表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/126

取り敢えずお客様です

「お嬢様。

 お休みの所申し訳ありません。

 内密に会いたいと仰ってる方が来られているのですが・・・」


 遠慮がちにノクトが扉の向こうから声を掛けてくる。


(???

 今までのやり直しの中で殆ど変化の無い初日に誰かが訪ねて来た事は無いのですが・・・

 誰なのでしょうか??)

 全く心当たりがないマグリットは不審に思うも、相手が誰か位は確認しないと、とノクトに部屋へと入る様に伝える。


「先触れはあったのですか?」

 ノクトが部屋へと入った瞬間に尋ねる。


「いえ、ありません。

 ただ・・・」


 何事もテキパキと物事を熟すノクトの言葉が詰まる様子に、マグリットは不思議そうな顔を見せる。

 普段から感情を表に出さないノクトが困った様な何とも言えない顔をするのは珍しいのだが。


「・・・誰が来られたのですか??」

 嫌な予感がするが、来客をそのままにする訳にもいかない。


「フレデリック・テンペスト=スタッフォード殿下が来られていらっしゃいます。」


「何ですって!?」





「お待たせしてしまい申し訳ございません。

 帝国の若き太陽フレデリック殿下。」


 ノクトに来客を聞いてから直ぐにマグリットはソフィーを呼び直ぐ様お客様に会える様に支度を整え、フレデリックが待っている応接室へと急いだ。


「いや、すまない。

 こちらが礼儀を欠いていたのだ。

 気にしないでくれ。」



 フレデリック・テンペスト=スタッフォード殿下。 


 マクシミリアン皇太子殿下の母親が違う兄で、側室の子である為王位継承権は第二位の皇子様だ。


「しきたりが無ければ」という声がある程、このフレデリック殿下は完璧皇子と称されるに相応しい何でも出来る人物である。


 容姿も完璧で銀髪の少し長い髪がキラキラしていて綺麗で、瞳は全てを見透かしそうなそれでいて優しさも感じさせる赤眼。

 マクシミリアンよりも大人っぽい上に身長もあり、キリッとしていて、それでいて色気も感じさせる誰もが振り返るほどの容姿をしている。



「フレデリック殿下は私にどの様な御用でしょうか?」

 ノクトに紅茶とお茶菓子を用意してもらい、そのままノクトは壁際に待機する。

 いくら婚約者の兄とはいえ二人っきりには出来ない為である。


 落ち着いた所でマグリットはフレデリックに問いかける。


 フレデリックはその言葉には直ぐに返事はせず、紅茶をひと口飲むと小さく笑う。


 マグリットはそれに気付くも表情一つ変えずに目の前の男を見つめる。

(こうして会うのはやり直しの世界含めても初めてね。

 あまり出会いたい方では無いのだけれど。)


 完璧皇子と言われるだけあり、隙一つ見当たらないフレデリックにマグリットは警戒する。


 しかし表面上は警戒心をカケラも感じさせない普通の貴族令嬢を演じる。



「なに、弟の婚約者にしっかり挨拶をしてみたいと兼ねてより思っていてね。

 今日たまたま時間があったもので、こうして急ながら来させてもらったんだ。」


「挨拶・・・ですか?

 お茶会などではお会いする事もございますのに。

 何かお話があるのかと思いましたわ。」

 コロコロと扇で口元を隠し笑う。



 しかし内心マグリットはかなり不審に感じている。


 今の今まで本当に必要最低限でしか関わらなかった人物である。

 やり直しの世界でもこうして家まで訪ねてくる事は一度だって無かった。


 マグリットが不審に思うのは当然である。


「弟の婚約者様にお近付きのシルシとして。」

 フレデリックはポケットを探り、小さな箱をマグリットの目の前に置く。


 マグリットは流石にそんな怪しげな物を手にする事は出来ず、その箱を凝視してしまう。


「そんなに警戒しないで欲しいんだが。」

 そう言いながらも箱を開けて中を見せようともしないらしい。


 そのまま立ち上がると、用事は終わったとばかりに扉へと向かう。


「殿下!!

 よくわかりませんが、受け取れませんわ。」

 マグリットは困った顔で箱をフレデリックへ返そうと差し出す。


 当然フレデリックはそれを受け取らず、一瞬の隙を突いてマグリットの耳元に口を寄せる。


「夜、一人になってからその箱に入ってる物を付けろ。」

 マグリットが離れるよりも先に小さな声でそれだけ告げると、見送りは要らないとばかりにそのまま出て行く。


「一体何なのでしょうか。」

 マグリットは手の中にある小さな箱を見つめて困った顔をする。



(恐らくノクトには聞かれたく無かったのよね。)

 だからこそわざわざ耳元で話したのであろう。


 幸いにノクトには聞こえなかった様だが、咄嗟にマグリットを庇うことが出来なかったとノクトは悔しそうにしている。


 思わずその様子にマグリットは思わず笑ってしまう。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ