キレちまったぜ
現在【アイドルジェネレーション】の特設サーバーに接続している人間が三千万人を突破した。国内外の注目度は高くまだまだ視聴者数の増加を見込める予定だ。
これが一過性のもので終わるかどうかはVアイドル達のパフォーマンスを公式である私達の運営次第だな。
まもなくVR空間にて二日後に開催される大会の事前説明会が開始される、その中にはフリアノンやアイシクル、その他大勢のVアイドルが集まって来る予定だ。
事前に指定した時間になるもフリアノン以外には数名ほどしか集まっていない。
「ツムギ。欠席の連絡は来ているか?」
「来てないにゃあ~、数名ならわかるけどアイシクルまで来ていないという事は…………」
「IGGの妨害が入ったか。こちらのメンツを潰しに来ているな」
事前説明会を一通り終わらせると出場者に軽く事情を聞いて見る。
ここにいるVアイドルの子達は事務所のバックアップなしに実力で出場権をもぎ取った精鋭たちだ。
怒りの籠った表情で私達に内心を吐き出していく。
「大手のアイドル事務所から急に引き抜きの話が来たんですよ……賞金額である五百万と手厚いバックアップを保証するって。――――もちろん断りましたよっ! 今までは見向きもしなかった癖に! きっとこれって運営さんへの嫌がらせですよね!? 絶対にIGGなんかに負けないで下さい!」
「もちろんだ。大会は滞りなく行わせてもらうし賞金の支払いは確約しよう、こちらに残ってくれて感謝する。良い大会にしようじゃないか」
「Vアイドルとしてデビューする切っ掛けをくれた運営さんには感謝してるんです、もちろん最高の歌声で挑ませて頂きますね!」
そう元気に言うとVR空間から全ての出場者がログアウトしていった。
ああ、やってくれたなIGG。大人しくしておけば私も手荒な真似はしなかったのだが。
「ご主人様の顔がガチで怖いにゃあ~」
「ツムギ。IGGの関係者のリストを上げてくれ」
「はいにゃあ」
モニターにリストアップされていった人間のデータをすべて表示されていく。家族関係や、口座番号、不倫の証拠など。
その人数は数百人にも及ぶ。
「貴様らには本物の呪いという物を味わってもらおう。天音に教えた呪術の真価という物を、な」
私達もVR空間からログアウトすると早速行動を始めた。今日来ていない出場者にも説明する必要があるからな。
◇
IGG本社や支社の幹部クラスが全員の身体に異変が発生したと連絡があったのはダンタリオンへの妨害行為を開始した次の日であった。
老若男女問わず顔が爛れ始め呻き声しか上げれなくなる奇病が発生した。
全てダンタリオンへの妨害をCEOであるアメリアが指示を出した人間だ。狙いすましたかのような報復攻撃であることは明らかだ。
アメリア・グリンドはその報告を聞き歯噛みする。
「いったい何だというのだ!! ダンタリオンにはシャーマンかネクロマンサーでもいるのかッ!?」
持っていたスマホの端末を地面に叩きつけると画面にヒビが入り壊れてしまう。
革張りの高級チェアに身体を沈めると深く深呼吸する。ガシガシと頭を掻き乱し冷静さを中々保てない。
「どうするどうするどうするどうする――――オカルトなんて経営になんも関係ないぞ…………福祉施設への寄付をケチった罰でも降りてきたのか?」
今日のお洒落コーデとして可愛くキメたふりふりツインテールがこころなしかしなだれてみえる。
親指の爪を噛むのが癖なのかガリガリと先端を噛み砕いて行く。
「クソックソックソッ――――」
呪詛の様に汚いスラングを吐き出していると執務室の中央の空間がビキビキとひび割れていき人間の手が現れ始めた。
部屋の中にはアメリア一人しかおらずボディガードはドアの外に待機している。
ガラスを擦り合わせたような不快な音に気付くと目を見開いて固まった。
「なっ! ななななななんだッ!? ゴーストか!? デヴィルか!?」
割れた空間を押し開くように出ている両手が外側に裂き開かれ、部屋の中に成人男性が入って来た。
見た目はスーツを来たアジア顔の中年だがその身にまとう圧力がアメリアの心臓の鼓動を加速させる。
「だ、だれか!? 不審者が入って来たぞ! おいッ!! ――クソッ連絡すら取れねえ…………」
受話器を手に取り内線を使用するも通信が繋がらない、チラリと男性の方を確認すると腕を組んでアメリアを睨みつけている。
男性がこちらをみて佇んでいる隙を見て入り口のドアにトテトテと駆け寄っていく、背が小さい為に走ったとしてもそこまで早くないようだ。
ドアノブを回すも扉が開かない、蹴破ろうと殴ったり蹴ったりするも外にいるボディガード達が駆けこんでくる様子もない。
とうとうアメリアはドアに背中を付けてペタリと座り込んでしまう。
――コツコツ。
男性がアメリアを蔑んだ瞳で見つめながら歩み寄ってきている。
「満足したか? 私が誰だかわかっているのか?」
「…………――し、知らないです」
ぐしゃり、とアメリアの髪の毛を片手で鷲掴みにし宙に浮かせた。
「い、痛い痛い痛いッ! や、やめて――――」
パァンッ! 空いて掌で頬を叩く。
「――貴様が狙ったダンタリオンの経営者だ」
「へ? ――――き、貴様かっ! 私の幹部連中に呪いをかけた奴は! 早く元に戻せぇ! 私はIGGのCEOだ――――アグッ」
再び頬を叩く。何度も何度も何度も。次第に頬が腫れ上がり口から血が流れてきた。
「IGGのCEOがなんだって? 今この状況を理解していないのか?」
アメリアのショートパンツを無理やり剥ぎ取ると、男の膝の上に小さなお腹をのせて、いわゆる「おしりぺんぺん」の状態に持ってくる。
小さな可愛いお尻が丸見えである。
ゆっくりと宙に男性の大きな手を振り上げる。
「ま、まさか。や、やめろっ! やめてくれぇ――――ぴぇっ!! ぴえっ!! お尻が痛いっ痛いっ――ぴぎゃっ!!」
ぱあん、ぱあん、ぱあん、ぱあん。
――無限おしりぺんぺんの開幕である。
◇
見た目が小さくギリギリ美「少女」が鼻水を垂れ流しながらボロボロに号泣している。
余りにも尻を叩きすぎて内出血が酷くなってきたので回復を行い再度叩き始めるという一種の拷問となっている。――なっているのだが……。
――ぱあん。
「あ、あんっ。あっ――――や、やめないで…………ヤメロー。――あふんっ! あふんっ! いいっ! いいかんじっ!」
ときたま素振りをするだけで叩くのを辞めたりしているのだが……叩く度に声色に艶が混じってきている。
彼女の頬がピンク色に染まり涎を垂らし始めている。
「で、妨害を即座に辞めて出場者に経緯を説明するのだな?」
「は、はいぃ。すぐしましゅ――――だから…………叩いてくれ……」
――ぱあん!
「あひんっ!」
少しイラっと来たので彼女の尻を強めに叩くと、私の膝の上にじょぼじょぼと暖かいナニカが漏れ出してきている。
「んッ――――――――――――ふぅ……」
空気が固まった。
こちらを向いて彼女がテヘッと微笑むも溜息しか出ない。
「――取り敢えず着替えろ」
さりげなく≪清浄≫を発動させて彼女にはサイズの大きいパーカーを渡した。
恥ずかしそうにパーカーを受け取るともじもじしながら恥ずかしそうに着替えている。
フリフリの可愛い下着を執務机に放り投げリクライニングチェアに座ると話の続きを始める。
わざとらしく足を何度も組み替えてアピールしてきているのだが知らぬ振りをして話をする。
「――――でだ。条件は飲んだという事でいいのか?」
「もちろん、そういう約束だ。さすがの私も呪術やオカルトの類はどうしようもない…………お願いになるんだが、現在の幹部の状況をなんとかできないか? 慰謝料は充分な金額を払うし、今回のVアイドル至上決定戦の応援する事をIGGが表明しよう」
「えらい心変わり様だな」
再び足を何度も組み替え始めるとチラチラアピールしてくる。
「えふん! ――――意地悪はしないでくれ。条件とは言わないが…………私の見てくれは……その、悪くないだろ? ――い、言わせないでくれ」
「ふむ。――――――このぐらいにしておくか。妨害ではなく支援に回るのであれば今回の事は水に流そう、それと――――激しい方が好みなのか?」
彼女は俯きながらコクリと小さく頷いた。
「わかった」
パチリ。指を鳴らすと執務室の中央に大きなベットが出現した。
小柄な彼女の身体を優しく持ち上げると中央のベッドへ向かう。
「据え然食わぬは――――と、言うが招待されるならば丁寧に答えなければな」
「う、うん。オネガイシマス――――」
小さな体は背徳的な雰囲気を漂わせるが年齢的にはクリアしているはずだ。IGGを潰しに来たつもりが、CEOをコマしているという現状。ツムギにバレないようにしないとな。
IGGの執務室からは嬌声が夜更けまで響き渡るのだが、一切誰にも気づかれなかった。次の日にはCEOの急な方針転換に幹部が驚くも症状が回復し、何かしらの取引があったのだろうと伺えたようだ。
会議室内にいるCEOの肌艶がいつも以上に良くなり機嫌良さそうにニコニコしている姿は不気味に映ったようだが。




