものではないな。


 会議室の前には沢山の将校と重装備の護衛がひしめいていた。


「犯罪者捕まえたんだけど――弁明ある?」


 室内に反応がダガラ親子の反応はあるが取り押さえられているのか守られているのか良く分からない。


「返事は――無しか……残念だね。死に給え」


 突き刺し悲鳴を上げていたメイドを集団に投げ飛ばすと、指先を全て極細のソードに変換、両サイドから挟み込むように切り刻む。

 

 それだけでスライスされたステーキ肉のように輪切れとなり、高級な絨毯の真紅の色がドス汚れた血塊に染められる。


 メイドの残骸を踏みつぶしながら会議室のドアをゆっくりと開く、盛大に魔導銃の弾丸の嵐に見舞われるがカスリ傷程のケガも追わない。

 

 室内の武装した人物のみを的確に殺していくと残るは手を縄で縛られているダガラ親子。それとシャリウ嬢も……なのか?


 まあ将校数人と公爵を残しておけばいいだろう。


「これはいったいどういう事かな公爵? 夜這いだと喜んでいたら熱烈にナイフを突き立てられてねとっても傷ついたよ」


「……このバケモノめ。王族を洗脳しおってッ!! 王都の崩壊も貴様のせいであろうッ!!」


 ああ、老害というものとどの時代どの世界でもいるものなんだな。


「――とのことだが。シャリウ嬢、ダガラ親子、どう思う? というかコレどう納めたらいいかな? 戦力差を分かっていないのかな……」


 ダガラ親子もこうなるだろうと察していたのだろう、お好きにどうぞと呆れた表情だ、恐らく説得など散々試みた後なのであろう。凄く気疲れしている。


「シャリウ嬢。どこまで殺したらいいかな? 救援した上に暗殺を試みられてなお弁明を聞こうとしたら撃たれたんだけど」


「我はもうシンタ様に身を捧げた。ここまで無礼な行動をする家臣、家族などいらぬ。貴族などというプライドに腐心した恥さらししかおらぬ」


「なにをいうかシャリウッ!! 貴様は無能の癖に甘やかしすぎたッ!! 精々兄の方の当て馬と思い優遇してやったのにッ!」


 父親から無能呼ばわりされたシャリウの表情が能面のようになり、家族という縁が音を立てて崩れていくのが見える。


「……そう、だったんですね。ええ、もしシンタ様に出会えていなかったらここで心が折れていたでしょう。我の……いえ、私はあの人の所有物、配下。シンタ様、どうか私にこの愚物を殺させて頂けないでしょうか?」


 それを聞くや否や、公爵と残り数人の将校の足を黒針で突き刺し張り付ける。

 

 ゆるりと縛られた縄を切り割き、生成した短剣をシャリウ嬢に渡してあげる。

 

 ダガラ親子はそそくさと私の両腕を掴み、大変だったんですから……と盛大に頑張ったアピールをしてくる。ほんとキモが太くなったな。


 王妃、イルメシアも呆れ果てたのだろうけどな。


 短剣を握りしめたシャリウ嬢は将校を一人、また一人と袈裟切りに切り裂く殺していく。


「貴様ッ! 今まで世話をしてやった恩を忘れたのかッ! その男を殺せ!」


「まだ寝言を言っておられるのですね……あなたの愚鈍な判断が公爵家を滅びへと向かわせる。何度言葉を尽くしても、やれ洗脳、やれ垂らし込まれただの自身の判断が正しいといつから固執するようになったのですか……兵器開発、軍事力の増強、確かに良き判断でした。ですが触れてはならない怪物の尾を踏んでしまったのですよあなたは」


 憤死しそうになるほど顔を赤く染め上げ、足の甲を突き刺す黒針を抜こうと藻掻いている。


「力を持ち過信しすぎたのですね……そのまま権力を求め立国して入れば頂きを手に入れ良き王となれたかもしれないのに。いえ、これは感傷ですね。父上お覚悟を」


「――っ! 待て――」


 なるべく苦しませないように短剣を両手て握りしめ喉元を一息に突き刺した。

 

 だが呼吸困難に陥り、念入りに藻掻き苦しんでいる、シャリウ嬢が戦闘訓練をそこまで積んでいなかったため中途半端にトドメを刺せなかったのだろう。

 

 慌てて、倒れ込んだ公爵に二度三度と首筋を切りつけると体をビクビクと震わせやがて動かなくなった。

 

 実は将校たちもダクダクと出血はしているが微かに生きている状態だ。 

 

 念入りに拷問でもしているかと思ってしまったぞ。

 

 シリアスにひと思いに……という割にドジで吹き出しそうになったのは内緒な。


「――すみません。技量が及ばず苦しめてしまいました。短剣お返しします」


「良い。そのまま持っていなさい。屋敷内の人員はまだいますか?」


「非戦闘員はまだいます。そうですね……少し……少し疲れてしまいました」


 そう言うとフラフラと自らの部屋に戻り、室内からはカランと短剣が地面に落ちる音だけが響いた。


「どうしようか? 取り敢えず休む?」


「ええ、話の通じない人に話をするという行為は無駄だと学びましたわ。親子ともども優しく寝かしつけて下さいな」


「シンタ。本当に疲れたわ。もう嫌になっちゃう」


「半警戒しておくから取り敢えず休んでいいよ。私がそばに居るから」


 そう言うと近場の広い部屋のベットに三人で潜り込み身を寄せ合い仮眠を取り始める。なんだか、私も疲れてしまったよ。







 数時間後、師団規模の兵士たちが敷地内に入って来ると隊列を組み慎重に本邸を目指している。最大警戒されているな。非戦闘員の屋敷にいた者たちがいなくなっている。


 恐らく戻って来ていたシャリウ嬢の兄とやらに連絡が行っていたのだろう。もともと王妃が無事だったという報告を受けて帰還していたが、緊急事態となり進軍速度を上げて帰還、と。


 ああ、私は別に虐殺公でもなんでもないんだがな。


 中世風のお貴族様とやらは血の気が多すぎる、公爵にしろ統治や防衛に等うまく行っていたのだろうに。


 ダガラ親子をゆっくり起こすとシャリウ嬢を起こしに三人で向かう。

 ノックをしても反応が無いのでベットを覗き込むを返り血で汚れた服のままベットに寝て居たのでかなり悲惨な状況になっている。


 短剣を拾い、起こすことと着替えは任せて廊下に待機するとしよう。





 しばらくすると着替え終えたシャリウ嬢、いつのまにかちゃん付けをしなくなってはいるが。眼の下に隈をつくりこちらを窺うように見つめて来る。


「シャリウ嬢、君はよくやった。私は君の味方でいるし君を守るよ。いつでも言いなさい」


「――ありがとう……ございます」


 親殺しをさせといて何を言ってるか分からないが私も何を言ってるのかわかっていない。殺されそうになったから殺しただけだ。


 なんだか山の中で慎ましく小屋でも建てて四人で暮らしたくなってきた。

 他国に観光などに向かおうと思っていたのだがなぜだか平穏でいられない気がしてきた。


 あとは兄上とやらが攻めてきそうなのだがシャリウ嬢は納めることが出来るのだろうか。

 ああ、こっそりと本邸にある、宝と蔵書だけでも回収しておこう慰謝料代わりにな。

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