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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
過去の原風景
126/159

いらいらキツネとわるわるネコ

 私が生まれ育ち生活してきた日本が変わっていく。今更な感傷に浸るもやっていることは邪悪としか言えない。


 大臣暗殺を眷属になった妖怪共の指示したのは私だ。あの大臣は神社庁と深い関係性にあり、非合法部隊を使い暗殺を行っていた。


 もう立派なテロリスト認定されそうだがこの神社を狙われるのが煩わしいので大々的な示威行動にでたのだ。


 現在どこの勢力にも手出しできないように眷属やその配下の増強に勤しんでいる。背後にある山を開拓、様々な種族の意見を参考にして住居の拡張を行っている。


「この毒沼なんて素敵だにゃ。水棲系の種族が心地よく住めるとおもうにゃ」


「これ、気化した毒を吸うだけで即死するが大丈夫か? キチンと警告をするんだぞ?」


 地に手を付き、アスタロトの概念で毒を生成していく。


 周囲の木々は枯れ土地が瘴気を帯び始める。――ん?


 側頭部に竜の角を生やした暗黒ボディ、長い尻尾が特徴的な破壊神の女性が私の胸からズルリと出てきた。


「君か、久しぶりだな」


 ニコニコと笑いながら長い舌を伸ばして私を舐めてくる。


 尻尾は地面に叩きつけられゴキゲンな様子を表している。


「ああ、外に出たかったんだな――――そうだな君に名前を付けていなかったな。ディストライアでいいか? ……いいようだな」


 顔を縦にブンブン頷きアスタロトの毒沼へ飛び込んで行った。


「ご主人様…………あのヤバイナニカはなんですか?」


「語尾の『にゃん』が抜けているぞ? とある惑星を滅ぼした破壊神だ。私が孵化させて眠っていたんだが……ちょっと泳ぎにきたんじゃないか?」


 クティやニックは現在AIのハーヴェストと共に武装組織ダンタリオンとしては働いており私の中にはいない。


 残っていた彼女、ディストライアは暇だったのだろう。


「まだ情緒が育っておらず破壊行動が顕著だから扱いには気を付けろよ? 下手したらこの世界が破滅するかもしれない」


「――厳重に部下に指示を出しておきます……にゃん」


 そこまでして語尾に『にゃん』を付けなくてもいいのにな。


 それから裏山全てに結界と怨嗟を込めて行き独自の領域へと変貌させていく。


 そこに住んでいる動植物は変異を起こしていき凶悪になっていく、鹿や熊も爪や牙が鋭くなり体格も大きくなる、植物は毒を放ち雑食性となる。


 人間がここへ侵入するとひとたまりもないだろう、その為に一般人が入れないように認識阻害の効果を結界に含ませている。


 同業者が入って来る事に関しては自己責任だ。







 大臣暗殺事件より一月が経ちようやく世間が落ち着きを取り戻した。妖怪や幽霊、神や仏の存在を調査したり検証する動きがい一般人にも広がってしまった。


 動画投稿サイトやテレビ番組では過去の不思議映像を引っ張り出して来たり。心霊スポットへ突撃したりすることが多発していた。


 それで実際に心霊事故に巻き込まれたグロ映像が出回ったり、本物の霊能力者が表に出てくるなど一大心霊ブームが巻き起こってしまった。


 その中でも【にゃんころ神】を語る配信者が現れた。


 【YAEH! TUBE】という動画投稿サイトで妖怪が実際に出演する生放送を行い話題になっている自称・にゃんチューバー。絶世のパツキン美女が猫耳を生やして妖怪の生態系を紹介してくれている。


 彼女のトレードマークである着崩した和服の谷間の先が、見えそうで見えないと話題になり。視聴者は目を皿にしてスクリーンショットを連打するというデッドヒートを繰り返している。


 生放送開始まで【いい子はちゃんと待ってるにゃん(はぁと)】という可愛いイラストのサムネイルが表示されている。


 チャンネル登録した視聴者たちと霊能力の資格保持者がコメントを打ち込み今か今かとにゃんこ神の登場を待っている。


 ――にゃんにゃかにゃんにゃんっ! にゃかにゃんにゃんにゃんっ!


 オープニングの曲が流れ始めると視聴者のコメントが滝のように流れ始める。


 サムネイルの画面が実写に切り替わり、耳だけが画面に映し出され可愛くピコピコ動いている。


 シュババッ、と画面下からにゃんこ神がジャンプして、ブルンと巨大なお胸が揺れると視聴者のスクリーンショットの嵐が巻き起こる。


『にゃにゃっと登場~にゃんころ神だにゃぁ~! 今日も可愛いにゃんころ娘はだ~れだっ?』


【にゃんころちゃーん!】【にゃんころ~】【にゃんころちゅわーん】【んな~お】【にゃんころ~!】【にゃんころちゃ~ん!】【にゃんころちゃーん!】【お布施五万YEAH円】【スクショ代五百YEAH円】【にゃんころちゃーん!】


 顔も身体も最高級の美女なのにその仕草とキャラクターにファンが増加、人気が爆発しておりチャンネル登録者数は二百万人に到達する勢いである。

 

 とあるご主人様からは――娘……? と言われ傷心中なにゃんころ神。


 彼女の溢れる魅力に神社庁の幹部も密かにファンになっているだとか。この生放送には【お布施】と言うシステムがありYEAH! TUBEで購入したチケット【YEAH円】を配信者にプレゼントすることが出来る。

 

『まいどまいどYEAH円をありがとにゃ~、これはあたしのサービスにゃあ~ほれっほれっ』


 そういうなり下乳を両手で持ち上げブルンブルンと揺らし始める、今微かに桃色がチラリと見えそうで見えないギリギリを攻めている。


 彼女は何度か、アカウントが爆発、通称・アカBOOM(ブーン)されており、中々懲りない。


『ファンのみんなのお陰で今日も猫又達のおまんま代になっているにゃっ! ほらお前たち、お礼を言うにゃ!!』


 色んな種類の猫たちが二足歩行で立っており、もふもふのお腹を晒している。特徴的なのは尻尾が二本だったり三本だったり増えている事だ。


『にゃあ~んっ!! にゃんにゃにゃーん!(通訳・ありがとうございますにゃ)』


 猫語の通訳が字幕で表示されている。本当に言っているかは視聴者はわからないが感謝している様子はハッキリと伝わっている。


【これを見れるだけで投げYEAHNする価値がある】【可愛い~!】【すげぇ……妖怪は存在したんだ……】【尻尾が五本も……高位の妖怪……日本終わった】【pretty!!】【※※※※】【またNGワード使ってるやつがいるぜ】【オワタな】【後でネットに晒されるな個人情報】【※※※※!】


 悪意ある発言者は高度AIにより即座にブラックリストへ送られ、個人情報と悪事が証拠付きで晒される。もちろん妖怪の超技術とやらのお陰らしい。


『にゃあ~ん、あたしのチャンネルにまだ変な人がいるみたいだんにゃん……ま、妖怪の超技術で悪行がばればれにゃんよ~、これも悪人退治の社会貢献として継続していくにゃ~』


 暗殺事件以来リークサイトとして世界中で有名になった【神仏妖怪掲示板】投稿者は超電子生命体だの、電子精霊だの噂されており特定が不可能なのだが、犯罪の決定的な証拠と口座番号や家族関係まで次々と暴露される。


 サイトの閲覧者は支援金を振り込むと犯罪を特定してほしい人名を書き込めるようになる。


 人名を書き込んで数分程待てば、投稿された人名の犯罪歴が詳らかとなりリークされた犯罪者に名前入りされることとなる。


 実際に警察関係者もリークサイトにはお世話になっており過去の未解決事件が数十件も解決に至っている。だからなのかサイトの全貌を調査せずに見逃されている節がある。


 現在も定期的に政治関係者の罪が暴露され、権力を持ち甘い汁を吸ってきた人間ほど戦々恐々として怯えている。


 暴露されたにも関わらず、未だに議員を続けている厚顔無恥さに国民が怒り、国会に連日連夜火炎瓶が投げ込まれている。そのためか現在国会は機能しなくなっている。


 議員特権である不逮捕権で、のうのうと給料を貰っているが議員を辞めた瞬間に逮捕者が数百名出るであろう。 


 警察上層部も汚職に染まった幹部が次々と逮捕、起訴されていき順調に浄化作業が進んでいるのだが議員達は相変わらずのようだ。


 海外向けの特設サイトも近々ニューオープンすると告知されており、世界各国からのサイバー攻撃が盛んになってきてるようだ。


『にゃんとにゃんと今日は視聴者プレゼントを用意しているので最後までチャンネルを見逃さずにいるのにゃん! こっそり内容を教えると誰でも霊能力者になれる秘密アイテムにゃん! あ、言っちゃった』


 その瞬間チャンネル登録者数が爆増し、注目していた世界の特殊能力者も情報が高速で伝達される。


【まじかよ投げYEAH円します】【!! 革命か!】【神を恐れぬ所業よ……】【まじで!】【五万YEAH円】【三万YEAH円】【五百YEAH円】【通信販売はしないんですか!】【欲しいにゃん!】【このご時世必須アイテムだな……】【一万YEAH円】


『今日は今まで秘密にしてきたあたしの拠点である縁繋神社と、仲間たちを紹介するにゃん』


 映像画面が手前に引かれるとキツネ耳の金髪美少女が映し出される。


『あたしのライバルでもあるえにしちゃんだにゃん……ほら、事故紹介しろにゃん』


『自己紹介の『じこ』の部分に悪意を感じるのですよ~、どうも~キツネで巫女な縁ちゃんで~す! この糞猫女よりピチピチで~す! 私のファンに鞍替えしてもいいです――コンっ!!』


 両手を軽く握りしめ可愛く招きポーズで自己紹介をする縁、隣でにゃんころ神の顔がブチ切れている。


『きさま、命が惜しくないようだな。今引導を渡したろうかぁ!? ああ゛ん!?』


『糞猫がぁ、最近調子乗ってるんじゃねぇのか? ああ゛ん!?』


 何処からともなく飛んできたハリセンで両者の額が引っぱたかれる。


『ふにゃあっ!』『けーんっ!』


 額を撫でる二人は気を取り直し取り敢えず仲直りする方向で進めるようだ。視聴者もネタだったのかと安心して視聴を続けている。


『――とまあ、喧嘩するほど仲のいい縁ちゃんだにゃん!(後でブッコロス)』


『――やだなぁ恥ずかしいなぁ、大好きなにゃんころちゃん(三味線の材料にしてやんよ)』


 そうして縁繋神社の境内を案内したり明らかに妖怪らしきものがうろうろしている様子が映し出される。


 犬神や巨大な熊、空を浮かぶ幼女に、泥のような動く人形、植物人間や鬼のように角が生えている巨漢の男。


 まさに百鬼夜行の様相を見せている。


『みんな気の良いやつらだにゃん~。でもでも最近引っ越してきた人も多いから今はちょっと忙しいのにゃん』


 実際にタンスを背負った鬼が境内に入ってきており案内役の幼女が連れて行っている。


 神社にはご利益のある護符やお守りなどを販売している所もあり、可愛い猫耳の巫女さんや犬耳の少年が売店で働いている様子が映し出される。


『神社ではご利益のある霊水や、護符を千円からはんばいしておりま~す。肩こり腰痛にも効きますよ~ぜひぜひお求めください~』


『待ってるっすよー! わんっ!』


 売店の犬耳少年があざとくアピールをしてくる。その姿は妙齢の女性の心を射止めファン層の増加に貢献する。


 神社の紹介も一通り終わりプレゼント企画の内容がついに発表されることとなる。


【縁繋神社の護符、通信販売はやってないだって】【護符欲しいな…値段もそこまで高くないし】【犬耳ショタのファンになりました】【妖怪がいる神社なら護符の効果も本物なのでは?】【あそこには近づけない何かかあると思えば……】【犬耳君きゃわわ】【プレゼント企画期待】【何人プレゼントするんだろう?】【マジ欲しいわ】【霊能力者涙目】【犬耳ペロペロ】【はやく~】【欲しい……】


 背景に本殿を移しながらにゃんころ神と縁が並んで、用意しておいたのかテーブルの上の台座に何かが置かれている。


 その雰囲気は昼間テレビで放送されている、通販番組と酷似している。


『視聴者の皆さんにプレゼントするものはこちらだにゃっ! ――にゃにゃん!』


 アップで映し出されたプレゼントは小さな黒い結晶が埋め込まれている指輪とブレスレットだった。


『こちらっ! 力ある結晶をあしらい、お洒落に仕上げたデザインの指輪とブレスレットどちらかを、なんとなんとっ! ――三百人にプレゼントするにゃっ!!』


 周囲から拍手の音が盛大に聞こえて来る、カメラが移動すると犬耳少年がそのブレスレットを装着している。


『実際に少年に付け心地と効果を試してみるにゃん!』


 少年がカメラにブレスレットを見せると小さく手を振って来る。そして実際に使用する様子が映し出される。


 掌を上に掲げるとブレスレットが淡く光り、小さな炎が出たり、水を出したりする。


『このように小さな霊力でも増幅され、火や水を出したり。浄化、身を綺麗にしたり霊体を祓ったりでくるにゃん!!』


 用意されたボロボロな布に少年が手を掲げると、キラキラした光が降り注ぎ布が真っ白な色を取り戻す。


『布地は修復されないけど、このとおり驚きの白さだにゃんっ!!』


 その様子をみた視聴者のコメントが物凄い反応を示した。


『応募方法はにゃんころ神チャンネルに記載してあるからよく読んで応募してにゃんっ、完全にランダム抽選だから誰にでもチャンスは平等だにゃん!』


『ですです~、プレゼントの指輪とブレスレットは三百人だけど私達のサイン入り護符も五百名のみんなに特別に用意してるよっ! 縁繋神社の公式ホームページでも通信販売を今日から開始するからチェックしてみてね~!』


 縁繋神社のホームページには即座に世界中からアクセスが殺到した。もちろん裏社会の人間が調査用に応募したり、実際に指輪とブレスレットの効果をみて購入応募する者が後を絶たない。


 その瞬間、【にゃんころ神】チャンネルは同時接続三百万人を突破した。


 ちなみにだが海外からの接続には同時翻訳が行われる親切設計となっている。


『じゃあまたにゃんころ神チャンネルをよろしくだにゃ~、良かったらチャンネル登録と、YEAH! ボタンをクリックしてにゃん! まったにゃ~ん!』


 生放送が終了するとすやすや丸まって眠るにゃんころ神のイラストがサムネイルに表示される。未だにコメント欄には滝のようなコメントが流れて行っている。









 本殿内で内職を行っている妖怪の配下たちがいた。護符ににゃんころ神と縁のサインと印刷していたり、指輪とブレスレットに黒い結晶を嵌め込んでいる。


「みんな内職ありがとうにゃん。手当は弾むからよろしくにゃん~」


 妖怪の配下たちは元気よく返事をすると作業に戻っていく。


「ふふふふ、これで全国になわばりを薄っすらと展開できるにゃん……計画通りにゃ」


 黒い結晶は怨嗟の塊であり、霊能力を引き出す効果もあるがその地を汚染し、邪神勢力を拡大させる効果がある。眷属や配下たちの行動範囲も広がり支配地を増やしていく計画だ。


 そのことに気付こうとも実際に効力のあるアイテムを手放すことは無いだろう。


 通信販売も数量を十分に用意でき、順次世界に汚染を広めていく。


 邪悪なキツネとネコの壮大な計画の始まりであった。

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