02:『一難去らずにまた一難~』的な♪
こんにちは~作者の神威ルートです♪
クロスオーバー作品《異世界物語》もよろしくです♪
故郷《暗山村》を旅立って10日目、途中親切な行商人のキャラバンに出会い、王都の城下町《魔魍街》まで馬車に便乗せてもらったヘルシングであった。
おかげで村から王都まで徒歩片道約20日かかる道のりも、体力を浪費する事無く快適に向かう事ができたばかりか、早めに到着できそうであった。
「ほら、ヘル君飲むかい?」
キャラバンの主、豹族の《ピュマ》はヘルシングに水筒を渡すと彼の隣に腰を降ろした。
「はい、ありがとうございますね♪」
ヘルシングはその水筒を両手で受けとると、早速飲み始めた。
「プハァー!旨か~♪」
ディメンション・バッグから出された水筒の水は冷たく冷やしてあり、彼の喉はたちまち潤っていく。
「(笑)♪本当に美味しそうに飲むね、お父さんと王都で酒を飲み明かした時の事を思い出すよ♪」
本当に偶然なのだが、ピュマはヘルシングの父とは昔からの飲み友達だったらしい。
今回は別の村に仕入れに行った帰りに、たまたま休憩しているヘルシングを見かけて、バンの子供とは知らずに声をかけたそうだ。
本人いわく、こんな森の中で一人休憩している子供を見かけて心配になったらしい。
「そん時はご迷惑かけてごめんやったです。ピュマさんから聞くまで家のもんは誰も知らんかったです。」
何でもピュマとバンが独身の頃、王都の酒場でどちらが酒が強いか呑み比べをしたらしい。
途中、ガラの悪い年配の冒険者に絡まれたそうなのだが、その時まともに歩けない位泥酔していたピュマをかばって、バンは大暴れをして、警備の役人に取り押さえられたそうだ。
「いやいや迷惑をかけたのはこっちだしね。謝らないでいいよ(笑)♪」
今でも酒を呑みに行った際は、妻や娘にこの時の事を持ち出されるらしく、彼にとってこの事は黒歴史だそうだ。
※常日頃から酒豪だと豪語していた癖にバンには呑み比べで負けたばかりか、ケンカを吹っ掛けてきた冒険者から助けてもらったらしい(笑)。
「そう言えばもうすぐ森を抜けるから、後3日もすれば王都に着くよ。」
村から王都までの道すがら、数ヶ所深い森があるのだが、今通り過ぎようとしている森が最後の森なのであった。
これまで《モンスター(にんげん)》も現れず、順調に王都に向かっていたキャラバンは日が暮れるまでにこの森を抜ける予定だそうだ。
すると森の出口辺りでお約束のイベントが起きてしまった!
「ウゥ~!」
「グルル~!」
突然茂みの中から下位種のモンスター(オス)が集団で現れたのだ!
「皆慌てるな!速駆で一気に突破するぞ!」ピュマの号令でキャラバンの馬車は一切にモンスターの集団の中を掻き分ける様に走り抜けて行った。
※下位種のモンスターは知能が低く、本能のみが優先される種類なのだが、武器を手に集団で行動するという厄介な性質を持っているのだ。
実戦経験がほとんど無いヘルシングは、この時程剣の練習をサボっていた事を後悔した事は無かった。
ただ怯えながら馬車の後部からそっと追いかけてくるモンスターを眺めるしかなかったのだが……
その時ふと、ある事に気がついた。。
逃走中の馬車の荷台から二つ荷物が落ちたのだが、その時一部のモンスターが荷物の中から何かを探している様な行動を取ったのだった。
『可笑しかね~確かあの手の下位種モンスターって食料や異性にしか興味なか筈やけどな……』
ヘルシングが心の中で呟いた通りである。
本能のみが優先される下位種モンスターが、何故か陶器しか入っていない落ちた荷物を物色している。
食べ物の臭い等しない筈にも関わらずである。
『何か探しょるごたんね………』
ヘルシングがそう感じた時である。
側面から別の下位種モンスターの集団が現れたのだ!
不意を突かれたヘルシングが乗っている馬車は、避ける事も出来ずに馬もろとも横転してしまった。
そしてその拍子に、ピュマは馬車の下敷きになって気を失ってしまったのだ!
「ア~痛か~!!」
かろうじて荷台から這い出てきたヘルシングは、そんなピュマの状態に気づき、助けようとするが覆い被さった馬車の残骸はびくともしない!
困り果てた彼はキャラバンのメンバーに助けを求めようとしたが、彼らも下位種モンスターの奇襲を受け、応戦している真っ最中であった。
視線を移すと後ろからは、さっき追いかけてきたモンスターが追いつこうとしている。
途方にくれたヘルシングだが、その時ふと、さっきのモンスターの行動を思い出した!
『あやつら何か探しょったよな……』
とにかく馬車の下敷きになっているピュマを助けたいヘルシングは、何かを閃いてある作戦に打って出た。
「おら!我が達の欲しかもんは俺が持っとるぞ!!」
そう言うと懐から紐で結んだ袋を取り出し、わざと高々と掲げてみせた!
これは彼にとっての賭けである。
もしモンスター達が探している物がこの袋と酷似していなければ、彼らの動きは止まらない。
だが止まった!
「欲しかったら取ってみらんか!!」
ヘルシングはそう言うと、偽物を再び懐に入れ、モンスター達がいる場所と反対方向へと逃走していったのだ。
『これでピュマさん達が助かるやろ!』
そうである。
ヘルシングは、キャラバンを救う為、自ら囮になってモンスター達の注意を自分に向けたのだった!
彼は無我夢中で追手のモンスター達を少しでもキャラバンから遠ざけようと走った。
案の定モンスター達は全員ヘルシングを追いかけ始める。
「ヘルーー!!」
意識を取り戻したのか、遠くでピュマの声が聞こえていたが、ヘルシングはそれを無視してただひたすら走った!
森の木々の間を夢中で走る彼は、時折振り返りモンスター達が追いかけてくるのを確認していた。
どの位走ったかもはや解らなくなったヘルシングは、ふといつもの様にモンスター達が追ってくるのを確認する為に振り返った。
その時である!
足元に浮遊感を感じた瞬間、ヘルシングは下に木々が生い茂る崖の上から真っ逆さまに落ちていったのだった!
「あ!」
全く予測していなかったであろう彼の姿は、少しずつ小さくなり、崖の下へと消えていったのであった……
…完……
ではない!!
二話で終わってはイカン!
次回へ続く…………
次回
03:『なんだか思い出しちゃったんですけど~』的な♪
読者諸君、福岡はうどん県だと知ってるかい?
(ストーリーと関係ないじゃん!)