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~その後のお話~




「ほ、本当に婚姻するのですか!?」



目の前に用意された婚姻誓約書にルルーシャは眩暈を覚えた。『婚約者』を信用出来ないルルーシャを納得させる為の方便かと思っていたが、目の前の王太子はどうやら本気だったらしい。



「色々な準備諸共があるから、式や披露宴は予定通り卒業後になるけどね。誓約書にサインを記入するのは私達の自由にしても良いと父上からも返事を貰ったよ」



もう既に夫の欄にはジークフリードのサインが記してあった。この誓約書を神殿に提出すれば、ルルーシャはジークフリードの『婚約者』から『妻』になるのだ。……王太子妃という重責もプラスで付いてくる。そう思うと、簡単にはサイン出来ない。


──だって、婚約破棄されると思って生きてきましたのよ?まさか…本当に殿下と婚姻するだなんて……。



戸惑うルルーシャにジークフリードは優しく微笑んだ。そしてぎゅっと手を握り締める。



「私は君を愛している。婚姻したいと思うのは君だけだ。この誓約書はルルーシャが持っていてくれて構わない。いつサインして神殿に提出するのも君の自由だ。今直ぐ記入しなくてもいいよ」


「え……」


「私は君の中の不安を取り除きたいだけなんだ。君が私を信じ共に生きたいと思って貰えるまで、何度だって君に愛を告げるよ」



今まで幾度となく愛を囁かれた。しかしいつかは心変わりするのだと思い込み、ルルーシャは心に蓋をして、真摯に受け止めては無かったのだ。しかし、こうしてジークフリードに向き合って、真正面から愛の言葉を受け入れると、身体の奥から沸騰しそうなくらい心臓がドキドキと音を立てる。



──こんなにも真剣な想いをわたくしは受け流していたのね……。



「殿下……」


「君が私と一線引いていたことは気付いていた。まさか前公爵夫人の影響とは思わなかったけどね。まあ、私に心を許さない君は子猫のようで可愛くてそのままにした私が悪かったんだ」


「こ、子猫!?」



目の前の王太子に自分は子猫の様に見えていたという事実にルルーシャは素っ頓狂な声を上げてしまった。可愛げのない自分をこんなに可愛いと言って愛でるのはジークフリードくらいだろう。



「出会った頃から、毛を逆立てて威嚇するような可愛い君が、いつか私の膝の上で可愛く寛いでくれればと……」


──だ、だからいつもお膝の上に!?


ルルーシャはジークフリードから一歩引いて、少し距離をとったが、すかさず一歩詰め寄られ抱きしめられてしまった。



「負けず嫌いで頑張り屋な所も、王太子妃教育を必死にこなす努力家な所も、実は泣き虫な君も……全部が愛おしくてたまらないんだ」



「っ!!!」



本当にどこまで見られていたのだろうとルルーシャは頬を赤く染めた。そう言えば、王太子妃教育が上手くいかず落ち込んだ日には、見計らったかのようにジークフリードからお菓子の差し入れがあったり、デートのお誘いがあったりしたことを思い出す。


見えない所でジークフリードにどれだけ支えられていたのだろうか。甘々に甘やかされて、溺愛されていたことを急に自覚して、ルルーシャは胸が締め付けられた。


ジークフリードのサインが記入された婚姻誓約書は彼の覚悟の証。絶対に婚約破棄などしないと。ルルーシャを生涯愛してくれるのだと──



「大好きだよ、ルルーシャ」



蕩けるような瞳で覗き込まれ、そっと唇が重なった。ジークフリードの手を…取っても良いのだろうか…と悩んでいたルルーシャの最期の砦が切り崩された音が聞こえた気がした。



「やっぱり君は泣き虫だね」



自然と零れた涙をジークフリードが美しい動作で拭ってくれる。まだ言葉に出しては言えないが、ルルーシャの心の中にはもう答えが出ていた。



──お祖母様にお手紙を書かなくては……。もう、婚約破棄は心配されなくても良いって……。



いつか、ジークフリードにも伝えられればいい。育ち始めたこの気持ちを──



「……殿下の所為ですわ」


「ふふ。では、泣き止ませるのも私の仕事だね」



ちゅっと瞼に口付けし、そのままもう一度唇が重なり合った。ルルーシャはそっと、自分の気持ちを乗せるようにジークフリードの背中に手を回すのであった。






~END~






その後のお話もお読み頂きありがとうございました(*^^*)

ジークフリードはルルーシャにぞっこんですね笑


沢山のご評価、ブックマーク、いいね、ご感想、誤字報告を頂きましてありがとうございました!!感謝の気持ちでいっぱいです!!


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