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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
宇宙進出世界
110/159

ご褒美下さい

 最後に駆逐艦のブリッジ上部に跨り実体剣を突きつけて降伏勧告を行っている。


 四隻も私が沈めて居れば恐怖の対象なのだろう、コントロール権を手放し敵W.Fも五機ほどになった所で降伏した。


 揚陸艇に陸戦部隊が武装して乗り込み、駆逐艦は間もなく鹵獲された。


 私には帰還命令が出されデッキへと着陸する、ヨロヨロとしながら格納庫へ入機させると整備場所へ機体を固定させる。


 最後の駆逐艦を降伏勧告させる際にはエヴォルグに換装した四肢が限界を迎え始めており、左腕はすでに機能していなかった。


 外部シャッターも機密が確保されコクピットのハッチから昇降機に降りると整備士たちの歓声と共に迎えられた。


「おおおおおおおおッ! あんちゃんすげーじゃねえかッ! こんなボロボロな機体になりながらもやっちまいやがった!!」


「ああ、エヴォルグは頑張ってくれていたぞ? 四肢は流用だから仕方ないさ」

「そりゃ良かった! 整備は任せとけ! 姐さんが待ってるぞ? 行ってやんな」


 格納庫の入り口にはドヤ顔をして待っているハイネマン少佐がいた。


「おお、やはりお前ならやてくれると思っていたぞ? ブリッジのクルーも驚いていた。現在は戦後処理を行っているので忙しいが、後ほど呼ぶのでゆっくり待機してくれ、だと」


「そうか……なら休ませてもらおうか、阿呆な少佐と、な――」


 ハイネマン少佐の顔を強引に引き寄せ唇の中に舌を捻じ込んだ。


 彼女はちょっとオイタが過ぎたからな。


「――――ぷはぁ、貴様……」


 唇を離すと彼女の口元から糸を引く涎が垂れ、扇情さを煽る。


 彼女の腕を引いて無言で私の部屋へ連れ込んだ。


 ――ガチャリ。


 扉をロックされた事に彼女は気づくとビクリと背を伸ばした。


「覚悟できているかね? 私は結果を出した。相応のご褒美とやらが必要なんだがね?」


 彼女は俯きしばらくするとボソリと呟く。


「……――初めてなんだ。優しくしてくれ」


 顔を赤くさせる彼女は普段のキツイ態度とのギャップが激しく、とても魅力的に映った。


 ゆっくりと服を脱がせていきベットへ寝かせてあげる。


「それは無理な注文だ、激しく愛してやろう」


 戦後処理が終わり呼び出しのコールがデバイスにやってくるまでの間、獣のように愛し合ってしまった。









 作戦会議室に招集され壁際に立っている、ハイネマン少佐は中央に表示されているモニターそばで今後の作戦の会議を軍幹部と行っている。


 少し顔が赤いのは入室する際にややガニ股で現れてしまったためだ、それを察したブリッジクルーには生暖かい目で迎えられそれを察したハイネマン少佐は沈黙を貫くだけだ。


 W.Fによる防衛戦の際に声を掛けたと思われる部隊のリーダーだろう、燃えるようなショートの赤い髪をした女が睨んできている。


 人差し指でチョイチョイとこちらへ来るように挑発すると足音を立てながらやって来た。


「てめぇ、戦闘が終わった後にズコバコ楽しそうにやりやがって、随分と良いご身分だなぁ? あぁん!?」


 一応会議中なのを気にして小声な所が礼儀の正しさを証明しているな。気質は荒そうだが立場を理解しているようだ。


「なに、ご褒美を受け取っていただけだ。実際戦果としては君から見ても申し分ないものだろう?」


「――ッチ。重巡洋艦の弾幕に突っ込む狂人なんぞ居てたまるかッ!? 戦闘データを見たがまるで“分かっている”ような戦闘機動を取りやがって――未来でも見えてんのかよ?」


「私の目は魔眼と呼ばれていてね、なんとなく見えるのだよ。その秘密が知りたければ…………個人的な付き合いが深くなれば知る事ができるかもしれないぞ?」


「クソッ、狂人との付き合いなんざ願い下げだ。すぐに死んじまって周りを置いていっちまう――」


 彼女の過去にW.F乗りの旦那でもいたのかね? 少しだけ寂しそうな表情を見せた。


「だが、腕がピカイチなのは認めてやる。――あの援護は助かった。部隊員も五体満足で入れたのはテメェのお陰だ、礼は言っておく」


「お礼は豪華な艦内食でも奢ってくれ、意外とコスパのいい男として有名だ」


「ハハハハッ、少佐の処女膜で宇宙艦五隻撃沈なら高いのか安いのか良く分からねえな? あれでもいいとこのお嬢さんだぜ? 腕のいい男は女をコマすのも得意なようだねッ!!」


 たまたま声が聞こえたのか、向こうでハイネマン少佐が撃沈して項垂れている、周囲の幹部もこれには苦笑いをしている。


「ああ、彼女はとても魅力的だったよ。宇宙艦五隻とは比べ物にならないくらい安く手に入れられた。もう三十隻撃沈させても彼女の価値には足りないくらいだ」


「言うねぇ。その時は私らの部隊が功績を搔っ攫っちまうから覚悟しときなッ!!」


 そう言うと仲間の元へ向かって行った、なかなか愉快な部隊のようだな。


 ゲフンッ。恥ずかしがっているハイネマン少佐のわざとらしい咳払いが空しく周囲に響くと、今後の行動予定が各人のデバイスへ送信された。


 救援に来る艦隊が合流すると拿捕した駆逐艦の乗組員の護送の為にコロニーへ向かう、と。ユニオンコロニーで建造された新造艦のため、護衛に駆逐艦二隻が同道。


 半日も経たずに到着との予定だがもう少し早く来れないものなのか? 私が出撃しなければこの新造艦が撃沈されていた可能性が高い。


 ワープ航行を艦単体で行うことが出来ないようで、大型コロニー付近に建設されたディメンションリングを通過しなければいけないらしい。


 資源確保の為に火星と地球の間には数多くのコロニーが存在し、貴族階級制度を採用している。


 半世紀前の独立戦争にグイン帝国は勝利するとともに、火星などに生存圏を広げ続け、現在もなお新技術の開発に余念がない。


 その戦争でも活躍したのが初代W.Fであり長く愛され続けている理由でもある。


 この宇宙進出への大躍進に危機感を覚えての行動なのだろうな、アース教とやらの思惑も。


 中立地帯の占領など本当に取り返しのつかない事をするなんてな。


 会議も終了し各自待機命令がでると私も部屋へ戻って来た。なぜかハイネマン少佐も後ろに引っ付いてきている。


「どうした? したりなかったか?」


「阿呆、そこまで色ボケしておらぬわ。これを見ろ」


 エヴォルグのパラメータを表示させるハイネマン。どこにもおかしい所はないが。


「分かっておらぬようだな。貴様、どうやってリミッターを解除した?」


「――ああ、あれか。ちょっとシステムを弄らせてもらった」


「だからどうやって弄ったと聞いているのだ。厳重なロックをしていたはずなのだが……今更スパイとは疑っておらん。敵戦艦を破壊しさらに四隻撃墜だ。システムに介入できるとなるとシステム構築やエヴォルグの調整ができるなら貴様も手伝えと言いたいのだ」


「いいのか? 機密だと聞いたが」


「優秀な技術者を放置しておくほど我が研究班に余裕はない。アクセス権と技術開発班のセキュリティカードを渡して置くから持って置け」


 私のデバイスにアクセス権が付与されると早速エヴォルグのシステムデータを展開させる。


 入力装置を空間に投影させると早速パラメータを入力しなおしていく。


「姿勢制御システムがこの数値だと私には合わない。元々のエヴォルグの四肢にある関節の耐久性を考えるとこれだけ要求されるな。まぁ私の反射速度にはこれでもたりないがな」


「お前は機体と人間を壊しにかかっているとしか思えない狂気の数値を入力するんだな……はぁ……まあ実験機だ好きにしろ。限界行動のデータが取れる事は研究者にとって垂涎の餌だからな」


「操縦レバーの入力にこのシステムを噛ませば反応がスムーズになるぞ? 私が構築しているアプリケーションを入れて置け」


 機体を統括しているOSのシステムを土台から改善していく。気持ち悪い速度でソースコードがモニター上部に流れて行く。


「それと今回実体剣を多用する事によって汎用パーツとの互換性のあるシステムを改善して置いた。耐久性に目を瞑れば中々良い動きをするはずだ……それと――――」


「待て待て待てッ! ――これは……恐ろしいぐらい画期的なOSだな。その代わりCPUが悲鳴を上げそうだが、ギリギリ許容範囲内だな……本当に何者なのだ? 神技としか思えないW.Fの操作技術に、開発班が真っ青になるシステム構築の腕前」


「私も機体開発に携わっていた時期があってな、W.Fとは基本理念が違うが何体も建造させたことがあるぞ? オートマトンの製造にも詳しいと思う」


「――コロニーに着いたら研究所に来てもらうぞ? 貴様も色々できるなら早く言え、兵装開発させてやろう。私の処女もやったんだ、そのぐらい手伝ってくれても罰は当たらないだろう!?」 


 興奮しているのか私の胸元を掴んで揺するのを辞めない。


「わかったわかった。将来のお嫁さんになってくれるならやぶさかではないが……」


「――それとこれとは話は別だ。まだまだ貢献が足りん、孫の代まで安定するほどの功績を作れッ! そうしたら子でも何でも産んでやろう」


「お、言ったな。契約だな――腰が抜けるほどの功績を上げてやるよ。取り敢えず今から事前練習を行うとするか」


 システム構築したデータをライブラリに保存するとデバイスを閉じた。


「――ま、待ってくれ。まだあそこに違和感があるのだッ! 聞いた話では、も、もっと優しくするものなのだろうッ!?」


「それはそれ、これはこれだ。さあ、来なさい。生意気な口を叩けなくしてやる」


「――――ッ!」


 仕事は終わったんだ。小生意気な小娘を黙らせても罰は当たらないはずだ。

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