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異世界めぐり/ Dimension Drifter  作者: 世も末
宇宙進出世界
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ウェポンフレーム

 王都が壊滅したことにより周辺国の協議が行われていた、この世界では戦争が起きないよう複数の国の同盟と条約によって平和が成り立っている。


 国を跨いで複数のギルドが運営される事により、各国の思惑通り抑止力としての存在感を見せている。


 利権関係の経済戦争自体は偶に起きているが、武力行使されることなどないようだ。


 だが、今回巨大な悪魔が現れたことにより、禁忌に触れたと王国の関係者が他国から疑念を抱かれている。


 貴族関係者も同盟会議に出席させられ、尋問に掛けられている。


 容疑者として特級錬金術師であるルコレも証人として喚問された。悪魔と関係性を王都に密告したクリュレはすでに王都と共に闇の飲まれ、ルコレの疑惑を裏付ける事にはならなかった。


 結果、疑惑は疑惑のままで終わり、災厄の様な扱いを受けた王国は解体、周辺国へ併呑された。





 私が用意した世界樹の枝を元に様々な採取をする旅に出ている。


 錬金術の修行も兼ねており遅々として道程は進んでいない。夕飯時には転移して工房へ帰宅しているので旅の気分を味わうだけになっているのだが、本人たちが満足しているならそれでもいいか。


 長い時間をかけて、錬金術師の生涯を共にする杖を完成させていくのだからこれ以上は本体を次元の旅に向かわせようと思う。


「ピコラ、マジョル、ルコレ――――私はちょっと漂流してこようと思う」


 そう言うなり分け身を出現させ説明を始める。


「これは私の同位体であり、意識も、もちろん繋がっている。本体、エネルギー量と処理機能の過多しか違いはないのだが念のため言っておこうと思ってな」


 驚いてはいるがそんな気はしていたのだろう。次元漂流者の性は変えようがない。


 分け身でも変わりがないと聞くと少し安心しているようだ。


「それならいってらっしゃい~ダンタリオン君! たまには本体で帰って来てね?」


「新しい魔術手に入れたら教えて」


「はぁ……また他の世界でも騒動を巻き起こすんでしょう? ――身体に気を付けなさいよ? ここにもダンタリオン君はいるけ…………ねぇ? もう二人程増やせる?」


 はぁ、と溜息を付くとさらに二人私が増える。三人娘はそれをみるなり抱き着いて離さない。


『私はおもちゃじゃないんだぞ? これで防犯上の問題は無くなるが……とにかく行ってくる。お土産には期待してろ』


 四人同時に喋ると会話がハモる。食費が上がる事は……大丈夫か、ピコラも楽しそうだし。家族というものに憧れがあるみたいだからな。


 次元の壁を開くとゆっくりと入っていく、ランダム性の強い空間だ。随分と久しぶりに感じる。


「ではな――――元気にしてろよ?」


 次元の扉を潜り抜け。次なる世界へ飛び出っていく。 









 ここは…………酸素はある、照明が落とされているが何かの倉庫か? クレア女史の拠点にしている場所に似ているな。


 周辺のデータベースにアクセスし情報取得する、こいつは……完全循環型スペースコロニーだと!? 宇宙進出を果たした人類世界なのか?


「急げッ!! 民間人の避難を優先しろ! 間もなくここに攻め込んでくるぞ!!」


 外から女性の怒号が聞こえて来るとともに爆発音、私のいる倉庫の入り口が破壊された。


 とっさに物陰へ避難を行い状況の把握を行う。


「糞ッもう来やがったか、早くリオン級新型宇宙戦艦へ乗り込め、ウェポンフレームの積み込みは諦めろッ!」


 その瞬間ミサイルが声の主へと接近している、私は物影を飛び出し彼女を抱きかかえると瓦礫の影へと駆け込んでいく。


 倉庫が完全に爆散して破片がパラパラと降ってくる。


「大丈夫か?」


「――すまない。助かった、お前は……敵の連合兵ではない、か、その雰囲気は……傭兵か?」


 取り敢えず流れの傭兵とでも言っておくべきか?


「ああ、そうだ。たまたまこのコロニーに来ていてな、戦闘に巻き込まれてしまった」


「そうか、ならばウェポンフレームの資格ぐらい持っているだろう、着いて来い」


 そう言われるがまま、格納庫群の奥に走って行く。通り過ぎていく納庫内には大型の武装らしきものが見て取れる。


「こっちだ」


 厳重なセキュリティの施された扉に認証カードを翳すと、ガキョン、とロックが解除され彼女に腕を引かれ中に入っていく。


 室内の電力を稼働させると格納庫内には二十メートルほどのロボット、ウェポンフレームだろうか? その全貌が見えた。


 彼女が操作した昇降機が降りて来ると共に乗り込み、コクピットブロックのハッチを開ける。


「お前が操作し私が戦艦へ案内する。強奪何て考えるなよ? こいつは機密の新型試作機ウェポンフレーム“エヴォルグ”だ、すでに守秘義務が発生しお前はもう軍所属の外部協力員だ」


「なんともまあ熱烈なプロポーズだな、一晩付き合って貰っても罰があたらないんじゃないか?」


「無駄口叩かずに早く乗れ。武装は途中にあった倉庫に格納されている、拾っていくぞ」


 ハッチに押し込まれると操縦席の範囲は狭く、コード類が乱雑に並べられている。何とか掻き分けて席に座るも彼女の席が存在しない。


「――あれほどコード類は纏めて置けと言っておいただろう……仕方ない、座るぞ」


 そういうなり私の膝の上に座り機体の起動シークエンスを開始する、ロックの解除作業を行っているようだ。


 両サイドにあるコントロールレバーを握りしめる、前後左右に動き指の届く範囲に十個ほどのシステム操作ボタン、それとフットペダルを操作して操縦できるようだ


 思念操作型ではないようだな、じわりと指先を銀に変えてこの機体のシステムに潜り込む。


 操縦方法やOS、CPU、可動部の耐久性、ジェネレーター、など詳細にスペックを把握していく。


 このジェネレーターとOSのシステムが気になるな、設計図とジェネレーターに存在する未確認物質を少々回収して置く。


「起動シークエンス完了。出せ、傭兵」


「あいあい、任せておけ」


[――W.F.E.S start up]


 ん? モニターに表示されている文字は英語圏かね? ウェポンフレームエヴォルグセカンド起動。こういう頭文字を省略して表示するのカッコいいよね。


 クォォォン、と内蔵されたおモーターの駆動音が格納庫内に響き渡る。


 モニターに表示されたステータスメーターを確認するとエネルギー残量が“WARNING”赤く点滅している。


「おい、まさかエネルギーの補充していないんじゃないのか?」


「…………ッチ。起動実験が終わってそのままだ、何とかしろ」


「コレじゃあブーストは疎か装備した兵装に回すエネルギーもないじゃねえかよ。徒手格闘しろってか?」


 操縦感覚を得るために指の先まで握ったり開いたりを繰り返す。


「移動だけなら持つと……思う。――ああ、そこの二番倉庫に装備が格納してある。全て持って行け」


「おまえなぁ。使えもしない重りを抱えて戦闘を行えと?」


 訴えをしながらでも背部ウェポンラックに詰んでいく。


 エデン世界の機体のように異星体の金属筋繊維みたいな特殊素材を使用していない、純粋な科学技術の結晶みたいだなこのウェポンフレームは。


 彼女の所持しているデバイスからモニターに映されたリオン型宇宙戦艦の機密ドックの場所が表示された。


「このドックへはコロニー点検用のバイパスを使って向かう。現在侵入可能箇所が、ここの場所だ」


 モニターにデバイスで操作しているポインタを動かし説明を始める。


「隔壁を排除しバイパスへ侵入、一度コロニー外に出なければならないがこのルートが一番早い。隔壁の破壊は緊急事態にて罪には問わん」


 目を軽く閉じ返事とする、余計な事は言わないでおこう。


「では出発する。コロニー内にはすでに連合軍が侵入し戦端が開かれている――なるべく見つからずに行けよ? この新型のデータと機体そのものが必要だ」


「報酬は期待しておくよ」


 カキョンとコントロールレバーを手前に引くと機体が前進する

、もちろん足音がズシンと響き隠密行動に向いていない。


「…………まあ隠密行動は努力義務程度にしておこう」


「そりゃそうだろ、これはねえぜ」


 接地面の調整を行うアブソーバーシステムが環境データの未入力でうまく適合していない。入力できない事もないが下手な事は辞めておこう。


 小走り程度の速度だが図体がでかいので十分速度は出ている、倉庫街を抜け商業エリアに差し掛かるとミサイルが降り注いできた。


 周囲にある高層ビルを盾にすると、降りやむまで待つ。


「おいおい、ミサイル警告無しも機体のハンデに追加されたな。センサー全部壊れてるんじゃないか?」


 すで自信が無いのか沈黙のまま俯いてやがる。

 

 強襲揚陸艦とでも言えば良いのか、こちらと同じウェポンフレームが三機程降下してくる。


「こちらに気付いたか。こちらの装備はハンマーのみ、か、土木工事でもするか? ――死なないように祈っとけよ」


「死なないように頑張ってくれ。私の尻の暖かみを味わってるんだ。いい女を死なせないのは男の甲斐性だ」


「はいはい、後で一発やらせろよ――っと」


 魔眼発動/未来視ヴィネ


 掃射されるマシンガンの弾丸を最小限の動きでぬるりと躱して行く、W.F三機と強襲揚陸艦の攻撃の嵐はやまない。


 ステップ、ステップ、そして補助ブースターをスコンと数瞬吹かすと、前方に構えていたハンマーを器用にくるりと回転させ敵W.Fのコクピットへと命中する。


 大きなハンマーの反動を利用して、前宙返りを行い遠心力のかかった踵落とし頭部に叩き込んだ、間もなく敵W.Fは停止し崩れ落ちる。


 機体のエネルギーを使用しない炸薬タイプのマシンガンを拾うとハッキングして兵装のロックを強引に解除する。


 パパパパッ、と強襲揚陸艦のエンジンブースターに撃ち込んだ。撃墜はできないが多少の行動制限はできるだろう。


 続けて二機のW.Fへ弾をバラ撒き逃走を開始する。


「あの揚陸艦が故障すれば追撃は無いだろ。さっさとバイパスへ行くぞ」


「………………お前凄まじい腕だな。徒手格闘なのにあっさり敵W.Fを撃墜。強襲揚陸艦のブースターを射撃補正もなしに肉眼で命中させるなんて神業だ」


「どうも」


 ようやくバイパスの隔壁に辿り着くとこじ開け侵入する。このままうまく行けばいいと思うが……。

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