表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
過去の原風景
123/159

でぇと

 予約しておいた都内でも有名な高級料理店に入っていく、後ろに着いて来ている涼子はかなり緊張している。


 仕事終わりにチョイスする店を失敗したかなと思いながら彼女に話しかける。


「今回は私の奢りだ、気にせず好きな銘柄の酒でも楽しもうじゃないか。君との再会を記念して――ね」


「再開…………あなた、いつ気付くかと思っていたのに三年も経ってからなんてどれだけ鈍い男なのよ――――心太君久しぶり、って所かしら? もしかして実家に帰っていたの?」


 私の懐からあの神社の護符を一枚取り出して彼女に渡した。この護符は私の力を注いでおり、害意に対して障壁を張ったり、運が自然と良くなる効果がある。


「それは本当に効果のある護符だ。それに見た事もあるだろう? あの神社の管理を受け継いだ人が制作しているらしくてね。私も君も会ったことがあるそうだよ? それで私が思い出して昔話に花を咲かせてきたんだ」


 まぁ、縁繋ノ神という本物の神様だけどな。


「そう、親戚が神主をしていたあの神社復活したのね。あなたとの思い出の場所だから寂しく思っていたの――ふふふ、子供の頃のあなたとてもやんちゃだったわ……」


「食事でもしながら話そうか、生々しい話で申し訳ないが奮発する為にかなりの額を持ってきているぞ? 君への謝罪代わりとはいかないが本当に気にせず楽しんで欲しい」


「わかったわ。あなたとの再会に美味しい銘柄を選ばせてもらうわ」


 五万円を超えるワインを頼み、二人で味を楽しむ。本当に高級なワインは青天井に高いがこういう店で楽しむには丁度いい値段だろう。


 コース料理が次々と運んでこられ、拙いマナーを思い出しながらも彼女との談笑を楽しむ。


「子供の頃は世界の全てがそこにあると本当に思っていたわ。でも引っ越しを繰り返し、中学、高校、大学、大人になるにつれて広がっていく世界に反して狭く息苦しく感じて行ったわ。『井の中の蛙、大海を知らず』世間の広さを知らなかったけれどその蛙はそこに居るだけで幸せだったのよ……。『されど空の深さを知る』子供のままでいればあの楽しい世界に包まれていたのに」


 中々のストレスを抱えていたのだろう。縁の話によれば彼氏などできず癒されはしないと。


「そう、だな。知らないことは幸せ。深く知り得る事で戻れない日々に対する絶望が襲い掛かって来る」


「あなたのことあの時好きだったのよ? 子供ながらに一緒に居られますようにって祈ってたわ。だけど、親の都合で転勤が重なり、離れなければいかなかった」


 酒が進んできたのかポロリと本音を離し出している。


「年齢を重ねて行っても全く男性が魅力的に映らなかったの。おかげさまでこの年齢まで処女よ! 処女ッ! いい加減カビが生えちゃうわよ!」


「君はそんなに魅力的なのにな、私も最近までどうかしていたよ。本当は美人過ぎて私には関係な高嶺の花だと思っていた」


「思って“いた”なのね――――今はどうなのよ!」


「もちろん、今からでも愛し合いたいくらい魅力的だ。君さえ良ければこれから二人で――ゆっくりしないかい?」


 彼女はその言葉に口をあけ驚いている。まぁ男との縁がこれでもかと遠ざけられていたのだろう。ゆっくりと頷き顔を赤くしている。


 彼女の手を取ると会計を済ませている店を出るとタクシーで予約している高級ホテルのロイヤルルームへ向かう。


「あ、あなた大丈夫なの!? こ、こんなに高そうなホテルに……それに景色が凄い……」


「君に相応しいホテルを探したがこれでも君の価値に合いそうにないな。私の限界だと笑ってくれ」


「――ホント、イケオジになっちゃって、こんなおばさんになった私を口説いてもめんどくさいだけよ?」


「待たせた分だけ精一杯愛させてもらうよ? それに本気になってもらわないと困るのでね――おいで」


「――うん」


 大きなベットに寝転ぶと、電気を消して欲しいを恥ずかしがられてしまう。その初々しい雰囲気に頭を撫でてしまう。


 彼女はそれから成すがままにされ散らされてしまった。


 さりげなく奇跡の甘露(ヒール・ドロップ)を使用した為か、行為の後には肌艶が全盛期に戻ってしまい下手をすると十代の容姿になってしまった。

 

 その涼子はとても可愛らしくあり美しかったので、野性的に貪ってしまう。


 もう辞めて、との懇願も聞かずに責め立ててしまい最後には怒られてしまった。それも照れから来ている怒りだったので。じゃれあい二人のひと時を楽しんだ。


「もう! 私初めてなんだからね! 手加減しなさいよヤリチン!」


「ヤリチンとは失礼な。こんな魅力的な美貌を持つ涼子が悪いんだ」


「――そうね、女は恋を知ると美しくなると聞くけれどツヤツヤし過ぎじゃないの? まるで大学生に戻ったみたい」


 全裸で広々とした風呂場で鏡を見る涼子。肌は水滴を弾き、艶やかな色気を振りまいている。


「こういうものなのかしら? 分からないわ。――あ、明日空いている……よね? どこかにデートしに行かない?」


「もちろん空いているよ。どこに行きたい? 恋人として連れて行ってあげるよ」


 彼女とはもちろん交際を始める事になっている。彼女が行きたいなら海外でも宇宙でもいいのだが。


「どこがいいかしら……恋人らしいデートって行った事ないのよね、悲しい事に」


「宇宙でも行ってみるか?」


「は? あなたって冗談が下手なのよね。行けるわけないでしょう?」


「嘘じゃないぞ? ――ほら」


 彼女を外部と接続を遮断する障壁を纏わせ、お風呂に浸かったまま月面に到達する。周囲には荒野が広がっておりポツンとバスタブが寂しく存在した。


「は? は? は? はははは。ちょっと、ねえ、私宇宙にいたりするの?」


 手の中に出した高級ワインをグラスに注いで彼女に手渡す。それを受け取ると勢いよく飲みだした。


「――ぷはぁ! これって夢じゃないのよね?」


「もちろんだ。涼子が私が変わって見えたのもたのもこういう事ができるようになったからだね。恋人になったのだから教えておこうと思ってね」


「信じられないけど事実なのよね……他に何ができるの?」


 暖かい湯気が立ち昇る風呂に二人でくっつきながら話を進めて行く。月面から見える風景に彼女はうっとりしながら私の能力を聞いて行く。


「なにそれ……競艇で一千万以上も……数回通えば庭付きの戸建てを一括で購入できるじゃない。うわぁ、凄いけど普通の人からしたらずるいじゃない。それに私の身体が若返っているなんて……」


「仕事を辞めても困らせることは無いと思うんだがどうしたい? 私はそろそろ仕事を辞める予定だが」


「…………あなたと籍を入れれば辞めてもいいけれど……結婚してからじゃないと辞めれない臆病な私を笑うといいわ」


「笑わないさ。もちろん君と籍を入れて君の両親に挨拶にいこうか、それと言っておかなければいけないことがある」


「なにか不安なワードなんだけれど……」


 私の妻と子供が沢山いる事と過去の所業と現在の身体が悪魔になっていることを説明していくと顔が曇ってきている。


「――――はぁ、あなたが死んでいたなんて信じられないわ……でも嘘じゃないのよね……私と出会う事で名前が認識できたのは嬉しいんだけど……大量虐殺に、たくさんの妻子……実感がわかないわね。今私が大事なのは今ここにいうあなただけなの。離れないでくれれば問題ないわ、それとその妻とやらの顔も見て見たいわ」


 おお、これは許容される流れか?


「――月面でのセックスなんてロマンチックな事、人類で私達が初めてよね? 狂う程私を愛しなさい。――じゃなきゃ許さないんだから」


 鬼気迫る顔で絶対に孕んでやるという信念を感じさせる。


 やはり女性はとても怖い。彼女の実家に行く際にはお腹が膨れているかもしれないな。


 月面で奏でる彼女の嬌声が響いた気がした。空気ないんだけどな。





 ホテルに帰還し次の日の朝まで二人でぐったりしていると、彼女のスマホに連絡が入る。


 私の事を母親にちょくちょく報告をしていたのでどうだったのかとの連絡だった。もちろん満面の笑みでしてやったりと報告を行っていく、隣に私が居るのに、だ。


「――――でね、ようやく思い出したのよあの朴念仁。うん、うん、もちろん籍を入れてやるわ。今すぐにね――――来週には連れて来ると思うから。うん、うん、今一緒よ? 会話するんは実家に帰ってからのお楽しみにしてよね? うん、うん、お父さんにも言っておいてね? じゃあねお母さん――」


 通話が終了する。来週か、仕事辞めておこう、それと、競艇場へ通わないとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ