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プロローグ

初投稿です。楽しんで頂けたら幸いです。

 

「マグリット!!」

 名前を呼ばれて振り向くのは菫色の長い髪を貴族令嬢らしく結い上げた青い瞳の絶世の美女。

 そして名を呼んだのは金髪碧眼の男。


「マグリット公爵令嬢。今この時をもって俺はお前との婚約を破棄する!!」

 マグリットの婚約者であるマクシミリアン皇太子殿下が声高に告げる。





 今日はマグリットが三年間通っていた国立クレア学園の卒業記念パーティーの日で朝からバタバタと準備で大忙しで、それもありマグリットの婚約者が今日のパーティーでのエスコートは出来ないと先触れを寄越した事も然程気にはならなかった。


 むしろ婚約者ではあっても、学園に入ってからの二人の間柄ではエスコートすると言われた方が驚いたかもしれない。


 その位学園を卒業後結婚する筈の相手とは思えない程の繋がりしかなかった。



 しかし普通なら婚約者同士、しかも皇太子殿下ともあろう者が婚約者をエスコートもせずにパーティーに出席するなんて事は普通なら有り得ない事でマグリットは兎も角、両親や侍女が顔を顰めるのは当然のことであった。



 そんな事もありながらもあくまで学園でのパーティーだと周りを宥めてマグリットは一人パーティー会場で挨拶回りをする。


 落ち着いた頃合、婚約者であるマクシミリアン皇太子殿下とジェシカ男爵令嬢がエスコートと言うには近過ぎる距離で腕を組みながら、むしろイチャイチャしながらマグリットの前まで来る。


 それに顔を顰めた所でこの二人には全く通用しない事はもう既に学園中が知っている事である。



「帝国の若き太陽マクシミリアン皇太子殿下にご挨拶を申し上げます。」

 マグリットはこのパーティー会場に居る誰よりも優雅なカーテシーをしながら自身の婚約者に挨拶をする。


 挨拶をされた皇太子殿下は馬鹿にする様に笑うと、ジェシカの肩を抱き寄せパーティー会場全体に聞こえる様に上記の言葉。



 婚約破棄を宣言した。





「どうしてかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 正直な話、マグリットはやっと婚約が無くなるのかとホッとするもそれを顔には出しはしない。

 公爵令嬢と言えども、相手は皇族である。

 マグリットからは婚約解消を告げることは出来なかった


「どうしてか?だと!!

 お前がここに居るジェシカ=ウェルズリー男爵令嬢を嫉妬から虐めている事はわかってるんだぞ!!」


 マクシミリアンは人を指差してはいけませんと、誰かから聞いた事もないのであろうか。

 マグリットに指を差して偉そうな態度で告げる。



「・・・・・・嫉妬??」

 マグリットはまさかの言葉に思わずキョトンとした顔をしてしまう。


 完璧令嬢だと言われているマグリットのそんな顔を見てしまった近くにいる男性陣達は、見惚れる様にマグリットを見つめて顔を赤くする。


「惚ける気か!!

 ジェシカの教科書をビリビリに破ったり、一人でいる所を狙って水を掛けたり、権力に物を言わせてジェシカに友達を作らせなかったり!階段から突き落としたりもしたようだな!!」


 流石に静かに成り行きを見守っていた周りの人達も階段から突き落としたは衝撃だったのかザワザワし出した。


「その様な事はした事はございません。

 証拠とは??

 私は皇太子殿下の婚約者という立場から一人で行動する様な事は決してありません。

 であるにも関わらず私が全てやったと、そう仰るのでしょうか?」


 マグリットは何も恥ずべき事は無いと堂々とした佇まいで二人を見つめる。


「認めないつもりか!!

 そちらがその気なら此処で言うつもりはなかったが、マグリット・イングラム=カンバーラント!貴様には暗殺未遂の容疑が掛かっている!!」



 マクシミリアンはパーティー会場中に聞こえる大声でマグリットを責め立てる。


「暗殺!?

 何故私がその様な事をしなければいけないのですか!?」

 流石のマグリットも黙ってはいられなくなり反論する。



「嫉妬していたからだろ!!

 自分が俺から見向きもされなくてジェシカばかり構ってもらえてるのがそんなに嫌だったのか!!」

 自分の言葉が少しも間違ってるとは思っていない様で、自信満々に胸を張る。


 婚約者以外を構っていたと宣言しているのは確実に間違っていると言えるのではないだろうか。

 しかしそれを指摘できる者はこの場には居ない。



 マグリットがチラリとジェシカを見るとニヤリと悪どい顔で笑っているのが目に入る。


「先程から嫉妬嫉妬と何を仰っているのかわかりかねます。

 私は皇太子殿下の婚約者として、また未来の国母としての矜持はありますが、マクシミリアン皇太子殿下を好きだと思った事は過去一度もございません。

 それを嫉妬嫉妬と自意識過剰も大概にして下さいませ。」

 マグリットは怒った様子で二人を睨み付ける。


 皇太子殿下と言えど傲慢な態度が嫌われている為、マグリットの言葉にクスクス笑う声が聞こえる。


 それに対しマクシミリアンはカッと顔を赤くして周りを睨み付ける。


「どちらにしろ貴様が暗殺しようとした事は証拠を押さえている!!」


「殺したいなどと思った事もないのに、暗殺しようとした証拠があるとは一体どう言う意味でしょうか。

 意味がわかりません。」


「もういい!!衛兵!マグリットを牢に連れて行け!!」


 どうあっても取り乱さないマグリットにマクシミリアンはイライラが抑えきれずに怒鳴る様に命令する。


 衛兵が二人マグリットの腕を両側から掴もうとするが、マグリットはその手を振り払う。


「結構ですわ。自分で歩けますので。」

 マグリットはなりふり構わず暴れたりもせずに凛とした姿で背中を向けて出口まで歩き出す。



 そうマグリットは知っているのだ。


 この国は皇族の言葉が絶対な事を。


 公爵令嬢とは言えども皇太子殿下が牢に入れろと言った事は覆りはしないことを。


 願わくば冤罪が晴れる事を祈る事しかマグリットは出来はしない。





 この後犯罪者のレッテルを貼られるマグリットだが、このパーティーでの潔さから貴族達に嫌われる事は無かった。


 むしろコッソリと憧れてる者達ばかりになる。


 それは牢に入っているマグリットには知りもしない事実。





 冤罪とはいえ証拠を挙げたと言ったのは皇太子殿下。


 ろくに調べもされずにマグリットは三年間牢屋に押し込め続けられた。


 貴族が入るような過ごし易い牢屋ではなく、一級犯罪者が入る様な狭くて暗くて、トイレには辛うじて一枚の布が上から掛かっているだけの汚い牢屋。



 救いは刺繍と読書、書き物は許された事だった。


 他にやる事も無かったので、長い時間を読書と勉強に使う。


 元々優秀であったにも関わらず勉強漬けになった為、並の人間には知識で負けない位になってしまう。


 ただそれを披露する場もない。





 ある日マグリットが読書をしていると、いきなり牢屋から出されて何処かへ無理やり引っ張りながら連れて行かれる。


 狭い牢屋にずっと居た為あまり動かない足を引き摺られるが、文句一つ言わずマグリットは着いていく。


 連れられた先に居たのはかつて婚約者、マクシミリアン皇太子殿下が以前とは何も変わっていない不遜な態度で、豪華で煌びやかな椅子に座って待っていた。


「帝国の若き太陽マクシミリアン皇太子殿下にご挨拶を申し上げます。」

 動きが鈍っている足を叱咤し、以前と何ら変わりない優雅なカーテシーでもってマグリットは挨拶をする。


 それに対してマクシミリアンは相変わらずイライラした表情をしながらマグリットを睨み付ける。


「俺は皇太子ではない。陛下と呼べ!!」



 それに対してマグリットは驚いた顔を向ける。


「・・・

 前陛下は!!前陛下はどうなされたのでしょうか?」



「前皇帝は亡くなった。」



 マグリットはショックで言葉を失った様にマクシミリアンを見つめる。

 マクシミリアンはそれを見て嗤う。


「その為、お前という憂いを晴らそうと思い呼んだのだ。」

 マグリットはその言葉にどう言う意味があるか理解する。

 理解するももうどうでも良い。


「どうぞ陛下の御心のままに。」

 すでにこの世に未練など無いと微笑む。


 それに対しマクシミリアンは益々イライラした表情を浮かべるも、それ以上は何も言わず。


「連れて行け。」


 近くに待機していた衛兵がマグリットをエスコートする様に連れて行く。

 それに対しマグリットもピシッとした綺麗な姿勢で歩き出す。




 連れられた先は市井での広場であった。


 そこにはギロチンが用意されている。

 もともとギロチンなど設置されていなかった所にわざわざこれだけの為に用意したと言うのか。


(民の税金を何だと思ってるんでしょうか。)

 マグリットはギロチンを見上げて恐怖よりも呆れた感情が先に来る。


 実際今から此処で殺される事に対して実感が湧かないのかも知れない。

 それか長い事牢屋に居た為、死ぬ事に恐怖が無かったのか。



 衛兵にエスコートされながら断頭台の前まで誰よりも優雅に進んでいく。



「罪人マグリット・イングラム=カンバーラント!

 陛下の婚約者という立場から現王妃様を嫉妬の感情から殺害を企てた。

 従ってカンバーラント公爵家の爵位、又領地を没収。

 そして王族殺害未遂の罪で斬首刑に処す。」





予約更新してます。暫くの間は毎日更新されます。続く様に頑張りますのでよろしくお願いします。

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