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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
宇宙進出世界
116/159

戦後処理

『No.二十三エリア制圧完了、陸戦部隊展開せよ――W.F部隊は順次、固定砲台の破壊に専念せよ』

 

 大規模に展開しているW.F部隊に戦艦の統括管制官から通信が入り、指示を出している。


 W.F部隊から撃ち出されたビームが都市の固定砲台を撃ち抜いて行く、先程も連合軍のW.F部隊を殲滅したところだ。


『ダンタリオン、さぼってんじぇねーぞ。火力はてめーが一番あんだろーが!?』


「撃ってもいいが隔壁を破壊していいならいいが……区画ごと壊滅するぞ? W.Fならビームソードで叩き切れるが」


『ッチ。火力が高いのも考え物だな。――いや待てやッ! 出力絞ればいいだけだろ』


「――そうだな。盲点だった、こちらが半分負担しよう」


 ――ビームの出力を絞り、連射性を向上してくれ。


[――了解。マシンガンモードへ切替、オート射撃開始します]


 肩部から伸びる砲身が自動で射撃を開始する、射撃データや敵識別も大分スムーズになっており、AIのカノンに任せている。戦闘を行う度にAIが学習し最適化しているためだ。


 二十機ものセスティス部隊が月面都市のエリアを飛行している。


 生き残った他の宇宙戦艦のW.F部隊や歩兵戦力が現在各エリアに展開しており、相互通信で状況の推移をモニターに表示している。


 制圧率は三割を超えているがディメンションゲート付近の艦砲射撃による戦闘は現在も続いている。

 

 フライング気味に月面都市に突撃したケルビムの戦艦には驚かれたようだが、月面都市への奇襲が成功し全体の士気も向上している。


 月面都市の作りとしては数百もの巨大なシェルターが点在しており、現在No.二十五エリアを制圧中だ。


 三割と聞けば少ないように感じられるがひとつひとつのシェルターに数十万、多い所では百万単位の人間が居住している。


 軍事施設のひとつを制圧完了、セスティス部隊は補給を開始する。


 機体を軍事施設の補給場所に駐機させるとハッチを開き風景を眺める。人工照明がまばらに都市を照らしているが基本的に薄暗い印象を抱かせる。


 このエリアは裏家業の人間は多く住んでいるようで、都市管理機構のデータを漁ってみたが人身売買や、違法な薬、武器の密輸や、娼館などが平然と乱立している。


 タバコの煙を楽しみながらあぐらを掻き、ハッチの外縁部に寄りかかる。


 ゴミの吹き溜まりみたいなエリアだがこういう雑多な感じは嫌いではない、先程記載されている兵装と実際に管理されているものの数が全く合わずにセスティスは憤慨していたがな。


 W.Fの兵装へ弾薬補給の指示出しをしているセスティスが眼下に見えている。


 彼女が装備しているインカムに通信を送る。


「あんまカリカリしているとお腹の子に影響が良くないぞ?」


『は? なにいってんだおめぇ? そんなにすぐできるわけねーだろッ!? ――嘘だよな?』


「――さてな? 次回の健康診断を楽しみにすると良い」


『え、ちょっと待てや! 子種すらバケモンかてめぇは!? ――嘘だと言ってくれ……』

 

 何かを叫び始めたが通信を切る。手を振ってにこやかな笑顔を送っておこう。





 数個のエリアを制圧完了し、陸戦部隊を待機させた戦艦ケルビムは月面都市直上に待機している。


 ディメンションゲートは死守されており、地球連合軍が徐々に撤退し始めているようだ。


 W.Fも格納庫へ戻っており整備班が忙しく走り回っている。


「現在の戦況は――――モニターに表示されている通りです、支配下に置けているエリアは半数と少し。我らグイン帝国軍本体はエリア制圧に順次加わっております。地球連合軍、および反乱軍の七割を殲滅完了、追撃部隊も出ております」


 すでに戦況はグイン帝国軍に軍配が上がっている。


 元々戦力的には勝っていたが戦争の流れがうまかったな、私のせいで異常転移を起こさなければ時間はかかるがもう少し損害を押さえれたはずだ。


 あのあと制圧が落ち着いた頃にアラメスに解析を頼んだところヘタに転移に抗ったせいで、影響が甚大になってしまったようだ。


 次元固定技術の解析を行い、次元の狭間への安定させる装置の開発にも進展があったようだ。


「このままいけば制圧エリアの監視行動に移行次第、各自休息を取るように命令が出ます。まだ、警戒態勢中ですが我々の勝利はほぼ確定したものと見ています」


 その、言葉にブリッジクルーがほっ溜息を吐く。


 そういえばオペレーターちゃんとデートしていないな、あ、目が合った。手を振り返してあげる。――隣でセスティスが睨んでくるが知らないな。


「待機している各員は状況の経過を順次共有していて下さい。報告はこれで以上です、解散!」


「ダ・ン・タ・リ・オ・ン君~」


 セスティスに腕を強く握られてしまう。


「――医務室、行こうか?」


 オペレーターの子に声を掛けようと思ったのだが、そうなった。





 医療技術の進歩は早いもので瞬時に身体をスキャンされると健康状態がモニターに表示される。何億人もの人間の医療データをアーカイブに保存され、スキャンし参照する。


「おや、戦時でなければおめでとうございますと言いたいのですが……懐妊されています、妊娠一か月ですね」


「は? 時期が全然合わねーんだが?」


 小声で私に話しかけて来るセスティス。


「私の子は成長が早く妊娠期間も数倍短縮されるらしい、仙術を極めすぎたかな?」


 そういう事にして置く。


「…………そうか。もう突っ込まねーぞ。――はぁ、出来ちまったもんはしょうがねぇ。パパさんよ、認知しろや?」


「もちろんだ」


「まぁ、お幸せに。セスティスさん今回の戦争終了までは大丈夫と思いますけど早めに戦闘を控えるようにしてくださいね?」


 バツの悪そうな顔をすると彼女はボソリと呟いた。


「わぁってるって。隊長だからな、指揮になるべく回るわ」


 医務室を退室すると幸せそうな顔をしてお腹を優しく擦っている、セスティスもそんな顔ができるんだな。


「んだよ? ジロジロ見て来て。そんな幸せそうな顔しちゃ悪いか? あ゛?」


「いや、私も嬉しくてね。妻の顔をじっくり見ていたのだよ。それとこれを離さずに付けておいて欲しい」


 守護のリングを二つ渡すと効果を説明をする。


「おめぇこんなすげえもん持っていたのかよ。――ああ、ハイネマンのヤローも付けてやがったな…………まさかと思うが……奴の腹もデカくなってんじゃねえの?」


「おそらくな、だが連絡が取れないように妨害されているが」


「そんなことしてんのかよあいつの家族は。まぁいっか、今はあたいがあんたを独占してんだ。まだ初期だし激しくしなければ……いけんだろ?」


 返事は彼女に軽くキスを返す。私の部屋へ連れて行き、のんびりと会話を楽しんだ後、充実した時間を過ごす。





  




 月面都市奪還作戦から二月が経ち、戦後処理と地球連合軍への反転攻勢に出る為、火星圏に存在するグイン帝国から次々と宇宙艦が送られてきている。


 そのために地球を回っている監視衛星の破壊や、反乱を行った下位貴族の粛清の嵐が起きており、コロニー管理の規制も強化されている。


 ハイネマンの安否を確認する為にハッキングを行い、部屋中で安静にしている姿を確認でき安心はしている。


 セスティスもW.Fにはすでに搭乗しておらず、書類作業など負担にならない部署へ一時的に移転している。


 現在私はその規制強化の煽りをくらい身分照合際に引っかかってしまった。


「傭兵ダンタリオン、従軍経験はクーデターの際、コロニーからの戦艦ケルビムの脱出作戦。そして月面都市奪還作戦において多大なる戦果を叩き出している。調べられた遺伝子情報はグイン帝国で出生すれば必ず行われる遺伝子登録や地球の住民管理機構すら登録されておらず。傭兵ネットワークにすら戦績がない……と。――貴様、何者だ? こうも怪しんでくれと言わんばかりの情報。調査せざる得ないのだよ? わかるかね?」


 帝国高等調査官がデバイスで再生している戦闘映像を見ながら詰問して来る。


「なんともまあ溜息が出るほどの戦績だな、戦艦十三隻、重巡洋艦三十二隻、駆逐艦百三十隻、月面エリア制圧の際も際立った活躍をしている。叙勲ものだな、これは――――身分が明らかであればなのだが……こう言ってはなんだが私は君のファンでもあるのだよ? 未来が見えるかのようなW.Fの機動、超長距離精密射撃なんぞ神業だ。――はぁ、どうしたものかね……」


 部屋の中にか調査官の彼と護衛の二人だ、私の功績を鑑みて拘束は一切されていない。


「ふむ、調査官殿もお困りでしょう――――内密にして欲しい秘密があるのですがみていただけますかな?」


 私の真剣な表情にごくりと部屋にいる三人に緊張が走る。


「今ではディメンションゲートが実現し、次元航行が可能と成っている。――考えたことはないですか? その技術をグイン帝国だけが持っているわけではないと?」


 護衛のホルスターに収納されている銃に手が掛かっている。


「ああ、安心してください。ちょっとデモンストレーションを行うだけです。部屋の中を少しばかり移動するだけですよ? ――――こんなふうに」


 護衛が引き抜こうした手を軽く押さえ付ける。彼らは微動だにできずに混乱している。


「まあ落ち着いてください。手を離しますから撃たないで下さいね?」


 再び瞬間転移を行い着席すると、調査官も目を剥かせて驚いている。


「ご覧いただけたでしょう? 私は個人で次元間移動を可能にした次元漂流者。外宇宙の人間なのですよ? たまたまケルビムのいたコロニーに流れ着き、エヴォルグを操作、脱出作戦に巻き込まれたに過ぎない」


「――――あ、ああ、確かに今の技術では個人での転移など実現不可能だ、我々にはない超技術なのは認めよう。しかし、なぜ我が帝国に助力したのだ? それがわからない」


 ふむ、と少し考えるとすぐに答えが浮かんできた。


「調査されていると思いますがキーラ・ハイネマン、御存じでしょう?」


「ああ、ダンタリオン君が恋仲にあったという彼女か。もちろんだとも」


「彼女にミサイルが直撃しそうになりましてね。つい助けてしまったんですよ、それから彼女に魅力を感じ、今このような所に居るのですよ」


「つまり、女に絆され助力していたらトントン拍子に戦争に巻き込まれた――と」


「所詮男なぞいい女に振り回されるものですよ?」


「――ふ、ふふふ、ふははははっ! あの戦績を見てどんな性格の男かと思えば……ふはははは、やはり男という物は次元を越えても変わらない物なのだね。――確認したいのだが他にはなにかできる事があるのかね? 興味が湧いたのでただの趣味になってしまうが」


 指先から、火、氷、雷を出し。錬金でW.Fを数体作り上げ、指を鳴らすと部屋の中に豪華なソファーを出し、紅茶を彼らに入れ始める。


 もちろん私は宙に浮いており、地面に足を付けていない。


「すごいすごいすごい!! 護衛君見たかね!? これが超能力か!? 魔法なのか!?」


「ええ、超能力の類ではテレキネシスやサイコキネシス、心に話しかける『テレパシーというものもあります、魔法でも重力を操ったりお菓子を出したりするものもあります』」


「お、おお、頭の中に伝わって来たぞ。魔法は実在したのか……昔の人間はSF小説という物を呼んで今の世界を夢想していたが、これがその気持ちなのだな……わかった、身分に関してはその能力の存在が証明となるだろう。一応映像に残してもらうが、構わないかね?」


「ええ、どうぞ。人体実験など一部の人間が強硬に走らなければいいですが、その時は報復させてもらいますけどね?」


 にこやかな笑顔の奥に何かを感じたのか調査官は深く頷く。


「もちろんだ。厳重に警告して置くし、撃退しても問題ないよう映像さえ残して貰えば君の味方になろう」


 ひとこと錬金の製作を伝えると、テーブルの上に宝石を装飾した硬度の高いナイフを数本製作する。


「お土産にどうぞ、私達の世界にある珍しい超硬金属を使用したナイフです。儀礼用にも使えるよう鞘に宝石をあしらっています。護衛の方には隠しやすいよう工夫を凝らしたものを渡しますね」


 護衛の人も大喜びで受け取っている。調査官は布のようなものでくるみ懐に直した。


「一応問題ないとは思いますが、罠がない照明の為に検査をしておいてください。濡れ衣を着せられる可能性もありますのでね」


「そうだな。慎重に事を運ぶのは悪い事ではないな。護衛君、後で渡したまえ――ああ、取り上げたりはしないぞ? それは、彼からの好意の品だ。むげにはできない」


 そのあとはどんな世界があるのかを映像を交えて歓談を楽しんだ、この調査官反応がいちいち良くてつい色々見せてしまった。


「有意義な時間を過ごさせてもらったッ! それにこんなにも金属や素材のサンプルまで……」


 他世界の説明がてらオリハルコニアや、錬金素材などをサンプルで渡している。


「友好の印と思って欲しい。戦争には巻き込まれたがグイン帝国に反意は無い、ハイネマンやセスティスの件でそれを分かってもらうと嬉しいのだが」


「承知している。褒章の件もハイネマン氏に話を通しておこう、戦場で頑張っている旦那の名を伝えておこう――ではな」


 そういい部屋から出て行くとお辞儀をして去って行った。中々好印象な御仁だったな。貴族関係者が皆そうであればいいのだが無理だと鼻から諦めている。


 調査が終了した旨をセスティスへ送るとすぐさま連絡が飛んでくる。

 

 普段の素行が悪いからだと愚痴を吐かれてしまうが、彼女の心配する心は伝わって来た。

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