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2.なんで殿下は私にこんなに構うのかしらっ!!



「旦那様、今日も素敵よ」


「ああ、君もいつもに増して美しい。愛しているよ、シャールロッテ」



家に帰ると久々の連休を楽しんでいるルルーシャの両親がいちゃいちゃとしていた。


ルルーシャの母でありシャールロッテが当時第二王子だった婚約者に婚約破棄された時、親友であった当時王太子妃、現王妃の護衛をしていた父・マルフィスが求婚し、ハイゼット公爵家に婿養子として入ってくれたのである。婚姻後、シャールロッテ一筋だったらしいマルフィスに溺愛され、なんだかんだで相思相愛に。第二王子はハイゼット公爵家を敵に回したことで失墜し、下位貴族の女と駆け落ちしたらしい。


シャールロッテは現王妃の側仕えとして仕えることになり、マルフィスは公爵位を受け継ぎつつ、近衛騎士団の指南役もしている。忙しく働く両親であるが、夫婦仲は良好過ぎるくらい良好で、この二人を見ていると、婚約破棄後に結ばれる相手と婚姻した方が幸せなのではと思うルルーシャなのである。


因みに、今は領地で老後を過ごしているマーマリアと前公爵も、両親に負けず劣らず仲睦まじい夫婦である。



──そうですわ…。やっぱり婚約者など信用できませんわ!どうせ婚約破棄されて、不幸にされるだけですもの!



ジークフリードの溺愛っぷりに押されていたが、両親の仲睦まじい姿にルルーシャは再度自分の考えを貫こうと心に決めた。



「あら?ルルーシャちゃん!お帰りなさい。学園は楽しかった?」


「……はい。お母様」


「ルルーシャちゃん、そんな顔しては幸せが逃げてしまうわ!婚約破棄されたとしても、母の様に素敵な殿方が求婚してくれるわ。旦那さまのように…」


「シャールロッテ……」


「旦那様っ!!!」



二人の世界が始まってしまい、娘であるルルーシャは少し複雑な気持ちで抱きしめあう両親を見つめていた。そう、ハイゼット公爵家は母・娘に渡って婚約破棄されている歴史から、ルルーシャと王太子がこのまま婚姻するなど思っても無いのだ。



本人すらそう信じ込んでいる。王太子妃教育は自分の為になるからと手を抜いては居ないが、ジークフリードの隣に立つ未来など夢見たことも願ったこともない。



「わたくしにも…運命の方が現れるかしら……」



祖母や母のように、婚約破棄されても強く生きたい、幸せになりたいと、そう心から願う。


だからこそ──




「大好きだよ、ルルーシャ」




毎日のように甘い言葉を吐いてくる王太子など信用していないのだ。なのに……


──なんで殿下は私にこんなに構うのかしらっ!!!



今日も定位置のように膝の上に抱えられ、怒りと羞恥に震えるルルーシャを満足そうにジークフリードは見つめている。



「殿下、わたくしにそこまで構って頂かなくても大丈夫です。今日から元庶民の学生が編入されるのでしょう?貴重な光の魔力持ちだから王太子として気にかけて欲しいって陛下に言われてませんでしたっけ?」



矢継ぎ早に言うと、ジークフリードは眉間に皺を寄せる。そして本当に面倒そうな表情でため息を吐いた。


「ルルーシャ、君との時間以上に大切な用事など無いのだよ。その学生には案内役の学生が付いているし、私が直々に挨拶に出向く理由もない。それよりも君との時間を楽しみたいんだ」



「わたくしとの時間など何時でも持てるでは無いですか。王立学園なのですからやはり殿下が歓迎の意を示さないと……」



ルルーシャ以外には塩対応な王太子に、この国の行方が心配になってしまう。それにきっとこんな風に愛を囁きながらも簡単に婚約破棄してくるのだろうと思うと心の中が冷え切るような感覚が広がる。



「ではルルーシャ、私にご褒美をくれないかい?」


「ふぇ!?」



先程の不機嫌な表情から一変して、楽しそうにルルーシャを覗き込むジークフリードは、唇が重なり合いそうな位近距離まで顔を近付けた。その距離の近さにルルーシャは素っ頓狂な声を上げてしまった。



──ちょっと……近すぎますわぁぁぁぁ!!!!



真っ赤になりながらぎゅっと目を瞑ったルルーシャの頬に柔らかな何かが触れた気がした。慌てて目を開けると蕩けるような瞳を細めて微笑むジークフリードと目が合った。



何か言おうとしたルルーシャの唇にジークフリードの細くて長く美しい指が添えられる。



「ここはまだ後の楽しみにしておこうかな?」


「ひぇぇぇ!!!お戯れが過ぎますわっ!!さ、早くご挨拶に行ってくださいませっ!!!」


「ふふ、照れてる君も可愛らしいね。では、一緒に行こうか?」



膝の上からふわりと抱き上げられて、ジークフリードに抱き寄せられた。こんなに密着しなくても良いのでは?と疑問に思いつつも、何故かルルーシャも編入生に会いに行くことになってしまったのだった。



◆◆◆



「はじめまして!モモって言います。仲良くしていただけると嬉しいです!!」



一国の王太子と公爵令嬢への挨拶としては、かなり不敬になる砕けた挨拶を披露してきた庶民で光の魔法を発現させ編入したピンクブロンドの髪に可愛らしい顔をした女生徒…モモにジークフリードは作ったような笑みを作った。



「君がこの学園で良き学びを得られるように願っているよ。私とは直接関わり合うことは少ないだろうが、何かあれば目付け役に相談するといい。彼女を頼んだよ?」



間接的に仲良くするつもりは無いと突き放し、モモに付いていた学生に丸投げした。見事な一線の引き方にルルーシャは引きつった笑みを隠せなかった。



「あれっ?王太子さまってこんなキャラだっけ?」



とかブツブツ言っているモモにルルーシャは少し同情した視線を向ける。何か声をかけた方がいいかしら…と思ったが、ジークフリードは話は終ったとばかりにこの場を去ろうとした。



「モモさん、わたくしも貴女が学園に少しでもは早く慣れることを願っていますわ。では──」



長居は無用とばかりにジークフリードに腕を引っ張られ、モモに背を向けその場を立ち去った。仲睦まじく歩いていく二人の背中をモモが睨みつけていることには気付くことは無かった──。




「殿下っ!どうされたのですか!?」






R5.6.22一部両親の設定を付け足して修正しています。話の内容は変わりありませんのでご了承ください。

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