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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
過去の原風景
124/159

おいでませ縁繋神社

 週明けには仕事場に辞表届を提出し、有給消化の期間にすぐさま入る。職場のブラック加減を盾に労働基準監督所に通報するぞと威圧した為、早期退職という適当な名目で慰謝料代わりにかなりの額を増額してもらった。


 私が胸倉を掴み上げた嫌味な奴には丁寧語を使わないと殺しに来ると釘を刺しているのでしばらくは大人しくなっているだろう。


 狭苦しいアパートも引き払い、現在は縁のいる神社を拠点として活用している。


 数日間程全国にある競艇場と競馬場を梯子して億を超える金額を稼ぎ出し、あの神社の正式な所有者として登録した。放棄されており困っていた役所や神社関係者の意識を誘導して登録の際のいざこざは誤魔化しておいた。


 近所の人たちにも縁とあいさつに回って境内にも入れるように認識阻害の結界を張ってお参りができるようになっている。


 縁繋ノ神とでかでかと看板にキツネの石像と共にアピールをしているので分かり易いだろう。


 古ぼけた石階段も綺麗に直し、駐車場も完備している。湧水を堀起こしてご利益のある神の湧水と謳っている。実際に効能があるから問題ない。


 再建祝いとして各家庭にご利益のある護符を配って回ったので効果の実感も早いだろう。実際に最近光り輝く原因として裏の調査員が神社の周りをうろうろしているので全国、いや、世界中からその筋の関係者が集って来るだろう。


 害意を持って神社に近づけば燃え尽きて死んでしまうので早めに気付いて欲しい。すでに数十人程消失しているので関係者を私が殺しつくさないよう神伝いに警告させているのだがな。


 境内には小さい子供や犬や猫、クマなどが徘徊している。


 神に属する類の獣や妖怪だがな、ここは動物園じゃねえんだぞと声を大にして言いたい。


「なあ、縁。人型の神は少ないのか?」


「ん? いますよ? ほら、あの幼女とか。非業の死を遂げた女性の思念が集まり祟り神として奉られた子ですよ~」


「物騒過ぎないか? なぜか呪いが漏れているが周囲に影響はないみたいだが」


「ここは大邪神の拠点ですよ? みんなが心太君に気を使ってるんですよぉ~。粗相をすれば瞬時にブッコロされるってわかってますから」


「私は本当に大邪神と認識されているのか。存在がこの世界では固定され権能が目覚め始めているぞ?」


「いいじゃないですかぁ~、心太君がちょちょいっと指を鳴らせば神なんてデストロイですよっ!」


 その邪神の拠点に参拝者が出始めているのだが……邪悪の使徒が生まれそうだな。


「おかげさまで信仰がこの子達にも戻りつつあるんですよっ! 今は獣型や小さい幼女ですけどバインバインの女神に変身しますって! そしたら心太君にズコバコしてもらってこの世界の神産みになるんですっ! ふふふ、この子も早く生まれてこないっかなぁ~」


 彼女はすでにズコバコというヤツで懐妊しており、権能を保持した神が生まれてきそうなのだ。


 あらたな神の誕生は数百年物間起きていなかった特大の事件だ。


 その予兆を感じ取り神の行動が活発化してきている。


 神秘が廃れ、滅びへと向かっている神の世界が変わりつつあるのだ。


 すでにこの地域の山周辺はすべて彼女の縄張りであり、他国の神が侵入すれば即座に感知される。


 私と情を何度も何度も交わし、その度にチューチュー存在を吸われているのでドンドン存在が肥大化していっているこの縁というキツネ神。


 何やら不穏な計画を企んでいるがキツネの悪だくみなど愛嬌の一つとして容認している。


 裏の神社庁がこの神社の新設の認定を行いたいとそろそろ調査員が来るらしいが大丈夫なのかね?


「そういえば調査員という小賢しい連中が明日来るそうですよ? 調子に乗っていたらブッコロしましょう」


 調査員の明日は暗いな。




 

 この神社に存在している神達には縁が怨嗟の塊から力を分け与えている、それが馴染めば元に戻れるそうなのだが障壁の展開される護符も私の手で配っている。


 やけにかしこまって受け取っているがそこまで崇めなくてもいいんだぞ? 子猫よ。


 膝に乗せ撫でると大層ご満悦の様子だ。


「あ、その子男垂らしの糞メス女なんで気を付けてください。調子にのったら私が締めるんで」


「余計な事言うにゃ。あたしはご主人様に愛でられているところにゃ。もうお古のキツネはどっかにいくにゃ」


「――――殺す」


 戦闘を始めそうになったので威圧して止める。周囲の子達も驚いて止まってしまったじゃないか。


「ほら、仲良くしなさい」


「はいにゃ」「ハイ……」


 仲良くさえしていればいいのだよ、みんなも分かってるよね?


 視線で言いたい事伝わったようで激しく頷いている。


「ご主人様の力の片鱗を垣間見たにゃ……さすがのあたしもキツネとは停戦するにゃ」


「分かればよろしい。心太君には私とたーっくさんの子を孕ませてもらうんだからね」


「あたしの方が子だくさんになるにゃ」


 また、バチバチやってる。









 次の日になり、神社庁から調査に来た裏家業の者を境内に案内する。


 石畳の上にテーブルを設置して話をするそうだ、本殿は強固な神気に包まれており、裏家業の者でも耐えきれないようだ。


「初めまして。神社庁特殊災害対策管理局所属の霊能力資格特級保持者の葉隠操はがくれみさおです」


「同じく、特級保持者の葉隠才蔵はがくれさいぞうです」


「どうも。この神社の管理人である源心太みなもとしんたです。同じ名字という事はご兄弟か、親戚で?」


「ええ、神社庁に所属している一族の親戚です。彼女、操は若くして才能のある忍びの技術を持つものです」


「それは私に公表しても良いので?」


「あなたから感じ取れる“モノ”は私どもからすると触れざるものとして認識しております。情報開示して友好的に接しろとのお達しで……ですが……」


「一部の者が邪なるものを討伐せよ――と?」


「耳がお早いようですね。その通りです、すでに数名ほど連絡が付かない者も出る始末……あの、遺体とかは――――ないですよね」


 操と言う女は先程挨拶をしてからブルブル震えて下を向いたままだ。原因は……縁か。


「ないな。害意を持ってこの神社に近づけば存在そのものが消滅する。良かったな――害意を持っていなくて」


「――ッ! ええ、知らせて頂ければなおよかったのですが……害意を持ってここに来たものが悪いですよね、ですが引きに引けなくなっている者がいる事をお忘れなく」


 そう、脅しともとれる発言をした彼の首元には縁が構えた刀が添えられている。


「それは宣戦布告ですかぁ~? 人間の癖になまいきですねぇ~、そこの小娘の様に震えて黙っていればいいものを」


 刀を少し引くと彼の首から鮮血が流れて行く。


「も、申し訳ございません…………どうかご寛恕を頂きたく……」


 私に目線で支持を問うてくる縁。手を横に振って許してやれと合図する。


 刀を離した瞬間には私の背後に侍っている。


「まぁ、発言には気をつけろ。神社庁とかいう大したことがなさそうな組織など塵にも等しい。君もそこそこの腕ならこの状況が分かるんじゃないか?」


 いつの間にか辺りには力のある存在に取り囲まれている。


 一人一人、いや、一柱に数えられる程の存在が数百もひしめき合っている。


 元々も小さな存在であった妖怪や、祟り神が私と縁に力を与えられて強大となっている。


 操と言う女は白目を剥いて失禁し始めている。才蔵は唇を噛んで意識を辛うじて保っているな。


 ――パチン。


 私の合図と共い彼らが去っていく。才蔵も滝のように汗を流し大きくため息を吐いた。


「――――絶対に敵対しないように命を賭して通達いたしますので……我らを滅ぼされぬよう真にお願い申し上げます……」


「そんなにかしこまらなくていいよ? ただ、ね? 向こうから何度もやってこられると私としては彼らを止めるわけにはいかない。特大の核爆弾が数百発埋まっていると正しく認識した方がいい。君達神社庁はその一部の者を殺してでも止めなければあっさりと死に絶える、と」


「ええ、分かっております。調査に来て改めて認識いたしました……彼女の粗相に対してはご勘弁を……」


「いいよいいよ、まだ若い子なのに酷な任務を受けてしまったね。でも世の中には逆らってはいけない存在が居ることを知ったんじゃないかな? それともし私の婚約者に君らの影が有ったら存在している県ごと滅ぼすから――そういう奴らは必ず殺せ、死んでも殺せ、家族ごと殺せ。これは命令だ、絶対の命令だ、歯向かう事は許されない」


 神の権能/絶対命令権(我に従え)を使用して命令を下す。心臓に楔が打たれているであろう。


「ッ!! これは――」


「権能だ。絶対順守させる契約を施した。命令に背けば魂ごと破壊される、来世は望めないな」


「わか、り、ました……遵守させて頂きます」


「それじゃあその子を連れて帰りな、それとも生贄にでもする?」


 そう言うと彼女を担いで全力で石段を下りて行く才蔵。おお、あれが足音を立てない忍者走りか。


「ご主人様、あんな乳臭い小娘を相手にしなくてもあたしは元に戻ればバインバインの毛艶の良い猫娘になりますにゃ」


「子猫だろう、今は。これで神社庁が色々と押さえれればいいが……そうは世の中うまく行かないだろうな」


「そうですねぇ~。いつまで持つでしょうかねぇ~」


 こういうことでの悪い予感は百パーセントの的中率を誇る。

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