取り敢えず次何しましょうか
(さてこれからどうしようかしら。)
マグリットは学園が終わってからすぐ家に戻り自室に篭り、大きな窓側に立ち腕を組みながら外を眺める。
ソフィーとノクトには入らない様には伝えており、何か無い限りは誰かが入ってくる事はないであろう。
(学園に行かないのは決めたとして・・・
相変わらずこのタイミングで陛下に直談判した所で婚約者解消はして頂けないし、黙って出て行った所でそれも変わらない。
婚約を解消する前に平民にして頂くのが一番なんですが、それも難しいですしね。)
今の第一皇位継承の男では国を収める事が出来ない事は暗黙の了解とばかりに殆どの貴族の見解である。
その為婚約者はマグリット以外に有り得ないと、皇帝陛下は考えており婚約解消には是と言ってはくれない。
マグリットが婚約が嫌だからと黙って姿を消した所で、国総出で探されるのである。
今まで何回もやり直した世界で黙って居なくなった時、いつもいつも探されていた。
そこまでしてもマグリットと結婚させたい理由。
この国の皇位継承権が問題なのである。
正妃の子がこの国の皇帝になるのは絶対だというふざけた古いしきたりのせいである。
マクシミリアンは皇帝陛下の第ニ王子皇位継承第一位。
そう、第ニ王子。
実は側室の子が産んだ第一王子がいる。
しかし側室の子の為、皇位継承権は第ニ位。
この王国が過去を遡り側室の子が即位した事は当然ある。
それはあくまでやむに止まない事情の時だけ。
過去のことで言うなら、どうしても正妻との間に御子が産まれなかったとか、女の子しか出来なかったとか。
そういう事情がある場合のみ許されてきたのである。
今回に関しては正妻の子が産んだ男である。
しきたり通りマクシミリアン皇太子殿下が将来皇帝陛下になるのは覆りはしない。
実際やり直しの世界では全てマクシミリアンが皇帝陛下になり、マグリットを殺しているのだから。
マグリット一人、ましてやあくまでも公爵令嬢としての地位しか持たない為、どうあっても皇位継承権をどうにかする事は出来ない。
一人では自分が死んでしまう未来は変えられなかった。
だからこそ余計に公爵家に留まり、皇太子殿下の婚約者としてただここに居ることはもうマグリットには出来ない。
(どうあっても必ず見つかるのは何故なのかしら。
ーーーーー運命とでも言うのかしら。)
自重するように一人鼻で笑う。
(死ぬのが運命ならば、何故何度もやり直しさせられるのでしょうか。
正直、死ぬのはもう怖くない。
・・・この終わらないループが続く方が怖い。)
泣いてはいない。
ただただ表情は無く目を瞑る。
(ダメね。
またやり直しが始まってしまったからには、今後の事を考えないと。)
マグリットは気分転換にと部屋に備え付けてある紅茶を淹れる。
(次は何をしましょう。
冒険者、学者、魔導師。
色々しましたが今回は全く違う職種もいいわね。
むしろその方が死なないかもしれません。)
紅茶を飲みながらこれからの事に想いを馳せる。
(さて、いつ出て行こうかしら。
誰にも悟られない様にしなくては。)
楽しそうに一人小さく笑う。
それは貴族令嬢らしくない、マグリット本来の笑顔だった。