降霊会
遂に実現した。
大嘘つきのインチキ霊媒師との直接対決。
私は真実報道がモットーのニュースキャスター。
前々から、嘘ばかりついて妙な団体を立ち上げ、
「神のお告げ」
とやらを吹聴しているインチキ男を批判して来た。
そいつと公開生放送で対決する事が決まったのだ。
今、目の前にそいつがいる。
「信者」からの「お布施」で買った煌びやかで下品なピエロのような衣装。
心の内を読まれないようにするためか、常にサングラスをかけている。
これだけ名前が売れていなければ、只の変わり者だ。
進行は私。アシスタントも、コメンテーターもいない。
完全なタイマン勝負だ。
奴は心なしか、落ち着かない様子。
それはそうだ。
生放送なのだ。
誤魔化しは効かない。
取り直しも許されない。
当然化けの皮がはがれる。
こいつはもうおしまい。
私はそう確信し、ニヤリとした。
「そろそろ時間です。降霊会を始めようと思います。よろしいですか?」
奴は黙って頷いた。
「では始めて下さい。呼び出すのは、私の父親の霊です」
私は意地悪く微笑んで告げた。
「・・・」
インチキ男は、何やらブツブツと呪文のような言葉を唱えている。
勝った!
私は心の中で叫んだ。
私の父親は存命だ。降霊できるはずがない。
インチキ男はしばらく「呪文」を続けていた。
やがて、奴が大きく頭をゆすり始めた。
それを見て、私はわざとらしく真顔で尋ねた。
「私の父親は、降りて来ましたか?」
インチキヤロウはかすかに頷いた。
「降りて来たのですか?」
私は大袈裟な身振りで、カメラを見た。
モニターには奴の姿が映っている。
とうとう追い込んだ。そう思った矢先だった。
「?」
ADがカンペを出した。
何だ?
私は奇妙に思ってそれを見た。
その文章に血の気が引いた。それにはこう書いてあった。
「貴方のお父様が先ほど心筋梗塞で亡くなったそうです」