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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
過去の原風景
122/159

対ありでした

 生まれ故郷への滞在は三日で終わり、今住んでいる所へ電車を利用せずに転移術で帰って来た。


 電車での旅も一度経験すれば飽きるものだ。


 今は海辺にある競艇場へと足を運んでいるが色々と購入する為の軍資金を稼ぎに来ている。


 金や宝石を等を換金できない事も無いが、身分証の提示や鑑定も煩わしく、海外へ飛んだとしても換金の手間がかかるので手っ取り早く合法に稼ぎに来ている。


 軍資金は銀行に貯金していた二十万ほどを財布にしまっている。


 朝早くから競艇場に赴き入場すると今日のレース表を閲覧する。


 十二レースが行われる予定か、数度来たことがあるが付き合い程度でしか掛けていなかったからな。


 レースが実際に行われる場所へ赴くと魔眼をさり気なく発動させる。


 魔眼発動/未来視ヴィネ


 今日のレース結果を終了時まで記憶していく。大きなオッズ変動もなく、固めのレースばかりだな。


 ボートの入賞順をレース数分前までに予測し金銭を賭ける。三番手まで予測する賭け方が配当金額が高くなる。


 単勝/一着のみを当てる賭け方やだと一倍と少しなど低すぎる事も多々あるが、三着までの予想/三連単ならばそうでもない。

 

 私が周囲に影響を与える賭け方や、事象に干渉するとレース結果が変動する事もあるが、大人しく数十万程度かけるならばさほど問題ない。


 予測したレース結果を数十枚に記入していく、レース前にも購入できるがなるべく目立たないようにハズレの結果も紛れさせておく。


 全てのレースを的中させ過ぎると結果として残ってしまうからな。





 海辺に設置されたレース場が良く見える位置に座りレースの開催を見守る、六艇のボートが場内へモーター音を響かせ入場してくる。


 最初の並び順はレースに走る選手が競り合って決めているらしいのだが色々と戦略があるのだろうと見守る。


 勝率と掛け金が一番高く、人気な選手のオッズが低くなるのだが、恐らく敗北する未来が見えている。


 一番内側のコースに割り込んできているのだが、他の選手にコーナーで妨害され着順を落としている。


 ――場内の大時計が回転を始めた。


 選手たちはボートの加速を開始し、スタートラインを一秒以内の誤差で切っていく。まずは第一コーナー、一番外側のゼッケン六の選手が猛加速し大胆に内側へ切り込んでいった。

 

 水飛沫を巻き上げ一コースにいた一番人気の選手と六コースから攻めた選手同士が激突しそうになるも、華麗なターンを六番の選手が決め。躱した。

 

 動揺し減速した一コースの一番人気の選手は他の選手に遅れてコーナーを回っていく。


 場内の一番人気の選手の舟券を購入していた観客は絶望の声を上げる。


 最初のコーナーで全てが決まるといっても過言ではないが、続いて二コーナー目で三番の選手が六番の選手へ勝負を仕掛けてきた。


 またしてもボート同士の激しい争いが起きるも――――六番ゼッケンの選手は譲らない。攻めすぎることによって一つ順位を落とし。六―四―三の順番で順位が固まってしまう。

 

 六番ゼッケンの選手も実力者で有名であり、配当金もそこそこで落ち着いているが九六〇〇円の配当金、競艇の最低掛け金の九十六倍、私はこの三連単に五万円を複数掛けている。


 ――四百八十万の払い戻し金だ。


 未来が見えるという事はこういう事が簡単にできてしまう。金額が多くなった際には二階にある事務所での換金が可能と成なっている。


 すかさず大金を受け取りに行くと次のレースの舟券を先程よりも多くハズレ券を購入していく。


 次のレース結果では一万二千円の配当金額となり掛け金は七万円購入しており、八四十万の払戻金をてにいれてしまった。


 先程見た顔がやって来るとさすがに驚いていたのでここらへんで撤収する事にする。カバンに一千万以上の札束を仕舞うと、記載済みのマークシートを炎で消し去り競艇場から立ち去る。


 裏路地に行き転移して移動しようと考えていると高額配当金の払い戻しから付いてきている男数名が付いてきている。話には聞いていたが二階に張り込んで高額の金銭を手に入れたものをひったくりする人間がいるらしい。


 神の権能/生命流出ライフ・ストリーム


 彼らを視認せずに寿命を一週間ほどにまでなるよう吸い付くし、角を曲がる瞬間に転移して立ち去った。


 これで不幸になる人間が少しは減っただろう。ああいう人間は捕まっても運が悪かったと嘆くだけで反省しないものだ。この世から消え去ることが唯一の償いとなるだろう。


 源 涼子との約束は本日の仕事終わりに待ち合わせをしており、まだまだ時間が余っているので約束通りにゲームセンターへ向かう。





 週末だからかいつもよりも格闘ゲームの筐体周りには常連が多い、その中に気さくな猛者である青年に声を掛ける。


「約束通り飲み物を奢らせてもらおうか、もちろん君の友人の分も全て出させてもらおう」


「マジっすか!? ありがとうございます。もしかして今日開催されたレース行っていました?」


「ああ、運が良かったのかいい小遣いになったよ。あとで対戦でもしようか? 魅せコンボを練習してきたんだ」


「それ、食らったらめちゃくちゃ屈辱じゃないっすか……いいですよ! 受けて立ちましょう!」


 格闘ゲームには魅せ技やコンボという物が存在しており、派手な割にはダメージが少なかったり効率がすこぶる悪いものがある。


 挑発する際に使ったりするものなのだが、熟練者同士の対戦の場合では異なる。


 ギリギリまで体力を削られ死に際に放つ逆転のコンボで魅せ技を使うとかなりの盛り上がりを見せるのだ。


 ネットの動画投稿サイトや公式試合でも数々の猛者の高等プレイがアップされている。


 それを本日彼との対戦で披露したかったのだ。こういう対戦で熱くなれる人間は貴重だし私も正直嬉しい。未来視でのズルはしないしなるべく動体視力は通常まで落としている。


 基本技には小・中・大と小技と大技の威力の強弱が存在し、後半に行くにつれ隙が大きくなる。決め技の必殺技を放つ時は相手のその隙を狙い叩き込むのがセオリーだ。





 このゲームセンターは格闘ゲーム界隈では有名な店であり、対戦できる筐体は八台もある。数分程で私達の順番が回って来ると対面に座り合い百円を投入する。


 この投入する百円を台に積み上げる動作が溜まらなく大好きだ。かつては両替に行くたびに屈辱だったがな。


 ダタラダンッ! ジャンジャーン!! 


 NEW CHALLENGER!!


 百円を投入してキャラクターを選択中に乱入者の表示が出て来る。――彼が来た。


 彼の通り名は【刈り取るモッサァー】と呼ばれており、その爽やかな容姿に天然パーマが掛かった髪型を弄られており、次々と対戦者の命を刈り取る恐怖の象徴として有名だ。


 キャラクターは棍術を使うトリッキーな【クラブ・トリッガー】を使用している。


 それに反して私の使用キャラは【虎牙】と言う、遠近ともに万能だが決め技に掛けるキャラを得意としている。


 キャラクター同士の相性、ダイアグラムは六:四と私の虎牙がやや不利だがそのようなもの私が覆して見せる。


 キャラクター選択が終了するとステージがランダム選択され、街の裏路地が選択された。


「【刈り取るモッサァー】としてあなたには負けませんよ? この前の対戦で癖は掴んでいますからっ!」


「ふふふ、どうかな。私は常に進化している【悪魔】と呼ばれているのだよ……」

 

 ニチャリ……と邪悪に微笑みかけると周囲の観客の背筋にひやりと冷たいものが走る。


「ッ!! それが【悪魔】としての権能ッ! プレッシャーかッ! 負けるわけにはいかないんだーッ!」


 周囲へのパフォーマンスが終わった所で筐体から開始の合図が鳴り響く。


 FIGHT!!


 まずは互いに間合いを取り始める。牽制に遠距離技の【遠当て】を私が刻んでいく。


 コンボの始動する為の小技【小パンチ】を彼のクラブ・トリッガーがジリジリと近ずきながら放ってくる。


 コンボには様々な始動技があり、発動が早い小パンチや小キックが良く使用される。だが、コンボに繋げるにはシビアで精密なコマンド入力が求められるのだ。


「ククク、ほら、私は隙だらけだぞ?」


「見え透いた誘いには乗りませんよ――――ッと!」


 うまいッ! 私の僅かな間合い取りのミスを呼んで遠当てを擦り抜けてコンボ技の始動技を叩き込んできた。一度コンボの始動技が決まればコマンドの入力ミスをしなければ続いてしまう。実質数回の読み合いに勝ちさえすれば試合の勝敗は決まってしまう。


 先制を取った彼には二割ほど体力を削られてしまった。だが、後半になるにつれて必殺技のゲージが溜まれば大ダメージを与えるチャンスが生まれて来る。


「やるな。だがそれでも私は倒せんよ――――ッシ!」


 小技の始動すると見せかけ必殺技のゲージを消費して行動をキャンセルし、投げ技に入った、見事決まると相手がダウンする。


「っく! 起き上がりの選択で正解を選べるとは限らない!」


 このゲームには隙のある大技や小技の行動を停止させ他の技に繋げたり回避したりする高等テクニックが存在する。もちろんコマンド入力はシビアであり、コンマ何秒の世界だ。

 

 攻め方にも相手が地面に倒れ伏し起き上がりを攻める戦法が存在する。相手はダウンさせられるとじゃんけんのように強制的に選択を迫られるのだ。


 相手の攻撃に対応した技を使わないとほぼ必ず技を受けてしまう。攻撃側にメリットが大きい攻め方なのだ。


 私は責め方に大技を使用する。発動モーションが見え相手が対応する。


「へへへ、そう来ると思って――――なにぃッ!」


 また一つゲージを消費して小技からのコンボが始動する。


 パンチパンチしゃがみキック、遠当て、キャンセル、パンチパンチしゃがみキック――――クラブ・トリッガーが壁際に押し付けられコンボが連続していく。


「へへっそのコンボは最難関で知られている【絶技・千手】の始動パターン、そのコンボ数は優に三十を超え実戦で成功した試しが無いという伝説の…………途切れないだとぉっ!!」


 ――パンチパンチ、中段キック、中段パンチ中段パンチ。


 ざわざわと周囲の空気が変わる。


 ――小パンチ小キック小キック、遠当て。そして小技の応酬で必殺技ゲージが溜まってしまう。


「――――マジか……ッ!?」


 ――滅殺虎牙乱舞ッ!!


 ズダダダダダダダ、と私のキャラクターの決め技が発動する――――間に挟んだ小技はコンピューター入力じゃないと成功しないと言われているタイミングでコマンド入力しコンボ数の嵩増しを行っている。



 ――四十七HITッ!! AMAZING!!

 


 過去に一度も出たことが無いコンボ数が表示された。周囲の人間はこの様子を動画に撮影しており驚きすぐさま歓声へと変わった。


 画面には一ラウンド目の勝者である虎牙が勝利のポーズを取っており、もうすぐで二ラウンド目が始まる。


「一ラウンド目からすげえコンボを魅せるれてしまったぜ……おっさん――――いや、【嗤う悪魔】よ。あなたは私が倒すべき相手だッ!!」


 その宣言がフラグだったのか感情が籠った彼のプレイ内容は荒くなり私の虎牙にボコボコにされてしまうのだった。


 対戦後には互いに称え合い素晴らしいプレイをできたことに握手をし合った。


 その様子に興奮した常連と私で対戦が夜まで続いてしまい、涼子との約束時間ギリギリまでプレイしてしまった。


 彼らとの対戦は素晴らしくとても有意義な時間だったな。


 また対戦しようと私がゲームセンターを去る時には私も少し寂しくなってしまったな。

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