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ペキ!ー翼の無い戦士ー  作者: 七尾の狐
目覚めの時
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目覚めの時 ①

どれくらいの時が流れていったのだろうか。

ルシファーは深い闇の中、失意の底にいた。「私は何を考えればいいのだろう…。何を考えれば…。うっ…!」

ルシファーの左頬の傷は遥か昔に塞がってはいたものの、時折鈍い痛みが走り、あの日の戦いを思い出させていた。しかし、時間の概念というものが失われたルシファーには、頬の痛みに顔を顰めるのみで、それ以上思いを馳せる事は無かった。ただただ虚しく、無気力で、寂しかった。

「エヴァ。君の優しい笑顔、君の長い髪が私の頬をそっと撫でてくれる…。会いたい、エヴァ…。」

ルシファーはゆっくり目を閉じて又深い眠りについた。


空では飛行機の爆音、地上では車の騒音と目まぐるしく時代は変わって行った。

「さっさと終わらせろー!もうすぐ昼飯のお時間だぞー!」

此処は街のど真ん中、都市開発を進めるべくビル建設の騒音で人の怒声もかき消されるほど機械音が響いている。

「何やってるんだ!ボケ-っとしてないでさっさと手を動かせ!」

クレーンを操縦していた男が深く掘り起こした穴をじっと見ている

「ボス…。人が死んでる。」

ぼそりと言ったが当然ボスには聞こえない。

「そこが最後の杭射ちになるんだぞー!」

「や、やっぱり人だ…!」

じっと地下深くを見詰めていたが、人の形をハッキリと認識してしまい、

「人がっ!人が死んでるーッッ!」

と、何度も繰り返し叫んだ。やっとボスの耳に届いたが、ボスは鼻で笑い、

「人だとよ、人が死んでるんだと!あのボケ、昼メシ食ったらケツを蹴り飛ばしてやる!」

「そん時は俺も手伝うぜ。」

と、皆でふざけながら笑った。しかし、あまりに必死で手招きをするので、ボスは深くため息をつくと、

「しょうがねぇヤツだ。ちょっと行って来る。」

と、言いながら面倒臭げな足取りで向かった。

「ボ、ボ、ボス!あそこです!あそこ!!」

「お前なぁ、休憩したいだけの言い訳だったらただじゃおかねぇからな!」

渋々、作業員が指差している方を目を凝らして見てみた。

「んん?なんだ?あれは…。」

ボスは暫く見ていたが、どうも人間らしい事に気がつき、

「ひ、人だ!人が死んでるぞー!!」

声が裏返るほど大声で叫んだ。

「警察を呼べ!警察だー!」

「ま、まさか本当か!?」

ボスの声に仲間も駆けつけ、ボスはすぐさまその穴に滑り降りた。

顔と体のほとんどが埋まっており、ところどころに見える白い肌が目立っている。この肌のお陰で作業員は見付けたのだろう。暗い土の色と混ざり合った栗色の髪から、少し掘り出された足にかけて推察するに、身長は180cm位だろうか。

その異様な光景を更に異質なものに変えたのは、現代ではまず着て歩くような人間はいないであろう、衣服だ。

「というか、なんだあ?この服。古代人か?」

「バカ言うなよ。この格好はほら、よく若者がやる…。何だっけ?」

「コスプレ?」

「そうそう、そのコスプレの格好してるんだろ。」

憶測が飛び交う。

「だが不思議だと思わないか?誰がこんな深くに人を埋めるんだよ。ショベルカーがいるんだぞ。それに…、死体もキレイなもんだ。」

ボスは訝しげに首を傾げた。

「とにかく、警察が来るのを待とう。」

そう言って引き上げようとしたとき、

「う、う〜ん。」

微かな声に皆の足が止まった。ボスが

「お前、何か言ったか?」

隣にいた作業員が首を横に振った。

「うう~ん。」

立ち去ろうとしていた皆が固まった。

「えっ?」

「ま、まさか…生きてる?」

「そんなバカな!」

ボスは振り返り男の前で膝まずくと顔の泥を払いのけ、頭を起こした。

「おい!生きてるのか!?しっかりしろ!」

「痛て、痛ててて。痛て-んだよ…。」

そう弱々しく言うと、小さく息を吸ってペキは気を失った。

「すぐ救急車を呼ぶからな!頑張れ!おい!救急車を呼ぶんだ!早くしろ!」

「は、ハイ!!」

信じられない事態に、周りは慌てふためいた。ボスと他の作業員が必死に周りの土を退かそうとする中、ペキは小さく呼吸を続けていた。

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