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取り敢えず過去の話を聞きます

 



 はぁ、と大きな溜息を吐いてしまう。



『それで?

 協力とは?

 何をしたらよろしいのでしょうか?』

 何度も出そうになる溜息を飲み込む代わりに、再度コップを持って中の果実水を飲む。


『協力してくれるのか!?』

 カバっと効果音がしそうな勢いで食い付いてくる。



『まずは本当に滅亡するのでしょうか?』

 考えなかった事がない訳ではない。


 むしろ何度も思った。


 あのマクシミリアン皇太子殿下が皇帝になった所で国の運営なぞ出来る訳もない。

 だからこそ婚約者はマグリットであらねばならなかったのだから。



 それでもいきなり滅亡は言い過ぎなのでは?とも感じる。

 そこまで愚かな愚帝になってしまうのか。


『全てのやり直しに置いて、国庫の食い潰しに加え貴族どもの腐敗、それを狙ったかの様な他国からの侵略でやり直す前の世界は何度も滅亡の道を辿った。』


 今現在、他国との交流もあり外交に問題がある訳では無いにも関わらず、侵略されるなどとマグリットには信じがたい。


 それでもマグリットが死んだ後の世界を何度も見ているであろうフレデリックの言葉を信じない事も出来ない。



『皇帝陛下は一体どうなるのでしょうか?』

 現皇帝陛下がいればその様な事にはならないであろう。


『父である皇帝陛下は何よりも、未来の皇后陛下はマグリットでなければいけないと知っている。』

『・・・・・・はい』


 それは痛いほど知っている。


『なら何故、婚約破棄などとふざけた事が出来たと思う?』

 何故?

 マグリットはその事は少しも考えた事はなかった。




 婚約破棄をされたパーティーは学園での卒業パーティーと言うだけあり、皇帝陛下が居た訳では無い。


 だからこそあの場で一番の権力者であるマクシミリアン皇太子殿下の言葉が絶対だったのだ。

 誰も彼も皇太子殿下であるマクシミリアンに何も言えなかった。


 だからこそ、そこに何の疑問も持たなかった。


『婚約破棄は皇帝陛下の与り知らぬ所でされた。

 流石のマクシミリアンでも皇帝陛下に何を言ったところで、婚約破棄なんて出来ない事を知っている。』


『ならば何故・・・?』


『何故だと思う?』

 マグリットに考えさせたい様に問い掛ける。


『・・・・・・皇帝陛下が止めれる状態に無かった・・・?』

 試す様な事をされるのは気に入らないが、だからと言って話を止める気にもならない。



『そう。

 卒業パーティーでのタイミングは皇帝陛下が口を出せないんだ。』

 複雑そうな感情をフレデリックから感じる。


『皇帝陛下に何があったと仰るのですか?』

 フレデリックがどう思っていようと聞かない訳にはいかない。




『皇帝陛下は卒業パーティーの数日前に倒れるんだ。』




『!!!!』

 驚き過ぎて手に持っていた果実水のコップを落としそうになる。



『何度やり直しがあろうとも、必ず卒業パーティーの日付の数日前から前日の内に倒れて、皇帝陛下には婚約破棄した事さえ耳に入らない。』




 マグリットの瞳から止めどなく涙が溢れる。


 確かに皇帝陛下はマグリットを政治的な理由から、マクシミリアンの婚約者とし政略結婚させようとしていた。


 だからと言って皇帝陛下から道具の様に扱われた事は無かった。

 むしろ第二の父と言っても過言では無い位、いつも可愛がってもらっていた。


 だからこそ皇后陛下なんて重圧も頑張ろうと思えていた。



『陛下が、倒れるなんて・・・・・・』


 フレデリックは恐らくマグリットが泣いてる事に気付いている。

 それでもなんと声を掛けたらいいかわからない。




 皇帝陛下は自分の子供達には愛情表現が出来る方ではなかった。

 それもあり、マクシミリアンはマグリットを好きではなかったのかもしれない。


 それはきっとフレデリックも同じ。

 マグリットに複雑な感情を持っている。


 だから今の今まで将来の義妹になるにも関わらず、表面上以上の付き合いは無かった。



『そしてそのまま国政にはあまり関わられなくなるんだ。

 それでも皇帝陛下がご存命の内は良かった。



 問題は皇帝陛下が崩御された時だ。

 マグリット、君の処刑はフレデリックが皇帝陛下になって最初にする事だ。

 どの時間軸でも。』



 何故そこまでマグリットに拘るのか全く検討もつかない。



『何度も何度もどうすれば良いのか考えた。

 そして行動もした。


 それでも何度やっても何も変わらなかった。』

 苦悩してきた事が痛い程伝わってくる。




 マグリットも感じている事ではある。


 死ぬ事はどうしても変えれない。



 ーーーーまるで運命とでも言うのか。

 そう何かわからないものを恨んだ事さえある。



『そしてやっと気付いたんだ。


 マグリット、君が死なない未来がまず必要なのでは、と』






『私が死なない未来・・・』

 考えても見なかった。

 フレデリックと同じで、死なない様に考えて行動もした。



 それでも何度やっても必ず死んだ。

 市井に行こうが、むしろ他国に行こうが必ず見つかって殺された。



『皇族の言葉が絶対のこの国において、マグリット一人では何も出来なかったかもしれないが、今度は俺がいる。』

 フレデリック・テンペスト=スタッフォード殿下。

 確かにこの人が居れば変わるのかもしれない。



 ーーーーーでも


『フレデリック殿下。

 私はもう・・・・・・・・・』









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