祝★百話達成★閑話な世界
「犯人はあなたですねッ!! 証拠は……そうッ! えっと、ああ、これね。これですッ!! 自白しなさい! したらいいわ? してよね!?」
今いる場所は殺人事件が起きた由緒ある旅館のロビー。嵐によって外部と連絡が取れない状況で、ここにいる人間しか殺人を実行できない。
疑心暗鬼の中ロビーに集められた容疑者候補もとい旅館にいる全員だ。
私は自称名探偵である女子高校生の呉崎涼子の助手として同行している。
ある日呼ばれて来てみれば倉庫の掃除中に古惚けた鏡を発見し、都市伝説にある悪魔召喚の呪文を唱えたそうだ。推理小説が大好きな彼女は私との契約で事件誘引体質と成り。週に二度ほど事件に遭遇する事となった。
神の権能/人心掌握で心を掌握、読み取りを可能としている。
人の心も操れるがそういう使い方は……まあ、たまにしか使わない。
パリッとした執事服を靡かせ、彼女の後ろで助言を行っているが……演技が下手過ぎる。
実際証拠も正しいし犯人で間違いないのだが説得力が湧いてこない。
「お嬢様、お疲れ様でした。――もう少し大根役者っプリを何とかして頂ければ……プリップリッ!」
「あんた! バカにしてんでしょ!? 絶対に仕えているとか、畏まっておきながら私で遊んでるんだわ! 間違いない! 名探偵の勘がビンッビンに反応してるわ!」
「ビンビン……フクククク。お嬢様はご冗談がお好きで……フクククク」
「――ッ! キィィィィッ!! お父様に言いつけてやるんだからぁ……ひっぐ、えっぐ……」
「ああ、ああ、もう、こんなに泣いてしまって、誰がお嬢様を……くっ! 許せませんぞぉ!」
「…………。死ぃぃいねぇえぇッ!」
「ヘヴンッ!!」
金的を食らってしまった……ヒュコンッ、と体内に上がって来たではないか。
「犯人はッあなたよ!! ――えっと、え! マジッ!? あなただったのね……残念だわ。友達だと思っていたのに……」
今回の事件は後味が悪い、お嬢様の友人である友岡様が犯人であったのだ。
男女共学である私は学園にたんまりと賄賂を詰んでお嬢様と共に通学している。年齢はいくらでも誤魔化すことが出来るからね。
クラスの給食費が盗まれるという事件が起き、無事犯人を見つけたのだが……その前に給食費は振り込みにしろよと学園に問いたい。
「……仕方なかったのよ……弟の手術費用がどうしても……どうしても足りなかったの……」
「そう……相談してくれれば――」
「金持ちのあんたに私の何が分かるって言うのよ!! 母子家庭で何とか私の学費を払う為に必死に働いてるお母さんの気持ちが! 入院してまともに動けない弟の気持ちが……何が分かるって言うの!」
ん? この学園の学費は相当高い筈なのだが……それに彼女、弟いないんだが?
「……今回のことは私の胸の――」
「お嬢様、彼女、弟居ませんし母子家庭ではありませんよ?」
「ふぁッ!? ――マジ!?」
周囲の人間も頷く。と言うか成金で有名な彼女である。スリルか何かを求めたのではないだろうか?
ほら、騙せなかったから舌打ちしてるぞ? ほら今、チッ、って言った。
「――クソがぁ! 大人しく騙されてりゃあ良いんだよブスが! 金持ちのボンボンの給食費ぐらい無くなったって大したことねえだろ!? 現に学園は大事にしないように隠し――グゥッ」
「お嬢様は可愛くて騙され易い純な子です。ですが――あなたが罪を犯した事となんの関係がおありで? 殺すぞ?」
手も触れず徐々に殺気を上げて行き、心臓が止まるギリギリまで圧力を掛ける。
するとビクンと白目を剥き失禁すると、床におもらしをしてしまった。
「おやおや、反省の余りおもらしをしてしまったようですね。取り合えず動画と写真を撮影して保存しておきましょう。――きっと彼女の父親が高い値段で買ってくれます」
「――ありがとう。怒ってくれて」
「んはぁッ! こ、これがお嬢様のデレ期というものなのか……――ブルンバァッ!」
行き過ぎたお嬢様愛に床に鼻血が零れてしまう。おっと、粗相してしまっては執事として正しくないな。
「だ、大丈夫? ダンタリオン?」
「クッ平気ですとも! これしきお嬢様への愛に比べたら……」
「ん、恥ずかしい事言わないでよ……」
「――タワバッ!」
走馬灯が……煌めく……。
今日は不思議と事件が起きておりません。お屋敷にて家族と親戚で食事会を行っています。大広間に並べられた食事を、お嬢様が食べようとして――止めます。
「喝ッ!!!!」
衝撃波を発生させるほどの喝を入れます。ビリビリとした衝撃に皆の手が止まり硬直します。
「命令ッ!!!! ――毒を入れた奴は今すぐ前に出ろ。慈悲を乞えば生かしてやらんこともないぞ?」
神の権能/絶対命令権を使用しさっさと自白させます。お嬢様に手を出そうとしたのです。万死に値します。
まるで操られたように親戚数人が出て来ると自白を始めました。借金の申し入れを断られてしまい、料理人と共謀した事、本家であるお嬢様一家を殺そうとしたこと。もちろんすでに警察は呼んでいますし、この様子を録画しております。
自白も終わり要件を済ませると私は彼らに宣言します。
「私はちょっと特殊でしてね? 呪術と言う現代科学でも解明できない事をできるのですよ……? 意味わかります? 生かしておかないこともない、と言いましたよね?」
ブルブルとヤバいくらい震えています、少し漏らしているようですが、爆笑せずに我慢しましょう。
パチンッと、指を鳴らす。神の権能/生命流出
「あなた達には寿命を残り一か月にしてあげました。 ん? ――ああ、冗談ですよ冗談、そんなことできるわけないじゃないですか、フクククク」
お嬢様は絶句し、青ざめている。アレは本気だと気付いている顔だ。
「精々、牢屋の中で懺悔しなさい。あなたに残された時間は少ない……ですよ? ええ、嘘ですって。青ざめないで下さいよ?」
そうしてお屋敷で起きた大事件は解決した。
テレビで放映しているニュースに、あの毒を盛った親戚が数名、留置所で変死をしたと流れていた。
そのニュースを見ていたお嬢様家族は一斉に私を見つめてきた。
両親、お嬢様、弟、弟、妹、妹。
七人家族みんな顔がよく似ているんですよね、その驚愕の表情といい、ボケップリも似ていて愛らしいんですよね?
「ん? どうしたんです? ああ、彼らですか――残念でしたね? 一斉に寿命でも尽きたんじゃないですか? 呪い? そんなのできるわけ……ないですよ? フクククク。悪魔じゃないんですから」
「――いや、あんた悪魔でしょ!?」
「あ、そうでしたそうでした……だとしたら犯人はまさか――お嬢様だったのですね!? 嫌がる私に無理やり命令をッ! と、とんでもない事をしましたね!? 今すぐ自首をッ!」
「え、え、え、え、ふえぇぇぇぇぇぇぇぇええん、びえぇぇぇぇぇぇん! してないもん! してないもん!」
ああ、あかちゃんみたいな泣き方も可愛い。
「――嘘です嘘です。呪術とか使ってないですって。――神にお願いをしただけです、ええ」
カチャリ、と食器に置かれたフォークの音だけが響くと、みんな聞かなかったことにする。今日も美味しいご飯ありがとうございます。
とまあ、こんな楽しい日々を送っております。グットデイッ!!




